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国公労連速報 2010年12月3日《No.2454》
 「国立研究開発機関」構想と
 第4期科学技術基本計画について内閣府要請
     
 

 

 政府は、2011年3月末に「国立研究開発機関(仮称)制度の創設」を含む「第4期科学技術基本計画」の閣議決定をめざしています。内閣府・総合科学技術会議が、その案となるパブリックコメント募集文書「科学技術に関する基本政策について」(以下「4期案」)を示すなか、国公労連と学研労協は11月15日、内閣府・科学技術政策担当に対して、「4期案」に関する要請を行いました。国公労連からは瀬谷行革対策部長と井上行革対策部員、学研労協からは池長議長と川中事務局長が参加し、内閣府側は、科学技術政策・基本政策担当の石田参事官補佐と篠原主査が対応しました。
 冒頭、瀬谷行革対策部長が、「科学技術政策立案と研究機関の見直しに関わる要請書」(別添参照)を提出し、その趣旨を説明した後、以下のやりとりが行われました。(※○は国公労連・学研労協、●は内閣府側の発言)

 “日本の危機=科学技術の弱体化”という現状認識は一定共有

 ○ 提出した要請書は毎年6月、国公労連と学研労協の共同で開催している国立試験研究機関全国交流集会(国研集会)で、職員へのアンケートに基づき要求を取りまとめ決定したものだ。
 ○ 「4期案」の現状認識については、一致するところも多い。冒頭に書かれている「国全体で見ると論文の占有率は漸減傾向」で「論文被引用度の国際的な順位も先進諸国と比較して低い水準」であり、「日本の危機」=「科学技術の弱体化」「科学技術においても、将来的に我が国の存在感の低下が懸念される」という「基本認識」は共有するものだ。
 ○ 「第3期基本計画の実績及び課題」のところに書かれている「研究開発法人は、極めて重要な役割を担っている。しかし、運営費交付金は減少しており、研究活動、保有する施設及び設備の維持管理、運用等で支障が生じている」との認識も一致している。
 ○ ポスドク、若手研究者の問題では、「研究者のキャリアパスの確立が遅れていることもあり、若手研究者は将来展望を描きにくい」との現状認識や、「博士課程における進学支援及びキャリアパスの多様化」、「研究者のキャリアパスの整備」などが必要としている点も一定共有できるものだ。
 ● 厳しい中でも、総体としての研究関連予算はほぼ横ばいで減ってはいない。しかし、予算が増えない中で、研究に携わる人員は増えていて、ポスドク問題など非正規化している実態や矛盾があることは認識している。

