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国公労連速報 2007年5月9日《No.1834》
【社会保険庁改革対策委員会ニュースNo.11】
     
 

 

 社会保険庁関連法案の審議始まる
 与党・民主の「公務員攻撃競争」の様相


 政府提出の「日本年金機構法案」、「国民年金事業改善法案」の審議が、5月8日(火)衆議院本会議で開始されました。民主党が議員立法で提出した「年金信頼回復3法案」(歳入庁設置法案、年金保険料流用禁止法案、「消えた年金記録」被害者救済法案)とあわせて、8日本会議は提案趣旨説明に続き、各党の質疑が行われました。
 審議では、民主党が政府案に対し「社会保険庁を特殊法人に衣替えするだけの法案」と攻撃するのに対し、自民党は歳入庁設置法案を「公務員組織温存に他ならない」とするなど、公務員バッシング競争の様相を呈しています。
 安倍首相は答弁の中で、機構の業務について「外部委託を徹底する」と繰り返し、年金運営を徹底して営利企業に委ねる姿勢を鮮明にするとともに、「新組織にふさわしくない職員が漫然と移ってはならない」などと選別採用の姿勢を鮮明にしました。
 日本共産党は民間委託の問題や記録管理の危険性、公的年金空洞化への対応、職員の雇用確保などを迫りましたが、時間の制約もあり政府側の答弁は抽象的な内容にとどまりました。
 審議の概要は次のとおりです。(なお、この概要は国公労連のメモをもとにまとめたものであり、詳細な議事録は、後日衆議院事務局からホームページ上で公開されるものをご参照ください)

14:57 柳澤伯夫厚生労働大臣より政府提出法案趣旨説明
15:03 民主党内山晃議員より民主党提出法案趣旨説明

【谷畑 孝(自民)】
 公的年金制度を頼りにするという国民は7割にものぼり、信頼をしっかりさせて運営をする組織が必要だ。社会保険庁は国民の信頼を失っている新たな組織で再出発する総理の決意を問う。
 社会保険庁に対する年金記録閲覧や業者との癒着、監修料、保険料流用など深刻な不信があるが、保険料の使途を精査し透明化すべきだ。問題の根本原因とどう変えるのかを明らかに。
 新組織の採用と人事施策に関し、これまでまじめに勤務してきた職員を採用するとともに、必要な人材は民間からも採用し新しい風を入れるべきと考えるが大臣の見解は。
 国民年金保険料の納付率は回復しているとは言え67%にとどまり、改善が求められる。保険料納付の環境整備とともに、悪質な滞納者は国税庁に委託することは、理解が得られるのではないか。
 歳入庁設置法案は、社会保険である制度への無理解によるものであり、公務員組織の温存に他ならない。

【安倍内閣総理大臣】
 社会保険庁改革の決意については、公的年金に関する国の責任を堅持しながら、新たに非公務員型の法人を設置し、業務の外部委託を徹底する。また国税庁に悪質な滞納者に関する業務を委託するなどの社会保険庁6分割を断行する。信頼に足りる新組織にするため最善の努力を行う。

【柳澤厚生労働大臣】
 社会保険庁で発生した問題の原因については、地方事務官制度という特殊な存在であり、県単位の閉鎖的な体質があった。その中で地方独自の判断もあった。その後法令遵守の徹底や事務処理の適正化を行うとともに、県単位ではなくブロック単位の広域異動をするなど、意識改革をはかっている。能力や実績にもとづくメリハリの効いた人事管理など、構造的問題にけりをつけるとりくみをいっそう進めたい。
 職員の雇用については、新たな機構に社会保険庁職員を自動的に引き継ぐことは考えていない。設立委員会が採用し、中立・公正な学識経験者の意見を聞きながら厳正審査したい。また民間からの採用も行いたい。能力・実績にもとづくメリハリの効いた民間的体系を構築し、民間との交流も行う。
 納付率の向上はこの間も環境整備をはかってきたが、これらに加え、クレジットカードによる支払いや市町村との連携など、さらなる向上に全力を尽くす。
 記録管理の問題は、年金受給直前の58歳時に記録を送信してきたが、これに加え35歳、45歳時にも行うこととしている。

