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 国公労連速報 2011年10月25日《No.2639》
 11年人勧取り扱いで総務省局長交渉
 特例法優先は憲法違反の暴挙と強く抗議
     
 

 

 11年人事院勧告見送りの報道が相次ぐ中、国公労連は25日午後7時、総務省交渉を実施しました。交渉には宮垣委員長を責任者に含め本部10名が参加し、総務省側は田中人事・恩給局長が対応しました。

 冒頭、宮垣委員長が人勧の取り扱いに対する現時点の政府の姿勢を質したところ、総務省側は「本年の給与改定の取扱いについて、本日2回目の給与関係閣僚会議が開催されたので、その状況をお伝えしたい」と前おきし、以下のとおり回答しました。

  • 本日の給閣においては、取扱方針の決定はされず、大筋次の3点を確認した。すなわち、@東日本大震災に対処するため、既に提出している給与臨時特例法案の早期成立を期し、最大限の努力を行うこと、A今回の人事院勧告の内容及び趣旨は、給与臨時特例法案の内枠であると評価することができると考えられるので、次回の給与関係閣僚会議までの間に、さらに精査を行い、本年の人事院勧告を実施するための新たな法案は提出しない方向で検討を進めること、B早期に再度給与関係閣僚会議を開いて、その整理を踏まえて、本年度の国家公務員の給与の取扱いについて結論を出すこと、が確認された。
  • その他、給与改定に関すること以外の要求事項については以下のとおり。
    超過勤務の縮減は、職員の健康、士気の向上はもとより、自己研鑽や家族との時間の確保のために重要であると認識している。このため、従来から全省庁一斉の超過勤務縮減キャンペーン等を行っているほか、コスト意識を持った超過勤務抑制に努めるとともに、超過勤務縮減を管理職員の人事評価の対象として明確化するなどの取組を行ったところである。各府省において、労働時間短縮対策に基づいた様々な取組が的確に行われるよう徹底していきたい。
    非常勤職員の処遇については、期間業務職員制度や育児休業制度の導入など改善が図られてきており、これらの適切な運用に努めるとともに、その処遇改善について、皆さんのご意見も伺いながら、検討していく。
    労働基本権の回復については、現在、国家公務員制度改革関連四法案が継続審議となっているところであり、まずは、本法案の動向に注視していきたい。
    高齢期雇用に関する意見の申出については、今後、民間における高年齢者雇用の動向等も踏まえつつ、国家公務員の雇用と年金の接続に向け、どのような措置を講じることが適切であるかについて、国家公務員制度改革推進本部を中心に、関係機関との間で検討を進めていきたい。

 回答を受けて、岡部書記長は「勧告を無視するものと受け止めた。憲法違反の暴挙であり、そのような方向での閣議決定は許されない」と述べた上で、以下のように主張しました。

  • 「人勧を実施するための法案は提出しない」というが、労働基本権が制約されている現行法の下では、政府は基本的に人勧を尊重しなければならない立場にある。法治国家である以上現行の法律を逸脱することはでず、枠外の決定をするのであれば、まず給与決定の仕組みを改めるべきだ。また、政府には使用者として職員の生活を守る責任もあるが、それには一顧だにしておらず、給与臨時特例法案は撤回・廃案を求める。  元々労働基本権制約の代償措置として人勧制度があり、人勧尊重は政府の国際公約でもある。また人勧に基づいて交渉してきた経過もある。それを踏みにじることは「2重のルール違反」だ。
  • 勧告が給与臨時特例法案の「内枠」であるというのも納得できない。勧告はマイナス0.23%の水準だがこれは情勢適応の原則に基づいた水準であり、それ以下であればかまわないということではなく、マイナス0.23%の水準は確保すべきということである。しかも一時金や配分については内枠ともいえない。その点でも特例法案の7.8%削減には全く根拠がない。さらに法案に至る経緯では当初、厳しい財政事情と公務員人件費2割削減の公約を上げ、結果として震災復興財源にもなるとされていたが、今は東日本大震災へ対処が根拠とされている。憲法違反の批判をかわし正当化しようとするもので姑息なやり方だ。
  • 政府は一部組合との合意をタテに特例法案を決定したが、その前提は公務員制度改革関連4法案の同時成立であり、自立的労使関係を先取りする異例の措置とされた。しかし、現状は人勧制度しかなく、関連4法案は成立どころか審議すら行われず、合意の前提も崩れている。改めて特例法案は撤回・廃案とすべきだ。
  • 給与以外の課題である超勤縮減、非常勤職員の処遇改善、高齢期雇用についての政府の検討方針は通り一遍の回答に過ぎず、我々の要求を正面から受け止めた回答とは受け取れない。独立行政法人の賃金改定への介入をすべきでないという要求に対しての回答もない。地方公務員や教員をはじめすべての公務労働者に対して国に準じた引き下げが強要されることになれば、社会全体の消費不況やデフレを促進し、復興に逆行する。全国でがんばっている職員の士気にも影響することはいうまでもない。

