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東日本大震災等に関わる提言
〜安心、安全な日本経済・社会を目指す税制と税務行政を〜

2011年3月27日
全国税労働組合中央執行委員会

 2011年3月11日14時46分、三陸沖を震源とするマグニチュード9、宮城県北部で震度7を観測する大地震が起き、東北と関東の太平洋海岸では大津波により、町や集落が全壊したことをはじめ、甚大な被害が起こりました。また、東京電力が送電する地域では、電力不足が予想されるなかで計画停電が実施されており、税務行政の執行に重大な影響を及ぼしています。さらに、長野県北部や静岡県でも大きな地震が起きているほか、福島県にある東京電力第1原発での爆発事故に起因した放射能汚染が広範囲に広がり、人命や健康に重大な影響を及ぼすことが危惧されています。
 全国税労働組合は、東日本大震災において犠牲になられた国民の皆さんに心より哀悼の意を表するとともに、被災された皆さんへ心からお見舞い申し上げます。併せて、人命第一での救助・救援活動に当たっている多くの公務労働者と、ともに奮闘していく決意を表明します。

 私たち全国税労働組合は、税制・税務行政に直接携わる専門家として、東日本大震災からの復興に向けた財源である税制の在り方と、被災者・被災地への徴税面での猶予・緩和措置の在り方について以下のように提言します。

1 復興に向けた税制は、内需重視、垂直的所得配分の強化、中小企業を中心とする地場産業振興を前提とした税制体系が不可欠であると考えます。
 折からの財政危機により、「広く薄く」負担を求める税制体系への議論が進められていますが、これにより格差が拡大しつづけています。未曾有の大震災からの復興に向けた財源確保は急務ですが、その負担を水平的に求めては、悲劇の拡大しか生みません。
 税制改正は、税収確保機能を確保するために、担税力のある大企業、高額所得者、大資産家が応能の負担をする税制にしなければなりません。税制は、不労所得に重く、勤労所得には軽く、最低生活費には課税しない制度とすべきです。

(1) 平成23年度予算関連法案である「所得税法等の一部を改正する法律案」(以下、「平成23年度税制改正法案」という)で審議されている法人税率の引き下げは行わないこと。法人税制に累進税率を導入すること。
(2) 平成23年度税制改正法案で延長した金融所得税制の減税措置・分離課税方式をやめ、総合課税方式での課税とすること。
(3) 租税特別措置法の透明化を進め、とりわけ大企業の課税ベースを広げるのと同時に、震災地での地場産業など中小企業への課税ベースは縮小すること。
(4) 震災復興臨時法人特別税(仮称)を設け、内部留保に対し2%の課税を行うこと。
(5) 被災地で倒壊した居住用建物の建て替えに係る「住宅取得控除」を新設すること。
(6) 震災復興の財源を消費税増税や課税最低限の引き下げに頼らないこと。

2 東日本大震災で被災された方や地域に対して、今ある税制上の猶予・緩和措置を最大限適用することと併せて、新たに租税特別措置法による救済措置の新設が必要であると考えます。
 そのためには、制度上の措置が必要であることはもちろん、税務行政が調査・徴収に偏重せず、むしろ震災復興に向けて納税者の権利や利益、納税者利便に徹する税務行政の執行体制が必要です。

(1) 国税・地方税では、「納税の猶予」(国税通則法§46)、「換価の猶予」(国税徴収法§151)、「滞納処分の停止・納税義務の消滅」(国税徴収法§153)の適用を可能な限り行うこと。また、納税緩和措置に伴う延滞税免除規定では足りないため、特別に延滞税免除期間を設けること。
(2) 平成22年分の所得税確定申告をはじめ、予定納税や中間申告、源泉所得税の納期限を含む、震災後に到来する納期限の延長等の適用を可能な限り行うこと。
(3) 上記2点以外にも点在する徴税面での猶予制度(国税・地方税・保険料等)の適用を可能な限り行うこと。
(4) これらの緩和措置適用に当たっては、必要書類や証拠書類を簡略化すること。
(5) 雑損控除を平成22年分から適用すること。法人税の繰り戻し還付を適用すること。損失額の算定は「簡便法」による計算も採用できるようにすること。
(6) 当面、被災地域において数年間発生する法人の欠損については、繰越欠損年数を拡大して適用すること。
(7) 租税特別措置法で、大震災における軽減措置(例えば、損失申告の適用年分を拡大することなど)を行うこと。住宅ローン控除では、津波等で家屋が倒壊し、建て替えた場合には、従来のローンの引き継ぎ価格を含め、可能な限り長期間適用できるようにすること。
(8) 津波による漁業関連業者、原発事故による農業所得者、地域産業破壊の影響を受けた中小業者など、被災地での特定事業形態に対する免税・軽減措置を新設すること。
(9) 震災地の固定資産税の非課税化、建て替え後の登録免許税の免除など、考え得る税制改正を行うこと。
(10) 特別震災控除(仮称)を新たに設け、世帯人数に応じた税額控除を新設すること。
(11) 調査や滞納整理は、被災地では当面(最低でも1年)はやめ、納税者の権利を守り、納税者に利益となる制度を案内し、納税者利便に徹すること。
(12) 還付金は早期還付金処理を行えるよう体制を整えるとともに、納付額が発生する申告書等の期限の延長や振替日延長などを行うこと。
(13) 納税者の相談窓口を拡充し、全署に税務相談官を配置すること。納税者の利益や利便に繋がる制度を、職員が説明できる資料や研修を配備すること。
(14) 倒壊した庁舎の建て替えや耐震に不安がある庁舎の補強工事、狭隘庁舎の増築を早期に行い、再び納税者や職員が負傷することがないようにすること。