国公労連
国民のための行政・司法へ ストップ!憲法改悪 サイトマップ 更新履歴 個人保護法に関する宣言 リンク
Action 私たちのとりくみ Journal 定期刊行物 Archives 資料 Mail News
トップページ > 国公労新聞 > 1317号
 
  Journal 定期刊行物
国公労新聞2010年1月10日号(第1317号)
 
 

◆平和のための地図づくりを
 全建労筑波地本地理支部

◇国民本位の測量・地図事業になう

 日本の測量・地図づくりを担っている国土交通省国土地理院(本院・茨城県つくば市)の業務は、衛星電波を用いた観測への移行やデジタル化をしていますが、毎年の人員削減によって職員の負担は増しています。国土地理院の職場の労働組合、全建労筑波地本地理支部377人(本院6分会261人、全国の地方測量部・支所10分会116人)の仲間は、労働条件改善とともに国民のための測量・地図作成をめざし、奮闘しています。
(教宣部・木下芳宣)

測量・地図事業はかけがえのない国民の財産です

◇だれでもどこでも

 「国土地理院の主な仕事は、測量して正確な地理情報の基盤を作ることですが、それをだれでもどこでも手にいれられるよう努めています」。広報広聴室の野口正子さんはそう言って、国土地理院の各部署を案内してくれました。
 国土地理院は、インターネットで直接地形図を見られるよう、ホームページに「電子国土」という窓口をつくっています。国土地理院が無償提供する専用ソフトを利用して、地理院の背景地図に防災や観光など利用者の情報を入力すれば、それらを重ねて表示してくれます。だれでも無料で自由に使えることから、今では防災、観光、教育、福祉、個人の趣味などさまざまな用途に活用されています。
 「いろいろな人が持つ地理情報をみんなで共有し、利用することによって、私たちはもっと安全で豊かな人生を送れるようになるのです。そういう意味で地図の公開性は大切なことです」と情報普及課の打上真一さんは話してくれました。

国土地理院の歴史

◇地図の「戦争と平和」

 国土地理院の前身は、参謀本部陸地測量部でした。しかし、現場で測量業務に携わる人は、軍人でなく文官でした。
 彼らは、明治時代から日本のあらゆる場所を測量して地形図を作りました。日本の山々の多くが陸地測量部によって初登頂されてきました。昨年、公開され話題となった映画「劔岳(つるぎだけ)点の記」(監督・木村大作、原作・新田次郎)には、明治末期の陸地測量部の苦闘が描かれています。
 陸軍参謀本部に担わされた測量・地図作りは、道路に軍事車両が通れるかどうかという地図記号が使われるなど、出発点から軍事的な性格を持っていました。太平洋戦争中に作成された地形図では軍事関連施設は空白にされ、一般販売は禁止されました。
 1946年に地理調査所の職場に労働組合が結成されました。地図の軍事利用に反対し、「平和のための地図づくり」「国民本位の測量地図事業をすすめる」等のスローガンは国土地理院の労働組合が一貫してかかげてきたものです。
 「近年、有事法制や国民保護法がつくられ、有事のときには再び軍事用の測量や地理情報整備に組み込まれていく危険性がある。しかし、戦争に荷担する測量・地図づくりはしないという組合結成当時の決意は引き継いでいきたい」と前支部執行委員長の矢沢勇さんは語ります。
 「地図作りの現場は様変わりしている」と衛星測地課の河和(かわわ)宏さんは指摘します。従来の標石による基準点網や紙地図の提供から、人工衛星の電波を使ったGPS(汎地球測位システム)観測やデジタルの地理空間情報の発信へと業務内容が移行しています。
 「しかし、大規模な自然災害時にはただちに現場にかけつけ、必要な地殻変動などの地理情報を把握し、迅速に情報提供することも私たちの大事な仕事。先輩たちが苦労して現場で培ってきた技術を継承していきたい」と河和さんは話します。
 国民の安心・安全を守るためには、本院、地方測量部ともに必要な組織や人員の確保が不可欠です。しかし、業務が複雑化する一方で、毎年、人員が削られています。
 支部書記長の柏木雅志さんは、「係員層の比率が極端に低下し、係長が1人で仕事を抱えることが多くなっている。近年メンタルへルス不全になる職員も増えていることから、個々の職員の負担が過重とならないように運動する必要がある」と語ります。
 支部執行委員長の山口史朗さんは、地理支部の新たな連帯の方向性を模索しています。「民間の測量職場の労働組合、測労協(全国測量労働組合協議会)との共闘を積み重ねるなかで、測量業界の低賃金の実態などを知った。国の測量行政機関に働く公務員として、測量業界の労働条件の改善をはじめとした地位向上をはかりたい」と。


