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国公労新聞2010年11月10日(第1336号)
 
 

◆「来年度以降、新たな人件費削減措置」
 人勧取扱いの閣議決定

 国公労連四役は11月1日、今年の人事院勧告取り扱いをめぐって対政府交渉を実施。総務省側は、「今年度は勧告どおり改定する一方、人件費を削減するための措置を検討し、必要な法案を次期通常国会から、順次、提出する」という回答を行いました。国公労連は一方的な提案内容に強く抗議しました。政府は同日、回答内容の人勧取り扱い方針を閣議決定しました。国公労連の岡部勘市書記長は抗議の談話を発表しました。

◇【国公労連】一方的通告に断固抗議)

 岡部書記長談話では冒頭、「政府による一方的かつ前代未聞の人件費削減通告に満身の怒りを込めて抗議」するとともに、「政府・使用者が労働条件決定に直接関与しようとするのであれば、直ちに争議権を含む労働基本権を完全に回復し、労使対等の労働条件決定システムと関連諸制度の整備に向けた交渉・協議を開始することを要求」しています。
 談話は、前段の「完全実施」については、今年の勧告が、<1>職員の生活や労働の実態を顧みない2年連続の賃下げであるばかりか、年齢差別の賃金減額措置を盛り込んでおり、<2>不利益変更となる制度改変であるにも関わらず、誠実な交渉・協議が尽くされておらず、基本権制約の代償に値しない勧告であり、<3>公務員の賃金切り下げが、賃下げスパイラルを加速させ、地域経済にもマイナス効果をもたらすことになり、「重大な問題点を含んでいることから、容認しがたい」としています。
 また、後段の「人件費削減措置」は、「『自立的労使関係制度』の構築とは相容れない閣議決定という最高権力による一方的な労働条件切り下げ通告であり、今後、現行人事院勧告制度は無視するということに他ならない」と抗議しています。さらに、「そもそも『自立的労使関係制度を措置する』などという表現に象徴されるように、労働基本権を憲法に保障された労働者の人権としてとらえるのではなく、立法政策上の制度として発想してきたことに問題の大本がある」と厳しく批判しています。
 最後に、「今臨時国会における給与法『改正』法案に反対の立場を堅持するとともに、『賃上げと雇用の安定で内需拡大と貧困の解消』をめざす国民的運動の発展に力を尽くす」と述べると同時に、「いかなる形であれ『人件費削減措置』の具体化を許さず、国民生活の改善に向けた来年度予算の編成とするため、全力をあげる決意を表明」しています。


◆社保庁不当解雇撤回で全争議団集結
 10・22全労連争議支援総行動

 全労連、東京地評は10月22日、争議支援総行動を実施し、厚労省前昼休み行動にはすべての争議団が集結し、社保庁職員の不当解雇撤回を求めました。
 全厚生闘争団の中本邦彦事務局次長が「分限免職となり、自ら命を絶った仲間もいる。不当解雇を撤回させ、安心して働き続けられる社会、安心して暮らせる年金制度を確立するため力いっぱい奮闘していく」と声を詰まらせ決意表明すると、「がんばれ」との声援がありました。


◆労働基本権を国際基準で
 労使対等で労働条件決定を

 「労働基本権に代償措置はあり得ない」、国公労連は一貫して主張し、労働基本権の完全回復を求めてきました。今年の人勧取り扱いでの、マイナス勧告のさらなる引き下げ議論や、賃下げのための法改正を鮮明にした閣議決定でもこの点は明白です。公務員労働者にスト権を含む労働基本権を回復し、要求を前進させるためにも、学習の推進と組織の強化・拡大が重要な課題となっています。

Q1 労働基本権の回復にむけて、どのような動き、議論になっているのでしょうか?

