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国公労新聞 2009年1月10日号 第1295号
 
 

 

◆守りたい空の安全
 全運輸羽田航空支部羽田分会

◇航空需要増大で拡張する羽田空港

 日本を代表する空の玄関、羽田空港(東京都大田区)が再拡張計画や関東空域再編などで大きく変わろうとしています。2010年の供用にむけ現在、新滑走路、新管制塔、新国際線ターミナルビルなど建設ラッシュです。激変する巨大空港の職場で、全運輸羽田航空支部羽田分会(組合員339人)の仲間は国民ニーズへの対応と空の安全を確保するために日夜奮闘しています。
(教宣部・木下芳宣)

◇24時間国際空港に

 「あれがいま建設中の新滑走路です」。全運輸羽田航空支部書記長の伊藤浩司さんは東京湾の沖合いを指さします。海上に横たわるのは2010年から使う予定の羽田空港4本目となる建設中のD滑走路です。
 国土交通省は、2010年の新滑走路の供用開始当初の増枠分はできるだけ国際線に振り分けようとしています。昼間は近距離アジア・ビジネス路線の約3万回増、さらに、深夜早朝は欧米中心に約3万回増が可能になるとしています。これにより、羽田は24時間空港として欧米をはじめ世界の主要都市への国際旅客定期便就航を実現しようとしているのです。
 こうしたプランの背景について、伊藤さんは「もちろん国内外の航空交通量の伸びがあります。同時に、構造改革路線による財界本位の規制緩和によって、莫大な国の予算を使って羽田をより収益の上がる空港にしようとするねらいがあるのです」と語ります。
 羽田のように収益のあがる空港に集中的な投資を行う一方で、地方空港はないがしろにされようとしています。地域間格差が拡大するばかりか、国民の自由に移動する権利を奪うことにもなりかねません。

◇安全運航への対策は

 現在、羽田空港の滑走路や航空灯火の点検・維持作業は、旅客機が離発着していない深夜や早朝時間帯に実施していますが、羽田空港が24時間空港になると、いつどのように点検するかという問題が大きく横たわってきます。保安防災の職場では、海上滑走路となるため、新たに海上警備体制の確立が必要となります。
 また、滑走路が増えることで離発着の航空管制業務はより複雑になります。「そのためにも、安全確保のための適正な人員確保と効率的な管制業務がもとめられます。当局には安全な運航体制拡充を強く要求したい」と航空管制官で、羽田分会分会長の大河内啓介さんは訴えます。

◇業務負担増と委託化

 さらに、航空局は首都圏の空域容量の拡大を図るため現行の関東空域を再編し、これまで成田において行っているターミナルレーダー管制業務を羽田で実施することになります。
 しかし、航空管制技術官の職場では、成田との管制統合によって機器が増えるにもかかわらず、「定員は減らされ、業務委託がすすむなか、保守要員増は期待できません。効率化で対応せざるをえない」と、羽田分会書記次長の平岡大志さんは現状を語ります。
 航空職場にも行政改革による減量効率化が厳しさを増し、要員削減による職員の業務負担増と業務の民間委託化がすすんでいます。それは空の安全・安心に大きな影響を与えかねない大きな問題となりかねません。
 羽田分会は、労働条件の改善と国民本位の空の安全体制を充実させるために奮闘しています。

 
 

 

◆日本の公務員制度、権利問題を世界の基準と照らして見ると

◇世界の窓から見えるもの

 国公労連は昨年、非常勤職員の処遇改善と社保庁職員の権利問題についてILO(国際労働機関)に要請するため川村好伸副委員長を、公務員の労働基本権をめぐる全労連調査団の一員として岡部勘市書記長をアメリカに、それぞれ派遣しました。2人のレポートを報告します。

◆労働基本権めぐる米調査団派遣
 全労連 公務員制度改革 闘争本部


◇苦情処理システム活用で労組に求心力
 国民的議論の必要性を実感


 公務員の労働基本権が剥奪されて60年、国家公務員制度改革基本法の成立を受けた検討がすすめられるなか、全労連闘争本部として実施したアメリカの公務員制度調査に参加しました。
 調査は、03年から開催している「公務・公共サービス国際交流会議」への参加も含めて10日間、ウエストバージニア州、ノースカロライナ州、ワシントンDCの各労働組合や職場施設、連邦労使関係局などを訪問し、交流・意見交換や資料収集を行いました。
 建国の歴史や連邦国家に由来する文化や制度の相違などの詳細は報告書に譲り、特に印象に残った点のみ報告します。

◇連邦労働関係法

 公務員の権利や労働基準については全国的な定めがなく、州によって異なりますが、多くの州でベースとしている「連邦労働関係法」に労働組合の結成、団体交渉手続などが規定されています。 排他的交渉代表制度は、労働組合を組織する際、対象労働者の30%以上の賛同署名を集約し、労使関係委員会が実施する認証選挙で過半数の支持を得ると、唯一団体交渉を行い、協約を締結することができます。
 連邦では、給与等の法定勤務条件は協約の対象とならない(図参照)ため、労働条件改善のとりくみは予算配分を決める権限を持っている議会への対策、議員工作が中心ということです。
 交渉が行き詰まった場合の調停や不正労働行為の解決、協約違反などの仲裁・裁定のための機関として連邦に労使関係局、州には労使関係委員会がおかれています。その苦情処理システムを活用し、組合員の格付け改善や職務の評価替え要求も行い、労働組合への求心力を高めているようでした。