 基礎研究を重視しボトムアップしてこそ先端研究が発展する

 ○ 現状認識は一致している。しかし、問題は危機打開の方策だ。「4期案」には、「戦略的重点化」や「産学官の『知』のネットワーク強化」、「世界トップレベルの基礎研究の強化」、「研究開発の実施体制の強化」など、「強化」という言葉が多く並んでいる。その「強化」の具体策についてうかがいたい。
 ● 全体として、枠組みは一定出しているが、具体策については提示できていない。限られた予算の中においては、やはり「選択と集中」で「重点化」していかなければならないと考えている。
 ○ これまでも限られた予算を理由にして、「選択と集中」「重点化」「効率化」などが行われてきたが、結局、基礎研究や長期的視野による研究が切り捨てられてきた。予算が減らされてもその範囲内でなんとか研究できるだろうとされたが、実際は大変困難な状況に陥っている。
 ● 方向性としてグリーンイノベーションとライフイノベーションの2つの点での推進と基礎研究が大切だという点は重視しているが、具体的にどうやっていくかクリアに出せていない。概括して言うと、第3期計画までは科学技術の発展に重きを置いてきたが、「4期案」では、経済成長につながる科学技術研究の“出口思考”も重視すると同時に基礎研究も重視する必要があるとした点が今までと違うところだ。ただ、それを具体的にどうやっていくかが描けておらず、我々も頭を悩ましているところであり、枠組みの考え方を提起するに留まっている。どうしても予算が限られており、画一的にはできないので、どう有効的に使うかとなると、「選択と集中」「重点化」しかない。
 ○ 実際の現場では、「選択と集中」「重点化」というのは、先端研究は重視するが裾野の基礎研究は軽視するという形になってしまっている。基礎研究の裾野を広げないと先端研究も立ちゆかない。「選択と集中」「重点化」が本当の意味で研究を発展させることになっていない。たとえば、若手研究者が、本当は研究したい課題があっても、その研究は長期的な研究だから、仕方なく目の前の成果がすぐ出る研究、“出口”のすぐ見える研究をせざるを得ないということもある。
 ○ 先端研究と基礎研究はバランスが大事だと思う。この間、産総研でも先端研究に偏り基礎研究が細ってきたため、今度は先端研究も枯れてきて、論文数も減ってきている。また、組織の「フラット化」が進んでおり、トップダウンは進んでもボトムアップが難しい。研究をマネジメントできる人材育成も進んでいない。
 ○ 多様性を担保できる研究システムづくりが必要だ。トップダウンを強調し過ぎだ。裾野の広い基礎研究をボトムアップしていく中で、先端研究が生まれてくる。
 ○ 基盤研究をボトムアップできる研究マネジメントが必要だが、現在は、研究現場と、コスト意識だけのトップマネジメントとの中間に、ボトムアップできる研究マネジメントが無いことが問題だ。
 ○ 「4期案」にはこれからの若手研究者の支援は一定あるが、「ミドルエイジクライシス」という言葉があるように、この間のポスドク問題は解決しないし、現在のポスドクは救われないことになる。たとえば、産総研でも若手研究者をこれからは採用する方向に切り替えようとしているが、いま30歳半ば以上のポスドクは結局不安定雇用のままだ。多くの研究機関の年齢構成も30歳半ば周辺の中堅層が薄くバランスを欠いている。また、「人材の流動性向上、競争促進に向けた改革を重視」としている点も危惧がある。
 ○ 科学技術研究に対する国民の理解が必ずしも深いものとなっていないので、研究機関、研究者としてのアウトリーチ活動についても今年6月の国研集会で取り上げたところだ。広報活動が重要だと思うが、研究機関においても担当者まかせになってしまっている。政府としても強めていただきたい。
 ● ただ単に先端研究を伸ばしていけばいいというのでなく、「4期案」は人材育成を重点としているが、具体的にどうやっていくかということがクリアになっていない。研究のボトムアップのためのマネジメントができる人材や、国民に広く広報、アウトリーチできる人材が必要だと私たちも思うが、そうした人材をどうやって育てていくのかという具体策が無いことや、現実問題としてそうした人材が評価される社会状況にもない点なども悩ましいところだ。

 「国立研究開発機関」構想について

 ○ 「4期案」では、「国立研究開発機関(仮称)制度の創設」が明記されているが、他省庁との調整など具体化は進んでいるのか。
 ○ また、「総合科学技術会議を改組して『科学技術イノベーション戦略本部(仮称)』を創設」するとしていたり、重要課題ごとに設置する「科学技術イノベーション戦略協議会(仮称)を創設」するなどとしているが、どの程度まで具体化されているのか。
 ● 「国立研究開発機関(仮称)制度の創設」については、文部科学省との共同で整理しているところで、これに各省庁も関わってはいるが、実際の対応についてはまだ調整できていない。また、現在の総合科学技術会議には予算権限がないので、具体的な取り扱いの調整まではできないと考えており、この問題についても枠組みを一定提起するだけになるだろう。「国立研究開発機関(仮称)制度」の具体化にあたっては、みなさんからもよりよい制度づくりのための具体的な提案をいただければありがたい。
 ● 大きな組織改編をともなう「国立研究開発機関(仮称)」と「科学技術イノベーション戦略本部(仮称)」は、たぶんに政治マターで動く話で、今後の具体的な進め方やスケジュールなどについてもまったく不明だ。重要課題ごとに設置する「科学技術イノベーション戦略協議会(仮称)」については、現在の総合科学技術会議のままでも課題ごとに設置することにしているので、これについてはグリーンとライフという2つのイノベーションの課題をはじめとして、閣議決定され次第、具体化に手をつけることになるだろう。
 ○ 「第4期科学技術基本計画」の策定は、今後どう動いていくのか。
 ● 年末までに、政府に案を答申し、年度末までに閣議決定される予定だ。

