●第37回税研全国集会報告書
●どこを開いても価値ある1冊―「税金’98」

●税研運動とは
●1998年度税制審議に関する申し入れ書

●事件の徹底究明と大蔵行政の民主化を求める共同声明

税研運動とは
 「税務職員の税金知らずをなくす」「税制、徴税の仕組みを正しく知る」(第1回税研全国集会)「税の公平とは何か、国税労働者と納税者相互の悩み苦しみの根源は何かを知る」を基本に、学習・研究活動を日常的に行っているのが税研運動です。
 最近では、政府税制調査会の税制審議について、国民本位の税制・財政、民主的な税務行政の確立を求める立場から「税制審議についての申し入れ書」「財源試算」の検討等を行っています。また、国税庁が進めている国税総合管理システム(KSKシステム)の分析なども行っています。
 また、税研運動の日常活動の結節点として税研全国集会を毎年開催し、1960年の第1回から今年は37回目を数えます

第37回税研全国集会について
 金融市場のビックバンに代表される規制緩和は大企業に利潤拡大をもたらす一方で、中小企業の転廃業や労働者の解雇など働く国民への犠牲を押しつけつつ進行しています。橋本内閣は6つの改革と称し、アメリカと財界・大企業の利益にそうよう国家機構の再編をすすめています。国会において論議された国の「財政再建法案」は、「橋本行革」を財政面から支えるものです。しかし、すでに多くの労働者、国民は医療保険制度の改悪や消費税5%の実施による税負担、逆進的負担のきわめて強い社会保険料負担に苦しんでいます。国税庁はKSKシステムを21世紀の税務行政を担う基盤と位置付けその導入を急いでいます。こうした情勢のもとで第37回税研全国集会は、1998年1月15日から3日間伊東市内で開催されました。
1 中心テーマ
 「混迷する行財政の現状と課題ー真に転換すべきは何かー」
2 日時
 1998年1月15日〜17日
  1月15日 全体集会・講演
   講演1 財政赤字と財政構造改革
        静岡大学名誉教授 札幌学院大学 安藤実 氏
   講演2 経済・財政改革と今後の税制
        税制経営研究所長        谷山治雄氏
  1月16日 分科会
   (1)暮らしと税金分科会     (2)税制一般分科会
   (3)行政1 管理・徴収分科会  (4)行政2 個人課税分科会
   (5)行政3 資産課税分科会   (6)行政4 法人課税分科会
  1月17日 講演・全体集会
   講演3 高齢化社会と国民負担ー国民負担率50%上限政策を斬るー
        都留文科大学教授        川上則道氏
 なお、毎年の税研運動の成果は、税研全国集会の講演内容などとともにパンフ「'98税金」にまとめて発行されます。



事件の徹底究明と大蔵行政の民主化を求める共同声明
1998年3月10日
全国税労働組合
全税関労働組合

 3月5日、またもや特権官僚を含む大蔵官僚が逮捕されました。繰り返される腐敗・汚職事件によって国民の大蔵行政への信頼は失われました。私たち大蔵省の第一線でまじめに働いている職員は、毎日の仕事で肩身の狭い思いをし、調査先などで苦情をいわれるなどいいようのない怒りでいっぱいです。
 3月6日、大蔵省は金融検査部幹部による汚職事件の監督責任で前官房長など9名を処分しました。田波耕治事務次官は「厳しい処分にした」としていますが、国民はもちろん、私たちも、大蔵省が全容を明らかにせず、この程度の処分と4名の現職逮捕で済ますことはとうてい納得できません。

1 「接待」は賄賂だ。自浄能力のない大蔵省

 大蔵省は、事件が起こるたびに、「綱紀の保持」(95年5月)の徹底や「倫理規定」(96年12月)を定めてきました。「倫理規定」では禁止事項として「接待、会食、餞別……」と事細かに示しています。
 今回の事件では「接待」が賄賂にあたるとされましたが、高級料亭での飲食、ゴルフ、そして風俗接待など、大蔵官僚が受けている「接待」は許しがたいものです。
 大蔵省はこれまでも、数々の疑惑や事件にあたって幹部の監督責任について処分を行ってきましたが、再発を防ぐことができないばかりか、次から次と汚職・腐敗が明らかになりました。これは、全容の解明を怠り、軽い処分で済ませてきた大蔵省の自浄能力のなさが根本的な原因といえます。

2 特権官僚優遇人事がおごりと高ぶりを生む

 大蔵省では、T種採用試験に合格し採用されれば、一生「出世の道」が保障されている人事システムがあり、彼らのおごりと高ぶりを生んできました。20代で税務署長に就任し、地域の名士や取り巻きにチヤホヤされ、接待に溺れていくことは明らかです。その後も一般職員とは比較にならないスピードで出世階段を歩み、退職後は次々と特殊法人や関係業界に天下り、高額の給与と退職金を手に入れていきます。
 このような、特権官僚の優遇人事をなくし、政・官・財の癒着を断ち切るには、天下りを完全に禁止することが決定的に重要です。

3 内部の批判を圧殺してきた大蔵省

 特権官僚優遇の人事と、職場内部の批判を一切許さない大蔵省の体質が今日の腐敗と癒着を生み出したことは明白です。
 大蔵省は憲法で保障された労働組合の活動を敵視し、全国税や全税関など大蔵省内の労働組合を弾圧をしてきました。労働組合を敵視した政策は、全国税が摘発した国税庁作成の「極秘資料」や関税局の「マル秘資料」で明らかになっています。しかし、大蔵省、国税庁、関税局は、何らの反省もせず、差別是正や労働組合敵視政策をあらためようとしていません。
 大蔵省に行政上の情報公開をさせると共に、人事・労務政策上の秘密主義を全面的にやめさせ、チェック機能をとりもどすことが急務となっています。

4 国民のための大蔵行政を確立するために

 政府・大蔵省は、国民に対しては消費税増税や暮らし、福祉や教育予算を削る一方で、軍事費の増大や贈賄銀行にも30兆円もの公的資金を投入するなど、国民いじめの行政をおこなってきました。
 私たちは、今こそ、国民のための大蔵行政を確立するために政府や大蔵省に次のことを要求します。
 1 徹底して真相を究明し、全容を明らかにすること。
 2 関係者への厳正な処分と、監督責任を明らかにすること。
 3 T種採用者を特権的に優遇する人事を改めること。
 4 特権官僚の天下りと関連業界からの天上りを禁止すること。
 5 差別のない公正で明朗な人事を確立すること。
 6 労働組合(全国税、全税関)敵視政策を改めること。
 7 大蔵省が率先して情報公開を進めること。

 私たちは、国民の期待に応え、大蔵行政の民主化のために国民とともに全力でたたかう決意です。