 続いて、人勧無視の政府の検討姿勢に対して、盛永・岩崎両副委員長がつぎのように主張しました。

  • 人事院勧告凍結に関わる判例としては、「全農林57年人勧凍結反対闘争事件」判決があるが、そこで明らかにされていることは、「人事院勧告制度は代償措置の中で最も重要なものの一つであるから、人事院勧告が将来への明確な展望を欠いたまま、相当の期間にわたり完全に実施されないような状況に陥った場合には、実際上画餅に等しいとみられる状態になったものと判断することになる」が、「昭和57年の人勧凍結は、逼迫した財政事情(当初予算36兆6240億円に対して5兆円以上の税収不足:財政非常事態宣言)のもとで当該年度に限って行なわれた異例の措置であるから、それだけでは将来への展望を欠いたまま数年間も実施されないような状況とまでは未だいい得ない」というものだ。
     今回の給与臨時特例法案は、財政非常事態宣言が出されているわけでもなく、3年度にわたって人事院勧告を無視するものであることから、正に判例で指摘する「人事院勧告が将来への明確な展望を欠いたまま相当の期間にわたり完全に実施されないような状況に陥った場合」に該当することから憲法違反であることは明確だ。それは全農林警職法事件判決の補足意見でも指摘されていることであり、労働基本権制約の合憲性根拠の最大のよりどころが代償措置の存在が画餅に帰さないということである。
  • 国家公務員法第28条は、国家公務員の勤務条件の決定に関して「情勢適応原則」を定めており、「勤務条件の基礎事項は、国会により社会一般の情勢に適応するように、随時これを変更することができる。その変更に関しては、人事院においてこれを勧告することを怠ってはならない。」と定めている。つまり、人事院勧告は、国家公務員の給与を「社会一般の情勢に適応させるべく勧告しているもの」であって、引き下げ率が上回っているからよいということにはならない。国家公務員法第28条の規定の趣旨は、あくまで、国家公務員の勤務条件を「社会一般の情勢に適応するようにすること」であり、それは人事院勧告の水準であって、それをはるかに超えた給与臨時特例法案は、国家公務員法第28条に違反した法案だということは明らかだ。

 それに対し、総務省側は「人勧に対する立場、特例法成立の経緯、代償措置画餅論に関する解釈に関しての政府の立場を説明したい」として、以下のように再回答しました。

  • 特例法に関しては、残念ながら国公労連と合意には至らなかったが、「厳しい財政事情および未曾有の東日本大震災に対処する必要性から一層の歳出削減が不可欠」と法案に目的が書かれている(総理大臣談話も同様)。改めてその点と法案の早期成立に努力しなければならない政府の立場に理解を求めたい。一部の組合との合意で決めたというが、これはやむを得ない事情により緊急・臨時的な措置でやるものであり、関係方面との真摯な話し合いを経た上でやったことであり、一部と合意したから提出したのではないと心得ている。
  • 特例法には国難ともいえる今の状況への思いが入っている。内枠論は単純に内・外というつもりはなく、震災対処のための特例措置として7.8%が大命題であり、それからみると0.23%も内数と考えることもできる。内枠の意味するところについては、今後法律的な検討も含めて精査する。
  • 今回の措置は過去の判例との関係でも整理しているつもりだ。財政事情の認識、あるいは判例の解釈は組合といささかちがうようだ。我々は人勧制度尊重の基本方針は堅持しつつ、財政上の必要性、措置の臨時性の議論から判断した。法案は現行制度の人勧尊重は当然の前提に立ちながら、東日本大震災への対処の必要性と平成25年度末までの限定(臨時性)、それに加えて職員に応じた縮減率(5%、8%、10%)を考えており、一定の合理性があると考える。また一部組合との合意ではなく、真摯な話し合いの手続きをとったことも含めて、過去の判例に照らして憲法違反の指摘は当たらないと考える。
  • 平成25年までの制限措置であり、人勧については来年度以降もその内容を真摯に検討し、国政全般との関連も含めて総合的に勘案して判断する。3年間何もしないとは言っていない。各年ごとの勧告への対応は今年と変わらない。

 これに対し、宮垣委員長は「国公法28条は公務員の勤務条件は随時変更できるが人事院はそのための勧告を怠ってはならないとしており、人勧が情勢適応の前提だ。0.23%を超える7.57%は人勧とは無関係だ。真摯な話し合いをしたというが、片山前総務大臣も自立的労使関係の先取りといった以上、先に公務員制度改革関連4法案を通してからやるべきだ。代償措置としての人勧制度が画餅と等しくなるとすれば憲法28条に抵触することは全農林警職法事件最高裁判決の補足意見や学説でも明らか。給閣の方向性はその点からいってもきわめて不満だ。非常勤職員の処遇改善などその他の回答についても全般的に不満なもの。限られた人員で国民の安全・安心のため行政サービス提供に懸命に努力している職員の声を真剣に受け止めるなら、賃下げより改善が求められる。改めて特例法案の撤回を求める。今後給与閣僚会議で検討して決定するというなら次回は大臣との交渉を求めたい」と強く主張しました。
 総務省側は「政府としての立場を理解していただけなかったのは残念だ。組合の主張は改めて受け止め、交渉については政務とも相談したい」とだけ回答しました。


以上 


 
 
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