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国公FAX速報 2007年2月13日《No.1782》
労使対等での労働条件決定の重要性を主張
 行革推進本部・専門調査会のヒアリングで全労働
     
 

 

 政府・行政改革推進本部の専門調査会が、2月6日、全労働に対するヒアリングを実施しました。
 昨年5月26日に成立した「行革推進法」にもとづき設置された専門調査会は、(1)簡素で効率的な政府における公務の範囲、(2)それを担う従事者の類型化とそれぞれの在り方、(3)以上を踏まえた労働基本権を含む労使関係の在り方、の3点が検討事項とされ、7月27日の第1回以降、12月18日まで5回の会議が開催されています。これまでの議論で「論点の柱立て」が示され、今般、国・地方自治体の職員団体・労働組合や人事当局など30団体を対象として、今後の検討に資するためヒアリングが行われたものです。

 全労働へのヒアリングは、専門調査会のBグループ(委員6人で構成する小委員会、主査=清家篤慶応大学教授)が実施し、全労働本部は新宮委員長と森崎書記長ら5名が対応しました。ヒアリングでは冒頭、新宮委員長が別添の事前提出資料にもとづいて全労働の意見を述べ、それに対して、要旨以下のやりとりが行われました。(○は全労働、●は専門調査会)

 ● 労働基本権の代償措置としての人事院勧告制度により、労働条件が一定担保されているという考え方がある。人勧制度がなくなってしまうと、今のような公務員に対する厳しい世論や周辺状況だと、むしろ労働条件が切り下げられるのではないか。あるいは労働条件が切り下げられるようなことがあったとしても労働基本権は付与されることが重要と考えるのか。
 ○ 労働条件を決める枠組みは、プラスの面とマイナスの面、両方を想定したものが必要だと考える。切り下げということに対しても、労使が話し合って決めていく仕組みが大切だ。
 ● 公務員の場合は給与等が税金でまかなわれるわけで、財政民主主義のルールからいくと、議会ないし首長、最終的には住民や国民の選択になってくるわけで労使だけでは決められないという点についてはどう考えるのか。
 ○ 労使でやりとりした結果というものが、財政民主主義の原理のもとで何らかの形でオーソライズされていくと考える。その際、指摘のあった労働条件が悪くなっていく場合についても、労働条件の決定に労働組合が関与していくことが重要で責任があると考える。
 ● 「現行法では詳細な勤務条件が法定されているが、今日、多様な行政展開が求められていることから、各府省等の段階で行政運営の実情に即した適切な勤務条件の設定がますます重要」として、公共職業安定所の交替制勤務をあげているが、こうしたことは他にもあるのか。たとえば労働基準監督署ではどうか。
 ○ 労働基準監督署についても勤務時間等に関わって多様な展開が求められている。その際、例えば民間では労働時間の上限にかかわって労使で話し合って決めるわけで、公務でもそれぞれの行政の実情をよく知る労使が、行政運営をいかに効率的に有効に実施するか、必要な勤務条件をいかに確保するか等の観点から相応しく決めていくのが適切ではないか。あるいは安全衛生に関する措置なども安全衛生委員会を設定し、労使が話し合って決めていく、こういう枠組みは労働行政のみならず、それぞれの行政分野で有効だと考える。
 ● 労働時間や安全衛生が公務員の場合は適用除外になっていることは、労働行政を担っている皆さんから見ればどうなのか。労働基本権とは別に労働時間や安全衛生を適用すべきと考えるのか、あるいは労働基本権とあくまで一体と考えるのか。
 ○ 一体ではない部分もあるが、関係は深いと考える。とくに労働基本権の問題のベースにあるのは冒頭、新宮委員長が述べたように労働組合が労働条件決定に参画していくということであるから、その文脈の中で関連づけて考える必要がある。時間外・休日労働に関する協定などは民間でも「労使交渉」という枠組みの中で決定しているので、その点でも関係は深いといえる。やはり労使対等決定原則が基本にならないと実質的なものにならない。
 ● 労働基本権が付与されるだけではなくて使用者側の主権、使用者側が責任を持って労働条件等を決めることができることが大切だと思う。そうすると先ほども指摘した財政民主主義との関係を考えると、究極的には、例えば民営化された業務であれば使用者に主権があるということになるが、やはり総人件費を確保するためには、労働基本権を付与するようなタイプの種類の仕事というのは民営化していくということが必要なのではという考え方もあるのではないか。
 ○ それは、それぞれの行政の役割や性格に即して公務なのか民間なのかを議論すればいいと思うが、私どもの行政分野でいえば、労働行政の目的、すなわち労働者の権利保障等のため、必要な専門性、公正・中立性、効率性、コストパフォーマンス、労働行政としての総合性等を考えると厚生労働省に所属する公務員が担うことが重要だと考える。そのことを前提に議論すべきと考える。
 ● そういう状況だと、使用者側が国になると、先ほどの議論にあったように議会との関係等で交渉の相手側の使用者が完全にフリーハンドを持てないことになるが、それはしょうがないと考えるのか。
 ○ それは程度の問題としてとらえている。我々が担う公務は高い公共性を有しているので当然のことながら調整が必要になる。
 ● 労働基本権が付与されたもとで、例えば一定の争議行為の規制があってもしかるべきと考えるのか。
 ○ 民間の企業体であっても公共性が高いものについては、一定の調整があるので、制度設計していく中で整合性をはかっていくべきである。
 ● 労使交渉が認められ、協約締結が認められるようになれば、当然現在の人事院勧告制度はなくなることになる。労使交渉で決めていくけども実態として官民の給与にどれだけの差があるということを、どこかの第三者機関が人事院勧告制度の連続で実施していく必要があるのか。
 ○ 何らかの形で民間の給与の実態を調査する必要はあるのではないか。いずれにしても諸外国でもそうだが、基本権が大きく制約される公務員の部分はあるわけで、そこに対する何らかの「代償措置」は必要になってくるのであるから、また、労使が交渉する上での指標として大事になってくると考える。
 ● 労働組合の関係者の中で意見が分かれているのではないか。そんなものを調査されて発表されたら労使交渉の制約になってしまうと考えるか、それともやはり一つの基準としてそこから労使交渉が始まると考えるのか。
 ○ 制度設計の問題だと考える。調査を全面的に否定するものではないという意見だ。


