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2001(平成13)年度税制審議に関する申し入れ
 全国労働組合総連合(小林洋二議長)、日本国家公務員労働組合連合会(堀口士郎中央執行委員長)、全国税労働組合(井ノ上繁利中央執行委員長)は、2000年12月8日、税制調査会(石弘光会長)に対し、2001(平成13)年度税制審議に関する申し入れ書を提出した。以下はその全文です。
2000年12月8日
税制調査会会長  石弘光 殿
全国労働組合総連合議長 小林 洋二
日本国家公務員労働組合連合会中央執行委員長  堀口 士郎
全国税労働組合中央執行委員長  井ノ上繁利
2001(平成13)年度税制審議に関する申し入れ書
 貴税制調査会は2000(平成12)年7月14日、森内閣総理大臣に「わが国税制の現状と課題ー21世紀に向けた国民の参加と選択ー」と題する答申をおこなった。この特徴を一言でいうと、「広く公平に負担」という言葉に代表されるように「消費税増税」の「選択」を示すものとなっています。
 貴税制調査会では、2001(平成13)年度の税制に関し、個人所得課税では課税最低限の引き下げ、各種所得控除の見直し等を、法人税では高収益企業の利益蓄積構造に寄与している租税特別措置へ十分な検討を加えることなく連結納税制度導入等を、消費税では社会保障財源としての目的税化等を、相続税における最高税率引き下げ等を、並びに年金課税、電子商取引関連税制、納税者番号制度等の検討がされていると報じられました。
 これまでの税制改革において、個人所得課税では資産性所得の分離課税を維持し、所得税最高税率は1969(昭和44)年に75パーセントであったものが、1987(昭和62)年には60パーセントとなり、その後も逐次引き下げられ1999(平成11)年には37パーセントとなりました。法人課税では租税特別措置を温存し、基本税率を43.3パーセント(1984(昭和59)年4月以降終了事業年度分)から30パーセント(1999(平成11)年4月以降開始事業年度分)に引き下げました。
 特に、1980年代後半からはじまる一連の税制改革(消費税の導入、利子所得への一律分離課税、所得税・住民税の最高税率の引き下げ・税率ブラケットの簡素化、法人税率の引き下げ等)は、税負担能力の大きいものを優遇し「活力」を与え、大衆に重い負担をおわせ、大企業と中小企業、富める者とそうでない者にさらなる格差をもたらし、租税のもつ所得の再分配機能を著しく低下させています。
 その結果、2000(平成12)年度予算では、消費税と法人税の国税の税目別収入構成比は共に約20パーセントとなりました。直間比率は60対40で直接税の比重が減少しています。消費税は1989(平成元)年に税率3パーセントで導入され、1997(平成9)年に5パーセント(地方消費税含む)となり、2000(平成12)年度には地方消費税とあわせ12兆3998億円(国税 9兆8560億円 地方消費税2兆5438億円)が国民の負担となっています。政府・与党による税制改革で税負担の構造が変化した結果を示しています。私たちは、税制における国や地方公共団体の財源を調達する「財源調達機能」、市場経済から獲得した所得や資産を累進税率等により社会的に好ましい状態に再分配を図る「所得再分配機能」、好況期や不況期において自動的に景気を安定化させる役割としての「経済安定化機能」は多くの国民の信頼を失っていると考えています。
 資本主義社会はそのままにしておくと貧富の差が限りなく拡大します。高額所得を獲得し留保することだけが活力の源となるような社会システムを作り出すことは「弱肉強食の社会」を到来させ、社会に不平等化と不安定化をもたらします。そのことは、民主主義の危機を招きます。現在の不公平な税制を改めることなく、更に所得格差や資産格差を拡大しようとする措置を私たちは認めることができません。
 税制の基本は、憲法に則って応能負担原則を徹底すると共に、負担能力の測定にあたってはいっそう客観的に把握できる体制を確保し不公平税制を是正することが必要です。
 国民が求める税制改革の基本はいかにして税負担の公平を確保するかにあります。それには、まず不労所得には重課をし、勤労所得には軽課をし、生活費には課税をしないという理念が必要です。累進的な課税によって所得の再分配機能を確保することは非常に重要なことだと考えます。それは、「広く薄く」大衆に課税することではなく、社会の富めるものにより多くの負担を求め中低所得階層に配慮することです。
 所得課税を税体系の基幹税とする認識のもと、税負担の公平確保の実現を最優先とすることです。
 法人課税においては富めるものを優遇するのではなく大企業優遇税制を是正することです。
 消費税はその逆進性ひとつをみても不公平税制そのものです。消費税の逆進的負担の緩和をするため生活必需品にゼロ税率を適用することが必要です。
 また、環境を保全し人が健康で文化的な生活をし、基本的な人権が尊重される社会・経済のため、社会的に重大な影響力を持つ巨大企業・大金持ち・大資産家の権益を規制しその力を社会のために役立たせ負担をもとめることが必要です。
 私たちはこれまで、貴税制調査会に対して総合課税を軸にした税体系を確立するよう、その改革案を申し入れてきました。税制は常に国民の立場に立った観点から改革される必要があるからこそ、改めて以下申し入れます。私たちは、国民が納得できる税制改革を答申することを望みます。 