◇来年の通常国会にも「協約権」等の法案提出

A1 第2次世界大戦後、新憲法のもとで公務員にも団結権とともに争議権を含む労働基本権は保障され、ストライキを背景に要求前進をかちとってきました。しかし、1948年、アメリカ占領軍と政府は公務員の争議権と協約締結権を一方的に剥奪しました。
 公務員労働者と労働組合の悲願である労働基本権の全面回復は、長年の運動もあり、ILO(国際労働機関)も何度も日本政府に勧告をしてきました。
 こうしたなかで、2008年6月に公務員制度改革基本法が成立し、それに基づき労使関係制度検討委員会が設置されました。検討委員会は2009年12月に、報告「自律的労使関係制度の措置に向けて」をまとめ、政府は来年の通常国会に「労働協約権締結等」の法案を提出することにしています。
 報告は、幅広い選択肢を示しています。不明確な要素も多く具体的な制度設計とはなっておらず、政府の検討に委ねる形となっています。
 労働基本権には当然争議権も含まれますが、このことには一切触れていません。労働三権は、公務員を含むすべての労働者に保障された基本的人権であり、全面回復が当然です。
 また、協約内容と国会との関与の問題もあります。財政民主主義や議会制民主主義という憲法上の要請をどう調整していくのか、協約締結しても、すべてが国会での法律制定が必要となると協約締結権の機能が形骸化してしまいます。
 国会の関与をできる限り少なくし、協約内容が効力をもつシステムをつくる必要があります。

Q2 憲法とILO基準にもとづく労働基本権の回復とはどういうことでしょうか?

◇争議権も含め全面回復と労使対等の決定システムを

A2 憲法28条は、公務員労働者にも労働基本権として、団結権、団体交渉権、団体行動権(争議権)を保障しています。ILOも2002年から6度にわたって、団結権、団体交渉権および協約締結権を保障し、国家の名のもとに権限を行使しない公務員への争議権も保障するように日本政府に勧告(別紙1)しました。
 国公労連は、労働基本権の完全回復とともに、労使対等の労働条件決定システムの確立をめざしています。現行のように詳細にわたって法律や規則で決める勤務条件法定主義ではなく、労働組合と政府が対等の立場で交渉して協約を締結した内容が、これまでの法律や規則、規程に変わって効力を持つようにするものです。
 また、労使対等ですから、民間労働法制における労働組合の団結権に対する不当介入・干渉は当然のこと、交渉においても政府の一方的な労働条件の押しつけや不誠実交渉、交渉拒否等の不当労働行為は認めないということです。
 報告は、「排他的交渉代表制」(別紙2)を選択肢の一つとして残しています。これは、職員の過半数を組織する組合だけに交渉権を付与するというもので、少数組合の排除が狙われています。職場の労働組合が複数併存する場合、少数組合であっても交渉および協約締結権は保障されなければなりません。

Q3 労働基本権が回復すれば、公務員の労働条件や公務・公共サービスはよくなるのでしょうか?

◇労働組合の力量強化でより良い職場と行政を

A3 政府は公務員の総人件費2割削減の実施を求める自民党やみんなの党からの追及に対して、労働基本権を付与し、労使交渉で適正な給与水準を決めると回答。つまり、賃下げを狙っています。
 政府の一方的な賃金切り下げには断固反対し、労使対等の原則にたって、不当労働行為には徹底的に反撃していくことが必要です。労使交渉では賃金切り下げに合意する必要はなく、最後は第三者機関に調整をあずけることが考えられます。
 民間における労使交渉の教訓では、正当で道理ある要求ですべての組合員が団結し、労使交渉を強化することで要求前進につながっています。労使交渉とは、攻撃を跳ね返し組合員の要求を前進させる絶好の機会です。
 今まで、すべてが法令で定められていた賃金や労働条件が労使交渉を基本に決定されることになれば、労働組合の力量いかんによって要求前進の可能性が広がることになります。そのことによって、疲弊した職場を変え、生きがいを持って働き続けられるルールが確立できます。そして、憲法15条に謳う「全体の奉仕者」としての誇りを取り戻し、公務・公共サービスの拡充に貢献することにもつながります。

Q4 人勧制度がなくなるようですが。労働条件はどのように決まっていくのでしょうか?

◇政府の一方的決定ではなく、労使交渉を経て決定

A4 現行の公務員の賃金決定システムは、労働基本権の代償措置としての人事院勧告がベースです。勧告の取扱いについて政府が給与法の改定法案を国会に提出し、その成立により賃金が決まります。
 労使関係制度検討委員会の報告および政府の検討では、人事院勧告制度は廃止するとしています。勧告制度が廃止されれば、政府が一方的に賃金を決定できるのではなく、労使交渉を経て決定することになります。行政職(一)をベースにした賃金水準を交渉するのか、俸給表ごとに賃金水準を交渉するのかなどの詳細は未確定で、今後の検討次第です。
 賃金の場合では、財政民主主義等の関係から交渉で合意した協約は、国会の関与が必要となってきます。そのため、政府は労使交渉の協約内容を法案化して国会に提出し、成立させる責務を負うことになります。
 賃金(本俸)については、国会の関与が必要であると考えますが、手当等などは国会の関与は必要なく、地域性のある手当は地方で決定できるようにしていくなど、できるだけ国会の関与を少なくし、労使交渉で合意した協約がそのまま適用されるようしていくことが必要です。
 また人勧制度は廃止したとしても、人事院そのものが廃止されていいものではありません。人事院は勧告制度を取り扱う以前から、人事行政の公正性の確保と職員の利益擁護の機関として設置されました。そうした人事院の役割と機能は労働基本権の回復後にも必要と考えます。

