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2011年3月28日

国税庁長官
川北 力 殿

全国税労働組合
中央執行委員長 藤平 和良

東日本大震災に関わる要求書
〜安心、安全な日本経済・社会を目指す税制と税務行政にするために〜

 2011年3月11日14時46分、三陸沖を震源とするマグニチュード9、宮城県北部で震度7を観測する大地震が起き、東北と関東の太平洋海岸では大津波により、町や集落が全壊したことをはじめ、甚大な被害が起こりました。また、東京電力が送電する地域では、電力不足が予想されるなかで計画停電が実施されており、職員の通勤や業務の進捗に重大な支障を及ぼしています。さらに、長野県北部や静岡県でも大きな地震が起きているほか、福島県にある東京電力第1原発での爆発事故に起因した放射能汚染が広範囲に広がり、人命や健康に重大な影響を及ぼすことが危惧されています。
 こうした中で、全国税労働組合は、人命第一での救助・救援活動に当たっている多くの公務労働者と、ともに奮闘していく決意を広く表明するのと同時に、税制・税務行政に直接携わる専門家として、東日本大震災からの復興に向けた財源である税制の在り方と、被災者・被災地に対する税務行政での猶予・緩和措置の在り方について、以下のように要求します。
 貴職が、未曾有の震災被害からの復興に向けて、下記要求実現に向けて決断し、または最大限の努力をすることを求めます。

1 震災復興に向けた税務行政の在り方について
(1) 国税・地方税では、「納税の猶予」(国税通則法§46)、「換価の猶予」(国税徴収法§151)、「滞納処分の停止・納税義務の消滅」(国税徴収法§153)の適用を可能な限り行うこと。また、納税緩和措置に伴う延滞税免除規定では足りないため、特別に延滞税免除期間を設けること。
(2) 平成22年分の所得税確定申告をはじめ、予定納税や中間申告、源泉所得税の納期限を含む、震災後に到来する納期限の延長等の適用を可能な限り行うこと。
(3) 上記2点以外にも点在する徴税面での猶予制度(国税・地方税・保険料等)の適用を可能な限り行うこと。
(4) これらの緩和措置適用に当たっては、必要書類や証拠書類を簡略化すること。
(5) 調査や滞納整理は、被災地では当面(最低でも1年)はやめ、納税者の権利を守り、納税者に利益となる制度を案内し、納税者利便に徹すること。
(6) 緊急災害対策本部から3月18日に発出されている「全省庁徹底事項」に基づく、被災者への支援は、仙台局に限らず、全国から希望者を募集すること。
(7) 還付金は早期還付金処理を行えるよう体制を整えるとともに、納付額が発生する申告書等の期限の延長や振替日延長などを行うこと。
(8) 納税者の相談窓口を拡充し、全署に税務相談官を配置すること。納税者の利益や利便に繋がる制度を、職員が説明できる資料や研修を配備すること。
(9) 倒壊した庁舎の建て替えや耐震に不安がある庁舎の補強工事、狭隘庁舎の増築を早期に行い、再び納税者や職員が負傷することがないようにすること。
(10) 国税庁・国税局・税務署の各段階で防災対応マニュアルを策定・公開すること。防災対応マニュアルの策定にあたっては、労働組合と交渉・協議を行うこと。今後発生する震災等では、職員や納税者とその家族の人命や健康、安心・安全を第一に考えた対応を全署が行えるよう、防災対応マニュアルに沿った対応や既にある備品の提供を必ず行うこと。
(11) 4月から6月の期間は、超過勤務を前提とした運営体制はとらないこと。

2 震災復興に向けて当面行うべき税制改正等
(1) 雑損控除を平成22年分から適用すること。法人税の繰り戻し還付を適用すること。損失額の算定は「簡便法」による計算も採用できるようにすること。
(2) 当面、被災地域において数年間発生する法人の欠損については、繰越欠損年数を拡大して適用すること。
(3) 租税特別措置法で、大震災における軽減措置(例えば、損失申告の適用年分を拡大することなど)を行うこと。住宅ローン控除では、津波等で家屋が倒壊し、建て替えた場合には、従来のローンの引き継ぎ価格を含め、可能な限り長期間適用できるようにすること。
(4) 津波による漁業関連業者、原発事故による農業所得者、地域産業破壊の影響を受けた中小業者など、被災地での特定事業形態に対する免税・軽減措置を新設すること。
(5) 震災地の固定資産税の非課税化、建て替え後の登録免許税の免除など、考え得る税制改正を行うこと。
(6) 特別震災控除(仮称)を新たに設け、世帯人数に応じた税額控除を新設すること。

3 震災復興に向けた財源確保のための税制改正
(1) 平成23年度予算関連法案である「所得税法等の一部を改正する法律案」(以下、「平成23年度税制改正法案」という)で審議されている法人税率の引き下げは行わないこと。法人税制に累進税率を導入すること。
(2) 平成23年度税制改正法案で延長した金融所得税制の減税措置・分離課税方式をやめ、総合課税方式での課税とすること。
(3) 租税特別措置法の透明化を進め、とりわけ大企業の課税ベースを広げるのと同時に、震災地での地場産業など中小企業への課税ベースは縮小すること。
(4) 震災復興臨時法人特別税(仮称)を設け、内部留保に対し2%の課税を行うこと。
(5) 被災地で倒壊した居住用建物の建て替えに係る「住宅取得控除」を新設すること。
(6) 震災復興の財源を消費税増税や課税最低限の引き下げに頼らないこと。