【長妻 昭(民主)】
 「100年安心」というごまかしの看板は降すべき。年金不信の増大は社会保険庁にあり、その信頼回復が必要だ。民主党は税と一体で歳入庁で行うことを提案している。政府は、昨年の看板書き換えの「ねんきん事業機構法案」を撤回したが、今度は社会保険庁を特殊法人に衣替えする法案だ。なぜ信頼回復になるのか意味不明だ。
 社会保険庁改革に必要なのは年金記録が消えている問題への対応だ。年金記録漏れの相談者に対し、130人に1人、86人しか救済されていない。あらためて調査すべきだ。記録の統合漏れも多い。100万人の記録が消えている可能性もあり、大きな問題であることを社会保険庁は認識すべきだ。既に受給している者にも多くの支給漏れがある。これらに対し、本人が申告しないと正しい給付が得られないが、申告がなくてもデータを統合すべきだ。
 社会保険庁では保険料の浪費が6兆円もあった。リゾート施設、監修料、ゴルフ練習用具にまで保険料が使われていた。平成16年12月25日の衆議院予算委員会で自民党の大野功統議員が、年金協議会の与党合意として保険料は年金給付以外に使わないと大見得を切っている。ところが政府案は今まで以上に幅広い「何でも流用法」だ。事務費への恒久的流用もある。予算委員会で誓った公約をなぜ破るのか。
 社会保険庁不祥事の後始末についても、監修料で飲み食いなどに使った6億円のうち1億6千万しか返却していない。政府与党は社会保険庁に甘すぎる。一連の政府法案は「年金責任逃げ切り法案」だ。

【安倍内閣総理大臣】
 平成16年の制度改正では、概ね100年先を見通した、持続可能な見直しを行った。2月の暫定試算ではあるが、全体として財政も好転している。
 歳入庁設置法案は国税庁と社会保険庁を統合するものだが、年金保険料と国税では対象が大きく異なる。現状を無視したもので効率化の利点など考えられない。公務員組織を温存するものであり、取り得ない案だ。
 年金記録の点検であるが、こんにちではさまざまな制度への加入者を基礎年金番号で管理し、基本的に解決している。ただし基礎年金番号導入以前の記録が統合されないケースが残っている。社会保険庁で統合化を進めているがさらに周知に努力したい。すべての加入者の点検は非効率な面が大きい。35、45、58の各年齢で周知し、確実に行える体制を整備したい。不安な場合は現在実施している年金特別相談窓口を活用いただくなど周知に努める。
 保険料に関する予算委員会のご指摘は、福祉施設を念頭に置いたものだ。与党合意をふまえるなら、給付及び給付に関連する事業費や事務費といった不可分な経費への保険料投入は、他の公的保険制度や諸外国の状況にくらべても妥当である。いずれにせよ無駄遣いを許さないとりくみを徹底したい。
 監修料については信頼回復を社会保険庁が受けとめ、幹部が給与の一部を返納したもので「けじめ」の趣旨だ。受領額そのものを返すことではない。
 法案は、年金運営における国の責任を明確にし、日本年金機構を設置して外部委託を徹底する。国民の信頼を確実にできる新組織として万全と考える。一方民主党案はさまざまな問題のある社会保険庁を公務員組織として温存するものだ。保険料は年金給付にしか認めないというのは他の保険制度に照らしても論外で妥当ではない。

【柳澤康生労働大臣】
 年金記録問題への回答(略)