第1部 税制について

第1章 税制改革の基本 

 私たちは税制のあるべき姿を考えるとき、応能負担原則による公平な税負担配分を基本に置くべきだと考えます。それは、不労所得には重課をし、勤労所得には軽課をし、生活費には課税しないという原則です。そして直接税中心の税体系により、所得税においては総合課税と累進構造を確立し、法人税においては利益の大小に応じた負担配分をし、大企業優遇税制を是正すべきだと考えます。

1.直接税中心の税体系
 応能負担原則を基本とする直接税中心の税体系を確立し、消費課税などの間接税は補完税にとどめるべきです。現在の消費税はこの応能負担原則に反し、低所得者には重い「逆進性」を免れず、生活保護者にも負担を強いる大衆課税であり廃止すべきです。

2.総合課税、累進構造の確立
 本来直接税には累進税率によって社会の安定化を図る所得再配分機能がありますが、これまでの税制改革はこの累進性を破壊するものでした。加えて、累進性を実質的に破壊しているものとして分離課税等さまざまな制度があります。これらの不公平な措置を思いきって是正し、完全総合課税の実施と累進構造の確立をはかることが必要です。

3.国民生活重視の税制への転換
 大企業を中心に適用されているさまざまな税の優遇措置は大幅な見直しが必要です。同時に過度に集中蓄積された土地や債券等の資産に対する課税を考える必要があります。また、「規制緩和」「国際競争力の強化」や「経済活性化」などを名目にした新たな優遇措置は取るべきではありません。とりわけ、所得格差や資産格差を助長させるような税制上の措置に対しては速やかな改廃が必要です。今、何よりも求められているのは、生活の不安を除去し安心して生活できるシステム、国民生活の実質的な向上を目指す税制へと改革を進めることです。

4.税制改正における民主的手続きの確立
 税制及び税務行政の制度改革にあたっては、国民にその内容を周知し、議論を尽くすなど、民主的手続きを貫くことが必要です。

第2章 所得税

1.総合課税を原則に負担の公平を図る
 所得税や個人住民税については、最低生活費非課税の原則に立ち総合累進課税をより完全なものにすることが基本です。そのため課税ベースについては、最も担税力のある資産所得に対する特例制度や分離課税制度を廃止するとともに、担税力のない所得層に対する課税となっている「生活保護給付水準以下の課税最低限」を大幅に引き上げるべきです。税率は、最高税率は引き上げ、最低税率は引き下げ、税率適用区分には物価調整制度を採用すべきです。

 当面、次の措置をとること。

(1)所得税の課税最低限(基礎控除十配偶者控除十扶養控除)を引き上げる。
(2)給与所得の現行給与所得控除は、定額部分を大幅に引き上げ、高額所得者に対する定率部分の頭打ち控除制度を復活する。
(3)給与所得の「特定支出控除制度」の必要経費項目を拡大する。
(4)白色申告者にも専従者給与を認める。
(5)政策的諸控除は縮小の方向で検討する。
(6)課税最低限と税率適用区分について、物価調整制度を導入する。

