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国公労連速報 2010年12月24日《No.2468》
 推進事務局が示した「たたき台」の問題点を追及
 ――自律的労使関係制度に関する「改革素案」をめぐって交渉
     
 

 

 全労連公務員制度改革闘争本部は22日、12月8日に示された「自律的労使関係制度に関する改革素案(たたき台)」にかかわって、公務員制度改革推進本部事務局と交渉しました。
 闘争本部側は、憲法やILO勧告にもとづいて、基本的人権としての労働基本権の回復という観点からの労使関係制度の整備を求めつつ、「たたき台」の各項目にかかわる問題点を指摘し、推進本部事務局の見解を質しました。

 基本的人権保障の観点をふまえた検討を求める

 推進本部事務局との交渉には、全労連闘争本部からは、黒田事務局長、瀬谷闘争委員、国公労連から秋山書記次長、全教から蟹沢中執、自治労連から松本中執が参加し、推進本部事務局は村山参事官ほかが対応しました。
 はじめに黒田事務局長は、「提示された『たたき台』をふまえて、闘争本部として検討し、主な意見を取りまとめてきたところだ。それらを中心にして、事務局としての考え方を示していただきたい」とのべ、回答を求めました。
 村山参事官は、事前に提出した別添の各項目にそって、主に以下のように回答しました。

 1、自律的労使関係制度構築の目的について

  •  ILOからの勧告は理解している。その上で、国民の理解のもとに自律的労使関係の確立をはかるには、効率的で質の高い行政サービスの実現を第一義的な目標として掲げた。

 2、協約締結権を付与する職員の範囲、団体交渉の当事者について

  •  刑事施設職員への団結権付与については、刑務官には逮捕権や武器使用の権限がある。ILO87号条約では「軍隊及び警察に適用する範囲は、国内法令で定める」とされており、刑事施設職員は、「警察」にふくまれると解釈され、団結権が制約されてきている。この考え方は、変更すべきではない。
  •  交渉団体の要件については、前提として、労組法を完全適用することにはならない。民間のように、団体交渉のたびに審査したのではコスト面から問題ある。労組側も自律的労使関係制度から責任も重くなり、あらかじめ適格性を証明すべきと考える。また、そのことは結社の自由原則にも違反しない。
  •  資格審査については、法律面よりも運用面の問題であり、申請書にもとづく書面審査を基本にしたものを検討していく。構成員の過半数が職員であることを要件とするが、「職員」とは、現在の職員の定義で考えている。
  •  交渉団体は、省庁を超えて組織することを妨げるものではなく、また、少数組合であっても要件を満たせば団体交渉は可能であると考えている。その場合の協約締結内容については使用者機関が責任を持っておこなう必要がある。

3、団体交渉対象事項について

  •  管理運営事項の取り扱いについては、現行と変えないことが基本だ。管理運営事項は交渉対象事項とならないが、その処理によって影響をうける勤務条件は交渉対象事項となる。団体交渉応諾禁止事項は、労使関係制度検討委員会では論議があったが、法律上明記することは考えていない。
  •  国の事務の管理および運営に関する事項は、団体交渉の対象とはしないが、任意の意見交換は妨げるものではない。
  •  共済や宿舎などは、公務員庁(仮称)との交渉ではなく、所管官庁との交渉するのが効率的と考えている。また、勤務条件性があるものとないものがあるのではないか。

 4、団体交渉システムについて

  •  「団体交渉の打ち切り」は、現行の国公法108条の5でも規定されている。労使間の最低限のルールとであり、懸念しているような使用者が一方的に交渉を打ち切るということにはならない。
  •  在籍専従期間の上限は、法律で定めることが適当と考えている。専従期間についても、現行の7年間で考えている。
  •  不当労働行為は、特定独立行政法人等の労働関係に関する法律(特労法)と同等の措置で検討したい。救済や制裁の措置についても、労働組合法をベースに引き続き検討していきたい。
  •  「労使関係の透明性の向上」は、最低限のルールが必要であり、そのことが労使関係の健全化にもつながっていく。議事概要と協約内容の公表を考えているが、そうしたルールを法律で定めるかどうかは、今後、引き続き検討していく。

 5、 勤務条件の決定原則等について

  •  民間賃金の実態調査・把握は、自律的労使関係を考えた場合、使用者機関が国民に対する説明責任を果たしていくために必要である。民間賃金の調査は実施するが、当然ながら賃金・労働条件は、最終的には交渉で決めるものであり、調査結果だけにもとづいて決定されるものではない。
  •  調査方法については、さまざまな意見もあり、今後、具体的に検討していきたい。法律に盛り込む事項ではなく、運用面の問題と考えている。

