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◆第1748号 (2010年8月15日付)◆
2年連続の賃金引下げ勧告
本俸0.19% 一時金0.2月を削減、年齢差別強行
 8月10日、人事院は国会と内閣に対して一般職国家公務員の給与等に関する勧告及び報告を行いました。給与勧告は、マイナス0.19%(757円)の官民較差があるとして、若年層と医療職(一)を除く本俸の引き下げ、行政職(一)6級相当以上で56歳となる年度からの賃金抑制措置の導入、1963年の水準にまで落ち込む0.2月もの一時金削減などとなっています。これは、2年連続の大幅な年収減となるものです。
 特に、50歳代後半層の賃金抑制措置は、対象者を一部に限定したものの、職務給原則や能力実績主義に反する年齢差別とも言えるものであり、断じて容認できません。
 人事院は、納得し得る根拠やデータの開示、十分な交渉・協議の保障など、手続き面でも不誠実な対応に終始。政府の公務員賃金抑制方針に迎合し、労働基本権制約の「代償措置」、第三者機関としての矜恃(きょうじ)を投げ捨てた勧告権の濫用と言わざるを得ません。
 全厚生は国公労連に結集し、賃金底上げで格差と貧困の解消、内需拡大を図る立場から、最低賃金の大幅引き上げと公務員賃金の改善を求めてきました。人事院勧告は、地方公務員はもとより独立行政法人や公益法人など、580万人もの労働者に直接影響するとされ、地域経済にも多大な影響を及ぼすものです。デフレ経済から脱却するためにも、政府には勧告の実施「見送り」を含めた真剣な検討を求めていきます。
 また勧告は、新たな高齢期雇用施策について、本年中を目途に定年年齢を段階的に65歳まで延長する立法措置のための意見の申出を行うとしています。
 一方、非常勤職員の処遇改善では、日々雇用を廃止して新たな任用制度を創設し、「3年上限」制限を設けなかったことや、育児休業や介護休暇などの適用拡大に踏み切ったことは一歩前進といえます。これをステップに、賃金や休暇制度など均等待遇、抜本的な制度改善に向けて取り組みを強めていきましょう。
 また、心の健康問題では、メンタルヘルス対策の充実へ「試し出勤」制度を導入。本人同意の下で簡単な勤務を行うもので休職期間中で賃金や通勤費等は支給されませんが、通勤途上や勤務中の災害は「公務災害」として扱われるなど、こちらも、要求が一歩前進しました。
 誰もが人間らしく働き、安心して暮らせる社会をめざし、引き続き奮闘しましょう。

2010年勧告の主な内容

●本年の給与勧告のポイント
 月例給、ボーナスともに引下げ
  〜平均年間給与は△9.4万円(△1.5%)、月例給については、  50歳台後半層を重点的に引下げ、(2009年の平均△15.4万円  (△2.4%)に続き2年連続)
  
@ 公務員給与が民間給与を上回るマイナス較差(△0.19%)を解消するため、月例給の引下げ改定
 ― 55歳を超える職員の俸給・俸給の特別調整額の支給額の一定率滅額、俸給表の引下げ改定
A 期末・勤勉手当(ボーナス)の引下げ(△0.2月分)

