◆号外(1999年1月20日付)◆
99年春闘方針(案)−全厚生第40回中央委員会議案−

●99年春闘をめぐる情勢の特徴

1.経済情勢の特徴
(一)戦後最悪の不況が列島を覆い、深刻で長期にわたる不況は、倒産と失業、金融機関の貸し渋りなど、日本経済は危機的状況にあります。
 もっとも深刻な問題は失業・雇用問題で、完全失業率は4.4%、(98年11月)と、過去最悪を記録し、今後とも改善される見込みは薄く、近い将来5〜6%を超すことは確実とみられています。
 労働者の実質賃金は消費税率の引き上げや医療改悪制度改悪による自己負担増と98年春闘の史上最低の賃上げ結果の中で、昨年11月以降12月連続マイナスを記録し、住宅ローン破産が急増するなど、賃金・権利・雇用破壊の進行によって労働者と家族を含めた生活も危機的状況です。
(二)とりわけ、97年4月に橋本前内閣が強行した消費税増税や医療制度改悪など、9兆円もの負担増は、国民の消費購買力を一段と低下させています。また、財政構造改革法によって、医療、年金、福祉など、社会保障制度の切り捨て改悪が進められようとしており、国民の「将来不安」を増大させました。この結果、GDPの6割を占める個人消費を極端に冷え込ませことが不況を拡大と長期化につながっています。
(三)世界第2位のGDP(国民一人あたりでは世界一)、同じく世界第2位の資本輸出額、対外資産も貿易黒字も世界一の「経済大国」でありながら、低賃金・長時間労働、貧弱な社会保障、中小企業の倒産の激増と雇用不安などに象徴される「生活小国」、こうした経済的・社会的矛盾を解消することが求められています。
 消費税減税や大幅賃上げ、社会保障の拡充など、国民の消費購買力を高める経済政策に転換することが求められています。
(四)不況を長期化・深刻化させているもう一つの要因は、バブルの後遺症としての金融危機にあります。バブル経済崩壊により乱脈融資が不良債権化したことによるものです。政府・財界は、この不良債権の処理こそ最優先の不況打開策であるとして、住専への6850億円の税金投入に続き、先の臨時国会では、一部野党を取り込んで金融関連法案を成立させ、危機的な国民の生活実態を無視して60兆円もの税金を投入する銀行支援策を強行しました。

2.政治情勢の特徴
(一)参院選挙での自民党惨敗による橋本内閣退陣により発足した小渕内閣は、先の臨時国会では一部野党を取り込み、60兆円の銀行支援策を強行するなど、大企業優先の財政運営を継続し、橋本前内閣がすすめてきた反国民的な「六大改革」をはじめとする政治・経済・社会の全分野にわたる国家的リストラ計画を忠実に引継ぎ、推進しています。
(二)その第一は、新ガイドラインを軸とする軍事大国化路線です。
 96年春の日米首脳会談での日米安保共同宣言、97年秋の新ガイドライン合意、98年秋の臨時国会への新ガイドライン関連法案の提出と、危険なたくらみが着々と進行しています 。
 日米安保共同宣言は、(1)在日米軍を21世紀にわたって固定化すること、(2)安保条約の対象をアジア太平洋地域および地球規模にまで拡大すること、(3)日米軍事共同作戦の飽囲を日本防衛から海外での米軍の軍事行動に拡大し、それに日本の軍事力、経済力を総動員する仕組みをつくること、にあります。
 この宣言にもとづく新ガイドラインの最大の焦点は、日本が何ら武力攻繋を受けていなくても「日本周辺事態」の名目でアメリカの引き起こす戦争に日本が自動的に参戦することにあり、憲法の平和的原則に反するものです。
(二)
第二は、経済的規制の緩和です。
 企業の活動を縛っている規制を取り払って、大企業の活動の自由を拡大することをめざす新自由主義的改革、いわゆる「橋本六大改革」路線であり、その中心は、「財政構造改革」と「行政改革・規制緩和」です。
 財政構造改革の目的は、法人税や所得税、医療や年金の企業負担など、企業の税負担の大幅軽減にあり、社会保障費や文教費など、大企業からみた「ムダな財政支出の削減」に真のねらいがあります。年金、医療の改悪などの社会保障改革は、まさにそのための改悪であり、財政危機は口実にすぎません。
 また、「行政改革・規制緩和」のねらいも、中小企業や農業、労働者や社会的弱者に対する保護の撤廃であり、それに関連する行政のスリム化・切り捨てによって、「小さな政府」をつくり財界にとって「ムダな財政支出を削減する」ことにあります。
 政府・財界がすすめる規制緩和は、(1)輸入や価格規制の緩和、交通規制緩和、大店法の規制緩和・撤廃など、非効率産業部門の切り捨て、(2)高度情報通信、物流、金融、土地・住宅、雇用・労働、医療・福祉の六分野への参入の自由化、(3)消費者保護、環境保全など、暮らしための社会的規制の緩和・撤廃、(4)労働法制の緩和を中心とする労働コスト削減、の4分野を対象としています。
(三)こうした政策は、行革基本法に基づく中央省庁再編計画による内閣機能の強化や福祉や労働者保護行政縮小の「労働福祉省」創設、交通行政の切り捨てとゼネコン奉仕の巨大官庁「国土交通省」の創設などと連動し、規制緩和政策による行政のスリム化計画そのものです。また「官から民へ」「国から地方へ」の原則のもとに進められようとしている民営化・独立行政法人化や地方分権も、行政の切り捨てと大幅な公務員削減のための手法にすぎず、地方分権の目的は、地方自治の拡大というよりむしろ規制緩和と一体での国の行政を切り捨てる、その受け皿を地方自治体に求めたものにすぎません。

