◆号外(1999年1月20日付)◆
99年春闘方針(案)−全厚生第40回中央委員会議案−

98年秋季年末闘争の経過と中間総括

●98年秋季年末闘争

98年秋季年末闘争の議題とたたかい
 第62回定期大会で確認した98年秋季年末闘争における全厚生の重点課題は、(1)「橋本6大改革」とのたたかい、(2)賃金闘争をはじめとする組合員と家族の生活と権利を守るたたかいを重点に取り組みました。
 具体的には、(1)98年人事院勧告の給与改善の早期確定、(2)厚生省と労働省の統合、独立行政法人化反対、(3)年金改悪反対、(4)労働基準法改悪反対、(5)「新ガイドライン法案」成立阻止、(6)地方事務官制度廃止問題への取り組み等に取り組みました。

各課題等でのたたかい

1.国民本位の行財政等の確立を求めて
 中央省庁等改革基本法(以下「行革基本法」)の具体化作業を進めている中央省庁等改革推進本部は(以下「推進本部」)、9月29日に立案方針を決定し、10月6日には事務局が各省庁に対して減量化計画の「事務・事業、施設等機関、地方支分部局、審議会等の見直し案」を提示しました。その内容は、行政改革会議最終報告に基づく20機関の民営化と97機関・事務の独立行政法人化の検討を求めるものとなっており、厚生省関係では、国立健康・栄養研究所、国立感染症研究所、国立医薬品食品衛生研究所、社会保険業務センターが独立行政法人化の検討対象とされました。
 11月20日には法案・減量化などの「中央省庁等改革に係る大綱事務局原案」を決定し、行政サービス切り捨てを一気に進めようとしており、1月下旬にも推進本部決定が行われる見通しです。
 推進本部決定後の具体的な取り組み等については、第40回中央委員会で補強します。
 全厚生では、次のようなたたかいに取り組みました。
(一)全厚生では、10月9日に全厚生行革闘争本部事務局、本省庁、試験研究機関代表者による合同会議を開催し、(1)厚生省と労働省の統合反対、(2)国立健康・栄養研究所等の独立行政法人化反対を確認し、具体的運動を展開することを確認しました。
 10月20日、12月24日には、支部代表者の参加を得て、推進本部事務局に対して、独立行政法人化反対の要請を行い、小渕本部長宛の要請署名(2,376筆)を提出しました。12月24日の推進本部事務局に対する要請では、支部代表者の参加も得て、国立健康・栄養研究所の独立行政法人化問題に絞り、国立健康・栄養研究所が果たしてきた歴史的役割や、今後の健康政策の必要性を訴え、国立健康・栄養研究所を独立行政法人化しないよう強く求めました。
 この間、本部と栄研支部では職場集会等を活用して意思疎通を図りながら運動を進めてきました。
(二)厚生省、社会保険庁関係当局に対しては、各機関の独立行政法人化反対の申し入れを行い、12月25日に宮下厚生大臣宛(2,322筆)の要請署名を提出しました。
 また、中央省庁の再編成等が職員の労働条件、労働環境の大幅な変更につながることから、機会あるごとに情報の公開を求めてきました。厚生省当局は必要な情報は提供すると約束しているにも関わらず、推進本部で行革基本法の具体化作業が進められる中、推進本部とのヒアリング内容、省内での議論等について全くと言っていいほど情報の公開を拒み、そのことが職場での不安感につながる「流言飛語」となるなど、労使間での約束を反故にするような対応を取っており、極めて問題です。
(三)10月27日には厚生共闘主催の「中央省庁再編・独立行政法人化反対」「安心できる明日のために・充実させよう社会保障」を掲げた「医療・年金・介護を考えるシンポジウム」を全体で200人の規模で開催し、全厚生から9支部40人が参加し、シンポジウムを成功させました。
(四)定期大会以降、全厚生・全医労・全労働で構成する「労働福祉省(仮称)」創設問題対策委員会を2回開催し、意見・情報の交換を行いました。
 また、国公労連等が提起する中央・地方での行動、政党、国会議員要請、各種団体要請行動等にも取り組みました。
 11月18日には、「問い直そう国の役割、確立しよう国民本位の行財政」を合言葉に国公労連行革闘争11.18中央行動が展開されました。この行動には、本省・統計・業務センター・国立リハ・神奈川・静岡・愛知・岐阜・京都・香川・愛媛の11支部等から52名が参加し、新橋駅頭での早朝ビラ宣伝行動、行革推進本部前行動、総務庁前行動に取り組み、日比谷野外音楽堂での総決起集会に結集し、デモ行進を力強く行いました。