【山井和則(民主)】
 提案者として答弁する。まず政府案の特殊法人への看板掛け替えが、なぜ納付率を上げられるのかわからない。民主党の歳入庁には3つの狙いがある。
 第1に低下している加入率、納付率を引き上げることだ。納付率67%と言うがそのうち17%は猶予と免除の分母対策であり、全納は50%に下がっている。98%の徴収率である国税庁と統合し、納付率を引き上げる。
 第2に統合によって、重複する業務を整理することでコストが削減でき、人員の削減が可能となる。
 第3に国民の利便性向上になる。税金と保険料を別に納めているものを、歳入庁では労働保険もワンストップになる。年金相談と税金相談も1ヵ所で行える。
 一石三鳥の民主党法案だ。
 政府案の非公務員化は「隠れ公務員」ではないか。さまざまな特殊法人は税金で賄われているが、賃金は公務員より特殊法人の方が高い。また、政府案では、ますます国会や政府の監督が利きにくくなる。
 年金保険料流用禁止法案に関し、かつて予算委員会で保険料は給付以外に使わないと説明しながら、今回政府与党は正反対の法案を出した。当時の小泉総理も同様の答弁を行っており、今後の委員会では、小泉前総理と大野議員の出席を求め、当時の答弁との食い違いについて説明を求めたい。
 「消えた年金」については、5千万件もの納入者と結びつかない記録がある。多くの苦情も寄せられているが政府は全く答えていない。今でさえ記録がわからないのに、特殊法人でうやむやにしようというのは「年金責任逃げ切り法案」だ。
 国民に保険料納入を言う以上、年金給付以外に使わないとする民主党案の可決が重要だ。

(年金記録統合に関する民主党長妻議員再質問と、首相、大臣答弁、略)

【古屋 範子(公明)】(前出の議論と重複する部分は略)
 日本年金機構においては、地方事務官制度の下での一体性欠如など構造的問題、ガバナンスにどう対応するのか。
 業務目的外の記録閲覧で3千人を超えて処分されているが、膨大な個人情報を機構に委任してさらにアウトソーシングする。個人情報保護をどのようにはかるのか。
 収納率の近年の成果は改革の兆しでありいっそうの改善が課題のひとつ。民主党案では国税庁のノウハウを活用するとの考え方が示されているが、対象も大きく異なり業務の基本的性格も異なる。保険料の納付は給付と密接に結びつくという特性をふまえ、きめ細かな対応が必要だ。若年者の納付率が低い点について実効あるとりくみが重要であるが、見解を求めたい。
(保険料の使途、略)
 国民サービス向上の点では、社会保険庁は村瀬長官のもと業務を改革し、お客様指向になってきている。公的年金では、超長期にわたる年金記録管理が重要である。公的年金に対する不安に対しては、加入歴の再確認を呼びかけるなどていねいに、わかりやすく説明できる国民に親切な組織であるべき。
 改革の目的は組織や職員の擁護ではなく、制度を守ること。

【安倍内閣総理大臣】
(日本年金機構の考え方、略)

【柳澤厚生労働大臣】
(社会保険庁の構造的問題に対し、ブロック化、人事・評価制度、外部監査等を答弁)  個人情報の保護については、機構職員に法律上の守秘義務を科し、利用・提供できる情報の範囲も細かく限定している。民間の委託先にも適切な管理を求めており、守秘義務を罰則付きで担保するなど、徹底したい。
 若年者の収納対策は、若年者の納付向上が全体の向上にとって重要と認識している。若者独自ではないが、年金定期便などを、若者が年金を実感できる機会としたい。大学による申請の代行など、きめ細かく徹底したい。
(事務費の使途、略)

