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国公労連速報 2007年5月29日《No.1853》
 独法の運営費交付金削減反対・増額求め財務省交渉
 交付金削減で国民の安全・安心が守れない
     
 

 

 国公労連は5月25日、独立行政法人の運営費交付金の削減に反対し増額を求める財務省交渉を実施しました。この交渉には、財務省は主計局の中出課長補佐ほか1名、国公労連は上野独法対策部長を責任者に各単組の独法労組の代表ら9名が参加しました。
 冒頭、上野独法対策部長が、要求書(別添参照)と、運営費交付金削減に伴う各独法の職場実態をまとめた書類『各独法の実態』(PDFファイル316KB)を手交。各独法労組の代表らがそれぞれの職場実態にもとづき、運営費交付金削減の不当性を訴えました。(※○は国公労連側、●は財務省の発言要旨)

 ○〈上野独法対策部長〉 独法が発足して6年が経過。運営費交付金の一般管理費は毎年3%、業務管理費は毎年1%が削られ、“独立”ではなく“従属行政法人”と言わざるをえない実態だ。運営費交付金削減の効率化係数を撤廃して一律的・一方的な削減を中止し、法人の運営に支障が生じないよう必要な予算措置を図ることを求める。そもそも効率化係数を作ったのは財務省ではないのか。また3〜5年の中期計画のときや毎年の査定などにも財務省が関与しているわけで、ことあるごとに運営費交付金削減に圧力をかけているのは財務省ではないか。また、新たな重大な動きが独法の「整理合理化計画」の策定問題である。「骨太の方針2007」策定に向けて議論を進めている経済財政諮問会議が5月9日、すべての独立行政法人(101法人)について民営化・廃止を含む業務の全面的な「整理合理化計画」を年内に作成することを政府に求めた。しかし、独法についてはすでに、総務省評価委員会を頂点にして中期目標にもとづき評価し、組織見直しを含めて方向を決める仕組みがある。それとは別に突然、「整理合理化計画」を策定するというのは、ルール違反も甚だしい。

 ● 独法を作った目的は、業務の効率性や透明性をはかることだ。それを担保するためにいろいろな法律の規定がある。例えば通則法の規定でいえば評価委員会が総務省や各省にあり、事後チェックをするとか、中期目標が終わったときには全体を見直すという規定がある。そういう仕組みで、効率性を高めていくのが独法の特徴だ。通則法以外でも「行政改革推進法」(簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律)では、国の歳出の縮減をはかる見地からの見直しをすると規定されている。そうした規定を勘案して各独法や主務省の方でどうやって効率化していくかを研究された上で財務省の方に協議が来ているわけで、財務省がすべてを決めているということではない。そして何より非常に国の財政事情が厳しいということがあり、適切な予算措置が必要となる。また、指摘された経済財政諮問会議や安倍総理から直接の指示があるので、それもふまえながら見直していくということだ。


 ○〈上野独法対策部長〉 「効率化」や、財政の論理だけではなく、国民サービスを提供する独法の役割や、現場の実態をふまえることが必要だ。以下、各独法労組の代表から実態について発言してもらう。

 ○〈全経済・産総研労組〉 予算執行の自由度の高い交付金が減ったことにより、外部資金に頼るようになるが、外部資金の使い勝手の悪さ、柔軟性の無さ、手続きが煩雑になることによる時間のムダ、外部への情報提供の増大、外部資金を取りづらいテーマへの研究費の不足などの問題が発生し、研究の効率性が低下している。また、旧国立研究機関としての研究には、基礎的な研究や長期的に視野に立った研究が大事で、多様性とバランスが必要なのに、産総研に限らず、各独法の研究所がどこもかしこも、外部資金に頼ると、外部資金受けする研究テーマばかりが重宝され、画一的な研究となり、研究所ごとのカラーがなくなる。

 ○〈全経済〉 製品評価技術基盤機構は、パロマなどの製品事故で業務は非常に注目されている。運営費交付金に効率化係数がかかってくるから人件費を削ったり、実験器具が買えない状況になっている。国の機関として地道な実験をやっていくことでデータを蓄積していき、国民の安全・安心を守ることができる。財務省は「効率化」を問題にしているが、国民サービスの向上という視点が大事ではないか。パロマの事故などで業務量は増大しているが、総人件費削減の仕組みのため人は増やせる仕組みではないから残業、休日出勤などで超勤が増えている。そして超勤手当が出ない。そういう現場の問題をきちんとおさえて財務省にバックアップしてもらいたい。総理や諮問会議による「整理合理化計画」だが、各独法は中期計画で見直しがされているのに、また一律的に見直しをやるというのはおかしい。また、さきほど「行革推進法」にもとづき見直すという話が出されたが、「行革推進法」には、独法の見直しに関わっては、「平成18年度以降に初めて中期目標の期間が終了する独立行政法人」を見直すとしていることをきちんとおさえるべきだ。

