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 国公労連速報 2011年7月7日《No.2584》
 東日本大震災対策ニュースNo.28
 被災者救援・被災地支援の充実などを求めて政府に要請
     
 

 

 国公労連は7日午前、東日本大震災からの復旧・復興に係る要請書(別添)を菅総理大臣にあてて提出しました。

 国公労連は阿部副委員長を責任者に高木中執と2名で要請に臨み、政府は松本内閣参事官が対応しました。松本参事官は、「生活再建を急ぐ気持ちは同じ。大臣の辞任もあったが、公務員としてスピード感をもって努力していかなければならない。要請内容は震災復興本部を含め、関係部署に伝える」と述べました。

〈別添〉

2011年7月7日

内閣総理大臣 菅 直人 殿

日本国家公務員労働組合連合会
中央執行委員長 宮垣 忠

東日本大震災からの復旧・復興に係る要請書

 東日本大震災からの復旧・復興、原発事故の収束にむけてのご奮闘に敬意を表します。
 さて、東日本大震災復興基本法が6月20日に成立、24日に施行され、東日本大震災復興構想会議が25日に「復興への提言〜悲惨の中の希望〜」をとりまとめられたところですが、これらは被災市町村や被災者の意見・要望が反映されていないばかりか、復興に向けた具体像が明確でないなかで復興債の償還財源として消費税など基幹税の見直しを位置づけ、さらには民間資金の活用を促進するためとして「復興特区」の整備をうたうなど、財界の意向を強く反映したものとなっています。
 東日本大震災からの復興のあり方が、今後の日本の社会を決定づけると言っても過言ではありません。復興にあたっては、阪神・淡路大震災の際に、震災前から計画されていた大規模開発などが優先され、地元住民の生活再建が取り残された反省も踏まえ、被災者本位の生活再建と地域再生を最優先に位置づけ、被災地住民の生命と人権、暮らしと雇用を最重視した対策をとる必要があります。同時に、それらを下支えする公務・公共サービスの充実が求められます。
 以上のことから、下記事項の実現に向けた貴職のご尽力を要請します。