【高橋 千鶴子(共産)】
 事実上の民営化法案が何をもたらすのか。
 公的年金は憲法25条が規定する生存権の大切な制度。徴収から給付まで国が直接責任を持って、一体的に運営することで公正性、継続性が確保される。
 社会保険庁では看過できない問題があったが、民間委託でどうして信頼を高めることになるのか。
 世論調査でも国民の不安は年金制度にある。国民が求めるのは高い負担と低い給付を何とかしてほしいということ。国民年金では未納・未加入が4割、厚生年金でも3割が未加入と空洞化が深刻だが、こうした根本問題を法案でどう解決されるのか。最低保障年金など、安心な公的年金に改めることが必要ではないか。
 民間委託の弊害も明らかだ。村瀬長官のノルマ主義による収納率の引き上げは、膨大な不正免除を引き起こすことになった。郵政でもサービス後退は明らかで、採算優先の民間的手法は破綻しているのではないか。
 法案は機構の業務をバラバラに民間委託するとしているが、数年で業者が入れ替わってどうして確実で安心な運営ができるのか。
 正規・非正規あわせて1万人もの人員削減が計画されているが、年金業務に習熟した公務労働者を削減して安定運営ができるのか。かつて国鉄民営化にさえあった職員の引き継ぎ規定がないのはなぜか。国によるリストラ合理化は認められない。
 法案は、国民年金保険料未納者から健康保険証を取り上げ、短期の保険証を交付するとしている。なぜ、目的の異なる制度をリンクさせるのか。年金保険料を払わない者は病院に行くなという国民いじめではないか。
 国税庁への委託も、保険と納税はまったく違う。国税庁の権限をちらつかせては、不信をいっそう深めることになる。
 絶対に年金記録がもれないとは言えない。勝手に流用されないための歯止めはかかるのか。民間事業者が、自社の業務に年金記録を活用しないと言い切れるのか。
 国民年金保険料を給付以外に流用する点でも、なぜ特例措置の事務費流用を恒久化するのか。これは国の責任放棄だ。
 100年安心と言って制度改悪を進めてきた政府・与党に対する年金不信を転嫁し、すべて公務員の責任にすることは許さない。

【安倍内閣総理大臣】
 民間委託は年金制度をより効率的に行うためのものであり、国が適正・確実な実施を管理し評価するもので、制度の運営や財政には国が責任を持つこととしている。
(未納・未加入対策、略)
 最低保障年金制度は税方式であり、社会保険を放棄するのはいかがか。巨額の財源をどうするかもあり、社会保険制度を維持したい。
 ノルマ主義との指摘は、明確な目標を設定し、その達成に努力することは当然であり、指摘はあたらない。
 民間委託は、サービス提供のあり方は不断の見直しが不可欠であり、市場化テストを推進しているところである。今後とも不断の見直しを進める。
 業務の民間委託について、委託の範囲や選定基準は学識経験者の意見を聞いて定めることとしており、安定的な運営が損なわれることはない。
 人員削減については、公的年金制度の確実な運営を前提とし、システム刷新、外部委託化により行うものである。公的年金の運営が損なわれることがないようにしたい。
 職員の引き継ぎ規定については、社会保険庁改革は国民の信頼回復のため断行するものであり、新組織にふさわしくない職員は漫然と映ってはならないと考え、引き継ぎ規定を設けていない。第三者機関により厳正に選考する。これは、国家公務員法の規定に照らしても、違法・不当なものではない。
 健康保険証を短期にすることは、納付率の向上に市町村の協力は重要であり、市町村との接触の機会を増やす必要なしくみである。これは、通常と比べ有効期間を短期にするのみで、受診抑制との指摘はあたらない。
(以下、略)

【糸川 正晃(国民新党)】
 ねんきん事業機構法案では、機構は厚生労働省の国の機関とされていた。公権力の行使を伴う業務は国の組織で行うとの考え方であったと承知するが、今回非公務員型と大きな方針転換をしたのはなぜか。
 国の責任を示しながら民間委託等の6分割とされている。解体のイメージを強調しすぎると、国の責任が見えにくくなり、信頼を失わせるのではないか。国の機関でなくとも、国が責任を負うことを打ち出すべきだ。
 社会保険庁職員の意識改革は進んでいるのか。それとも組織改革しないと変わらないのか。新しい職員に値する意識を持ちうるのか。
 納付率は対策を取っているのにごくわずかの上昇率だ。来年度の目標も下方修正されている。根本原因はどこにあるのか。社会保険庁を解体すれば納付率は上がるのか。

【安倍内閣総理大臣】(略)
【柳澤厚生労働大臣】(略)

以上

 
 
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