◇市民の支持に確信

 交流会で、市清掃局の体重400ポンドという黒人労働者の「私は仕事に誇りを持っている。権利があることも確認できた。そして市民の支持が広がっている運動に確信を深めている」との発言に強く共感しました。
 日本の公務員制度は、単に公務員の人事管理法ではなく、憲法15条「公務員の本質」とも関わる基本的な制度であり、開かれた国民的議論が尽くされる必要があります。 職場からの学習とともに、国民の権利保障とそれを支える公務・公共サービスのあり方を含め、対話や宣伝など運動の重要性を改めて確認できた調査となりました。(岡部勘市国公労連書記長)

◆非常勤の劣悪な実態ILOに訴える
 同一価値労働男女同一報酬原則を


◇日本の「多くの情報がほしい」
 社保庁職員 団結権侵害を訴える


 地方自治体や国で働く非常勤職員の実態と問題点をILO(国際労働機関)に直接訴えるため、10月11日から5日間、自治労連ILO要請行動に参加してきました。

◇100号条約で要請

 今回の要請は、条約勧告適用専門家委員会がILO第100号条約(同一価値労働男女同一報酬に関する条約)についての検討を08年11月に行うことから、日本の行政で働く非常勤職員の実態を同委員会の議論に反映させるために行ったものです。
 条約勧告適用専門家委員会への要請では、地方自治体の非正規労働者として働いている組合員が、自らの仕事や職場実態を告発しました。私は、国の行政機関で働く非常勤職員が14万人を超え、その多数が女性労働者であること、また、正規職員と比べてあまりに劣悪な労働条件の実態を訴えました。そして、非常勤職員制度のもとで、政府自身が女性労働者を安上がりな使い捨て労働力として行政現場で活用していると、その問題点を指摘しました。
 私たちの要請に対応したILOの国際労働基準局のチームコーディネーターのシャウナ・オルニーさんは、具体的な報告で、間接差別の議論に新たな次元を与えるものであり、委員会の審議にとても有効なものだと評価しました。

◇権利侵害は深刻

 消防職員の団結権問題についてILO結社の自由委員会にも要請。自治労連と共同している消防職員ネットワークの代表2人が「消防職員委員会制度」のもとでの当局の対応状況や職場の実態などを告発し、団結権を代替するものではないことを訴えました。
 私は社会保険庁の解体・民営化に伴う雇用問題についての情報提供を行いました。社会保険庁で働いている職員の雇用を脅かすことは団結権の侵害であることや、職場段階での実質的な労使交渉や労使協議が行われておらず、そのもとで組合脱退者が多数発生するなど、労働組合の権利や団結権の侵害が深刻な状況であることの情報を提供しました。
 ILOの国際労働基準局副局長(結社の自由担当)のカレン・カーティスさんは、事前に情報提供したことはとても有意義なものと発言しました。そして、結社の自由委員会の関心の中心点は民営化やリストラにあるものではなく、その過程で労働組合権が侵害されていること、もし雇われない場合、個人の問題ではなく、何人の組合員が雇用されないか、組合員が脱退に追い込まれたことなどの点について多くの情報が欲しいと述べました。
 (川村好伸国公労連副委員長)

 
 

 

◆出先機関の統廃合、地方移譲による国の責任放棄は認められない
 出先機関職員34,600人削減打ち出す 地方分権改革推進委員会が第2次勧告


◇出先機関の統廃合、地方移譲による
 国の責任放棄は認められない

 地方分権改革推進委員会は、12月8日に第2次勧告をおこないました。
 勧告による国の出先機関の見直しでは、<1>出先機関が担う116項目の事務権限の地方自治体への移譲、<2>国土交通省地方整備局、北海道開発局、農林水産省地方農政局など6機関を統合し、国が行うべき業務について新たに企画部門の「地方振興局」と公共事業執行部門の「地方工務局」を設置、<3>「地方振興局」と「地方工務局」を地元自治体が監視する「地域振興委員会」の設置、<4>厚生労働省都道府県労働局はブロック単位の機関に統合、<5>地方移譲や組織のスリム化などによって出先機関の職員9万5836人(2008年度末定員)のうち、3万4600人を削減するなどとしています。
 もう一つの柱である、地方自治体の活動を法律や政令で規制する国の「義務付け・枠付け」では、約半数にあたる4076項目の見直しを上げ、これらについて「廃止」「自治体が条例で国の基準を変更できる」などの具体策を決め、第3次勧告に盛り込むとしています。
 国公労連の岡部勘市書記長は同日談話を発表。「地方分権改革推進委員会の検討は、憲法・地方自治法で規定された団体自治および住民自治が基礎となる地方分権の実現ではなく、国の役割とりわけ憲法が保障する国民に対する責任を放棄するものである」と批判。また、「将来の道州制の実現に向けて確かな道筋をつけることになる」と明記しているように、財界が「究極の構造改革」と位置付けていることは、本来国が責任を負うべき国民の基本的人権の保障を「地方政府」に押し付けるものであり、「財界の意向にそった大企業のもうけ優先の国づくりであり、到底容認できない」と抗議しています。