 最後に、瀬谷行革対策部長が、「『国立研究開発機関』構想について具体的な意見を提案いただきたいとのことなので、より具体化が進む節目で再度要請させていただく」と述べ、要請を終えました。




《別添》
2010年11月15日
総合科学技術会議議長 菅直人殿

日本国家公務員労働組合連合会(国公労連)
中央執行委員長  宮垣 忠
筑波研究学園都市研究機関労働組合協議会(学研労協)
議  長     池長裕史


科学技術政策立案と研究機関の見直しに関わる要請書


1、科学技術政策立案に関わる要請
 (1)科学技術政策立案は、長期的視野に立って行うこと。
 (2)重点分野だけでなく、基礎・基盤的研究にも十分配慮すること。
 (3)「人材育成」に対し積極的な資源の投入を行い、かつ政策として明文化すること。
 (4)政策決定にあたっては、研究現場の意見を反映させること。
 (5)総合科学技術会議の意思決定過程を透明化し、政府として説明責任を果たすこと。

2、研究機関の見直し等に関わる要請
 (1)研究機関の事務・事業について
@ 独立行政法人として研究機関が行っている事務・事業は、国の責任で存続・拡充すること。
A 「選択と集中」の論理ではなく、基礎・基盤的研究など裾野を広げながら先端的研究の進展も図るという立場で見直し・検討を進めること。
 (2)予算について
@ 研究開発法人等に必要な研究予算を充分確保し、運営費にかかわる賃金の抑制を行わないこと。
A 予算の年度繰り越し制度を実効あるものとし、年度当初からの予算執行を可能とすること。
B 研究開発業務に支障を来すおそれのある画一的な競争入札制度の導入を行わないこと。
C 競争的研究資金の研究予算全体に占める割合を引き上げず、基礎研究に対する研究費の大幅増額を実現すること。
 (3)人員について
@ 人件費の抑制による人員削減を図ることなく必要な増員を行うこと。
A 支援業務に従事する職員については、長期的視野に立った適切な補充と育成を行うこと。
B 非正規職員の研究労働条件を抜本的に改善し、正規職員との均等待遇をはかり、若手研究者が長期間にわたって不安定な雇用条件(ポスドク・任期付研究員)におかれている現状を改善すること。また、パーマネント化を進めること。
 (4)研究機関の運営について
@ 運営について、当該研究機関の自主性、自律性を確保すること。
A 運営においては、トップダウンではなく、ボトムアップにより研究現場の意見を反映させる仕組みをつくること。
B 中期的な計画、年度の計画、人員配置等を労使協議事項とし、労使協議の結果を尊重し、研究機関の運営に反映させること。
C 研究機関の評価においては、研究開発独立行政法人にマッチした評価基準で評価すること。評価は研究内容が理解できる機関に任せること。
 (5)統合について
@ 研究機関の強制的、画一的な統廃合は行わないこと。研究分野の統合、研究機関の統合、省庁を超えた統合などの検討を行う場合は、拙速な結論を導くことなく、当事者を含めた幅広い意見を踏まえて、オープンに時間をかけて進めること。
A 研究支援部門の安易な統合を行わず、研究機関の適正規模を踏まえて支援部門の配置を行うこと。



以上

 
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