◎民間給与との比較
 約11,100民間事業所の約45万人の個人別給与を実地調査(完了率89.7%)
<月例給>
民間給与との較差△757円△0.19%〔行政職俸給表(一)…現行給与395,666円平均年齢41.9歳〕
俸給△637円俸給の特別調整額△51円はね返り分等(注)△69円
(注)地域手当など俸給の月額を算定基礎としている諸手当の額が減少することによる分
<ボーナス>
 昨年8月から本年7月までの1年間の民間の支給実績と公務の年間支給月数を比較
民聞の支給割合3.97月(公務の支給月数4.15月)
◎改定の内容
<月例給>
 民間給与との較差(マイナス)を解消するため、月例給を引下げ。50歳台後半層の職員の給与水準是正のための措置及び俸給表の改定を併せて実施
(1) 55歳を超える職員(行政職俸給表(一)5級以下の職員及び これに相当する級の職員を除く)について、俸給及び俸給の特別調整額の支給額を一定率で減額(△1.5%)
※医療職(一)(人材確保のため)、指定職(一官一給与のため)等についてはこの措置は行わない
(2) さらに、中高齢層について俸給表を引下げ改定
@ 行政職俸給表(一) (1)による解消分を除いた残りの公務と民聞の給与差を解消するよう引下げ(平均改定率△0.1%)。その際、中高齢層(40歳台以上)が受ける俸給月額に限定して引下げ
A 指定職俸給表 行政職(一)の公務と民間の給与較差率と同程度の引下げ(△0.2%)
B その他の俸給表 行政職(一)との均衡を考慮した引下げ(医療職(一)等は除外)
給与構造改革の俸給水準引下げに伴う経過措置額についても、本年の俸給表の改定率等を踏まえて引下げ
<期末・勤勉手当(ボーナス)>
 民間の支給割合に見合うよう引下げ4.15月分→3.95月分
(一般の職員の場合の支給月数)

[実施時期等]公布日の属する月の翌月の初日(公布日が月の初日であるときは、その日)
<超過勤務手当>
 民間企業の実態を踏まえ、月60時間の超過勤務時間の積算の基礎に日曜日又はこれに相当する日の勤務の時間を含めることとし、平成23年度から実施

改定俸給表は国公労連ホームページに掲載中。
http://www.kokko-net.org/kokkororen/

リレーずいそう
ちょっとだけ

 2年前の夏、我が家に女の子が産まれました。妻が秋分の日に産まれて【あき】という名前だったことから、夏に産まれたので【なつ】という単純明快な名前をつけました。幸い大きな病気や怪我もせずに、元気に育っています。
 今回は、福音館書店の「ちょっとだけ」という絵本を紹介します。
 なっちゃんの家に赤ちゃんが産まれ、なっちゃんがお姉さんになったところから物語が始まります。お母さんは赤ちゃんのお世話で忙しく、いつもなっちゃんの要求に応えてあげる訳にはいかなくなりました。手をつなぐことも、牛乳をコップにつぐことも、着替えの時にボタンをとめることも、なっちゃんがしてほしい時に限って、お母さんは赤ちゃんのお世話で大変そうです。
 お母さんが忙しいので、なっちゃんは色々と自分ひとりでやってみます。赤ちゃんを抱き両手がふさがっているお母さんのスカートを「ちょっとだけ」つまんで歩き、牛乳をコップにひとりで「ちょっとだけ」入れることができて、パジャマのボタンも「ちょっとだけ」留められて…
 お姉さんになったからと頑張るなっちゃんですが、眠くなった時だけは、どうしてもお母さんに甘えたくなってしまいます。お姉さんになったことで感じる切なさや、それを乗り越え成長していく子供の姿を、母親の愛情と共に描いている絵本です。
 今年の秋にはうちのなつにも妹が産まれます。それを思うと涙なしでは読めません…
 (伊東支部 組合員)

第23回全厚生機関紙フェスティバル
 支部・分会の教宣活動を応援する「全厚生機関紙フェスティバル」を今年も開催します。応募紙は例年どおり、9月11・12日の第74回定期大会会場(熱海・ホテル「水葉亭」)に展示し、交流するほか、応募紙にふさわしい賞を設け表彰し、講評を行います。

<対象> 支部・分会・専門部で2009年9月から2010年8月までの間に発行した機関紙、およびメール配信されたニュース、ホームページに掲載されたニュース。
<参加方法> 所定の参加申し込み書に記入し、この間に発行したすべての機関紙を各5部ずつ送ってください。メールニュースの場合は全厚生のアドレスに送信してください。ホームページの場合は、URLをお知らせ下さい。
Mail:zenkosei@zks.dp.u-netsurf.ne.jp
<締切>8月18日(水)本部必着。

