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国公労連速報 2008年2月25日《No.1947》
【社会保険庁改革対策委員会ニュースNo.28】
     
 

 

自由法曹団が年金業務・組織再生会議へ意見書を提出

 2月25日、自由法曹団が、年金業務・組織再生会議事務局へ「社会保険庁改革についての意見」(別添)を提出しました。
 意見書では、「消えた年金」問題など、年金記録の管理体制について、真の原因と対策が明らかにされないまま、社会保険庁が解体・民営化されようとしていることと、年金の管理体制の真の問題点が明らかにされないまま現場の職員にその責任が転嫁されようとしていること、2つの大きな問題について指摘。政府の責任において責任をもって公的年金制度の整備が示されるまで、社会保険庁改革関連法にしたがった組織改編を凍結することを求めています。
 以下、全文です。


2008年2月25日

年金業務・組織再生会議 御中

自由法曹団

社会保険庁改革についての意見

 はじめに

 2007年6月30日、社会保険庁改革関連法が成立した。現在、年金業務組織・再生会議は、年金への不信の原因を社会保険庁職員のみに原因があるとの前提で、社会保険庁の解体・民営化を進め、健康保険協会希望者の集計・希望者の調整 ・決定が行われている。
 しかし、この社会保険庁改革関連法は、(1)年金記録の杜撰な管理の責任をあいまいにしたまま公的年金制度が崩壊するおそれがあり、(2)政府の政策の不備を職員個々人に転嫁するものであり、(3)職員選別採用と分限免職をもって解体を推進しようとするものであり、(4)職員の重大な人権問題でもある。
 そこで自由法曹団は、国民のための公的年金を擁護する立場から、年金記録の管理の責任を明確にした上で、政府の責任において責任をもって公的年金制度の整備が示されるまで、社会保険庁改革関連法にしたがった組織改編を凍結することを求めるものである。

1 「年金記録問題」の真相・・・制度創設以来の杜撰な管理のツケ

 年金記録問題の原因について、再生会議は、あたかも社会保険庁の組織と職員に全責任があるかのような主張をしている。しかし、制度創設以来、年金保険料は杜撰な管理が続いてきており、しかも適正に管理できるだけの人員体制も整えられてこなかったし、管理システムも頻繁に変わり、変わる都度に新たな管理漏れを生じてきた。これは、歴代政府の責任である。
 年金のいわゆる「旧台帳」については、1958(昭和33)年の行政管理庁(現・総務省)監察ですでに「整備はなお完全なものとは認められない」「氏名、生年月日、資格取得年月日等の誤謬」「資格期間および標準報酬月額の誤計算」があると指摘されていた。1957(昭和32)年7月1日以降の被保険者の「パンチカードシステム」は膨大で煩雑な作業の中で破綻した。
 1962(昭和37)年以降のIBM電子計算組織導入で磁気テープ収録方式になっても漢字のカナ氏名への置き換えなどで「宙に浮いた年金」の大きな要因となった。1970(昭和45)年から1977(昭和52)年にかけての磁気テープ化によっても約1754万件についてはマイクロフィルムへの収録管理となりこれも「宙に浮いた年金」となった。1962(昭和37)年から電子計算機による整理・統合作業も行われたが、番号や生年月日などが相違してデータが統合されず、また喪失漏れ取得漏れにより記録が繋がらないなどの「事故記録」が大量に発生した。
 1961(昭和36)年に施行された国民年金制度は、加入・脱退や保険料徴収などの基本的な業務は市町村が行い、その後社会保険庁で集中処理が行われるようになったが、カナの附されていない台帳の問題や、市町村からの納付記録の転記ミス等もあった。1997(平成9)年の基礎年金番号導入時点では、約3億件の年金番号が交付され、順次統合作業が行われているが、現在約5千万件が未統合となっている。
 国民の大切な年金に関する記録を正確に作成し、保管・管理するという組織全体としての機能がはたされなかった原因には、国民年金、厚生年金、共済組合など制度ごとに管理・運営されていたことや、機械化に伴う切替上の問題など、歴史的・組織的背景を持った複合的要因がある。年金制度の根幹に関わる重要な事務である記録の管理に、十分な予算や人員が措置されてこなかったことも、史実から明らかである。社会保険庁や厚生労働省の責任はもとより、歴代政府の責任こそ重いのである。