※別添 全労働「提出資料」

2007年2月6日
全労働省労働組合

行政改革推進本部専門調査会小委員 提出資料
(ヒアリング主な質問事項に対する回答等)

※提出資料の「基礎的な事項」と「主な質問事項に対する回答」の「(1) 主な活動状況」「(2) 労使関係、団体交渉等の状況」は略。

(3) 現状の労使関係の課題についての意見
 1)給与構造改革に伴う地方勤務職員の給与引き下げ(05年)、人事院の民間給与実態調査における比較企業規模の引き下げ(06年)、定員削減(地方労働行政分は過去3年間で△570)、給与引き下げに伴う不利益遡及(02年、03年)等、近年、勤務条件の不利益変更が繰り返されているが、これらの決定への労働者・労働組合の参加・関与が保障されておらず、労使関係を不安定にする要因となっている。

 2)現行法では詳細な勤務条件が法定されているが、今日、多様な行政展開が求められていることから、各府省等の段階で行政運営の実情に即した適切な勤務条件の設定がますます重要。
 例えば、公共職業安定所等では、昼休み時間帯や官庁執務時間外の窓口体制を確立するため、交代制勤務(二交替制、三交替制等様々)を導入しているが、全府省一律の基準設定は困難であり、実情をよく知る労使によって適切な基準を設定しうる仕組みが必要。

