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談話
 国の責任を地方に押し付ける出先機関改革
 「アクション・プラン」の閣議決定にあたって(談話)
     
 

 

2010年12月28日
日本国家公務員労働組合連合会
書記長 岡部勘市

 政府は本日、「アクション・プラン〜出先機関の原則廃止に向けて〜」(以下「アクション・プラン」)を閣議決定した。「アクション・プラン」は、@出先機関の事務・権限をブロック単位で移譲することとし、その枠組みとしての広域実施体制の法案を2012年の通常国会に提出、2014年度中の事務・権限の移譲を目指す、A地方自治体が特に要望してきた一般国道と一級河川、公共職業安定所を名指しして事務・権限の移管や移譲を提起し、B他の出先機関についても地方自治体の要望を踏まえて事務・権限の移譲を進め、C国の事務・権限の徹底した見直しによる出先機関のスリム化・効率化を行う、D財源の移譲、人員の移管に関わる必要な措置、仕組みを検討・構築する、などとしている。

 地域主権戦略会議における「国の出先機関改革」の議論は、5月下旬の「公開討議」や全国知事会の「国の出先機関原則廃止プロジェクトチーム」の中間報告をもとに、事務・権限の移譲ありきで終始してきた。所管する出先機関の事務・権限の仕分けで各府省が指摘した国民の権利保障は全く省みられず、国と地方の適切な責任と役割の分担に関する議論も行われていない。
 国公労連は、国民の基本的人権を保障する国の責任を切り縮め、地方自治体に丸投げする「国の出先機関の原則廃止」にむけた「アクション・プラン」の策定に断固抗議するものである。

 「アクション・プラン」では、名指しした国道や河川の移管について、「広域的に移動する道路利用者の視点に留意する」、「河川管理は国民の生命・財産に影響を与えかねないものであることに留意」、「流域の関係市町村長の意見を聴く」と留意点や危惧を表明している。また、公共職業安定所については、労働政策審議会が意見表明しているとおり、国が責任をもって直接実施することによって機能的にその役割を発揮できるのであり、地方移管では国民の勤労権が阻害されてしまう。
 全国知事会などは、出先機関は都道府県との「二重行政」と批判してきたが、事務・権限移譲の受け皿を「広域的実施体制」としたこととあわせ、出先機関の廃止や移管が国民の権利をないがしろにするものであることは明白である。
 同時に、「広域的実施体制」の検討は、財界が「究極の構造改革」とする道州制導入への足掛かりに他ならないことも指摘しておく。

 国公労連は、国の「出先機関改革」は職員の身分・雇用に関わる重大な問題として政府との交渉・協議を再三申し入れてきたが、まともな対応は一切行われていない。毎日新聞の9月の全国世論調査では「地域主権改革」を知らないとの回答が7割近くになっているが、当事者や国民を排除して進められている「地域主権改革」の狙いは、「新しい公共」などの「公共サービス改革」とも相まって、本来国の責任で行うべき公務・公共サービスを破壊するものである。同時に、「補完性の原理」で地方や国民に自己責任を押しつけ、財界・大企業に奉仕する国のかたちに変えることにある。

 都道府県労働局や地方整備局、地方法務局、地方運輸局、経済産業局、総合通信局、地方厚生局などの国の出先機関は、くらしや雇用、安心や安全の確保など国民の基本的人権を支える国の責任を果たすため全国に配置されている。貧困や格差の拡大が社会問題となっているいま、国民が求めているのは出先機関のスリム化や効率化ではなく、その機能や体制の拡充である。

 国公労連は、国民の生存権を保障するナショナルミニマムに対する国の責任を放棄する「地域主権改革」の具体化を許さず、広範な国民や地方自治体関係者とも共同して、憲法をくらしと行政にいかし、国民本位の民主的な行財政・司法を確立するために奮闘するものである。

以上



〈※参考資料〉


アクション・プラン〜出先機関の原則廃止に向けて〜

 国のかたちを変えて、住民に身近な行政はできる限り地方自治体に委ね、地域における行政を地方自治体が自主的かつより総合的に実施できるよう出先機関の事務・権限をブロック単位で移譲すること等により、出先機関改革を下記のとおり進める。


1.出先機関の事務・権限をブロック単位で移譲することを推進するための広域的実施体制の枠組み作りのため、所要の法整備を行う。その際、以下の点に留意しながら進める。

 (1)広域的実施体制の在り方について
 広域連合制度を活用するための諸課題について検討を行った上で、新たな広域行政制度を整備する。その際、出先機関の事務・権限のブロック単位での移譲を受けようとする具体的意思を有する地域との間で、十分な協議・調整を行う。
 なお、北海道等については、地域特性に配慮した特例を設ける。

 (2)事務・権限移譲の在り方について
 出先機関単位で全ての事務・権限を移譲することを基本とする。
 全国一律・一斉の実施にこだわらず、広域で意思統一が図られた地域からの発意に基づき移譲する仕組みとする。

 (3)職員、財源に係る措置の在り方について
 移譲対象機関の職員の身分取扱い等に係る所要の措置を講ずる。
 また、移譲される事務・権限の執行に必要な財源を確保することとし、ブロック単位で大幅な事務・権限の移譲が行われる場合には、税源移譲についても検討する。