大臣官房人事課と交渉
異常な労働実態の改善を
 全厚生は7月29日、大臣官房人事課と夏期闘争の重点要求で交渉を実施。全厚生から飯塚委員長、田口・山本副委員長、杉浦書記長、平丸書記次長、小出・菅沼・峰各中執が出席。人事課からは、蒲原参事官、伊東人事調査官らが対応しました。
 冒頭、飯塚委員長は、人事院勧告を前に、厚生労働行政に携わる職員の生活及び労働条件改善に向けて最後まで努力することを要求。さらに社会保険庁職員の雇用問題で、分限免職処分を撤回し、日本年金機構に経験と専門性ある元社保庁職員を正規職員として採用することを強く要求しました。
 これに対し、蒲原参事官が一括回答。不当解雇撤回、雇用確保の課題では、「国民の公的年金に対する信頼を回復する観点から閣議決定が行われた。撤回は難しい」と回答。再就職支援は、「4月以降年金局総務課及び地方厚生(支)局でフォローアップを行っており、引き続き可能な限りでの努力をしたい」と回答。日本年金機構の欠員状態の早期解消、業務体制の拡充など、厚労省として最大限の努力を要求したのに対し、「年金制度は、国民の信頼回復が非常に大事な柱になっている。厚労省としても、日本年金機構を全面的にバックアップして、年金記録問題への対応、新しい年金制度の創設に向けて、日本年金機構と一体となって全力で取り組む」と回答。山本副委員長は、改めて、日本年金機構の労働条件改善に関する予算の積極的確保を厚生労働省当局に求めました。
 国立福祉施設の組織再編の課題では、現場の声や意見を反映させるために、全厚生との充分な協議を行い具体化すること。さらに、「塩原視力障害センター」及び「伊東重度障害者センター」の統廃合・廃止(案)の一方的な具体化を行わないことを要求。これに対し、「国立施設として機能の充実・強化を図っていくことが必要。将来を見据え、何をすべきかを、これまでの実績、経験を踏まえ、現場で十分議論をしていただき、意見があれば提供していただきたい」と回答。さらに「統廃合は、個々の施設ではなく国立施設全体として機能強化を図ることで今後とも存続させていく観点から苦渋の選択である」と回答。小出中執は、職員は統廃合に賛成していないし、利用者からも存続の声があがっている、この声に耳を傾けて欲しいと訴えました。
 試験研究機関の組織再編や統廃合の課題に対しては、「組織再編、統廃合のような動きが出てきた場合は、各試験研究機関との十分な合意形成が大事。合意形成ができるように厚生科学課に伝えていきたい」と回答。独立行法人の課題では、現在改革案を作成していると述べ、「今後新たな動きが出てくれば、情報を提供していきたい」と回答。
 人事院院勧告に向けた賃金改善の課題では、「社会一般の情勢を反映した適切な水準にすべきであるとともに、公務の特殊な状況及び職員の生活実態等を充分に考慮し、職員が安心して職務にあたることができよう措置することが大事。人事院に対し、いろんな機会を通じて申し入れる」と回答。本省庁職場の恒常的な残業改善の要求では、「職員の健康管理、仕事と家庭と両方の生活をする観点からも非常に大事」と回答。本省では非常に難しい面があるとしながら、「管理職員の意識を高め、職員が帰りやすい職場をつくることを徹底していく。メンタル対策にも力を入れていきたい」と回答。田口副委員長は、霞国公の残業実態アンケート結果も示しながら、残業月71・7時間は異常で深刻だ、と改めて長時間残業の一掃を強く求めました。