2.利子・配当所得について
(1)総合課税を実施し、源泉分離課税制度を廃止する。この場合20%の源泉徴収を行うとと
もに、次のことを義務づける。
イ 本人確認等の厳格化(金融機関窓口における預金者の住所、氏名、生年月日を記載した公的書類による確認)。
ロ 金融機関ごとの名寄せ。
ハ 支払調書の提出と本人への交付。
(2)老人等への「利子所得等非課税制度」は存続し、低所得者に対して還付申告を保障する。

3.有価証券譲渡益課税について
(1)上場株式等に係る譲渡所得等の源泉分離選択課税制度を復活させないこと。
(2)総合課税を実施すること。この場合1%の源泉徴収を行うとともに、利子・配当所得と同様に次のことを義務づける。
イ 本人確認等の厳格化(証券会社窓口における取引者の住所、氏名、生年月日を記載した公的書類による確認)。
ロ 証券会社ごとの名寄せ。
ハ 支払調書の提出と本人への交付。
(3)キャピタルロスは利益の範囲内とする。

4.土地譲渡課税(個人)について
(1)譲渡所得には500万円の特別控除制度を設けた上で総合課税とする。取得費計算は、実額ないしは譲渡価額の5%の概算取得費との選択制とする。
(2)自己居住用住宅を除く保有期間5年以下の超短期譲渡は、税率10%の追加課税を行うこと。取得費は実額計算とする。
(3)事業所得または雑所得に該当する土地等の譲渡は次のような追加課税を行う。この場合(1)の特別控除制度は適用しない。
イ 短期・超短期保有土地以外の土地等は税率5%の追加課税を行う。取得費は、実額計算または譲渡価額5%の概算経費との選択制とする。
ロ 短期(5年超10年以下)保有の土地等は税率10%の追加課税を行う。取得費は、現行の概算計算を廃止し実額計算とする。また、支払利息の経費の算入は認めない。
ハ 超短期(5年以下)保有の土地等は税率15%の追加課税を行う。取得費と支払利息の取扱いは、短期保有土地等と同じくする。

5.土地以外の資産の譲渡等について
 ゴルフ会員権や一定額以上の高額資産(貴金属・宝石・書画・骨萱品等)の譲渡や販売については、譲渡者及び販売者に対して、譲受人や買受人の住所・氏名・価額・品名等の税務署へ
の届け出を義務づける。

6.特別措置は原則廃止する
(1)各種の特別措置は原則廃止とするが、当面土地譲渡にかかる現行の租税特別措置法の特別控除と特例措置については次のものに限定し若干の手直しのうえ存続させる。
イ 居住用の買換えは一般的な最低面積に限定し、特別控除3,000万円との選択適用とする。
ロ 事業用の買換えは、買換え資産の面積が譲渡資産の面積の2倍までに限る。
ハ 優良宅地開発事業等に対する譲渡益の軽課は、全面的に見直しを行い、統合整理する。
ニ 公共用地取得や公共目的のための譲渡については軽減措置をとり、特別控除5,000万円と買換えとの選択適用を認める。
(2)歴史的遣物保存のための譲渡優遇措置を新設する。