 3)現行法では国家公務員の権利等に関する制度が不十分な面があり、労働基本権問題以外にも、勤務時間(超過勤務に原則的な上限すらない)、安全衛生(資格を有する衛生管理者の選任義務や安全衛生委員会の設置・定期開催等の義務がない)等に関して新たな制度設計が必要。その際、労働基準法、労働安全衛生法等の仕組みを積極的に取り入れることも有効。具体的には、
 ・労働基準法は、時間外・休日労働に関する労使協定によって各職場の実情に相応しい時間外・休日労働の上限を決定する仕組みを設けている。
 ・労働安全衛生法は、法定の資格を有する衛生管理者が法所定の職務を行うことや安全衛生委員会を設置し、定期に開催すること等を義務付けている。
 ・災害補償制度における療養補償の運用について、公務災害補償制度は「原則、費用請求」であるが、労災補償制度の「原則、現物給付」の方が合理的である。

 4)各行政分野の専門性の向上がますます重要となっているが、「組織階層」が給与水準決定の主要な指標(具体的には、人事院規則に定められた級別標準職務表)となっているため、ゼネラリスト優位に人事管理が行われる傾向があり、各分野の専門家育成の弊害となっている。

(4) 今後の労使関係、労働基本権の在り方等についての意見
 1)労働基本権の理解
 今日求められる多様な行政展開に相応しい勤務条件を決定するにあたって、その運営の実情をよく知る労働者・労働組合の参画は重要であり、労働基本権は労働者が自己の労働条件決定や経済的地位向上に実質的に関与するために保障された権利であると考える。「代償措置」をもって労働基本権の全面的な制約を容認する考え方は、労働基本権 をもっぱら生存権的基本権ととらえる考え方と整合的であるが、前述した関与権・自己決定権の側面を軽視したものであり、「代償措置論」から脱却し、労働基本権の回復(原則付与)を急ぐべき。但し、公務の公共性等を無視することは適当でなく、整合をはかることは当然。

 2)労働基本権等の議論の進め方
 ・公務員制度改革(再就職管理、身分保障、能力・実績主義に基づく人事管理、官民交流等)は、公務員の勤務条件に密接に関わることであるから、勤務条件決定システム=労働基本権の在り方等に関する議論を先行させるべき。
 ・調査会として、公務員の労働基本権回復の方向付けを早期に行い、制度内容の検討を関係者の意見を聞きながら進めていくことを望む。その際、ILOの「報告」を出発点にすることが重要。
 ・公務員の範囲に関しては、今日、求められる公務の役割・機能等との関係で検討されていくべきであるが、当面、現在の公務員を前提に労働基本権の在り方等についての議論を行っていくことが効率的。
 ・なお、公務員制度改革をめぐって、一部に誤解に基づく議論(例えば、身分保障と労働基本権、身分保障とメリットシステム(成績主義))もあり、調査会として早期に見解を示すことが重要。

(5) その他(公務員の在り方、公務員制度改革、分限処分の在り方等についての意見)
 1)公務員の在り方
 公務員には、全体の奉仕者としての自覚の下、強い使命感に裏打ちされた目的意識と高い専門性が求められる。今日、質の高い公務を実施するにあたって、公正・中立性、専門性、能率性、継続性等を確保するため、こうした公務員の存在と役割発揮は不可欠。

 2)公務員制度改革
 行政に求められる公正・中立性、専門性、能率性、継続性等を確保するため、能力の実証に基づく任用、政治的中立を基本とする職務規律、公務に専心しうる適正な勤務条件の確保等の公務員制度の原則を維持すべき。その上で、ILOの「報告」を基本に労働基本権を回復(原則付与)し、近代的な労使関係を確立すべき。

 3)分限処分の在り方
 分限処分(国公法78条1号〜3号)は、メリットシステム(成績主義)を前提とする以上、適切に運営されるべき。他方、国公法78条4号は、雇用関係の終了事由として検討すべき(整理解雇の要件との整合等)。なお、人事院が定めた「通知」は明確性を欠いた内容であり、任命権者の裁量と相俟って恣意的な運用に懸念が残る。

以上

 
 
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