 6、勤務条件の設定に係る基本的な考え方及び団体協約の効力について

  •  法律で定める勤務条件は、国権の最高機関である国会の審議権と自律的な労使関係との間で相互にかかわりあう問題であり、法制的な面もふくめて検討が必要である。団体協約にもとづく勤務条件は、非組合員にも影響がおよぶことから統一的な基準として法令化すべきと考えている。そのことは、行政の能率性や国民への説明責任からも必要である。
  •  内閣の事前承認は、団体協約の内容を確実に実施することからも、制度的に担保するため設けるものである。協約の円滑な実施に結びつき、協約の実効性が高まるのではないかと考えている。

 7、交渉不調の場合の調整システムについて

  •  調整システムは、今後の争議権の議論の方向によって、取り扱いも変わってくる。争議権が制約されているもとでは代償措置としての性格も持っており、特労法を一つの参考にしていきたい。
  •  調整結果の尊重義務については、使用者として当然のことであり、そのことをどこかに明記する必要はないと考えている。また、国会に対して尊重義務を課すことは、三権分立の原則からして不可能である。

 8、協約締結権を付与されない職員の勤務条件の決定方法について

  •  どのような制度をつくるのかは、今後、さらに検討していきたい。また、協約締結権が付与されない職員の労働条件は、統一性を確保する観点から、協約締結権を付与する職員との均衡を考慮する必要がある。第三者による勧告制度は、現実的には難しいのではないかと考えている。

 9、組織体制について

  •  人事行政の公正性を確保する第三者機関については、労使関係の公正性は、設置される公務員庁(仮称)で確保することが、国民への説明責任を果たすこととなる。労使関係になじまないような事項は、専門の第三者機関を設けて処理することとなる。
  •  政治的行為の制限については、国家公務員の政治的中立を確保することから必要であり、第三者機関が規定することは当然のことと考える。
  •  採用試験、研修などは使用者の責任でおこなうべきものと考える。
  •  中労委は特定独立行政法人の事案を扱ってきた実績もあり、そのノウハウを活かせる。地方事務所も活かせるのではないか。新たな機関の創設は考えていない。
  •  中労委へ労使から意見表明できる措置を規定することは考えていない。また、中労委の労働者代表委員をどうするのかなどは、今後、検討していく。
  •  苦情処理委員会については、第三者機関における不服申立ての制度を考えており、設置は考えていない。

 これらの回答をうけて、黒田事務局長は、「立法政策としての自律的労使関係の確立という観点ではなく、基本的人権の保障をまず基本にすえた検討こそ求められる。そのことが明確にされていないために、新たな調整機関の設置に消極的なことなど『コスト論』が見え隠れしている。管理運営事項の取り扱いでは、現行制度のもとでも交渉拒否などの問題が実際に起こっており、新たな労使関係制度のなかでは改善が必要だ。また、『内閣の事前承認』は、労使間の交渉結果が否定されることにもなり、自律的労使関係を阻害する」などあらためて問題点を指摘し、今後とも闘争本部との十分な話し合いを求めて交渉を終えました。

 「改革素案」に対するパブリックコメントを開始

 労働組合など各方面からの「たたき台」への意見をふまえて、推進本部事務局は、「自律的労使関係制度の改革素案」として正式に公表し、広く国民の声を聞くとして、12月24日から年明けの1月14日まで一般からの意見を受け付けています。
 詳細については、以下の国家公務員制度改革推進本部のホームページを参照して下さい。
   http://www.gyoukaku.go.jp/koumuin/iken/index.html


 自律的労使関係制度に関する改革素案(たたき台)への意見

全労連公務員制度改革闘争本部

 1、自律的労使関係制度構築の目的について

 民主的公務員制度を確立するうえでは、戦後間もなく一方的に剥奪された労働基本権の全面回復こそが、改革の最大の重点であることを全労連は主張してきたところである。  その点とともに、公務員労働者の労働委基本権をめぐる様々な論議の経緯をふまえれば、労働基本権の回復は、「自律的労使関係制度」という側面からとらえるのではなく、@基本的人権としての労働基本権の実現、A2001年以降での6度も繰り返されたILOからの「勧告」への適合(グローバル化のもとでの国際労働基準への一層の適合)の2点であることを明確にすべきである。

 2、協約締結権を付与する職員の範囲、団体交渉の当事者について

 (1)「協約締結権を付与しない範囲」に刑事施設職員は含むべきではない。ILO勧告に沿って協約締結権を回復すべきである。
 (2)全労連としては、職員団体制度を廃止し、労組法上の労働組合と同様の取扱いとするよう求めてきた。
 (3)その点から、民間労働組合の労働委員会の資格審査制度を参考にしたとしても、事前の「適格性の証明」などは、その内容によっては事前認可など職員団体の登録制度に近いものとなることが想定され、結社の自由原則から導入すべきではない。
 (4)労組法では、規約の適合性のみが審査の対象とされているように、資格審査の内容については、こうした中労委の審査と同等のものにすべきである。