2 確保されてこなかった記録管理に必要な人員体制

 再生会議は、社会保険庁職員を現行よりさらに減らす方針であり、民営化により新たなシステムを導入すればこれが可能であるかのように主張している。しかし、すでに見た通り、現在の年金記録の問題は、システムの誤作動などではなく、バラバラなデータが長年にわたり統合されないで来たこと、「宙に浮いた」年金は、記録の入力段階でのさまざまな問題が原因となっており、正確な記録に基づくデータ作成そのものに大きな困難がある。そうである以上、当面の年金記録の問題を解決するには、これまでの年金実務に熟達した職員によって正確なデータが入力されるまで責任を持つことが必要であり、そのための体制確保こそ必要である。ところが、社会保険庁には必要な人員体制が確保されず、かえって実務的な見通しも欠いたまま人員削減が行われてきている。このような事態をあらためない限り、どれだけシステムを工夫しても問題は解決しない。

(1)2000年地方分権一括法により担当者は大幅減員

 2000年4月施行のいわゆる地方分権一括法の中で、国民年金に関する社会保険関係事務は国の直接執行事務として社会保険庁が一元的に実施することとされた。しかしその際、次の通り大幅な減員が行われた。

  市町村  保険料収納+嘱託 届出の受理等
2001年度 5656名 7300名 +2700名 3900名
2002年度 5863名 1858名  

 この点については国会でも「国民年金の仕事が機関委任事務という形で発足をした昭和36年当時でも、国が直接やったら5万5千人の人が要るんだというようなことで、そんなばかげたことはできないから、市町村に協力をいただいてやっていくんだということでこの制度そのものが発足をしている」(2001年6月4日行政改革に関する特別委員会・桑原質問)と指摘されている。

(2)拡大する定員割れ

 社会保険庁の定員数は、1万7千人台で推移しているが、退職者が相次ぎ、既に数百名規模で定員割れとなっており、2007年末でさらに定員割れが進んでいるとされている。このように、1961(昭和36)年以降、一度たりとも国民の年金の管理に必要な体制は確立してこなかったし、人員もあてられてこなかった。

3 歴代政府の失政を職員に転嫁する社保庁改革のねらい

 歴代政府の失政を職員に転嫁しようとする社会保険庁改革のねらいは、収納業務(例・クレジットカード利用)、膨大に保有する国民の所得に関する個人情報の活用に関する業務、保険料資産運用業務など、財界が公的年金の民営化そのものにより商機の拡大を企図しようとするところにある。
 たとえば、すでに市場化テストモデル事業として民間事業者が参入した厚生年金などの適用促進事業について経済界は「コストと旨み」として「別事業との兼任者が空き時間を利用し、掛け持ちで事業を手掛ける形になると見られる」「債権回収会社を始めとする関連業者は、当然、入札に参加すべきだろう」などとしている(日経BP社「パブリックビジネス・リポート」2005年5月号)。
 各地で公務への参入をはかるLEC東京リーガルマインドは、社会保険事務所の業務全体の一括的な民間委託を提案し、「委託を受けた民間事業者が多方面から情報(住民基本台帳や登記簿、公共職業安定所の情報等)を収集し、年金未納者や未加入者を出来る限り正確に捕捉するとともに、これらの個人・事業所に対して請求し、支払わない場合は、必要に応じ差し押さえを実行します」などと、権力まで付与することを要望している(2004年11月30日付)。
 民間事業者が営利目的で権力行使を可能にすることには、個人情報保護の上でも権力行使に関してもおおいに問題が生じるおそれがある。

4 国民のための公的年金制度の確立のために

(1)年金記録管理の問題点の慎重な議論を

 すでに見たとおり、年金記録の問題は、現在の職員の責任のみに解消できるものではない。もし、真の原因についての慎重な議論を経ないままで、組織を改変し一部の職員を免職するようなことがあれば、年金記録問題の改善や解決はもたらされない。かえって、現状よりも記録管理が悪化するおそれさえある。

(2)十分な予算・体制により専門性と継続性のある業務運営を

 「年金記録問題検証委員会」最終報告は、今後の教訓として、組織及び業務の管理・運営に関してガバナンスを確立するとともに意識改革・業務改革の推進、適切な人材を養成・確保するとともに職員の一体感の醸成、誤りを発見・是正していく仕組みの構築、職員団体と適切な関係を保つことなどの改革の推進をあげている。
 しかし、2010(平成22)年1月に設立される「日本年金機構」は、業務運営をバラバラに解体し、多くを民間に委託するものとなっている。公的年金は、50年から60年にわたる長い間の加入・納付記録などの適正な管理が求められる。また、幾多の改正・経過措置が設けられる中で、正確に理解し運営するには、専門性の蓄積が必要であり、かつ、継続性の確保も必要である。
 このような業務の運営を、競争入札によって民間に委ね、しかも数年に1回ずつ担当する事業者や従業員が交代することになれば、国民のための公的年金制度の確立に逆行することは明らかである。
 国民生活の格差と貧困が拡大する中で、老後生活の基盤である公的年金の拡充を求める国民の声はますます強くなっており、国の責任により、必要な予算と人員を配置して、専門的知識を蓄積した継続性のある体制によって制度と業務を運営することは、国民の安心できる公的年金制度の確立の上で最低限必要なことである。