Q5 私たちが望む労働基本権の全面回復にむけ、いまやるべきことは何でしょうか?

◇学習と署名の推進、組織の拡大・強化を

A5 政府は、公務員制度改革関連法案と一体となった自律的労使関係制度の関連法案を来年の通常国会に提出するとして検討作業を進めています。労使関係制度検討委員会の報告が多岐にわたる選択肢の内容だったので、政府の検討作業を注視する必要があります。
 国公労連は労働基本権の全面回復をめざしています。そのために、現在取り組んでいる「憲法とILO基準にそった労働基本権の回復を求める請願署名」の推進が必要です。職場で、労働基本権を回復する意義など学習の強化が重要です。
 また、職場の要求を確立して、当局と交渉するという現行制度においてもできる労働組合の日常活動の強化も求められます。同時に労使交渉を支え、要求前進の推進力となる組織の拡大・強化が極めて重要です。

◇かつては各省大臣と労働協約を締結していた

 国公労働者に労働基本権がすべてあった時代には、国公労働組合の各単組は、各省大臣と労働協約を結んでいました。
 資料1は、厚生本省の組合で全厚生、全労働の前身の一つである厚生省職員組合(厚生職組)と厚生大臣との協約書です。第1条で「組合員の生活の向上と行政の民主化」による日本の再建を協約締結の目的としています。
 資料2は、全運輸、全港建の前身の一つである全海事官庁従業員組合連合会(全海事)と運輸大臣との協約書です。労働条件だけでなく、第5条では「組合員の政治活動を認める」としています。
 全国税の前身の全国財務労働組合(全財)が、大蔵大臣と結んだ労働協約第4条では、中央、地方、職場にそれぞれ設置する職員協議会で、労働条件のとりきめを労使協議すると規定しています。この労働協約はアメリカ占領軍の命令で中止させられた1947年「2・1ゼネスト」直後の2月5日に結ばれています。
 「国公労働運動五十年史」(1998年、国公労連発行)には「農林、商工、文部などは二・一スト以前に当局と締結していたが、二・一スト後に全財、外務、厚生、気象、大蔵、全土木、国病、全療など各単組が締結した」とあります。


◆「地域主権改革」を検証 全労連シンポジウムに150人
 開発のため住民サービス後退 「自己責任」の押付け、国の責任放棄

 全労連は11月3日、政府がすすめる「地域主権改革」で国民生活がどうなるかを明らかにするために、「地域主権」を検証するシンポジウムを開催し、140人が参加しました。
 菅内閣は6月に「地域主権戦略大綱」を閣議決定しましたが、前国会に提出された地域主権関連法案が今国会に継続審議となっています。
 基調講演をした京都大学の岡田知弘教授は、民主党政権がすすめている「地域主権改革」は、「自公政権が行ってきた地方分権改革を継承するものであり、住民サービスの後退につながる」と指摘し、「医療や教育などの分野がいっそう切り捨てられることになる」と警鐘を鳴らしました。さらに市町村合併を進めて道州制をねらっているのも特徴だとし、財界の要望に応じた大型プロジェクトに財源を投資するものであると指摘。「開発のために住民サービスを切り捨てるという構図である」と述べました。
 シンポジウムでは「地域主権改革」による影響について自治労連、国公労連、全生連の代表3氏が発言。国公労連代表のシンポジストの古澤一雄全建労副委員長は、国は国際競争力を合言葉にアジアなどのインフラ整備をすすめるため、大手ゼネコンの海外進出を促進し、国内の公共事業そのものは切り捨て、自治体に管理などを押しつけようとしている、と指摘しました。


