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国公労連速報 2011年3月9日《No.2493》
憲法原則をふまえた労働基本権の回復こそ重要
「全体像(案)」の自律的労使関係制度の部分をめぐって交渉
     
 

 

 全労連公務員制度改革闘争本部(以下、闘争本部)は3月8日、過日示された公務員制度改革の「全体像(案)」をめぐって、国家公務員制度改革推進本部事務局(以下、推進事務局)と交渉しました。

 この日の交渉では、「全体像(案)」のうち、労働協約締結権回復など自律的労使関係制度にかかわる部分を中心に追及し、推進事務局の見解を質しました。以下、1時間以上におよんだ交渉のポイントにしぼって報告します。

 争議権のすみやかな回復にむけて検討体制を整備せよ

 推進事務局との交渉には、闘争本部から、黒田事務局長、猿橋(自治労連書記長)、北村(全教書記長)、岡部(国公労連書記長)、瀬谷(国公労連中執)の各闘争委員、自治労連から柴田副委員長、全教から米田中執が参加し、推進事務局は、笹島審議官、村山参事官ほかが対応しました。
 黒田事務局長は、「3月3日に提示された全体像(案)について闘争本部として検討をすすめてきた。全体像(案)は多岐にわたるが、本日は、そのなかで自律的労使関係制度の部分に絞って見解を求める」とのべて交渉に入りました。
 はじめに、争議権について、全体像(案)では「団体交渉の実情」や「国民の理解の状況」を勘案して検討するとしていることに対して、闘争本部から、「時間を置かずに検討をすすめるべきであり、ILO勧告もふまえた検討体制の整備が必要だ」と求めました。
 推進本部側は、「どのような点に着目して判断を下すべきかを明確化したうえで、今回の改正法施行後に政府としての主体的な検討姿勢を示すことができるものと考えている。検討体制については、みなさんの意見も聞きながら検討していきたい」とのべました。

 公務員庁で人事行政の公正性が確保できるのか

 新たに設置される人事公正委員会の設置について、「人事院が政府から独立した中立な機関として、人事行政の公正確保のために果たしてきた役割をいかに引き継いでいくのか」と質したことに対して、推進事務局側は「人事院は廃止されるが、独自の規則制定権を有する独立性の高い委員会として人事公正委員会が設置される。職員に関する人事行政の公正を確保するために必要があると認めるときは、人事行政の改善に関して、関係大臣その他の機関の長に勧告することができるほか、公正確保の観点から法令の制定改廃の意見申し出も可能としている」とし、公正性は確保できるとしました。
 これに対して、「全体像では、職員の採用試験、任免などは公務員庁がおこなうとしているが、公務員庁が政府機関である以上、政治の思惑が入り込むことも考えられる。たとえば、政治による恣意的任用がまかり通れば、公正性をそこなうことになる。憲法で定める『全体の奉仕者』という面からも問題だ。政府から独立した第三者機関がおこなうべきだ」と指摘すると、笹島審議官は、「自律的労使関係制度のもとでは、任用や分限などのルールは労使間で決めることが基本だ。人事公正委員会がそれらを決めるとなると、使用者側も労働組合側も手を出せなくなる。公務員庁が担えば、労働組合のチェック機能も働かせ、オープンに議論していくことができる」と主張しました。
 闘争本部側は、「これまでの人事院の役割が、使用者機関である公務員庁に移りすぎている」と追及すると、笹島審議官は、「たとえば任用と給与をどこで切り分けるのかは難しい話だ。基本的には、労働組合も使用者も意見を言える仕組みをつくることが重要であり、労使関係の中で公正さを確保する努力をすべきであり、丸ごとすべてを人事公正委員会に任せることにはならない」とのべました。