7.税率について
 所得税の最高税率を引き上げる。
 総合課税が完全に実施された場合には最高税率を50%とする。

8.減税について
 減税は「定率方式」によるのではなく、課税最低限の引き上げによる減税とする。

9.年末調整制度について
 年末調整制度は廃止し確定申告方式にする。当面、年末調整制度と確定申告方式との選択制とすること。

第3章 法人税

 現行の法人税制は大企業に有利な仕組みになっています。様々な優遇税制により、巨大企業になればなるほど実質の税負担は軽くなる現状にあります。「国際的にみて税負担が重い」「企業が海外に流出してしまう」「経済の活性化を図る」などを理由にあげて法人税の基本税率を43.3パーセント(1984(昭和59)年4月以降終了事業年度分)から30パーセント(1999(平成11)年4月以降開始事業年度分)に引き下げ、これで法人税率は戦後最低となりました。こうした法人税の減税は税制における財源調達・経済安定機能を著しく低下させています。いずれ消費税増税の「呼び水」になるのは目にみえています。法人税の減税で、消費税が増税されれば、低所得者にとっては大きな負担増になります。
 日本の企業は大企業も中小零細企業も同じ法人税法で規定されています。日本の法人税法は法人擬制説の立場に立っていますが、大企業の実態は法人実在説に近いものといえます。一方、資本金の小さい企業はむしろ個人営業に近いのが実態です。日本の法人税率は擬制説の立場から比例税率になっていますが、応能負担の原則に則して利益の大小によって負担能力に格差をつける累進税率とすべきです。

 そのため以下の措置をとること。

1.法人の大小区分と税率について
 大企業に有利な仕組みになっている現行の法人税制を改めて、大企業と中小企業とに区分した上で、利益の大小に応じた負担配分をはかる必要がある。それぞれに所得に応じた超過累進税率を適用する。

2.課税ベ一スについて
 現行の法人税法・租税特別措置法では、各種引当金や準備金、特別償却、そして受取配当益金不算入などによって課税ベースが縮小されている。大企業ほどこの制度の利用度が高く、金額も大きく、実質的に税負担を減少させている。
(1)貸倒引当金と退職給与引当金は廃止する。
(2)返品調整引当金は縮小の方向で検討する。
(3)租税特別措置による準備金、特別償却等の加速償却、税額控除は廃止する。
(4)受取配当益金不算入、プレミアム非課税は廃止する。
(5)みなし外国税額控除は廃止する。
(6)移転価格税制は適切な運用をはかる。
(7)減価償却制度について、中小企業向けを除き、特別償却等の加速償却は廃止する。

3.同族会社の留保金課税の廃止
 同族会社の留保金課税の趣旨は、法人税が比例税率であるのに対し所得税は累進税率であるため、同族会社の留保額が過大になる傾向があり個人企業とのバランスをはかるための制度とされている。法人税率に超過累進制度を導入し、同族会社の留保金課税は廃止する。

4.法人の圧縮記帳制度の改正
 法人の圧縮記帳制度を見直すこととし、当面次の措置をとる。
(1)資本金1億円以下の法人に限り、面積の2倍以内の土地の買換えだけに認める。
(2)公共用地取得や公共目的のための譲渡については軽減措置をとり、特別控除5,000万円と買換えとの選択適用を認める。

5.保有課税について
 大企業はバブルが崩壊したものの、依然として土地及び有価証券などの膨大な含み資産を抱えている。
 以下により保有資産の保有課税をおこなう。
(1)法人の有価証券保有税の新設
 資本金10億円以上の法人が保有する株式に、財産課税として決算月1カ月の平均時価を課税標準として0.1%の有価証券保有税を課する。
 株式以外の有価証券については0.05%の有価証券保有税を課する(金融機関を除く)。
(2)土地税制について
 土地を資本の利潤追求の目的物としないためにも、土地に対する譲渡・保有課税は必要である。これまでの改正によって、既存の土地税制(地価税、土地取得に係る負債利子の損金不算入、土地譲渡重課税、買換え資産の圧縮記帳など)は大幅に骨抜きされた。
イ 長期(10年超)保有の土地の譲渡益に対して5%の追加課税をおこなう。
ロ 短期(5年超10年以下)保有の土地の譲渡益に対して10%の追加課税をおこなう。
ハ 超短期(5年以下)保有の土地の譲渡益に対して15%の追加課税をおこなう。

