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 国公労連速報 2011年7月25日《No.2595》
 科学・技術政策と研究機関見直しで
 内閣府・総合科学技術会議に要請
     
 

 

 政府が「第4期科学技術基本計画」を来月に策定しようとするなか、国公労連は7月20日、学研労協とともに、科学・技術政策と研究機関の見直しに関わって内閣府に要請をおこないました。国公労連は瀬谷行革対策部長、学研労協は池長議長を責任者に研究機関労組の代表ら7人が参加し、内閣府からは科学技術政策・イノベーション担当の工藤企画官と上野参事官補佐が対応しました。
 冒頭、瀬谷行革対策部長から「科学・技術政策と研究機関の見直しに関わる要請書」(別添)の趣旨を説明した後、内閣府・工藤企画官から要旨以下の発言がありました。

 要請書にある研究機関の見直しについては、我々が検討している内容とオーバーラップしている。現在の検討状況は、各研究独法と関係省庁に意見を聴いている段階だ。震災の前後から我々のチームで、各研究独法の理事長や経営陣に意見を聴き、対象の38研究独法のうち36まで意見を聴いた。38という数字は研究開発力強化法にあげられている研究独法のことで、意見を聴けていない2つは、沖縄にあり大学の機関に移行することが決まっている機関と放医研だ。ご存知のように放医研は福島原発事故の対応が理由だ。
 今後、出された意見を集約し、制度見直しにつなげていきたいと考えているが、独立行政法人全体の制度見直しを行政刷新会議が進めており、それとの調整があるため今後のスケジュール等は不明だ。我々は科学技術政策の観点で進めているが、行政刷新会議や財政当局は行財政改革の観点から検討を進めており、それぞれの一致点が研究独法の制度見直しをめぐってどう具体化されるかまだ見えない状況にある。
 予算や人員の問題についても、我々はあくまでも科学技術政策の観点から予算や人員を増やすべきだと考えており、みなさんの考えと同じ立場で財政当局に要請している。
 要請書の中に国へ戻すべき研究機関もあるとしているが、科学技術政策の観点からは疑問だ。行財政改革の観点には一部を国へ戻すというケースも考えられているが、現在の独法制度に様々な問題はありつつも組織変更の柔軟性や予算の繰り越し執行ができる自由度の高さなどはあるわけで、研究の成果を最大に引き上げて国民生活に寄与したいという我々の観点からすると、この部分については有益な仕組みであるから国に戻すということにはならないのではないか。各研究独法からの意見も、今の独法の自由度や柔軟性は保った上での制度改善を要請されている。
 選択と集中の問題や、基礎研究の問題は、各省の考え方次第ではないか。我々としては基礎研究を重視したいところも、応用研究を重視したいところも、それぞれの考え方次第で自由にできるような制度設計をはかっているという立場だ。
 研究開発業務に弊害をもたらしている画一的な競争入札制度については改善をはかるべく検討しているところだ。
 競争的資金については、それを増やすとただちに運営費交付金、基盤的経費の方に支障が出るという構造にはなっていないが、現実的にはそういう面が出てきていることには危惧をしている。
 国家財政難の中で、運営費交付金を増やすことが困難ななか、我々としては現行の不合理な部分を改善して入ってくるお金は変わらないけれども、その自由度を高めて、より使い安く、余分な規制はやめるようにしようという考えだ。

 以上の発言のあと、要旨次のやりとりがおこなわれました。(※○は国公労連・学研労協、●は内閣府側の発言)