  1. 被災者救援・被災地支援の充実、被災地住民本位の地域再生
    (1) 被災者の当座の生活費を国の責任で確保する制度を設けること
    (2) 被災者生活再建支援制度の支援金支給要件を住宅被害以外にも拡大するとともに、支給限度額の引き上げや手続きを簡素化するなど改善すること
    (3) 諸外国のとりくみも参考に、国が一時的に被災自治体や医療機関の業務を代行することも含め、被災地支援の制度を拡充すること
  2. 納税者の有利・利便、権利保護の立場に立った税制・税務行政への転換
     (1) 被災地での調査・徴収事務は引き続き休止し、税務相談官を全署に配置することも含め、納税者の権利保護や利益・利便につながる制度の提供等の行政対応に徹すること
    (2) 還付金の早期処理を行うこと
    (3) 住宅ローン控除の適用期間は、被災住宅に係わる従来ローンの引継価格も含め長期化をはかること
    (4) 特別震災控除(仮称)を新設し、世帯人数に応じた税額控除を行うこと
    (5) 大企業・大資産家優遇、大衆課税をやめること。同時に、内部留保に課税を行うことを内容とした「震災復興臨時法人特別税(仮称)」を創設すること
  3. 登記行政の体制整備とサービスの拡充
    (1) 被災地域の住宅の再建や道路・河川等のインフラ整備のための土地の境界の復元などに向けて、法務局・地方法務局に専門的な組織体制を構築すること
    (2) 登記をはじめとした民事行政分野全般の相談業務を担うとともに、総合法律支援・扶助における地域のアクセスポイントの機能を拡充するため、法務局・地方法務局に専門的な組織体制を構築すること
    (3) 国と地方の役割分担の明確化を図ることを前提に、それぞれの行政運営の効率化を図るため、情報セキュリティの観点に留意しつつ、法務局・地方公共団体間において、登記や地図の電子情報の共有化を図るシステム・ネットワークを構築すること
    (4) 地域の身近な公共施設等においても、登記事項証明書や地図証明書などの発行が受けられるよう、完全自動化型の行政キオスク端末を開発し、普及すること
  4. 被災者の医療確保及び医療提供体制の確立
    (1) 今回の震災で国立病院などの公的病院が、全国的なネットワークも活用して被災地の医療確保に積極的な役割を担ったことを踏まえ、公立病院つぶしの「公立病院改革」をやめ、国公立及び公的病院の縮小、廃止、統合、民営化を行わず、医療提供体制を充実・強化すること
    (2) 訪問診療、訪問看護、訪問リハビリテーションなどの在宅医療の充実をはかるとともに、病院、診療所等の地域医療のネットワーク体制を確立すること
    (3) 全半壊・一部損壊、流失した医療機関や介護施設等の復興・復旧のために、設置主体に関係なく再建に見合う公的な助成を行い、被災したすべての医療機関・介護施設等を再建すること
    (4) 看護師の離職防止策を講じるとともに、被災地への医師派遣をはじめ医師、看護師などの医療従事者確保対策を確立し、被災地における医療を確保すること
    (5) 被災者の医療費一部負担金免除期間を2012年2月末に打ち切ることなく、被災者の健康と生命を守るため、被災者への支援を継続すること。また、食事療養費・生活療養費(2011年8月末期限)も医療費一部負担金免除と同様の取り扱いとすること
    (6) 被災者の医療保険料と介護保険料の全額免除を行うこと。とりわけ収入が少なく、生活困難な国民健康保険料軽減世帯及び介護保険料軽減世帯については減免すること
  5. 地元の資源を活かした経営で雇用を維持し、地域経済を支える中小企業・業者の復活
    (1) 被災事業者の社会保険料、労働保険料の納付免除期間を現行の「1年間」からさらに1年間延長すること
    (2) 被災中小企業・業者存続のため、実情に応じた緊急融資と既存債務の返済の条件を緩和または凍結すること
    (3) 被災地の緊急融資ニーズに対応できるよう、信用保証協会や政策金融公庫、商工中金職員等を動員し、十分な金融相談・手続き窓口を設置すること
    (4) 震災によって店舗・事業所を喪失した中小企業・業者のニーズに応じ、臨時店舗等の提供を行う事業を拡充すること。同時に、第2次補正予算で必要予算を確保するとともに、中小企業基盤整備機構の当該事業担当の体制を拡充すること
    (5) 中小企業・業者が支援メニューを活用できるよう、中小企業庁、経済産業局、中小企業基盤整備機構等の相談窓口の体制を強化すること
    (6) すでに福島県が行っている、空き工場・空き店舗を使った事業再開支援補助、工場・店舗等の再生支援補助の制度を国として行うこと
    (7) 被災した中小企業への緊急休業補償制度を創設すること
    (8) 復興のための公共工事、物品調達については、地元中小企業・業者が担えない事業を除いては、地元中小企業への発注を基本とすること
    (9) セーフティネット保証(4号 自然災害に起因する売り上げ減少)に指定するなど、全国に及んでいる震災の影響を抑える措置を講じること
    (10) 災害に強いまちづくりを推進するため、これまで自治体独自でとりくまれてきた耐震リフォーム助成制度を国として行うこと
    (11) 被災地の復興と同時に東海、東南海、南海、日向灘などの地震に備え、避難施設整備などの必要な防災対策事業を早期に実施し、その施工を地元中小企業に発注すること
    (12) 自粛ムードが払拭されないなかで経営困難に直面している観光業などのサービス業対策として、夏の電力対策もかねて長期休暇の奨励などで観光業の振興を図ること
  6. 農林水産業が持続的に発展できる環境の構築
    (1) 国内の農林水産業と地域を崩壊させる特区制度による市場経済の導入やTPPへの参加は行わないこと
    (2) 国民の食料をまかなう農地・漁港等施設及び国土保全と環境保全に必要な森林は、国の責任により地元業者の施工で復旧・復興をはかること
    (3) 全国の農林水産業関係公共施設の強度検査と補修管理を国と都道府県の連携で速やかに実施するとともに、適切な維持管理を行うこと
    (4) 今回の震災被害を分析するとともに地域住民の意向も踏まえたうえで、国と都道府県が連携して全国的な農林水産業の防災対策を行うこと
