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談話
破綻した「構造改革」路線に固執し国民生活を省みない方針に抗議する
「経済財政改革の基本方針2009」の閣議決定にあたって
     
 

 

2009年6月24日
日本国家公務員労働組合連合会
書記長 岡部勘市

 政府は6月23日、「骨太の方針2009」(「経済財政改革の基本方針2009」、以下「基本方針」)を閣議決定した。
 「官から民へ」「小さな政府」などのスローガンで強行されてきた規制緩和や民間開放などの「構造改革」は、大量の非正規雇用労働者の解雇・雇い止めやワーキングプアを生み出し、格差と貧困を拡大してきた。その「構造改革」の本丸といわれた郵政民営化では、2年も経たないうちに地域の郵便局の廃止やATMの撤去など、ユニバーサルサービスが低下するとともに、「かんぽの宿」に象徴されるように国民共有の財産が民間企業に投げ売りされている。今日、「構造改革」の本質は国民的に暴露され、その破綻は明らかとなっている。
 こうした状況下において、基本方針が「平成22年度予算の方向」で「『基本方針2006』等を踏まえ、歳出改革を継続しつつ」などと、「構造改革」路線の検証も反省もないままに閣議決定されたことは、雇用破壊と生活苦が強いられ、その是正を求める国民の願いに背くものであり、断固抗議する。

 「基本方針」は、第1章「危機克服の道筋」、第2章「成長力の強化」、第3章「安心社会の実現」、第4章「今後の財政運営の在り方」の4章から構成されている。
 第1章では、社会の現況を「静かなる危機」とし、年金・医療・介護など社会保障制度の「ほころび」が生じていると捉えているが、国民意識とはかけ離れた現状認識と言わざるを得ない。経済の現状についても、「過度に外需に依存した経済成長から新たな持続的成長へと移行」としながら、内需の大きな比重を占める労働者の個人消費を高めることには言及していない。相変わらず、輸出型大企業中心の「危機克服の道筋」である。

 第2章の「地域発の成長」では、「地方分権改革推進委員会の勧告を踏まえ、地方分権改革を着実に推進する」としているが、現在検討が進められている「地方分権改革」は、国の責任やナショナルミニマム保障などの検証もない出先機関の統廃合による数合わせの論議で、これまで国が担ってきた公務・公共サービスの破壊を招くものである。
 「中小企業の活性化と研究開発の強化」の項目では、不況のたびに必ず問題となる中小企業を経営危機に陥れている銀行の“貸し渋り・貸しはがし”の是正方針は見あたらない。
 また、研究開発力強化法に基づき産学官連携の強化や多様な人材の育成を図るとしているが、研究開発とりわけ基礎研究を担う独立行政法人や国立大学法人の資金面や人材的な充実なくして成し得ないにも関わらず、現状は運営費交付金の一律的削減、総人件費抑制政策で基礎研究が疎かにされ、将来を担うべき若手研究者は低賃金・不安定雇用におかれ、人材の育成などおぼつかない状況にある。

 第3章の「安全・生活の確保等」では、昨年まで存在しなかった「防衛」が単独の項目で設けられた。さらに、昨年の基本方針で「弾道ミサイル」の記述はあったが、「北朝鮮によるミサイル発射、核実験などによる厳しさを増す安全保障環境に適切に対処」と具体的な国名を挙げて自衛隊の人的・軍事力の強化を図ろうとしている。
 北朝鮮の蛮行を口実に国民の危機意識をあおり、自衛隊の海外派兵恒久法の制定や憲法9条の改悪につながる狙いに危惧を抱かざるを得ない。

 第4章の「平成22年度予算の基本的考え方」の項目では、毎年抑制してきた社会保障費を巡って自民党内でも紛糾したように、「構造改革」路線の矛盾が象徴的に現れている。「『基本方針2006』等を踏まえ」としながら、平成22年度予算での2,200億円抑制は見送られたが、後期高齢者医療や介護問題、生活保護と母子加算問題など少子・高齢社会を迎えて山積する諸課題を解決していくためには、抑制どころか積極的に増額すべきである。
 「基本方針」には「新たな行政改革の取組」が列挙され、その一つに「新たな定員合理化計画を策定」するとしている。公務職場では、連年の定員削減と行革推進法による定員純減の強行によって、業務遂行に必要不可欠な要員が削減され、行政サービスに大きな歪みが生じている。2009年度補正予算において、臨時とはいえハローワークに増員等を措置したように、国民の生命、安全、生活を支える行政体制の確立・拡充こそ求められている。

 いずれの課題においても国民の生活を直視せず、憲法に規定する国民の権利保障の観点より、目前に迫った総選挙向けの対策としか受け止められない。
 政府が行うべきは、貧困と決別し、安心して暮らせる社会と人間らしく働ける職場などを求める国民の声に応えることである。
 そのため、(1)医療、教育、福祉など公共サービスの水準を維持・向上させるとともに、機械的に公務員を削減する「新たな定員合理化計画」は策定しないこと、(2)「地方分権」による国の地方支分部局の統廃合、市場化テストや「民間開放」などは行わないこと、(3)労働基本権を制約しているもとで、俸給表水準の見直しなど人事院勧告を拘束するような人事院への要請は行わないこと、(4)独立行政法人の「整理合理化計画」は凍結し、業務運営に必要な財源措置をとること、(5)社会保障制度の充実を口実とした消費税の増税は行わないこと、などを政府に求める。
 国公労連は、「構造改革」路線に固執する「基本方針」の具体化を許さず、引き続き広範な国民のみなさんとともに運動をすすめる決意である。

以上

 
 
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