 「管理運営事項は交渉できない」と法定化すべきではない

 管理運営事項を「交渉できない事項」としている点について、これを法定化しないよう求めましたが、推進事務局側は「行政機関がみずからの判断と責任において処理すべき事項として、管理運営事項は交渉対象にはできない旨を引き続き法定することが必要だ。なお、管理運営事項の処理によって影響を受ける勤務条件は交渉対象となる」としましたが、労使が任意の意見交換をおこなう場として、「労使協議制」を労使の合意によって運用上設けることは妨げていないとの見解も示されました。
 これに対して、「現在でも、管理運営事項であることを理由にした交渉拒否がしばしば起きている。労働条件にかかわらない管理運営事項であっても、労使間で意見交換することは有益だ。より良い行政をめざす方向となるのではないか」と質すと、笹島審議官は、「交渉事項が明確化されることにより、これまでのような交渉拒否はなくなっていくと考える。指摘のように、労使協議制は意義のあることだ。労働組合側からどんどん積極的に提案し、当局もそれに耳を傾けることが必要だ」とのべました。
 さらに、勤務時間内の労働組合活動について推進事務局は、「所轄庁の長は、適法な団体交渉に参加することについて申請があった場合、公務の運営に支障がないと認めるときは、これを許可する旨を法定化したい」としましたが、闘争本部側が、「『公務に支障がある場合』とはどんな場合なのか。勤務時間である以上、公務に支障をきたすことを理由に、所属長が交渉を拒否する事態も起こりうる。その場合は不当労働行為にもなるのではないか」と追及すると、「どのようなときに支障があるかは、使用者の判断となるが、使用者側は、労働組合の活動に不当に干渉する意図で許可の是非を判断することはできないものである」とし、「とにかく、これまでは法律にはなかった勤務時間中の交渉を、法律として定めることに意義があると理解いただきたい」と回答しました。
 このことに関連して、闘争本部が「『適法』であると誰が判断するのか。散見される『適法な団体交渉』という規定は特労法でも見られないものであり、なぜ『適法』である必要があるのか、この部分ははずすべきだ」とせまると、推進事務局側は、「あくまでも法律上の話であり、いままでやってきたこと以上に規制を加えるという意図はまったくない。自律的労使関係制度のもとで、誰と誰が責任者かをはっきりさせるために入れている」と回答しました。
 これに対しては、闘争本部側が、「制限は可能な限りはずすべきだ。協約締結権が回復されたからと言って、これまでとまったく違う交渉をするわけではない。この間、使用者側に説明責任があることが強調されてきたが、労働組合側にも住民に対する説明責任は持っている。その点で、今回の制度は、使用者側からだけの手続きをきめているというイメージが残る」と指摘しました。

 「構成員の過半数」など労働組合の要件を厳しく定めるな

 労働組合の認証の要件について、闘争本部側からは、「事前に中央労働委員会の認証を求める制度は導入すべきではなく、とくに『構成員の過半数』とする要件は法定化すべきではない」「認証の要件として、公認会計士等の監査証明など、これまでの職員団体登録要件にもなかったことが入っており、職員団体制度よりもさらにハードルが高くなる」「中央労働委員会は、認証された労働組合に対して報告または資料の提出を求めるとしているが、これでは、認証をうけるために必要な要件が無制限になってしまう。この部分は法案からはずすべきだ」と追及が集中しました。
 推進事務局側からは、「労働側当事者としての適格性を判断するうえでは、職員の意見が交渉団体によって適性に代表されていることが必要であり、その観点からは構成員の過半数が職員であることが不可欠であり、そうした要件を設けている。ただし、この要件は、団体の設立や活動の自由までを制約するものではない」と趣旨がのべられ、また、笹島審議官は、「法案からはずすべきとの指摘があった部分については、『必要な限度において』と明記している。交渉団体としてはこれまで通り結成できるし、規制しようなどとは考えていない。ただ、法律や制令の改定にもかかわる協約を結ぶうえでは、労働組合としての責任も求められ、カウンターパートとしての労働組合の要件を定める必要がある」と加えました。
 この間、問題点を指摘してきた法律・政令にかかわる協約の「内閣による事前承認」に対して、闘争本部側が、かさねて「交渉議題に権限を持っている者を指定して全権委任を与えるべきだ」と求めると、「内閣により法律案の提出や政令の制定改廃が確実におこなわれることを制度的に担保するための措置であり必要だ」との回答を繰り返すにとどまりました。
 また、中労委の仲裁裁定にもとづく法案提出・政令の制定改廃を「努力義務」ではなく「実施義務」とするよう求めると、「中労委の判断であり、内閣にとっては努力義務としかならない。しかし、中労委の決定は重いものであり、尊重されなければならないのは当然だ」とのべました。

 地方公務員の協約締結権回復にむけては総務省との間で協議

 全体像(案)では、地方公務員の制度確立にむけて、「関係者の意見も聴取しつつ、国家公務員の労使関係制度に係る措置との整合性をもって、速やかに検討を進める」としています。これにかかわって、闘争本部側は、「今回の法案策定と距離を置かず検討をすすめ、地方公務員も早期に協約締結権を回復すべきだ」と求めたことに対して、推進本部側は、「全体像(案)が推進本部決定された暁には、地方公務員制度の所管省である総務省において、地方公共団体の首長・議長、職員団体等の関係者の意見を聴取していくものと理解している」との考え方を示しました。
 これらのやり取りののち、黒田事務局長は、「改革素案が示されてほぼ2月半が経過するが、今日のやり取りを通しても、なお主張の隔たりはある。また、交渉事項の法案や政令の仕分けについても現時点では不明だ。こうしたことから、引き続き全労連闘争本部との十分な交渉・協議をおこなうよう求める。重ねて指摘してきたところだが、憲法原則もふまえて、基本的人権として労働基本権を回復するという観点こそ重要だ。公務の特殊性はふまえつつも、労働者としての権利を保障するという立場での検討を求める」として交渉を閉じました。

以上

 
 
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