(3)制度改善の国民的論議を

 日本の年金制度は、保険料積立機能による戦費調達が主要な目的であったことなどから、原則として25年という長期の保険料納付を必要としている。これは世界にも例のないことで、無年金者の発生にもつながっている。したがって、国民の年金権保障の観点からは、加入期間の短縮を実現すべきとの意見も強い。また、公的年金制度は、人々の老後の生活を支える大切な制度であり、現在と将来の無年金・低年金者の問題と、それをつくりだしている制度の欠陥や年金不信を解決するためには、全額国庫負担による最低保障年金制度を実現すべきであるとの意見も強い。
 いま求められることは、このような国民に信頼される公的年金制度の制度設計を国民的論議の中で進め、国民的合意をつくることである。

5 年金管理体制の欠陥を職員に転嫁する社会保険庁解体は許されない

 社会保険庁改革関連法は、このような公的年金確立のための方向とはまったく異なる、社会保険庁の解体・民営化を進めようとしている。「全国健康保険協会」(2008年10月)および「日本年金機構」(2010年1月)という新たな非公務員型の公法人が設立して業務は引き継ぐが、職員の引継ぎ規定はない。かつての国鉄分割・民営化同様に、選別採用を行う枠組みが形作られている。自民党は国会審議の中でも「社会保険庁の職員が漫然と新組織に移行するようなことはあってはならない」「分限免職を発動すべきだ」などと強調している。
 国家公務員法第75条には職員の身分保障が規定され、安易に分限免職は行えない。中央省庁再編での組織再編や独立行政法人等の新たな法人設立、また郵政民営化にあたって雇用承継措置が設けられたが、これは国家公務員は「全体の奉仕者」として、政治家や業者などの圧力に対し公正・公平な行政運営が求められること、また、労働基本権が制約されていることなどがある。国家公務員法第78条では、(1)勤務実績がよくない(2)心身の故障(3)必要な適格性を欠く(4)定員の改廃や予算減少などを理由に免職や降任を行うことができるとされているが、この場合も第75条の身分保障規定が基本となり、任命権者として免職回避の努力を尽くさないことは違法である。
 民間における解雇権濫用法理と整理解雇規制に即してみるならば、(1)すでに社会保険業務は大幅な定員割れであり、国民の公的年金の適切な管理にはさらに人員体制の充実が求められているのであり、人員削減の必要性自体がまったくない。(2)公的年金管理の問題が政府の責任にある以上、現在の職員の選別採用や分限免職という手段を採ること自体が失当である。(3)法令の知識と経験を有する職員を排除して公的年金の管理が向上する可能性はなく、年金記録問題の真相も個々の公務員の不祥事なのではない以上現在の社会保険庁職員を職場から排除する正当性はない。(4)年金記録管理についての歴代政府の責任についての明確な説明と職員団体との協議はつくされていない。
 社会保険庁職員に対する選別採用や分限免職は法令上もとうてい許されないものである。

6 終わりに

(1)原因解明まで執行を凍結し政府の責任を明確にした改革論議を

 今もっとも急ぐべきことは、年金記録問題を発生させた原因を歴史的に徹底的に解明し、年金記録問題についての歴代政府の責任を明確にし、責任を職員にのみ押しつけるという問題のすりかえをやめることであり、記録問題の真の原因の解明と改善・解決策の一致をみるまでは、社会保険庁改革関連法の執行を凍結すべきである。

(2)違法無法が横行する社会保険庁職場の改善は急務

 社会保険庁は07年11月16日、職員課長が人事院から呼び出しを受け、社会保険職場の実態改善について、職員からの相談や職員団体からの要請等が相次いでいることから、「勧告ではないが、長時間労働や心身の健康に配慮すること。特に若年層については不安がないよう勤務時間等の徹底をするように」と2度目の指導を受けた。社会保険庁改革の名の下ここ数年来、異常な状況にある職場実態の中で、年金記録管理問題ともあいまって、時間外、休日出勤が常態化し、健康及び福祉にとって憂慮すべき事態が生じている。特に日々の過酷な勤務実態と合わせ、組織の廃止・解体にともなって将来不安が強まり、30代から40代の退職が急増している。同時に、退職者の補充は、現状では社会保険職場を希望する名簿搭載者がまず存在しないため、新規採用が行えず欠員で放置され、職員の勤務条件をいっそう過酷なものにしている。こうした現状を一刻も早く改善することが必要である。

以上

 
 
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