◆厚労省、使用者責任を果たさず

◇"分限免職"は違法
 社保庁職員の雇用確保せよ

= 怒りの厚労省前行動 =

 国公労連は12月14日から5日間連続して社保庁職員の分限免職を阻止するための東京・霞が関の厚生労働省前行動を実施しました。参加者からは、「本来労働者の雇用を守るべき厚労省が、不十分な対応で自らの職員のクビを切るのは許されない」と、怒りの声があがりました。

◇分限免職回避せよ 国公労連が政府申入れ

 国公労連は12月18日、来年度予算編成にからんで国家公務員の基本的な労働条件の確保に向けた政府としての努力を求める総務省交渉を実施。合わせて社会保険庁職員の分限免職回避に向け政府として責任を果たすよう申し入れました。
 交渉には岡部書記長以下5人が参加し、総務省側は川渕総務課長が対応しました。
 社会保険庁の雇用問題に関して総務省側は、「重く受け止めている。しかし、雇用問題については基本的には厚生労働省の方で、最終段階まで最大限努力しているものと承知し、注視している」などと回答するにとどまりました。
 国公労連側は、「もし分限免職を許せば、今後出先機関改革などで同じことが起こりかねない。40数年間一人の分限免職も出さずにきた重みをふまえ、責任ある対応を」「農水省や開発庁のケースでは政府内配転で受け入れてきた。今回は異常な事態だ。社保庁問題には政治的な思惑が強いが、このままでは公務員制度上も大きな禍根を残す。国公労連は分限免職に対しては法的措置も含め不退転の覚悟で臨むつもりだ」と強調し、重ねて政府としての責任ある対応を強く求めました。

【行政相談】
 ◇徳島には香川からも応援 愛媛は県労連と共同

 【四国ブロック国公発】四国ブロック国公の提起に応えて、四国のすべての県国公が「総対話MAP」運動を実践しています。

= 県労連も応援 =

 徳島県国公は11月23日、JR徳島駅前で「行政相談会」を開催。徳島県国公が開催した「行政相談会」には、徳島県国公から7人、香川県国公から全厚生と全国税3人が応援相談。徳島労連からの参加者9名などをあわせて全体で20人のとりくみとなりました。
 相談件数は年金1件、税金3件、登記3件、労働2件、血圧測定・健康相談20件と、全体で29件。「残業手当が支払われない」「年金特別便の返事を出していないが大丈夫か」などの相談や、不動産の相続手続きや事業者の税金の計算方法など多彩なものでした。
 【愛媛県国公発】愛媛県国公は11月28日、松山市駅の地下街で「無料!よろず相談会」を開催しました。
 よろず相談は、愛媛労連との共同開催で県国公の行政相談の他、愛媛労連の労働相談センターの開設や生活相談も加わり、全体で32名(県国公は23名)の仲間が奮闘しました。
 相談件数は、人気の血圧測定・健康相談が59件、年金相談8件、税金相談6件、地デジ相談5件、登記相談4件、職業相談2件、生活相談1件と、全体で85件にのぼりました。

【国公労連】
 米軍基地建設許さぬ市政を 沖縄・名護市長選で稲嶺進氏を支持

 国公労連は12月22日の常任中央執行委員会で、沖縄県国公の要請にもとづき、沖縄・名護市長選挙(1月17日告示、24日投票)に沖縄の革新・民主勢力の統一候補で立候補する稲嶺進氏の支持・支援を決定しました。
 名護市長選の最大の争点は、米海兵隊普天間基地の代替施設を名護市・辺野古に建設させない市政の確立です。市民をほんろうしてきた新基地建設に対し、市民の生活と安全を守るためにもきっぱり決着をつけ、日米両政府に対し、普天間基地の即時撤去と、辺野古移設と県内移設の断念をせまる重大な意義をもった選挙です。
 国公労連は、平和と民主主義の前進に大きな意義をもつ名護市長選挙への全国からの支援を要請しています。