 3、団体交渉対象事項について

 (1)管理運営事項にかかわって、交渉事項の範囲を制約するための議論に結びつくことを強く懸念してきた。実際に、職場の交渉では、管理運営事項であることを理由にして、交渉を拒否する場合が日常的に見られる。
 (2)勤務条件に関係する限りは団体交渉事項とすべきであることは当然であるが、管理運営事項を使用者サイドに立つ政府が一方的に決定することになれば、交渉の形骸化が避けられない。「管理運営事項」であっても、労働条件に影響をおよぼす事項は交渉対象となることを何らかの形で明確にすべきである。
 (3)労使関係制度検討委員会で議論された「団交応諾禁止事項」についても、法律に明記すべきではない。
 (4)交渉ができずとも、労使間の話し合い(「意見表明」「協議」など)は可能(当局は拒否できない)であることを明らかにすべきである。
 合意(労働協約締結)を目的とする交渉について明確にし、その余の労働条件関連事項についての交渉を認めるべきである。

 4、団体交渉システムについて

 (1)統一的なルールは必要だが、「団体交渉の打ち切り」まで法定すべきではない。使用者による一方的な交渉打ち切りにつながることも想定される。
 (2)勤務時間中の交渉参加による手続きの整備は必要と考えるが、権利として保障する立場から、使用者当局に拒否された場合の救済を検討する必要がある。
 (3)在籍専従制度を引き続き制度化するとしても、現行のように休職専従期間を7年に制限すべきではない。
 (4)不当労働行為についての法制度上の整備を図り、民間の労働委員会制度を参考にして、団体交渉拒否や労働組合運動への支配介入を禁止し、同時に、こうした行為に対する救済制度を設けるべきである。
 (5)「労使関係の透明性の向上」は、そもそも法律で決める事柄なのか疑問がある。一定の公開の措置は必要としても、団体交渉や組合活動を大きく制約しない方向での検討が必要である。

 5、勤務条件の決定原則等について

 (1)民間賃金の実態の調査・把握を、使用者機関と労働組合の双方がおこなうとしているが、労使交渉を左右しかねないものであり、第三者機関による調査が検討されるべきである。
 (2)その際、「コスト」がかかることを前提にして検討すべきではない。その一方で、詳細な調査は必要なく、あくまでも「参考指標」であることを明らかにすべき。

 6、勤務条件の設定に係る基本的な考え方及び団体協約の効力について

 (1)現行のような詳細法定主義はあらため、法定化する事項は、大綱的なものにとどめるべきである。
 (2)団体協約によって統一すべき勤務条件を法令で定めることとしているが、最低基準として位置づければよいのではないか。
 (3)「内閣の事前承認」は、使用者(例えば公務員庁長官)以外の承認が必要となり、労使関係を離れたところで決定(あるいは否決)されていくこととなる。これでは、「自律的労使関係制度」とは言えなくなり、また、そうしたことを理由にして、協約締結を使用者側が拒む理由となるおそれがあり、「内閣の事前承認」は同意できない。

 7、交渉不調の場合の調整システムについて

 (1)「団体交渉が徒に長期化すること」を避けることを目的に、仮に強制仲裁制度が検討されることも考えられる。団体交渉制度や労働協約制度が形骸化するおそれがあることから、強制仲裁制度は導入すべきではない。
 (2)内閣・国会に対し、調整の結果を尊重する義務を入れる必要があるのではないか。
 (3)中労委の「調整結果」に対して、政府及び国会の尊重義務を明記すべき。

 8、協約締結権を付与されない職員の勤務条件の決定方法について

 (1)労働基本権制約の代償措置として、どのような制度をつくるのかは、基本的人権ともかかわる重要な問題である。とりわけ、「コスト」問題にとらわれない検討が必要である。
 (2)その点から、協約締結権が回復しない職員は、たとえ少数であるとしても、第三者による勧告制度が検討されて当然であり、また、職員代表制度なども代償措置として検討すべきである。

 9、組織体制について

 (1)人事院の廃止をふくむ検討も想定されるが、人事院は、設置当時から制度上、@労使間の中立性、A政治的中立性という2つの中立性をもっていた。
 (2)とりわけ、第三者機関が、政治的中立であることは重要な問題である。内閣から独立していない公務員庁や内閣人事局では、公平な人事制度の保障および身分保障の制度はなくなる危険性もある。
 (3)その点から、人事行政の公正の確保等のための第三者機関は、人事院の存続もふくめて、政治的にも完全に中立な機関が受け持つべきである。
 (4)第三者機関の役割として、 「政治的行為の制限」は必要ではない。
 (5)人事行政の公正の確保を担保するものとしては、ここに記載されたものだけではなく、成績主義に基づく任用(分限に関する基準や採用試験、任用に関する基準等)や研修等に関する事務も含まれるものであり、それら事務は第三者機関の役割とすべきである。
 (6)地方での事案は、中央労働委員会の地方事務所に任せることが考えられているが、本当に機能するのかは不明である。また、給与水準は仲裁できても、給与配分を扱えない可能性もある。したがって、かつての公労委も参考にして、公務に特化した労働委員会の創設を検討すべきである。

(※全労連『「公務員制度改革」闘争ニュース』より転載)


以上

 
 
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