  • ●要請の中にある「防災・安全のために、研究機関の成果が速やかに行政に反映する仕組みを整備すること」というのは具体的にどういうことなのか?
  • ○一例をあげると、東日本大震災が発生する前に、産総研の研究者が貞観地震の大津波の研究成果にもとづいて、福島第一原発の危険性に警告を発していたという事実がある。「想定外」の津波によって福島原発事故が起きたように言われるが、研究機関の研究成果としては「想定内」だった。原発安全神話がまかり通る中で、最新の研究成果がまったく反映されなかった。自らの研究成果が社会に役立つことを願っているのに、たいへん悔しい思いをした研究者からの声でもある。
  • ●私見だが、独法の仕組み上は難しいと感じる。例えば福島原発の安全性評価が研究独法に中期目標で課され、アンサーとして貞観地震で福島原発は危険だということが出てきたとすると、それは研究成果なので大臣が法的に受け取るものになる。当然、受け取った研究成果について何らかの展開を行政側はしなければいけない。ところが、福島原発の安全性評価という形ではなくて、地層の調査という形で課されたときに、貞観地震があったというデータがアンサーになる。そうしたデータから制度として福島原発の安全性評価にまで吸い上げるという形の実現は難しいのではないか。一方で、研究者、科学者個人が知り得た知見によって、国民生活への危険性が高い、安全性に問題があることが分かった場合に、これを吸い上げていくシステムが必要という点では独法の研究者だからとか大学の研究者だからということではないと思う。現在検討中の第4期科学技術基本計画の中でも震災をめぐって指摘されているが、いわゆるアカデミズムなり、研究者が知り得た内容をどれだけの信頼性を持って受け取っていくか、あるいは政策判断に反映していくかというシステムを検討する必要があるというのは基本計画の中にも入っている。この問題は、独法制度とは分けて考えた方が良いと考えている。
  • ○研究機関の運営について、過度なトップダウンでなく、研究現場の意見をボトムアップで反映できる仕組みをつくっていただきたい。
  • ●機関運営については基本的に同じ考えだが、方向性についてのトップダウンという意味合いは残らざるを得ない。行政刷新会議の「事業仕分け」などの議論の中で声高に言われたのは、「大学と同じ研究をなぜやる必要があるのか。研究独法は同じ研究はやめるべき」ということ。これへの反論は2つある。1つはそもそも大学の研究を国家が一方的にコントロールすることはできないということ。競争的資金などで若干の方向づけは可能であるが、それでも大学人を本質的に国家が完全にコントロールしていくというのは制度矛盾だ。2つは全国各地に200以上ある大学は森羅万象について何らかの研究をおこなっており、これと重複を避けることは現実的に不可能だということだ。研究独法は、国家が必要とする研究を中期目標として立て、研究独法側が中期計画をつくることでコミットしていくシステムにより、国のやって欲しい研究をやってもらう存在だ。大学で研究がやられていればいいということにはならない。
  • ○研究機関の評価についてはどうか。
  • ●評価システムの問題も、各研究独法からの意見が多い課題だ。現状は素人がわかりやすいだけの評価システムになってしまっている。素人にもすぐわかる数字だけが問われ、行財政改革的な観点で入札率の数字やムダをはぶく執行率、インパクトファクターなどの数字だけが目立ってしまっている。そうではなくて、研究成果を理解できているところできちんと評価できるシステムをめざしたいと我々も考えている。組織および事務・事業の整理・統合については、我々が考える範囲ではない。
  • ○独法の制度上の問題であるか、運用上の問題であるかという点もあるが、現実は運営費交付金の削減に次ぐ削減で研究独法は汲々としているし、人件費削減が続くなかで不安定な雇用条件に置かれるポスドクや任期付研究員などを入れなければ回らないような状況にもある。ポスドクを使い捨てにしてしまうけれども短期で成果を出さなければならいような現状だ。独法の法制度としては可能だけれども現実の運用の実態としてはそうはなっていない。
  • ●制度としては賃金に関して独法内で判断でき法律上は何も縛るものはないことにはなっているが、国家財政難により財源がますます足りなくなってきているなかで、すべての人間をパーマネントで雇用するのは非常に難しいのが現状だ。
     第4期基本計画の決定が震災で当初の3月から来月へとなったが、こうした状況は、震災前後でも変わっていない。パッチワーク的に安全・安心が強調されてはいるが、だからといって研究予算や人員が抜本的に増えるという状況にない。しかし我々が本丸だと思っているのはやはり人員の問題で、ここをなんとかしたいと考えている。そもそも研究自体は人がおこなうものであり、その人のところを毎年1%ずつ削減していくということは、研究機能そのものが毎年失われていくということだ。みなさんが指摘されているように研究機器や施設などがあってもそれを使える人がいないということになる。総人件費削減の枠外にすべきだと我々は考えているが、財政当局の考えもあり、基本計画に入れることができない状況にある。
  • ○研究業務に支障をきたしている画一的な競争入札制度は改善してもらいたい。また、大震災で大きな被害を受けた研究独法は、運営費交付金からの持ち出しが大きな負担になっている。復旧への尽力をいただきたい。
  • ●行革推進室と公共サービス担当のところで入札制度について改善しようと、先日、すべての独法の経理部長を集めてすでに2回目の会議を開催している。研究独法の枠組みからではないが改善していく方向だ。
     運営費交付金については、同じアウトプットを出しながらもコストは年々低くなっていくという独法制度の中にあるわけだが、研究は違うと我々は考えている。だから、そうした独法制度から抜け出る研究機関の新しい制度が必要だと考えている。大言壮語はできないが期待いただき、協力もいただければと思っている。研究機関の制度見直しは、我々としてはなるべく急ぎたいと考えており、研究開発力強化法の措置期限の今年10月までには何らかの方向性を出したい。

 以上のやりとりの後、最後に学研労協・池長議長が、「行政刷新会議などとの調整を踏まえて新しい制度設計が今後具体化されるだろう。今後もその進捗状況の説明とともに我々との意見交換の場を引き続き持っていただきたい」と述べ、要請を終えました。