◆国際労働基準と憲法の精神生かせ

◇「公務員制度」労使関係制度検討委員会が報告
 政府に検討を要請「1年余に及ぶ検討終結」

 政府の国家公務員制度改革推進本部の労使関係制度検討委員会(座長・今野浩一郎学習院大学教授)は12月15日、労使間で勤務条件を決める「協約締結権」を公務員に付与する場合のモデルケースを盛り込んだ報告書をとりまとめました。翌、仙谷由人公務員制度改革担当大臣に提出し、政府の検討を要請しました。報告書は、民間に近いものから現行とあまり大差ないものまで3パターンを示しています(<1>労使合意を重視し、民間の労働法制に近いケース<2>国会の関与と公務の特殊性をより重視するケース<3>現行制度の原則を前提としつつ労使関係を尊重するケース)。国公労連の岡部勘市書記長は17日、「報告」についての談話を発表しました(以下全文)。


◆「自律的労使関係制度の措置に向けて」の発表にあたって
 速やかな労働基本権の全面回復を求める

【談話】2009年12月17日 国公労連書記長 岡部 勘市


◆被爆国、9条の国だからできること

 東京外国語大学教授 伊勢崎 賢治さん

いせざき けんじ/東京外国語大学教授。1957年、東京都生まれ。シエラレオネ、東ティモール、アフガニスタンなどの紛争地域で、NGOや国連職員などの立場から武装解除を指揮。近著に「さよなら紛争( 14歳の世渡り術)」(河出書房新社)

 ◇紛争調停は非武装が原則 自国の平和だけではいけない

 鳩山政権はアフガニスタンの復興支援について、自衛隊によるインド洋での給油活動撤退と民生支援の強化を決めているが、何より9年に及ぶアフガン戦争を終結させることが不可欠だ。憲法9条を持つ日本の国際貢献が求められている。
 私は、アフガンで現地の武装勢力と交渉し、武装解除させる紛争調停の活動に携わってきた。アフガンは現在、タリバン・アルカイダとの戦闘が激化し、米とNATO軍は出口のない消耗戦に突入。麻薬栽培は依然として絶えず、各地の元軍閥を取り込んだ現政権では政治腐敗が起き、アフガンは最悪の破たん国家になりつつある。
 こうした状況下で民生支援は非常に困難だ。日本のNGOがナンガハル州で活動しているが、あそこは米軍が展開する例外的に安全な地域。治安悪化を食い止めるには、住民が自分たちの政府に信頼をおけるよう現政権の立て直しが急務だ。さもないと住民のタリバン化≠ェどんどん進行することになる。

 = 9条の可能性を =

 現地での武装解除は、イスラム圏で軍事活動を行っているアメリカなどにはできない。被爆などの歴史的経緯がある日本は、アフガンで非常に中立的な印象を持たれている。そこに9条を持つ日本の役割があると私は思う。
 現在、武装した自衛隊がアフガンで活動することは逆効果。紛争調停は非武装が原則だ。「非戦闘地域」に自衛隊を送るよりずっと危険を伴う作業になるが、それでも日本は犠牲を払う覚悟で取り組むべきだ。
 日本は自国の平和を守るだけでいいのか。日本はオバマ米大統領の訴える対話と核廃絶という「オバマ的」考えに寄り添って国際平和に取り組まなければならない。われわれは9条の可能性を1パーセントも利用していない。国際外交において、戦争放棄に勝る安全保障はほかにないはずだ。それは日本自身にとっても国防力になる。

 = 排他主義に陥らず =

 ソマリア沖への自衛隊派遣は、重大な違憲行為だ。「海外にある自国の財産・人命を守る」という理由で始まった太平洋戦争と変わらない。まず、命懸けで反対しなかったリベラル・護憲派に重大な責任があると感じる。
 9条の前提は、「自分の平和だけじゃいけない」と謳(うた)う憲法前文。9条を守ることが目的なのか、9条をもって世界平和を実現することが目的なのか。護憲活動はある意味、条文を守るだけの運動に陥っていないだろうか。世界の紛争地で何が起きているのかを見ようとせず、ただ9条を盾にして「武力はいけない」と内に閉じこもるのは、違憲行為≠セと私は思う。
 9条、そして非核3原則があっても、核持ち込みの密約は存在していた。こうした現実を踏まえた上で、核武装論者を含めて、日本の安全保障を正面から議論しなければならない。
 平和主義も保守的になれば、排他主義に陥る。その最たる例が、自国の平和を守るためにイラクやアフガンへ侵攻したアメリカの保守勢力だ。それと同質の危うさを、私は、日本の護憲派に感じている。


 
 
 
ページの先頭へ