6.連結決算制度について
 企業会計における連結決算制度は導入すべきであるが、課税所得の計算においては単独で課税し、赤字子会社の損益通算を認めるべきではない。

7.外形標準課税について
 事業税の課税ベースに、所得のほか給与や利子地代などを含めた外形標準課税の導入が検討されている。赤字法人にも課税する方向である。しかし、事業税は所得課税であり、また、外形標準課税は基本的には付加価値税であり第二の消費税になる。人件費のウェイトの高い中小企業の負担は増加する。よって、外形標準課税は導入しない。

第4章 消費税

 「消費税」はすべての物品、サービスに課税する大型間接税であり、逆進性の強い大衆課税です。消費課税は直接税の補完税として、ぜいたく・奢移品等課税範囲を整理して、個別に課税すべきです。
 また、消費税を「福祉目的税」化することは、一般の経費に充てる目的を持った租税を「特
定経費」に充てることになります。これは社会保障財源を大衆課税による負担で賄い、企業の負担を激減させ、ひいては財政の硬直化につながる恐れがあることから反対です。
1.消費税は廃止すること。当面、現行税率の引き上げは行わないこと、食料品等の生活必需品は完全非課税(ゼロ税率)とすること、大企業の仕入税額控除の「課税売上割合95%基準」は廃止すること。
2.高級自動車などの耐久消費財や奢移品等は課税範囲を整理して個別に課税すること。
3.酒税については、焼酎などの大衆酒の税率を引き下げること。

第5章 資産課税の考え方

1.あるべき土地政策と土地税制
 ここ10年余の土地や株式の暴騰とその結果としての暴落(バブル現象)によって日本の経済と国民は深刻な打撃を受け、今なお苦しみにあえいでいる。これは大企業や大口資産家による野放図な土地投機を放置してきた歴代政府・与党の土地政策における無策と、さらに加えて土地の供給促進を中心にすえた土地税制による結果であり、深い反省とともに抜本的な対策が必要である。土地政策の基本は、本来有限な土地は公共物であり、公共による計画的な利用を優先させるとともに、土地を資本の利潤追求の目的物にすることを改め、勤労国民が健康で文化的な快適な住宅環境の下で生活し、また中小企業や農漁業者の健全な事業承継が可能なように保障するものでなくてはならない。土地税制もこの土地政策にそって、年々頻繁に変わる税制ではなく恒久的な基本税制を確立する必要がある。

2.譲渡課税
 譲渡所得は実現利益に対する課税であり、個人の場合は繰り返し発生するものではないことを考慮しても、特別に軽課する理由はない。法人の譲渡益の場合は、事業として行われるものであるから土地政策上は重課すべきである。
 なお、課税にあたっての土地の保有期間による区分は存続すべきであり、この場合長期は10年超、短期は5年超10年以下、超短期は5年以下とすべきである。

3.取得課税
 相続税・贈与税は、富の過度の集中を抑制し再配分を図るのを目的とした税であるから、巨額な富の取得には重課する必要がある。
 課税最低限については、全国的には土地価格は不均等であり全国一律の金額とするには問題がある。
 また、地域区分や利用形態にそって軽課措置を講ずる必要があり、特に日常生活に最低必要な財産の保障と中小零細事業者の事業承継保障の措置として、生活用個人住宅や小規模事業用資産に対しては非課税ないしは軽課とすべきである。

4.保有課税
 土地の投機的取引を抑制し公共目的の利用を優先させた有効利用を促進するためには、譲渡課税の強化だけでは不十分であり、土地保有の有利性の減殺措置が重要である。
 この場合、応益税としての固定資産税にその機能を持たせることは適当ではないが、土地含み益を享受できる法人に対しては、個人のような相続税がないこと、購入資金の借入れ利子等の損金算入が可能なこと、土地の投機を企業活動とすることが可能であることなどを考慮して、小規模法人を除く法人に対して国税としての保有税を課すべきである。
 固定資産税は、その評価換えによって負担が増大し、勤労国民の生活を脅かすほどのものになっている。評価方法や税率を改善して適正な負担にとどめるべきである。市街化区域内農地に対する課税は、収益性の低い農業の保護や、市街地における緑と環境保全保護の観点から軽課すべきである。
 一方、市街地における大規模保有土地に対しては重課する。この意味で地価税は凍結を解除し存続すべきである。