2.関係当局等の交渉配置について
(一)人事課交渉
 定期大会で確認した「統一要求」を基本に、人事課長交渉を追求し、窓口折衝を行いましたが、国会が断続的に開催されたことや、中央省庁再編問題等で交渉が実現できませんでした。  なお、人事課長交渉を配置することは出来ませんでしたが、給与改善、行革問題等の課題での要求書の提出、参事官、人事調査官等への申し入れを行いました。
(二)厚生科学課交渉
 12月16日には、試験研究機関支部が厚生科学課長と行政改革に伴う独立行政法人の問題、組織再編問題について交渉し、厚生科学課長は「厚生省の組織再編準備室と行革推進本部事務局のやり取りの中で意見は聞かれるが厚生科学課自体としては決定権はない。独立行政法人は、あくまで国でやるという言うことであり、会計や身分を緩和し、自主性を持つものであるということを理解している。区分はどこかというと国の職員として大臣の指揮命令系統が直接及ぶ必要があるかどうかが問題」と述べ、再編計画については「基本方針は変わっていないが、行革を見据えた上で対応したい」と回答しました。  また、交渉以外にも、企画官等との懇談会を開催しました。
(三)国立施設管理室交渉
 11月16日には、社会福祉支部が国立施設管理室長と当面の課題で交渉し、行政改革について国立施設管理室長は「改革推進本部の事業として行政組織の減量化・効率化が課題になっている。更生援護機関には民間委託の推進という話がきている。基本的には国立更生援護機関は国でやるという方針のもとに対処していく」との基本見解を示しました。
(四) 社会保険庁交渉
 11月25日には、社会保険支部が社会保険庁長官と当面の課題で交渉し、地方事務官制度廃止、行政改革問題等について社会保険庁長官は「大きな問題を抱えた時期であり全力を傾けたい。地方事務官制度については一般にはわかりにくい問題であり、地方事務官の問題で国民の非難を受けるようなことがあってはいけない。十分意見を聞いて汲み上げるものは取り入れていきたい」と決意を述べました。
(五)人事院交渉
 11月10日には、全厚生として昇格課題を中心に人事院と交渉し、本省庁における標準七級係長の実現、研究職での枠外者の解消、三級以上の定数枠の拡大、社会福祉では医療職(二)の昇格改善、少人数職種の昇格改善、社会保険では、行(一)七級枠外の解消について要求し、全体的な問題として男女差別問題について人事院の責任で解消を図るよう求めました。人事院はこれらの切実な要求に対して「標準職務表の関係上難しい、考え方は変わらない」「定数査定では男女差別はしていない、各省の運用の問題」と回答しました。

3.組織活動の取り組み
(一)(1)「橋本6大改革」とのたたかい、(2)賃金闘争をはじめとする組合員と家族の生活と権利を守るたたかいを重点にした98年秋年闘争が取り組まれる中で、各支部では、愛知県支部が全労働・全医労との懇談会や街頭宣伝の共同行動を大きく展開し、2月27日には昨年の7月に続き「年金シンポジウム」に取り組みます。
 神奈川県支部では、神奈川県社会保障推進協議会が主催した社会保障学校に主体的に参加し、「年金シンポジウム」等に取り組みました。
 京都支部では、全組合員を対象とした要求アンケートや対話集会等を開催しながら「小さな要求を大きな運動に」を合言葉に取り組みました。
(二)労働法制改悪問題、人事院勧告の賃金改善早期実施を求める国会、人事院、総務庁等に対する行動では、本省・統計・業務センター・人口研・神奈川県支部が積極的に結集し取り組みました。
(三)社会福祉支部では、更生援護機関の実態や将来展望を明らかにする「国立施設白書」を中央委員会までにまとめるため奮闘しています。  また、この間、組合員加入促進に取り組み、伊東支部では1年間に4人の組合員を迎えるなど、福岡、函館支部等でも組織的拡大を図ることが出来ました。
(四)国立リハ支部では「よろず相談室」を設け、組合員の要望等の集約を図りました。また、全医労新聞を配布しながら病院部門での組織拡大に努め、施設内保育所の実現に取り組みました。
(五)業務センター支部ではビデオを活用したセクハラ問題に取り組み、「職場委員会を作るべき」との要求を掲げ、運動を進めています。