 (4)スケジュールについて
 平成24年通常国会に法案を提出し、準備期間を経て26 年度中に事務・権限の移譲が行われることを目指す。

2.地方自治体が特に移譲を要望している事務・権限については、次のように整理する。

 (1)直轄道路
 一般国道の直轄区間の移管については、一の都道府県内で完結するものについては原則移管することを基本とし、それ以外のものの受皿となりうる1の体制が整うまでの間にあっても、国と都道府県・指定都市との個別協議に基づく移管が早期に実現するよう、その対象の拡大も含めて移管の対象となり得る道路を国と都道府県・指定都市の間で確認し、積極的に取り組んでいく。
 なお、移管に際しては、広域的に移動する道路利用者の視点に留意するとともに、関係市町村長の意見を聴く。

 (2)直轄河川
 一級河川の直轄区間の移管については、一の都道府県内で完結する水系に属するものについては原則移管することを基本とし、それ以外のものの受皿となりうる1の体制が整うまでの間にあっても、国と都道府県との個別協議に基づく移管が早期に実現するよう、その対象の拡大も含めて移管の対象となり得る河川を国と都道府県の間で確認し、積極的に取り組んでいく。
 なお、移管に際しては、河川管理は国民の生命・財産に影響を与えかねないものであることに留意し、住民の生命・財産の保護の責務を有する流域の関係市町村長の意見を聴く。

 (3)公共職業安定所(ハローワーク)
 利用者である地域の住民の利便性を向上させる観点から、まずは、希望する地方自治体において、国が行う無料職業紹介、雇用保険の認定・給付等の事務と地方が行う無料職業紹介、職業能力開発、公営住宅、福祉等に関する相談業務等が、地方自治体の主導の下、運営協議会の設置などにより一体的に実施され、利用者の様々なニーズにきめ細かく応えることが可能となるよう、所要の措置を講ずることとする。その際、国は地方自治体からの特区制度等の提案にも誠実に対応することを基本とし、国の求人情報等の地方自治体への提供等当該一体的な実施の具体的な制度の内容については、地方自治体の実情に応じて、国と地方自治体が協議して設計する。
 上記について速やかに着手し、当該一体的な実施を3年程度行い、その過程においてもその成果と課題を十分検証することとし、広域的実施体制の枠組みの整備状況も踏まえ、地方自治体への権限移譲について検討することとする。その際には、ILO第88 号条約との整合性、都道府県を越えた職業紹介の適切な実施、雇用対策における機動性の担保、保険者の変更等雇用保険財政の根本に関わる議論等に留意する。

 (4)直轄道路、直轄河川及び公共職業安定所(ハローワーク)について、上記改革を円滑かつ速やかに実施するための仕組みを地域主権戦略会議の下に設ける。

3.2以外の事務・権限については、1の体制が整うまでの間にあっても、地方自治体の意見・要望を踏まえ、事務・権限の移譲を積極的に行う。

 (1)一の都道府県内でおおむね完結する事務・権限については都道府県に移譲する。そのうち、速やかに着手するものについて、関係府省が行った自らが所管する出先機関の事務・権限仕分け(以下「自己仕分け」という。)において全国一律・一斉に地方自治体に移譲するものとされたもの(「自己仕分け」結果において「A−a」とされたもの)を参考にして、移譲に向けた取り組みを実施する項目及びその実施に向けた工程を地方と協議した上で平成23 年6月末までに整理する。

 (2)複数の都道府県にまたがる事務・権限を含めて、個々の地方自治体の発意に応じ選択的に移譲する事務・権限及び個々の地方自治体の発意による選択的実施を認め、その試行状況を踏まえて移譲の可否について判断する事務・権限(「自己仕分け」結果において「A−b」又は「B」とされたもの等)については、構造改革特区制度等の活用などにより選択的・試行的に移譲を進めることとし、これらの移譲を円滑に進めるため、地方自治体からの相談窓口を設ける等所要の体制の整備等を行う。

 (3)(1)及び(2)を円滑かつ速やかに実施するための仕組みを地域主権戦略会議の下に設ける。

4.国の事務・権限の徹底した見直しによる出先機関のスリム化・効率化を行う。

5.財源・人員の取扱いについては、事務・権限の地方自治体への移譲を円滑に実施するため、以下のとおり、進める。

 (1)財源の取扱い
 事務・権限の地方自治体への移譲及び国から地方自治体への人員の移管等に際しては、改革の理念に沿って、それに伴う財源を確保することとし、必要な措置を講ずる。

 (2)人員の移管等の取扱い
 事務・権限の地方自治体への移譲に伴う人員の地方移管等の取扱いについて、技術や専門性を有する人材活用の観点から、職員の雇用と国と地方を通じた公務能率の維持・向上、国と地方の対等の立場にも配慮しつつ、次のような方向で、人員の移管等の仕組みを検討・構築する。
 @ 人材の地方自治体への移管等について総合的な調整を行うため、国と地方の双方の関係者により構成される横断的な体制を整備
 A 人材の地方移管等に当たって必要となる枠組み・ルール等の構築(移管等が必要となる要員規模の決め方、移管等の方法、身分の取扱い、給与を含む処遇上の取扱い、退職金の負担等)

以上



 
 
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