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国公労連速報 2008年11月27日《No.2078》
顧問会議「報告」に沿った検討は中止せよ
内閣人事局のあり方をめぐって改革推進事務局に申し入れ
     
 

 

 全労連「公務員制度改革」闘争本部は26日、国家公務員制度改革推進本部の顧問会議(座長・御手洗経団連会長)が発表した内閣人事局にかかわる「報告」をめぐって、公務員制度改革推進本部事務局に緊急の申し入れをおこないました。
 14日に甘利行革担当大臣に提出された顧問会議の報告は、労働基本権回復の議論を棚上げにしながら、基本権制約の「代償措置」としての人事院の役割を後退させ、一般公務員をふくめて給与、任免などにかかわる企画立案の機能を、内閣人事局に移管するとの内容になっています(詳細は、改革推進本部のホームページ参照)。
 このように、「報告」が憲法第28条で保障された労働基本権ともかかわる重大な問題をもっていることから、申し入れでは、問題点を指摘しつつ、政府は「報告」に沿った検討を中止するように強く求めました。

 「報告」を尊重して法案作成作業をすすめる

 推進本部事務局への申し入れには、全労連闘争本部の小田川本部長を先頭に、黒田事務局長、闘争本部委員の野村自治労連書記長・東森全教書記長・岡部国公労連書記長が参加、推進本部事務局は、岡本次長をはじめ、渕上審議官、堀江参事官ほかが対応しました。
 はじめに、小田川本部長は、別掲の「申入書」を提出し、今回の報告の取りまとめは、議論の経過があまりにも拙速であること、現状の公務員制度を前提に検討すべきこと、人事院の機能の一部を内閣人事局に移管するなどとした部分は全面的に撤回することなどを申し入れたうえ、「報告」の性格や今後の取り扱いについて質しました。
 岡本次長は、「全労連からの申し入れはうけたまわった。今回の報告は、顧問会議が有識者としての意見を甘利担当大臣に提出したものだ。この報告を尊重しつつ、大臣が関係各方面と協議して、取り扱いを政治的に判断することとなる。今後のことはこれからであり、何をやるのかを決定したわけではない」と回答しましたが、小田川本部長が「顧問会議が確認した以上、拘束力が出てくるのではないか」と質すと、「尊重する以上、まったく違うことをはじめる訳にはいかない。今後の法案作成作業にいかしていくこととなる。ただし、その過程では、みなさんとも十分な協議が必要だ」とのべ、「報告」にもとづいて内閣人事局の設置法案などが検討されていく方向性を明らかにしました。

 労働基本権を棚上げにする議論は認められない

 こうした考え方が示されたことから、小田川本部長は、「報告で示された内閣人事局の機能は、労働基本権ともかかわってくる。その議論を棚上げにするならば、憲法上の問題がでてくる」と厳しく迫ると、岡本次長は、「労働基本権制約のもとで、どこまで内閣人事局ができるのか、現行の枠内で議論されたものだ。時間の制約があるなかで議論して取りまとめたもので、次に何ができるのかは、次の判断となる」とのべつつも、「2001年からの公務員制度改革議論で解決できなかったことを、これから解決していかなければならない。それを基本法が求めている。憲法上の問題も議論すべきであり、その点でみなさんと協議すべきだと考える」とのべ、「報告」が憲法とも関わる新たな方向に踏み出そうとしていることも否定しませんでした。
 これを受けて、小田川本部長が、2001年からはじまった政府の「公務員制度改革」が、労働基本権の制約維持を前提としてきたために、ILOから度重なる是正勧告も出され、頓挫した経過を示し、「基本権を棚上げにした改革議論を、ふたたび繰り返すのか。並行して、労使関係制度検討委員会で、労働基本権回復にむけた議論をきちんとすすめるべきだ」と強く求めました。

 検討過程では労働組合との話し合いを約束

 岡本次長が、「基本法で決められたスケジュールがある。来年の通常国会に内閣人事局の設置法案を提出する必要があり、労使関係制度検討委員会の結論を待つのではなく、先行して議論すべきと考える」とし、「議論の過程でみなさんと意見交換する」と繰り返しました。
 野村書記長は、「顧問会議の報告をそのまま議論していけば、憲法との関わりがいろいろでてくる。公務員制度改革における従来の懸案もそこにあったはずだ。その懸案を十分に考えて次にすすむべきだ。今回の報告はあまりにも拙速だ」と指摘しましたが、岡本次長は、「労使関係制度検討委員会の議論に先行してやっている。その点で、どこが憲法(労働基本権)との関わりがでてくるのか、また、何が憲法に関わらず法案化できるのかよく議論していく必要がある。憲法上の問題を無視してまで議論できないのは当然だ」との考え方を示しました。
 これらのやりとりの後、小田川本部長が、「公務員制度改革には、国民的な議論が必要だ。労働組合と十分に話し合うことをふくめてオープンな議論を求める」と申し入れたことに対して、「今後、来年2月か3月頃に通常国会へ提出するために作業をしていく。節目ごとに、こうしてみなさんの話を伺うこととなる」とのべ、労働組合と協議していくことを重ねて表明しました。