3.国公労働者をめぐる情勢の特徴
(一)6月の「行革基本法」の成立を受けて設置された「行革推進本部」は、9月29日に「中央省庁等改革に係わる法案・計画の立案方針」を決定し、11月20日には、「中央省庁等改革に係わる法案と計画の大綱」の事務局原案を固めるなど、急ピッチで省庁再編・行政改革の具体化を進めています。
 発表された「法案と計画の大綱事務局原案」は、行革基本法の枠組みを超えて首相の権限強化と民営化・独立行政法人化をテコに行政の徹底した減量化・効率化を進めるものとなっています。とりわけ、中央省庁改革の最大の焦点である独立行政法人化については、97機関・事業(対象国家公務員数25万人)にその対象を拡大するとともに、その制度内容についても限りなく民間に近い制度設計をめざすなど、独立行政法人がまさに行政切り捨て、国家責任放棄の受け皿であることが明らかになっています。
 小渕首相の国家公務員20%削減の公約に象徴されるように、今回の行政改革の目的が、行政の徹底した減量化・効率化と大幅な定員削減にあることを改めて示しています。
 99年の通常国会がたたかいの正念場です。省庁再編・独立行政法人化の真の狙いを国民の前に明らかにし、民主的な行財政の確立と公務リストラ「合理化」反対の運動を大きく前進させなければなりません。
(二)公務員制度改悪、給与制度改悪の動きも重大です。その目的が、差別と分断の競争主義を公務職場に持ち込むもので、徹底した「効率化」にあることが明らかになってきています。
 政府の公務員制度調査会は、98年度末の基本答申をめざして急ピッチで審議を進めています。その内容は、幹部育成、多様な人材確保、能力・実績に基づく人事管理、複線型人事管理の必要性、企画部門と実施部門の特性に応じた人事管理などで、一部特権 官僚中心の議論に終始しているとはいえ、日経連の「新時代の日本的経営」を公務職場 に持ち込み、行政改革と一体で公務員制度の改悪を進めようとする狙いを持っています。
 12月22日には、「退職の在り方に関する検討グループ」が(1)国家公務員の定年を65歳に延長する。(2)再就職後、出身官庁との接触を制限する法的措置を講じる。などの検討を求める報告書を取りまとめました。また、省庁幹部の高額と言われている退職金の問題についても、「民間企業との適正な比較方法の検討が必要」と見直しを求めており、公務員全体へ影響する恐れがあります。
(三)人事院は、98年人事院勧告・報告で、公務員制度の現状を「経済のボーダーレス化、少子・高齢化の進展」といった社会経済システムの「構造転換」に対応できなくなっているとし、時代の要請に応えるためには民間にならった制度や運用の改善を図っていく必要があるとしています。その具体化として、年功型賃金体系見直しの一環としての55歳昇給停止措置の導入、職務や実績に応じた給与体系への転換、能力・適性に応した昇進管理、民間の人材活用、官民交流システムの確立などをめざして準備を進めています。
 また、「行政改革」の動きと合わせて、事務事業の見直し、民間化、地方委譲、独立行政法人活用のなど、民間の経営合理化にならった行政の減量化・効率化への取り組みが公務員制度のあり方を考えていく場合でも不可欠であるとして、そうした方向での公務員制度改悪を進めようとしています。


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