第6章 土地等の評価制度について

1.現行評価制度の問題点
 課税標準としての土地評価額には、現在固定資産税課税のための「固定資産税評価額」と相続税等の課税のための「路線価」があるが、その評価方法は建前としては、取引事例比較法、原価法、収益還元法の三方式をあげてはいるものの、実際は売買実例をもとに基準点の評価を行い、点の評価を面に広げていく方式がとられている。
 土地の利用形態による区分については、都市計画法によって区域指定(市街化区域または市街化調整区域)や用途指定(住居地域、商業地域など)がされているが、これらは大枠指定で大まかなため、商業用地としての価格が住宅地域の価格を押し上げるような実態に合わない評価がされている場合が多い。また、本来用途別にそれにふさわしい方法によって評価すべきであるにもかかわらず、用途に関係なく同一の方法がとられているために、これもまた実態に合わない評価がなされる原因になっている。

2.収益還元法を土地評価の基本とする
 固定資産税、相続税(贈与税を含む)及び地価税の課税標準としての評価を、売買実例をもとにした評価法から、収益還元法を基本にした評価に改める。
 収益還元法とは、評価対象財産に帰属する純収益を適正な還元利回りで還元して、評価額を求めようとする方式である。この方法を用いるためには、利用形態による評価が前提になる。
 現行の評価では、公示地価を基準としてその7割(固定資産税評価)ないし8割(相続税評
価)を目安としているが、公示地価そのものは通常の取引価格(売買価格)の目安であって、本来あるべき正当価格を示すものではない。

3.利用形態による評価
 土地については次の用途区分別に厳密に区分するとともに、街区ごとに至るまで綿密に利用形態による評価を行う。また、あわせて都市計画の明確化を行う。

(1)居住用土地 
 貸家、貸宅地の収益還元価格で評価する。

(2)商業用土地 
 都心や繁華街、大規模店舗、小規模商業土地に区分し取引事例による比較方式または収益還元方式併用で評価する。

(3)事務所用等業務用地
 区分、方式とも商業用地に同じ。

(4)工場用地
 収益還元方式を基本に比較方式も併用して評価する。

(5)農・林・漁業用地
 収益還元方式。

(6)ゴルフ場、遊園地等用地
 収益還元方式。

(7)その他用
 用途により措置する。

4.建物の有効利用の場合の優遇措置
 建物については、現行の固定資産税の評価制度を踏襲するが、用途指定地内の有効利用の促進のために「有効利用」とされた場合には減額評価制度を導入する。

5.評価の改定
 土地の評価は国(税務署)と地方(市町村)が共同して毎年行う。課税標準は、この評価額を基に法律で定め、課税官庁が使用する。
 相続税のように課税日が年の中途の場合は、下方修正が可能となる方策を講じる。

6.土地公示制度の改革と公開制
 現行の公示制度(公示価格、基準地価格)を廃止し、売買等の取引実例公示制度に改める。
 課税標準としての評価額は、その方法手順も含めて公開する。

第7章 相続・贈与税

 相続税は富の過度の集中を抑制し、再配分を目的とした税です。相続税の土地の評価は、取引事例比較法を基礎としており、売買を予定しない小規模な生活用土地についても同じように扱っています。このため、都市部の小規模住宅等に過重な負担を強いることになっています。
 また、貴税制調査会で議論されている「事業承継」を口実にした最高税率引き下げには反対です。

1.課税最低限の実質引き上げ
 相続税は、自己居住用土地については200平方米までを非課税とする。
 個人事業用土地については、事業に準ずるものを含め200平方米までは80%の軽減措置をとり、自己居住用土地の非課税との併用を認める(400平方米までの軽減措置とする)。
 課税最低限は当面現行の金額とする。
 贈与税は、課税最低限を現行(60万円)の2倍に引き上げる。住宅資金の特例は継続する。