厚研連交流集会で意見交換
研究者も労働者、団結しよう
 7月30日、南青山会館において、全厚生試験研究機関支部連絡協議会・交流集会が6支部18人の参加で開催されました。
 政府主導の「無駄をなくす」のかけ声の下、研究関係の予算が大きく削られようとしており、対する厚労省の姿勢は、職員の士気を下げるものとなっています。厚研連は、この局面にどう対峙するか、厚労省傘下の試験研究機関がどうあるべきか、現場から示していきたいとの思いで、取り組みを進めてきました。
 交流集会では、国公労連・上野中央執行委員の情勢報告と、7月15日に行われた厚生科学課交渉の報告を軸に、各職場から現状と意見を出し合いました。
 この10年間、国研は独法化の嵐の中で文字通り翻弄されてきました。しかし国公労連を先頭として各分野で取り組みが進められた結果、「削減ありきではなく、真に国民生活に必要な研究機関の拡充」をとの主張が少しずつ浸透しているとの報告は、元気づけられるものでした。
 しかしこれまでとは違った規模の、省庁横断的な研究機関(国立研究開発機関:仮称)の創設も打ち出される中、税金を使って仕事をしている私たちは、国民に分かるように知らせ、アピールしていく必要性も強調されています。
 人も予算も削減で、現場は大変疲弊している現状がありますが、参加者からは「研究者も労働者であり、現状を打開するには団結して運動していくことが大切、それは憲法にも規定された権利である」との発言も出され、初心に返って明日からまた頑張ろうと決意をした人も多かったのではないでしょうか。
 終了後の懇親会でも引き続き議論を深め合い、大変充実した交流集会でした。

第2回全国弁護団会議を開催
人事院審理の反論書など議論
 8月2日、不当解雇撤回闘争第2回全国弁護団会議が都内で開催されました。北海道から愛媛までの総勢20人の各地の弁護士の他、国公労連から宮垣委員長が闘争本部長として、阿部副委員長・岡部書記長が闘争副本部長として、川村副委員長が事務局長として参加。全厚生は、全厚生闘争団長の飯塚委員長、副団長の山本副委員長、杉浦書記長、当事者から1人が事務局長として出席。また、当事者10人が会議を傍聴しました。
 今回の議論の中心は、各県の人事院審理日程の確認・答弁書の送達状況・反論書の状況について、反論書の作成が終わった香川県の主張のポイント、京都の裁判提訴の経過と意義・訴状のポイント、人事院へ提出する甲号証について、申立人側の証人について、などが報告・議論されました。
 人事院の審理日程では、すべて来年2月以降になり、トップが東京(2月1日から)と北海道(2月2日から)となり、この日程をスタートに準備を進めていくことが確認されました。反論書については、香川反論書や京都訴状を参考に各県で状況にあわせ準備を進めること。情報のやり取りを密にしてすすめていくこととなりました。甲号証は、リストアップされた準備物400ページを基本に内容説明をし、反論書との位置づけを明確にしていくことで準備を進めていきます。証人は、社会保険庁改革の経過を説明する証人と国家公務員の身分保障を主張する証人、申立人の状況を説明する証人を各県で準備し、公平審理に当たることが確認されました。第3回全国弁護団会議は11月8日です。
 8月2日午前中、全国弁護団会議の前に、各県の闘争団の当事者が会議を行いました。

塩原視力の存続を
高橋・塩川両衆議院議員が視察
 国立塩原視力障害センターの存続問題で8月9日、日本共産党の高橋ちづ子、塩川徹也両衆議院議員が塩原視力障害センターと国立障害者リハビリテーションセンターを視察しました。
 塩原の視察後、存続を求める会の生田目会長はじめ利用者ら4人と懇談。「廃止の理由は使用者の減少と説明されているが、障害者自立支援法の自己負担が大きく、あきらめている人が多いから」、「目が見えなくなったとき、自分が全部否定された感じがしたが、センターに来てやれることが少しずつ増えた」、「センターにたどりつくまで1年もかかった。もっとPRしてほしい」、「かけがえのない施設であり、存続させてほしい」と強く訴えました。高橋議員は「センターは中途で視力を失った方たちを支える施設。もっともっと活用すべきだ」塩川議員は「センターの大切さを広く知らせる事が大事だ」と述べました。
 国立障害者リハビリセンターでは視察後に、全厚生国リハ支部と懇談。「今回の廃止は、国家公務員の定員削減が出発点。国は所沢に機能を集中させ、全国モデルをつくるというが、センターを廃止したら全国モデルを地域に普及するなどできない」と政府・当局の進め方を批判しました。
 どちらも日本共産党の県議、市議が同席しました。

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