4.増員の取り組み
(一)行政サービスの向上と労働条件・環境改善のため大幅な増員を求めて、国公労連の総務庁交渉等に結集し取り組みました。  また、本部・支部では関係当局に対して機会あるごとに増員の必要性とその実現をめざし交渉等を配置しました。
(二)12月25日に閣議決定された99年度予算案では、「公務員の20%削減公約」を強行しようとする小渕内閣の姿勢があらわれ、定員査定段階から大幅な増員抑制を仕掛け、労働条件改善と行政サービス向上のため大幅な増員を求めている職場の声を無視し、国家公務員全体で3,564人の純減となっています。  厚生省では、88人減、社会保険庁・本庁では6人減、地方庁では僅か1人の増員となっています。

5.昇格改善の取り組み
 昇格改善は組合員にとって重要な問題であり、人事院交渉、関係当局交渉を配置し、上位級定数の拡大、枠外号俸の解消等を求めて運動を進めてきました。
 99年度予算案での級別定数改定状況は、本省・行(一)9級:3、8級:13、6級:16(いずれも切り上げ)、試験研究機関・専門行政職5級:1、研究職5級:2(いずれも切り上げ)、研究職5級:2(切り下げ)、社会福祉の改定はなし。社会保険(地方庁)・行(一)8級:20、7級:49(暫定定数含む)、6級、5級は人事院と調整中となっており、極めて厳しい内容となりました。

6.労働法制改悪反対の取り組み
 労働基準法改悪問題では、昨年の通常国会で国民・労働者の改悪阻止の運動が大きく広がる中、衆議院段階で廃案に近い継続審議に追い込んだものの、第146回臨時国会では、自民党、民主党などの5会派の「密室修正協議」により、廃案に近い継続審議扱いから一転、修正可決し、参議院ではわずか2日の審議で強行成立させられました。
 この間、9月16日から25日まで国会議員会館前座り込み、中央総決起集会、国会請願デモ等が取り組まれ、本省、統計、業務センター、感染研、人口研、神奈川県支部などの仲間を中心に連日の座り込み行動等に結集し、地方支部では、地域宣伝行動や抗議・要請の打電行動に取り組み、共同した運動が広がりました。

7.平和への取り組み
(一)昨年の臨時国会に提出された「新ガイドライン関連法案」(自衛隊法改正法案、周辺事態措置法案、日米物品役務相互提供改正協定)は、全く審議されないまま継続審議扱いとなっています。
 一連の法案は、国会での承認のないまま、アメリカが引き起こす戦争にわが国が自動的に参戦・協力する内容となっており、憲法の平和原則ばかりか、基本的人権、議会制民主主義をも蹂躙するもので、政府・自民党は、自由党との連立や一部野党の取り込みにより、今通常国会で特別委員会を設置し、会期内での成立をめざしています。
 同時に、自民党、自由党との連立政権政策協議では、自由党が従来の憲法解釈を変更して自衛隊の国連軍への参加、後方支援の強化、船舶検査(臨検)の法制化などを求めており、極めて危険な情勢となっており、職場、地域での学習・宣伝等の活動強化に取り組みます。
(二)11月20日から23日の3日間、「打ち破ろう、新ガイドライン法 日米軍事同盟打破・基地撤去」を主テーマに長崎県佐世保市で開催された98年日本平和大会に参加しました。

8.女性部の取り組み
(一)労働基準法改悪問題がヤマ場の9月16日から25日まで展開された国会議員会館前座り込み行動、議員面会所集会は、女性部が主体的に取り組み、在京の女性組合員を中心に多数行動に結集し、運動が広がりました。
(二)10月15日には国公労連女性協・青年協の昇格要求人事院前行動が取り組まれ、本部女性部、統計、人口研が参加しました。
(三)10月30日には、全厚生女性部が第3回定期総会を開催し、昇格・育児休業・介護休暇の改善、行革闘争や男女共通の労働時間規制実現のたたかいを盛り込んだ98年度運動方針を採択しました。また、社会保険庁と意見交換を行い、行政改革問題、上位定数の拡大と女性の登用、男女共通の超過勤務規制の実現、セクハラ防止対策等について要求の実現を強く求めました。
 こうした積極的な取り組みは職場での活動強化につながっています。