    (5) 行き過ぎた輸入自由化政策を見直し、国内の農林水産業が持続的に発展できる環境を構築すること。後継者や新規就業者が農村・漁村に安心して定住できるよう、地域の意向に沿った生活環境整備を進めること
  7. 雇用・労働政策の一層の充実と労働行政体制の拡充
    (1) 被災者の多くは地元での再就職を強く希望しており、地域で生活を再建できるように適切な労働条件で公的雇用を創出すること。とりわけ、福島第1原発周辺地域では、事故が収束しても、廃炉となった後に雇用が確保できる状況になく、自然エネルギーによる大規模発電施設の建設など、国の責任による地域復興と雇用確保をはかること
    (2) 農業や水産業、その関連産業の離職者が職業転換を希望する場合には、国の責任で良質な公共職業訓練を実施すること
    (3) 被災地等の厳しい雇用情勢に照らし、雇用保険の失業給付について、さらなる延長給付を検討するとともに、生活保護制度等を積極的に活用するため、労働行政と福祉行政の連携をはかること
    (4) 災害復旧・復興に係る建築・土木工事における労働災害防止に向けて、臨検監督等を強化すること。特に、1)建築物等の解体、がれきの処理における石綿(アスベスト)等ばく露の防止、2)PTSD対策を含むメンタルヘルス対策、3)墜落・転落災害防止、4)土砂崩壊災害の防止等に万全の対策を講じること
    (5) 福島第1原子力発電所の作業に従事する労働者の被曝防護及び被曝管理(内部被曝を含む)を徹底するとともに、作業に従事したすべての労働者の長期的な健康管理(被曝量に応じた手厚い医療、生活支援を含む)を国の責任で行うこと
    (6) 福島第1原子力発電所の周辺地域のうち、地域(電離放射線障害防止規則第3条に定める管理区域)における3月間につき1.3ミリシーベルトを超えるおそれのあるあらゆる作業について、電離放射線障害防止規則を改正し、同規則の適用(安全衛生教育、被曝防護及び管理、健康確保策等の義務化)を図り、監督指導を徹底すること
    (7) 原子力発電所の作業をはじめ、重層的な請負関係のもとで下請企業の労働者が、十分な安全確保措置、労働安全衛生教育等が講じられないまま、危険有害な作業に従事する状況がある(安全確保に必要な連絡調整や長期・継続的な健康管理が難しく、また、請負業者間の価格競争が安全確保措置や安全衛生教育を軽視する傾向がある)ため、こうした状況を解消する法制上の規制を講じること
  8. 国民の生命や暮らし・国民の足を守る政策への転換
    (1) 交通手段の地域間格差などの交通運輸の不均衡な「発展」を是正し、「誰でも、いつでも、どこへでも、安心、便利、快適、正確に移動でき、かつ自由に物資を輸送できる」権利としての『交通権』を確立するため、「交通基本法(仮称)」を制定すること
    (2) 交通政策は「生活交通中心、社会的公正の重視、環境と安全を守る交通体系の構築」を基本理念にすえ、1)「交通ニーズへの対応」型から「ニーズの管理調整」型に、2)交通管理の手法を「市場競争万能」から「必要な公的規制を強化する」に、3)交通事業の評価基準を、従来の「経済効率」から生活・環境・安全・公正を重んじる「社会的効率」へと抜本的に転換すること
    (3) 被災したローカル鉄道は、高齢化や過疎化などの進行が顕著な被災地において地域住民の貴重な交通手段となっており、沿線の復興にとって不可欠であることから、復旧費用の負担も含めて国が責任を持って早期に復旧すること
    (4) 被災地域の経済を再生し住民の安心・安全を確保するためにも、復興事業を通じて地域中小建設業を育成するとともに被災者を優先的に雇用すること。
    (5) 不要不急の事業は中止・休止して住宅、福祉、防災、安全などの生活基盤を中心にした公共事業を推進すること。また、今回の大震災での被災状況も踏まえ、公共事業の重点は既存施設を長期利用するための維持管理、更新に移行すること
    (6) 住居の再建、営業の再開、雇用の確保による本格的な復興を進めるため、地域住民の参画のもと、財政的な裏付けとともに災害に強いまちづくりのあり方を示し、県市町村の計画策定の基本ともなる「地域再生指針(仮称)」を国が早期に作成すること
    (7) 復興にあたっては、都市計画や土地利用計画を決定するプロセスを明らかにするとともに、各種手続きの簡素化・短縮化は安易に行わないこと
    (8) 国民の生命と財産をまもるために、災害の予防・交通の安全確保・地球環境の保全などに資する、より精度の高いきめ細かな気象情報は、国の直接的な責任で提供していく必要があるため、地域のくらしや経済活動に密着した情報や観測データを提供する拠点として、気象台・測候所の充実をはかること
    (9) 日本列島はどこでも地震災害が起こりうることから、地震・津波監視業務をさらに強化し、観測機器の整備と技術者の確保・育成をすすめると同時に、火山監視・観測設備の早急な整備やただちに現場に急行できるよう気象庁の機動力向上など総合的な監視体制を強化すること
    (10) 住民の安心・安全を確保する防災行政無線や消防無線の整備など、非常災害時に必要とされる通信手段については、国の財政支援のもとで整備を進めること
  9. 行政サービスの体制・機能の充実等
    (1) 震災からの復旧・復興に対応するため緊急増員を行うこと。また、国の行政に係る職場や事業において、生活再建に足る労働条件で被災者の雇用を確保すること
    (2) 震災により増大する業務に対応するため、超過勤務手当や旅費など必要な予算措置を行うこと
    (3) 被災地での業務に起因するメンタル疾患に対応するため、予算確保など必要な措置を行うこと
    (4) 被災した庁舎や宿舎の修繕を行うとともに、来庁者と職員の安全確保のため、すべての庁舎の耐震対策を行うための必要な予算措置を行うこと
    (5) 震災によって生じた、勤務に要する自己負担については、すべて国の責任で解消すること
    (6) 東日本大震災の救援・復旧において、本省と全国が一体となって業務を進める国の出先機関の重要性が明確になったことを踏まえ、出先機関の原則廃止・地方への移譲方針を撤回するとともに、震災からの復興が実現した段階で国と地方の適切な責任と役割のあり方を再検討すること
以上
 
 
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