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 国公労連速報 2011年5月27日《No.2557》
 給与削減問題で政務官交渉
 根拠なしルール無視の賃下げ強要は認められず
 改めて大臣による説明を求める
     
 

 

 国公労連は27日、自治労連、全教のメンバーも含め、公務員給与削減問題で三度目となる総務省政務官交渉を実施しました。
 冒頭、給与削減問題に関し、内山政務官は前回の人事・恩給局長交渉で宿題として残した事項について、改めて次のように回答しました。

  • 団結権のない職員への対応 : 今般の給与引下げは、労働基本権制約の代償措置である人事院勧告に基づかない極めて異例の措置であることから、使用者である政府としては、職員の皆さんを代表している立場である職員団体の皆さん達と、自律的労使関係制度を先取りし、今般の措置の理解が得られるよう、真摯に話し合いを行ってきているところ。
     また、各府省に対しては、内閣官房副長官から各省事務次官に対し、給与引下げを行う趣旨などについて説明を行い、総務省から、団結権の無い職場も含め、各府省人事当局に対しても同様の説明を行っているところ。
     さらに、然るべきタイミングで、国家公務員全体に対するメッセージを政府から発し、今般の措置について、職員の皆さんの理解が得られるように努めてまいりたい。
  • 交渉決裂時の救済措置 : 今般検討している給与減額措置は、@極めて厳しい財政状況等に鑑み、A極めて異例の措置として、B時限的な措置として行うものであり、皆さんとも真摯に話し合った上で行おうとしているもの。我々としては、皆さんとの交渉を通じ、本措置の必要性について十分に理解いただけるよう、努力したいと考えている。
  • 職員の生活等への影響 : 職員の皆さんには、今回の東日本大震災への対応を含め、日夜公務に精励していただいていると認識している。一方で、現下の経済社会情勢や厳しい財政事情に加え、東日本大震災の復旧・復興支援のために多額の経費が必要となることを踏まえれば、歳出の削減は待ったなしの課題であり、国家公務員の皆さんにもご協力をいただかなければならないと考えている。
     今回提案させていただいている給与引下げ案については、大変厳しい内容であり、職員の皆さんの生活にも大きな影響を与えるものではあることはよく理解している。
     このため、@俸給の減額率について、給与額の少ない中堅・若手層には一定の配慮を行うこととしたほか、A東日本大震災への対応等の業務に関する超過勤務手当について、その実態を踏まえて実績に応じた支給が確保されるよう努めてまいりたいと考えている。
     いずれにしても、今回の給与引下げについては、大変心苦しく思うが、是非とも事情をご理解いただき、ご協力をお願いしたい。

 この回答に対し、岡部書記長は「前回までと変わらず、我々の主張を正面から受け止めた回答とは言えない」と強い不満を表明。「全国の職場では、賃金は下げるが仕事はがんばれという政府の姿勢に怒りが沸騰している」「一部の組合は提案に合意したというが、我々は到底納得できない。2つの組合の意見が異なる中で、政府として今後どうするつもりか。また、団結権がない職員の権利保障、1割削減の根拠や財政再建との関係、現行人勧制度による給与決定ルール無視とその法的根拠などについての回答もない」と主張し、改めて政府側の見解を求めました。

 それに対しては、村木人事・恩給局長が次のように補足説明しました。

  • 団結権のない職員への対応 : 従来、団結権のない職員の給与は、人勧による給与ベースを基に決めてきたし、今回も交渉グループの結論に準じて、交渉グループの給与水準とバランスをとって決める。その原則は貫くし、ルールなしで決める訳ではなく、一定の権利は確保される。いずれにせよ、最終は法律として提案し国会で判断してもらう。勤務条件法定主義であり、これも一定の権利保障につながる。
  • 交渉不調の際の救済措置 : 今回はまさに臨時・異例の措置であり、自律的労使関係制度の確立以前の今回のような事態を想定した整理はしていない。(紛争調整のしくみが)現行法にないことはその通りだが、誠実に話し合い、最終的には法律を出して国会が判断することで担保されると考える。