 【解説】国の出先機関は、様々な政策を実施する機関として、全国に配置されています。しかし、これまで行われてきた「行政改革」、定員削減などにより、国の出先機関は統合・廃止の一途をたどってきました。
 気象庁の測候所の廃止、労基署やハローワーク、法務局の相次ぐ統合により国民の利便性は大きく後退しています。
 国立病院の独法化による独立採算制によって、診療科の縮小、ベッド数削減など地域医療の中核としての役割能力が低下しています。
 政府は、2009年度予算で最大規模の財政支出などが必要と判断し、さまざまな経済対策や雇用対策を打ち出そうとしています。こうした対策を有効に実施する機関は、国の出先機関や独立行政法人です。
 国としての政策を迅速に実行するためには直接指揮監督できる出先機関は必要不可欠です。そうでなければ、迅速・確実な政策が実行できるはずもありません。

 
 

 

◆地方分権・道州制を考える
 国公九州ブロックが市民反対話集会


 国公九州ブロックが11月22日、「くらしと地方分権・道州制を考える」市民対話集会を開き、110人が参加。京都大学の岡田知弘教授の講演はわかりやすいと好評。参加者から「もっと地域に踏み出さなければ」との感想が出されています。

 
 

 

◆新春インタビュー〈ジャーナリスト・堤 未果さん〉
 労働組合の価値にもっと自信を


 つつみ みか/ジャーナリスト。2001年、米国野村證券に勤務中、9・11同時多発テロに遭遇。以後、ニューヨークと東京を行き来しながら執筆、講演活動を行う。著書に『ルポ 貧困大国アメリカ』(岩波新書)、『報道が教えてくれないアメリカ弱者革命』(海鳴社)など

◇仕事が少ない地方に自衛隊の求人
 貧困層増大ですすむ経済徴兵制


 昨年出版した『ルポ 貧困大国アメリカ』で描いたような貧困が、日本でも思ったより早いペースで進んでいると感じています。
 NPO法人自立生活サポートセンター「もやい」事務局長の湯浅誠さんと対談した際、以前は中高年の問題だった生活保護やホームレスの問題が、いまは20〜30代前半の問題になっていると聞きました。
 そして「もやい」にも自衛隊の勧誘が来るといいます。三食付きで職業訓練があり、健康保険に加入でき、学費も出してもらえる。
 アメリカ軍が貧困層をリクルートするのとまったく同じです。沖縄や北海道など仕事が少ない地方にも自衛隊の求人が来ています。
 総選挙で自民党、民主党のどちらが勝利しても、自衛隊が海外に出て行くことに変わりはないでしょう。そして、それが違憲とならないよう派兵恒久法を制定する動きが進んでいます。

◇海外に出すために

 自衛隊を海外に出すには駒≠ェ必要です。そして、多くの駒≠準備するため、労働市場からの追い出しや社会保障費の削減によって貧困層が大量に作り出されています。こうした「経済徴兵制」がいま進められているのです。

◇米国の路線は変わらない

 米国でオバマ大統領が誕生しましたが、史上初の黒人大統領が米国を変えてくれるのかというと、そんなことはありません。
 オバマ大統領の外交や軍事、経済政策はこれまでと変わらないでしょう。彼の主要な献金元は軍需産業と金融業だからです。
 アフガニスタンへの増派は軍ですでに決定済みです。そのためには貧困層を軍隊へ志願させるという徴兵制≠続けなくてはなりませんが、セーフティーネットを充実させていては、徴兵はできません。
 アフガンや中東での戦争が継続されるなかで、そのために必要な要求が必ず日本へやってきます。

◇労働組合ができること

 格差と貧困が広がるなかで、日本の労働者や労働組合は何ができるか。まず現状を知ること、そして知らせることが重要です。
 米国では、労組が成功例をどんどん宣伝しています。日本でも労組が達成した成果に確信を持ち、もっと発信していくべきです。
 日本の労働運動が目を向けてこなかった派遣や非正規労働者を組織するユニオンができています。既存の労組が彼らと連携して、これまで培ってきた交渉のノウハウを生かしていくこともできると思います。
 ある組合に相談した派遣社員の青年が、組合から得たもので一番大きかったのは「自分にも権利があると教えてくれたことだ」と語っていました。
 労働基準法があり、自分が違法な状況に置かれていることを、多くの若者は知らずにいます。
 分断され、迷子になっている若者たちに労組が与えられるものは多いはずです。労組が持っている武器や知恵について、まず組合員自身が気づくこと。いま、それが求められているのではないでしょうか。

 
 
 
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