2.農業の事業承継保障
 農業の事業承継保障措置としての現行制度を維持する。
 林業についても同様の措置をとる。

3.税率等の改正
 相続税は、最高税率を現行の70%を維持するとともに、配偶者軽減措置は5億円を限度とする。

第8章 地価税

 「土地基本法の理念を踏まえつつ、土地の資産価値に応じた税負担を求める」として1991
年度税制改正で創設された地価税は、当初の基本税率の0.3%が1996年には0.15%に引き下げられ、1998年度では「当分の間適用を停止する」とされた。しかし、地価税は創設の趣旨に基づき、少なくとも当初税率に戻して適用すべきである。

第9章 その他の国税

1.有価証券取引税
 復活させ、税率を1万分の55で課税する。

2.財産税等の創設について
(1) 環境を保全し人が健康で文化的な生活をし、基本的な人権が尊重される社会・経済のため、社会的に重大な影響力を持つ巨大企業・大金持ち・大資産家の権益を規制しその力を社会のために役立たせ負担をもとめることが必要です。そのため、財産税(富裕税)の創設を検討すること。
(2) 地球温暖化防止に有用とされているエネルギ一税(仮称)や炭素税(仮称)の導入を
検討すること。また、環境汚染の有害物質に対しても、直接の規制措置に加えて課税による経済的な規制を検討すること。

第10章 地方税

1.住民税
 個人住民税はその居住する地方での受益と負担の関係により課税されるものではあるが、所得税と同様に個人の所得にその担税力を見るものであるから、最低生活費非課税の原則にたって、総合累進課税をさらに完全なものにする必要がある。課税最低限は所得税を下回っているが、少なくとも生活保護基準を超える課税最低限とする。
 法人住民税率は、法人税と同様に累進課税の導入を検討する。

2.事業税
 現在検討されている外形標準課税は、第二の消費税といわれるようにその付加価値に課税されるもので、中小零細業者にとっては担税力の有無にかかわらず多大な負担を課すものであり、導入しない。

3.固定資産税
(1)自己居住用土地等
 生活上必要不可欠な生活用土地建物については、現行の軽減課税を維持する一方、市街地における大規模自己居住用土地(500平方米以上)は重課する。
(2)市街化区域内農地
 収益性の低い農業の保護や、市街地における緑と環境を保護する観点から、現行の軽課を維持する。
(3)ゴルフ場用地の高率課税
 ゴルフ場用地は上乗せ税率による高率課税を行う。
(4)自衛隊等の使用地の課税
 自衛隊や在日米軍の使用する土地の免税をやめ課税する。
(5)課税の特例措置の見直し
 NHK及び電力・鉄道・ガス・船舶・航空事業に対する償却資産に対する課税の特別措置は見直す。

第11章 納税者番号制度について

 現在政府部内では、貴税制調査会を中心に納税者番号制度導入の議論がすすめられている。もともと納税者番号制度は、総合課税を完全に実施するための方策として主張されてきたものである。しかし、現在議論されている納税者番号制はその導入目的を「金融資産課税の適正化」に矮小化し、現行の分離課税を前提としたものである。仮にその導入目的が「資産性所得の把握」だけにあるならば、それは第一義的には金融機関の名寄せを厳格に行うことによって可能であり、納税者番号制を議論する前にまずこの方策を実施するのが先決であろう。
 また、納税者番号制は国民総背番号制そのものとなり、国家による国民の個人情報の集中管理が行われ、国民の基本的人権が侵害される恐れがある。納税者番号制の名目による国民総背番号制の導入をしないこととする必要がある。したがって、この納税者番号制は、単に税制だけの問題だけでなくブライバシーの保護や情報公開制度などの税制以外の問題もあり、国民の理解と合意を得ずに決めるべきではない。

第12章 公示制度の改革

1.資本金10億円以上の大企業の課税処理にあたっては、その経過と結果を国会に報告することを義務化し、公開する。
2.所得税の公示制度は現行の税額基準を改め、所得金額基準とし、所得の種類、収入金額、申告所得金額及び申告納税額とする。法人税についても所得金額基準とし、売上金額と税額も公示する。資本金10億円以上の大企業にあっては、所得金額にかかわらず申告書第1表と別表の各表を公示する。