 さらに組合側は、次のような論点で政府側を厳しく追求しました。

  • 人勧に基づかない給与変更が可能な法的根拠を明らかにすべきだ。また、3年の時限措置については、自律的労使関係制度が3年後に確立することをあげているが、その時までにそれが確立する保障も担保もなく、それを論拠とする議論もおかしい。82年の人勧凍結時の判例では公務員が将来展望もなく、数年間にわたって凍結が続くわけでもないとして、代償措置が画餅に帰したとまでは言えないとされた。今回は人勧もないまま政府の判断で3年間の削減法案を出すということであり、公務員の権利は蹂躙されっぱなしだ。
  • 政府が違法なことをやろうとしていが、その根拠についての説明がないまま、議論に入れるだろうか。公務員も身を削るべきだというが、家族や家を失った職員はすでに身を削って日々の仕事にあたっている。現場の行政執行体制が落ちている中、応援を出している現場も大変だ。そのような中で職員は独自カンパをしながら、ボランティアとしても活動している。
  • 3年の時限措置というが、その間我慢すれば元に戻る保障もない。3年後に財政が好転する見通しはまったくなく、改めて削減が提案されることにもなりかねない。今年の人事院勧告をどうするのかについても不明のままだ。勧告なしでも政府の判断で削減法案が出せるという認識は問題だ。それを避けるために人勧制度があり、今の決定ルールがある。勤務条件法定主義は政府の人事管理をコントロールする側面もあり、国会で承認されればよいということにはならない。それを許せば、公務員の権利は形骸化し、職員の士気は低下し、公平・効率的な業務運営にも重大な影響を及ぼす。
  • 財政状況が削減の根拠というなら、具体的指標や財政再建に向けた計画等を示したうえで、提案するのが当然だ。また自治体には複数年次の削減はなく、単年度が中心だ。3年というなら3年間の財政見通しや再建計画も示してやるべきだ。ていねいな説明もないままお願いするというだけでは中身の議論に入れない。
  • 我が国は10年間も賃金が下がり続け、年収200万円以下が1千万人、生活保護世帯員数も200万人超に達する。このような問題こそ復興と結びつけて真っ先に解決すべき課題であり、賃下げはそれに逆行し、将来展望も失わせるものだ。
  • 今回の措置が自律的労使関係制度の先取りというなら、恐ろしいことだ。使用者が必要だと判断する場合、法定主義をタテに権力的に勤務条件を決定できるというになる。使用者にとってまさに「いいとこ取り」ではないか。
  • 3年間というが、生活では出て行くものは出て行く。ローンを組んでいる人も多い。子育て中の職員も多い。その人たちの気持ちを考えて提案すべきだ。
  • 交渉というなら使用者として責任ある態度を取るべきだ。財政事情が悪いから組合もそろそろ折れてはどうかというように聞こえる。そもそも政府は職員にも財政悪化の共同責任があると考えているのか。現在の借金では10%カットでも足りず、公務員はずっとただ働きしなければならなくなる。そうした不安が職員の士気をそぐことになる。身を削りがんばれというだけでは無理だ。

 これに対し、政府側は以下のように「臨時・異例の措置」について理解を求めるとの回答に終始しました。

  • 今回の措置が通常の勧告を受けて法案を提出する従来ルールと異なることは確かだが、違法とは認識しておらず、一定の許容範囲と考える。現状では権利保障の細かいところまでは完璧とはいえないものの、3年間の制限付きで、話し合いでなるべく合意してやるという点、最後は国会の判断で法定主義の基本に返るということから(合法だと考える)。3年で給与法のレギュラーな状態に戻るよう平成25年までの措置としたい。
     通常のやり方を少しでも外れるから違法だとはならない。昭和57年もいくつかの制約をクリアした上で、人勧どおりに改定していない。厳しい財政事情と時限付き措置などを考慮し、最終的に国会で審議してもらう手続きを踏めば違法ではないとして対応した。
     国公法28条は、公務員の勤務条件は国会が社会一般の情勢に適応するよう随時変更できる、と国会が決められるとしている。変更にあたっては人事院勧告が必要になるが、逆にいえば勧告がないから国会が決定できないことにはならない。通常の場合でも人勧に基づいて法案を出し、最終的には国会に決定権限がある。ただし、何でも自由にできるわけではなく、制約条件はあり、時限措置など一定の節度をもってやらねばならない。
  • 自律的労使関係制度確立のための法案などは、政府としてその成立に努力する。確かに国会の審議次第であり成立の約束はできないが、賃下げ措置の法案が通れば平成25年で一応消えることははっきりしている。その段階では、労使交渉で財政事情を含めた適正な給与を決められるようになることを望んでいる。
  • 財政再建は政府の方針でもあり、財政の中期展望も出ている。厳しい財政事情の中で震災に伴う復興歳出でさらに悪化することはだれもが認めるところ。数字がないから理解できないというのは言い過ぎではないか。具体的な計画がないから人件費も手を触れないでよいともならない。できる範囲でやることが必要だし、それは待ったなしだ。
  • 3年後の財政状況については、まったく分からない。復興費用や原発事故に伴う天文学的な額に上るだろう。根拠がないというのはそのとおりだが、少しずつでも出しあうということで、3年間だけ何とか協力をお願いしたい。その分は労使交渉が実現した際にしっかり主張してほしい。社会保険労務士の立場としては中小零細企業の現状はよく分かるが、今は政府の代表として何とか提案に理解をお願いするしかない。3年後に景気もよくなり苦労が報われるようにしたい。
  • 3年間の厳しい数字であることは思うが、何とか理解してほしい。削減分は復興の財源にも使われる。ひいては日本経済全体の発展にも寄与することになろう。職員の仕事の結果で財政が悪化したとは言えないが、民間でも経営赤字の場合は、従業員に経営責任はないとしても何もしなくてよいとはならないだろう。

 最後に岡部書記長は「政務官との3度にわたる交渉でも、依然私たちが求めている賃下げの理由と根拠、経済・景気へのマイナス波及、職員のモチベーション低下、現行制度下でのルール問題など、いずれも納得できる説明は果たされていない。平行線のままの議論を一体どうするつもりなのか。一方的に賃下げを強要する見切り発車は断じて認められない。我々の方から交渉の席を立つつもりはない。政府と我々のどちらに大義があるかについても国民にも判断してもらいたい。次回以降はこれまでの議論を踏まえて大臣と直接交渉したい。政府としての明確な説明や統一見解をいただきたい」と強く主張。内山政務官は「理解をいただけず残念だ。今後のことは片山大臣とも相談し検討したい」と回答しました。

以上
 
 
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