◆職業訓練は国の責任 雇用・能力機構廃止やめよ

 国公労連と特殊法人労連などによる「独法能力・開発機構廃止法案を考える院内集会」が10月29日、国会内で開かれ60人が参加しました。
 呼びかけ人の後藤道夫氏(都留文科大学教授)があいさつに立ち、「能開機構廃止で職員の雇用が承継されないことも問題であり、廃止そのものが日本の職業訓練事情から大変な問題。政府は逆行している」と述べました。
 日本共産党の田村智子参院議員、高橋千鶴子衆院議員が国会報告をし、水口洋介(労働弁護団事務局長)、平井哲史(自由法曹団)、小川英郎の3人の弁護士が、憲法や労働契約法に違反する法案と批判しました。
 閉会あいさつで国公労連の宮垣忠委員長は、「能開機構の廃止は職員をクビにするシステムづくりに他ならない。国は職業訓練の責任を果たさなければならない。廃案にしよう」と呼びかけました。


◆【最高裁不当決定】日航907便事故裁判の上告棄却
 空の安全確保に逆行

 日本航空907便ニアミス事故(01年1月31日発生)で最高裁判所は10月26日、業務上過失致傷罪で起訴された航空管制官2名の上告を棄却するとの決定を行いました。
 管制官の当該組合である全運輸は29日、「航空の現場に混乱をもたらし、航空の安全確保に逆行する反動的かつ非科学的」な決定として、抗議の声明を発表しました。全運輸は、事故原因が「多くの事象が複雑に絡み合って発生したシステム性事故」であるとし、個人責任の追及でなく原因究明と再発防止優先の航空事故調査体制の確立が必要と、裁判闘争とともに政府への要求と運動を強めてきました。
 最高裁決定は、「管制官のヒューマンエラーを事故に結びつけないようにするためのシステムの工夫が十分でなかったことは確か」としながら、管制官は「求められている注意義務を尽くすべき」とし、「事故の原因を調査する専門機関と捜査機関の協力関係に関しては検討すべき課題がある」が、「個人の責任を問わないことは相当とは思えない」と結論づけ、上告を棄却しました。
 国公労連の岡部勘一書記長は11月1日、「航空の安全確保と原因究明・再発防止に逆行する最高裁の決定に抗議する」との談話を発表しました。


◆展望鏡

 日本経済が円高とデフレの長期化に苦しんでいる。大企業が「国際競争力強化」を口実に、正規雇用を非正規化し、賃金を下げるなどして、労働者の購買力を極度に圧縮しているからだ▼リーマンショック以降、日本商品の海外需要は望めず、内需拡大のほかに日本経済を立て直す道はない。内需拡大のためには、労働者が必要なモノを買えるようにすることだ。失業や非正規雇用を大幅に減らし、雇用不安をなくすために、時短で正規雇用を増やし、派遣労働の規制を強め、非正規雇用を一時的なものに限定しなければならない▼景気を悪化させる公務員の賃下げは、もってのほか。最賃1000円以上と賃上げが必要だ。大企業はそんなことをすると、国際競争力が弱まり、労働者の首をしめると脅すが、真っ赤なウソだ。株主への配当を増やすために内部留保を取り崩しているではないか。▼菅内閣は、「仕分け人」対省庁の対決をハデに演出して政権浮揚のための事業仕分けをする暇があれば、派遣法の抜本改正や大企業に内部留保で雇用対策、賃上げを行わせるような手立てをつくせ。(M生)


◆国公労連新役員の横顔

◇何事にも一生懸命
 渡辺 政幸 中執(全建労出身)

 「ナベぞう」「ナベちゃん」の愛称で慕われている渡辺さんは、大分県出身。1985年に茨城県つくば市の国土地理院に入所してから、岩手、仙台、つくば、名古屋、つくばと転勤を重ね、地方測量部では測量のため各地の山を歩いていました。そのため、体力には自信があります。
 何事にも一生懸命な人です。今年5月、全建労地理支部は、全分会参加の交流集会を実施し、渡辺さんは、議論の活性化のための担当になりました。しかし、なんと前日に某副委員長から検討項目の「ダメだし」をされました。渡辺さんはこれにめげず、あきらめず、遅くまで残って全面的な見直しを行いました。その結果、討論内容は充実し、参加者からも非常に好評でした。
 国公労連でも持ち前の積極性と体育会系職場出身の体力で、公務員バッシングをはね返す運動の先頭に立って頑張れるはずです。 (全建労地理支部執行委員長)



 
 
 
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