 ○〈全通信・研究機構支部〉 運営費交付金の削減により、昨年から研究職・総合職を問わず新規採用を凍結する事態となっている。ポスドク(任期付研究者)はパーマネント採用されない実情の中で研究成果を求められつつ任期後の就職活動も行わなければならないという過酷な労働条件に置かれている。また、運営費交付金の削減により外部の競争的資金の獲得をせざるを得ず、それに伴う業務量の増大はもとより、外部資金での業績をどのように評価するのか不明確など問題点が多い。また国からの業務委託契約に関して民間企業と競合する入札が強要されているが、「効率化」の名のもとにそもそも独法とは何なのか、存在意義が分からなくなっているのではないか。また、基礎研究などの責務を負う研究機関に対する一律的な運営費交付金の削減は、研究・技術立国をめざすとする政府自らの基本方針にも反するものではないか。
 新規採用がない職場というのはどうなっていくか考えてもらいたい。ポスドクは3〜5年でどんどん抜けていく、パーマネントの職員がいないわけだから、組織は衰退していくしかない。国の機関としてITを研究している組織がそれでいいのか。ITという国の基幹的な研究を独法に託しているのに、個別にきちんと見ることもしない。それで突然政治的な動きがあったらこれまでの方針を変えるということでは、未来がないと言わざるを得ない。「効率化」を優先して国力が落ちたのでは何の意味もない。大局的な見地を財務省もきちんと持ってほしい。

 ○〈全運輸〉 航空業界の技術革新がどんどん進むなかにあって、航空大学校の運営費交付金が削減されるもと、訓練機など老朽化したものでも使いなさいという現状になっている。また石油の高騰で航空機の燃料費負担が大幅に増え、庁舎の維持管理費を削ったり、技術革新にそった教育訓練が難しくなるなど、次世代のパイロットを育てることが困難になっている。自動車車検は、独法化したことにより繁忙期に人を集中することができないなど逆に非効率になった。また、新しい検査基準ができ、それは世界最高水準だといっても、その検査基準に対応するための機器開発・導入が運営費交付金削減によってできない状況になっている。そもそも自動車検査は国民の安全・安心や環境を守るためにある。いま東アジアの国々では日本の車検制度を見習っているところなのに、日本では車検制度が形骸化しつつある。毎年運営費交付金を削減していく独法の仕組みでは未来がない。未来ある仕組みに改善すべきだ。

 ○〈全医労〉 国立病院機構に対する運営交付金は毎年減少している。さらにこの間の医療制度の改悪も重なり現場は非常に困難な状況になっている。重症心身障害児(者)・筋ジス、結核、精神など他の医療機関では担えない不採算な政策医療を担っている国立病院がこれでいいのか。また、院内保育所が女性医師や女性看護師の確保に大きな役割を果たしているにもかかわらず、院内保育所に対する運営費交付金も認められていない。看護師養成所の授業料は、04年度には25万円だったものが毎年上がり今年度は36万で、来年度は40万円に上げようとしている。看護師の確保が求められるなかで、国の看護師養成所としてこれでいいのか。

 ○〈総理府労連・統計センター労組〉 統計は国の政策の基盤になるものだが、運営費交付金の削減で、職員はぎりぎりのところで仕事をしている。メンタル疾患の職員が急増し、こんな状態では職場の士気は下がる一方だ。

 ● 確かにみなさんの厳しい状況は分かる。各独法に対して何でもやってあげたいと思うのだが、財政事情が厳しいため、そうはならないジレンマがあることをご理解いただきたい。

 最後に、上野独法対策部長は、「財務省は、国の膨大な借金がある以上、運営費交付金削減は当然という立場だが、赤字の真の原因はムダな公共事業と税制空洞化にある。国公労連は毎年、税制改革の提言を発表しており、不公平税制是正で計14兆円を確保できる。提言の冊子は別途おわたしする。本日は補佐からは、効率化係数は財務省がつくって圧力をかけているという点については、どうも別の回答をもらったようだが、職場の状況についてはかなり理解いただけたものと思う。今後は、運営交付金削減反対や、『整理合理化計画』反対を掲げて国民との共同を広げながら運動を展開し、要求の実現めざしたいし、同じ運営費交付金を受けている国立大学の組合もある。財務省をはじめ、当局追及等を強めたい」と発言し、財務省交渉を終えました。

【※別添】

2007年5月25日

財務大臣 尾身幸次 殿

日本国家公務員労働組合連合会
中央執行委員長 福田昭生

     

運営費交付金の削減をやめ、増額を求める要求書

 独立行政法人は、橋本行革の一環として中央省庁再編と同時に創設された。その後、6年を経過した現在、「自律的運営で自由度が増し、仕事がしやすくなる」という創立当時の政府・当局の喧伝とはまったく逆に、予算や組織、人員、人件費などについての主務省等の圧力の下で、各独立行政法人の自主性はほとんど認められていない。加えて、中期目標に照らして主務省(評価委員会)が行った各法人に対する評価内容に対しても総務省行政管理局(評価委員会)が注文をつけ、変更を求める状況がある。こうした実態を見るならば、もはや独立行政法人ではなく、従属行政法人と言わねばならない。こうした政府、総務省による運営介入・支配は、法人の自発性・専門性発揮を困難にし、国民に対する法人の責任を十分には果たせない事態を招き兼ねない。
 特に問題なのは、独立行政法人の財政を支える運営費交付金が毎年一律的・一方的に削減されている点である。現在、運営費交付金は一般管理費と業務管理費に区分され、一般管理費については毎年3%、業務管理費については毎年1%の削減を行うとする効率化係数をかけて算出されている。このように国の負担を一律的・一方的に削減することは、国の責任放棄と指摘せざるを得ない。
 ついては、以下の事項を要求するものである。
                

 1、独立行政法人の運営費交付金については、効率化係数を撤廃して一律的・一方的な削減を中止し、法人の運営に支障が生じないよう必要な予算措置を図ること。

以上

 
 
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