《別添》

2011年7月20日

総合科学技術会議議長 菅直人殿

日本国家公務員労働組合連合会(国公労連)
中央執行委員長 宮垣 忠
筑波研究学園都市研究機関労働組合協議会(学研労協)
議  長    池長裕史

科学・技術政策と研究機関の見直しに関わる要請書

 3月11日に起きた東日本大震災における、科学者・技術者および国立研究機関の社会的責任が問われています。
 日本国家公務員労働組合連合会(国公労連)と筑波研究学園都市研究機関労働組合協議会(学研労協)は、6月17日に「震災復興と持続可能な社会をめざして〜国立研究機関の社会的役割を考える〜」をテーマに第29回国立試験研究機関全国交流集会を開催し、今回の大震災に研究者・技術者としてどう向き合うのかについて活発な意見交換を行いました。参加者からの「科学技術は業績を上げるためにあるのではなく、国民の生活のためにある」という意見は私たちの依拠する原点を示すものです。基礎研究を切り捨てる「重点化」ではなく、人員・予算体制の充実や国立研究機関の社会的役割について国民の理解と支持を広げていくことが重要であると考えます。
 第4期科学技術基本計画の策定にあたり、大震災の経験等を踏まえ、防災対策をはじめとした国民生活、社会経済の安定・向上に資する計画が確立されることが国民の願いであり、また現在すすめられている独立行政法人の組織・制度の見直しについても、同様のことが求められています。
 つきましては、私たちは全国交流集会の内容を踏まえて下記の通り要請します。貴職が要請について、十分な検討のうえ、実現されるよう求めるものです。

1.科学・技術政策に関わる要請

  1. 科学・技術政策策定は、長期的視野に立って行うこと。
  2. 重点分野だけでなく、基礎・基盤的研究を重視すること。
  3. 「人材育成」に対し積極的な資源の投入を行い、基礎・基盤研究と人材育成を「車の両輪」として推進することを政策として位置づけること。
  4. 政策決定にあたっては、研究現場の意見を反映させること。
  5. 総合科学技術会議の意思決定過程を透明化し、政府として国民の理解と支持を得るための説明責任を果たすこと。
  6. 東日本大震災の経験等を踏まえて
    @震災からの復旧・復興とともに、今回の地震・津波・原発事故による被災のメカニズムを科学的に十分検証し、国民の生命を第一とした防災の国づくりを推進する基礎・基盤研究をすすめること。そのための人員と予算を確保すること。
    A2次災害防止や余震の調査観測の強化、原発事故に伴う被害を防止するための調査観測の強化をはかること。
    B原発依存からの脱却をめざしたエネルギー転換の技術開発をすすめること。
    C風評被害等に対する国民への正確な情報発信と説明責任を明確にすること。
    D研究機関の耐震構造の点検と建物・設備被害の速やかな復旧をおこなうこと。併せて被害復旧に際して、安易な事務・事業の整理・統合をおこなわないこと。

2.研究機関の見直し等に関わる要請

 独立行政法人の見直しにあたって、国民生活や社会経済の安定・向上に資する事務・事業については、国の責任で財源措置を含め存続・拡充をはかることを基本とすべきです。
 また、見直しを通して、国として直接運営した方がより高い公共的見地から貢献できる事務・事業については国の行政機関に戻すべきです。
 なお、研究開発法人について、国に戻せない場合には、事務・事業の重要性を踏まえ、確実に目的を達成するための新たな制度を創設すべきと考えます。

  1. 研究機関の事務・事業について
    @「選択と集中」の論理ではなく、基礎・基盤的研究など裾野を広げながら先端的研究の進展も図るという立場で見直し・検討を進めること。
    A防災・安全等のために、研究機関の成果が速やかに行政に反映する仕組みを整備すること。
  2. 予算について
    @研究開発法人等に必要な研究予算を充分確保し、運営費にかかわる賃金の抑制を行わないこと。
    A予算の年度繰り越し制度を実効あるものとし、年度当初からの予算執行を可能とすること。
    B研究開発業務に弊害をもたらしている画一的な競争入札制度はやめること。
    C競争的研究資金の研究予算全体に占める割合を引き上げず、基礎研究に対する研究費の大幅増額を実現すること。
  3. 人員について
    @人件費の抑制による人員削減ではなく、必要な増員を行うこと。
    A支援業務に従事する職員については、長期的視野に立った適切な補充と育成を行うこと。
    B非正規職員の研究労働条件を抜本的に改善して、正規職員との待遇格差を解消し、若手研究者が長期間にわたって不安定な雇用条件(ポスドク・任期付研究員)におかれている現状を改善すること。また、パーマネント化を進めること。
  4. 研究機関の運営と評価について
    @運営においては、過度なトップダウンを求めるのではなく、ボトムアップにより研究現場の意見を反映させる仕組みをつくること。
    A研究機関の評価においては、研究開発独立行政法人にマッチした評価基準で評価すること。評価は研究内容が理解できる機関に任せること。
  5. 組織および事務・事業の整理・統合について
    @研究機関および事務・事業の強制的、画一的な統廃合は行わないこと。
    A研究分野の統合、研究機関の統合、省庁を超えた統合などの検討を行う場合は、十分な時間をかけて、当事者を含めた幅広い意見を踏まえること。
    B研究支援部門の削減を行わず、研究機関の適正規模を踏まえた支援部門の配置を行うこと。

以上

 
 
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