第13章 大企業に対する規制と監視

 大企業による税負担の下請け業者や国民への転嫁を禁止するために、民主的な方法による規制や監視の措置を講じる。監視機構としては国会の役割の強化を図る。独占禁止法の改正と公正取引委員会の改組強化、または立法措置により民主的に構成された監視機構を確立する。

第14章 その他の事項

1.労働組合は非課税団体とする。
2.労働組合に対し、「収益事業を営まない公益法人等の『収支計算書』の提出」を義務付けない。
3.申告所得税の申告期限と納期限を分離し、申告期限を3月15日、納期限を4月15日とする。
4.超低金利の実態を反映させ、延滞税及び利子税の利率を引き下げる。
5.出納整理期間を廃止する。国税収納金整理資金に関する法律第14条関係を改正し、当該年度に受け入れた国税収納金等は当該年度の一般会計に組み入れるものとする。受入金の会計年度所属は、当該国税が収納済となった日の属する年度とする。

第2部 税務行政について

 税務行政改革の基本は、憲法に則った民主的手続きの遵守と情報の公開、すなわち国民納税者の理解と納得を得るような民主・公正で透明かつ効率的な行政をすすめることである。このためには一部特権官僚の裁量的恣意的な行政に委ねるのではなく、広く国民の意見を反映した行政へと変革させることが必要である。そしてそのためにも税務労働者の労働基本権を保障するのみならず行政への参画を認めるべきである。そのため以下の改革をする。

第1章 公開と参加に関するもの

1.租税法律主義の徹底、法令・通達等の制定手続きの民主化と公開。
2.大企業の課税にあたっての申告や調査内容の公開、大口資産家の財産債務明細書の提出の徹底、並びに公示制度の改善。
3.情報公開法の改善、オンブズパーソン(行政監察官)制度の導入。

第2章 納税者の権利と適正手続きに関するもの

1.納税者の権利尊重を前提とした「適正手続き」、特に事前(救済)手続きの確立と、それに基づく公正・公平な執行。
2.国税不服審判所の独立性の確保など、事後救済制度の民主的改革。
3.守秘義務・プライバシー保護の明確化。
4.納税者番号制の名目による国民総背番号制の導入禁止。
5.さしあたっての執行には、税務行政運営の基本を明確にするため、「税務運営方針」をすべての国税職員に明示すること。また新たな方針の作成にあたっては、納税者サービスを向上させる観点から、「指導」と「相談」を充実させることを重点に、方針の具体化をはかる。

第3章 国税総合管理(KSK)システムについて

 KSKシステムの主要な目的は、全国のすべての納税者を一元的に管理することにある。その点で納税者番号制や国民総背番号制と密接に関連しており、徴税の強力な体制ができることを意味している。にもかかわらずこの全機能や全内容については、納税者のみならず職員に対しても明らかにされているとは到底言えない。国税庁は早急にその計画と実施状況及び問題点等について公表すべきである。私たちは機械化そのものに反対するものではないが、これまでのところ職員の負担のみが過大で納税者サービス向上にもつながっておらず、システムが未だ不完全、不安定であることから、事務の流れの変更を含む抜本対策が講じられないままの実施や、全国拡大は行うべきではない。

第4章 国税職員の権利に関するもの

1.国税職員の労働基本権を回復し、恣意的かつ「実績」主義に基づいた現行の勤務評定制度による人事管理は廃止する。
2.国税庁当局による全職員の思想・信条調査、プライバシーの侵害や不当労働行為は厳禁する。
3.国税庁当局による全国税組合員に対する一切の人事差別政策は撤廃する。

第5章 その他

1.特権官僚によるポストの独占や特例としてのキャリア税務署長など一切の特権人事を改める。
2.特権官僚の天下りや顧問先斡旋は禁止する。
3.特権官僚と政治家の資産は公開し、厳正な税務調査を行う。  
以上
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