9.青年部の取り組み
 10月23日から25日にかけて滋賀県大津市を拠点に全厚生青年交流集会に取り組み、全国から98人の青年が参加し交流を深めました。
 また、この交流会開催に合わせて、「青年対策部ニュース」を隔月で発行しました。今後、青年活動の強化のために、継続して発行することが必要です。
 なお、この交流集会の参加者が社会保険支部にとどまっており、より多くの支部から参加できるよう取り組むことが必要です。
 交流集会では、「琵琶湖の魚と環境問題」と題する記念講演や16班に分かれての京都探訪など、古都の文化を味わい、次回は「神奈川県」で開催することを確認しました。

10.その他の取り組み
(一)島根県大田市への移譲が強行されようとしている国立大田病院では、「大田市立病院(仮称)」への採用において、32人もの不当な採用差別問題が起き、全医労は中央・地元で奮闘し、不採用者のうち10人の看護婦の追加採用の実現に続き、全員の採用を勝ち取りました。
 大田市長が公式に出した不採用決定を覆い、採用内定を勝ち取った成果は、私たちの運動の正しさに確信を持ち、今後の運動の教訓となりました。
 全厚生はこの間、厚生共闘を中心に厚生省前行動等に参加し、12月6日に現地で開催された「市民集会」には本部役員3人と香川県支部の代表が参加し、ともに闘う決意を固めました。
(二)地方事務官制度廃止問題では、全日本自治団体労働組合(自治労)が12月都道府県議会に「社会保険行政を都道府県の法定受託事務、地方事務官を地方公務員に」を旨とする要請行動を行っています。
 社会保険職場に自治労組合員がいない秋田県・岐阜県・香川県で同趣旨の要請書が提出されましたが、支部の機敏な対応で岐阜・香川県では「審議なし、採択なし」「取り下げ」などの成果を得ていますが、秋田県では意見書が採択されました。
 地方事務官制度廃止法案が3月にも通常国会に提出される見込みから、今後自治労の「社会保険行政を都道府県の法定受託事務、地方事務官を地方公務員に」との行動が活発化すると思われることから、これまで築きあげた道理ある全厚生方針に確信を持った取り組みを進めることが重要です。




●生活改善のたたかい

1.人事院勧告をめぐって
(一)8月12日に行われた98年人事院勧告は、史上最低の平均2,785円(0.76%)の賃上げに加え、昇給停止年齢を55歳とする定期昇給制度の改悪を含むものでした。
 全厚生では、史上最低の賃上げとはいえ、組合員の生活改善を求める立場から、改善部分の「早期完全実施」を求めて運動を展開しました。
 また、政府の財政破綻を理由とした労働基本権の代償措置をもないがしろにする暴挙は許さないとの立場で、「ストライキ態勢の確立を含む毅然とした対応」を確認し運動を進めました。
(二)政府は9月22日の第2回給与関係閣僚会議で「会期末(臨時国会の会期末10月7日)を念頭に、早期に第3回給与関係閣僚会議を開催する」ことを決定し、9月25日に第3回会議を開催し「勧告の完全実施」を決定しました。
 しかし、この閣議決定では、「業務の見直しや民間委託、定員削減の実施と引き続く定員純減」など、行政の減量化を迫る内容を含み、太田総務庁長官が閣議で「今後、大変な行政改革を推進しようとする今こそ、内閣と公務員全体の信頼関係の維持・確保が極めて重要」と協調し、「行政改革」断行と勧告実施を天秤にかける発言を行っています。
(三)政府は、10月2日に給与法「改正案」を国会に上程し、会期延長後の10月9日に参議院本会議で原案どおり成立しました。この間、私たちの要請に応えて日本共産党が「昇給停止年齢引き下げ撤回」の修正案を衆参両院に提出しましたが、否決されました。

2.地方自治体の動き
 地方自治体においては、大都市部を中心に財政悪化が深刻となり、大阪府では「24月の昇給停止」、東京都、愛知県では「勧告凍結」、神奈川県・埼玉県では実施時期の値切り、一時金カットなどの賃金抑制が強行され、特別職の賃金カットを含めれば11都道府県で「勧告完全実施」が見送られています。
 こうした地方自治体の状況は、財政危機を口実とする賃金抑制、制度改悪が強行されている国家公務員も無関係ではなく、99年春闘での政府・人事院の動きに影響を及ぼす危険があります。


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