以上


2008年11月26日
国家公務員制度改革推進本部
 本部長 麻生太郎 殿
全国労働組合総連合・公務員制度改革闘争本部
本部長 小田川義和

公務員制度改革にかかわる申し入れ

 さる11月14日に開催された国家公務員制度改革推進本部顧問会議において、公務員制度改革基本法の具体化とかかわる「論点整理に関する報告」(報告)が取りまとめられました。公務員労働者を組織するとともに、2001年以来、政府が進めてきた公務員制度改革に深くかかわってきた労働組合として、その「報告」は到底容認できない内容です。検討経過も極めて拙速で、国民生活にも直接的に影響し、公務員労働者の基本的人権とかかわる制度検討としては極めて問題です。
 したがって、「報告」にもとづく「内閣人事局」の具体化作業はおこなわず、あらためてすべての関係者との協議を尽くした制度改革をおこなうべきです。
 その点を強く申し入れ、貴職の誠意ある対応を強く求めます。
 以下、「報告」に対する当闘争本部としての主要な問題意識を申し述べます。

1 議論の経過はあまりにも拙速である
 (1) 明らかにされている「報告」のとりまとめ論議の経過等は、ワーキンググループが設けられ、1)約1カ月の間に集中した論議おこなわれていること、2)その間関係者からのヒアリングなどは一切おこなわれていないこと、3)論点の多くで、対立する意見があったにもかかわらず、「報告」は一方の意見に偏重した結果となっていると思われること、などが指摘できる。
 (2) 例えば、内閣人事局の機能とかかわって、その権限と労働基本権との調整(人事院の「代償措置」を含む)や、公務員の中立性、公正性を担保する第三者機関の機能と役割などは、2001年に政府が公務員制度「改革」に着手した以降の中心的な争点であった。それは、いずれもが、憲法条項に直接かかわる争点であり、これまでの公務員制度改革論議が紆余曲折した要因でもあったと考える。
 (3) しかし、明らかにされている議論経過からは、それらの点でのふみこんだ検討が伺えず、結論ありきの議論経過とも受けとめざるを得ない。
 公務員制度は、単に公務員の人事管理法ではない。国家行政法などとも一体で、行政の本質ともかかわる基本的な法制度である。そのことからしても、議論は拙速かつ不十分である。

2 現行の国家公務員法の「改正」であることを確認した検討を行うべきである
 (1) 先の国会で成立した国家公務員制度改革基本法は、国家公務員制度改革の基本理念及び基本方針を定めたものであるが、その第12条で公務員全体にかかわる労働基本権問題を取り上げ、自律的労使関係の措置に言及しているように、現行制度を前提とした改革であることを確認すべきである。
 (2) 現行制度は、憲法第15条(公務員の本質)の具体化を基本に、政権の交代を前提とした上での公務員の公正性、中立性の確保について任用、分限の諸規定を整備している。そのこととかかわって、独立性の強い人事行政機関が公務員法を根拠に設置されている。また、人事行政にかかわる機関として、国会(議会)、内閣総理大臣、各府省大臣の機能と権限が規定され、他の憲法条項との調整をはかっている。
 さらには、公務員が労働者であることを基本に、労働基本権との調整を図るため、人事院の勧告制度などが規定されている。
 このような全体の枠組みまで変更し、白紙からの公務員制度改革の検討を行うことを今回の基本法は想定していないはずである。
 (3) しかし、「報告」の「3.内閣人事局の担うべき機能組織のあり方について」の部分をはじめ、「2-3 定年まで勤務できる環境の整備」、「2-4 幹部職員の任用・給与の弾力化」などで言及されている内容は、内閣総理大臣の機能と権限強化のみに重点がおかれ、その余が十分に斟酌されているとは受けとめられない。
 例えば、「内閣人事局」が給与制度のPlan機能を担うとした場合の労働基本権上の問題は極めて根本的な課題であるにもかかわらず、第三者機関のCheck機能で「代償措置」足りうるとしていると思える点などを指摘できる。付言すれば、この点は、ILOがこれまで日本政府に行っている諸勧告とも整合しておらず、国際的に認知されている国際労働基準のレベルから遠ざかる検討方向でもある。
 (4) 労使関係の一方の当事者である内閣総理大臣の権限を強化するには、一方で、公務員労働者の労働基本権回復が不可欠であることや、公正性、中立性を担保する第三者機関による事前、事後の規制や、国会による監視機能の強化が必要であること、さらには、各府省大臣の権限縮小を伴うものであることなどは、現行制度を前提とした改革論議であれば当然の帰結である。そのことを重ねて指摘する。

3 「内閣人事局の担うべき機能及びその組織の在り方について」は全面的に撤回されるべきである
 幹部職員等の一元管理について、「報告」で言及されている内容には、先に述べた点と重複する問題点や、特権官僚を制度化し、公務員制度に身分制度が復活することを強く懸念する。その点での、国民的な論議が尽くされることを強く求める。
 全労連としても、なお詳細な意見を述べる意思のあることを付言する。
 「報告」のもう一つの柱である「内閣人事局」の機能等については、全面的な撤回を求める。この「報告」をもとにした論議を行うことには絶対反対である。

【※「公務員制度改革」闘争ニュースNo.69. 2008年11月26日付(発行=全労連「公務員制度改革」闘争本部)より転載】
以上


 
 
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