機関紙『国公いっぱん』2012年8月9日付第80号の記事テキスト
▼1面の記事
◆役割を投げ捨てた人事院勧告
8月8日に人事院が行った勧告は、賃下げ法による4月からの減額賃金では民間を7.67%下回っているとしつつも、①月例給・一時金ともに改定を見送り、②50歳代後半層の給与水準を抑制するため昇給・昇格制度を見直すというものでした。
国公労連と国公一般は、実支給賃金にもとづく改善勧告を求めてきましたが、「未曾有の国難に対する臨時特例」であると賃下げ法を容認した人事院は、労働基本権の代償機能の責務を放棄したものです。
また、国公労連との合意がないなか政府は、402.6万円もの大幅な退職手当引き下げを8月7日に閣議決定しました。
人事院勧告が労働基本権の代償措置たりえないことや、政府との交渉が決裂しても公務員労働組合には何らの対抗手段もないことが明らかです。この現状を打ち破り、憲法で保障された労働基本権を回復することが、何より求められています。
国公一般に加入して、国公労連とともに労働基本権を確立するためのとりくみを進めましょう。
賃下げ違憲訴訟の口頭弁論ひらく
賃下げ法は憲法違反だとして、国公労連と個人原告が提訴した公務員賃下げ違憲訴訟の第1回口頭弁論が8月2日に東京地裁で開かれました。
東京地裁前の行動で主催者あいさつした国公労連の岡部書記長は「政府は『国会で決めること』と強弁するが、勤務条件法定主義の下でも、労働基本権との調和が図られなければならない。すべての労働者の賃上げと安定した雇用確保で景気回復をめざす国民的運動に発展させよう」と決意を込めてあいさつしました。
決意表明した国土交通労組羽田航空支部の郡司特別執行委員は「被災地でも奮闘した職員に冷や水を浴びせるもので職場は怒りに満ちている」、全労働茨城支部の深津支部長は「今回の賃下げは国公労働者を無権利状態に陥らせるもの。国公労働者の尊厳を取り戻し、賃下げの悪循環を断ち切るために奮闘する」と訴えました。
被災地の公務職場の実態を陳述
傍聴席が満席となった14時からの裁判では、国公労連の宮垣委員長が、政府による交渉打ち切りの経過や団体交渉権侵害の事実、職場の怒りを述べました。個人原告の松木さんは、「実母と家を失いながらハローワークで被災者の対応に奮闘したのに、賃下げか」と怒りを表明。岡村弁護士は、人勧にもとづかない賃下げや、労働基本権回復に展望がないなかでの賃下げが許されるのかと述べ、司法判断を求めました。
次回の第2回口頭弁論は、10月29日午後2時からとなりました。
国公一般は、公務員賃下げ違憲訴訟の勝利や最低賃金改善をはじめ、安心して働ける職場と労働条件を確立するとりくみを進めていきます。
◆霞が関メモ(コラム)
日本の敗戦から67年目の8月を迎えた。この暑さは体にこたえるが、日本の平和をあらためて考える時機でもある▲広島と長崎で開催された原水爆禁止2012年世界大会には、国連の潘基文事務総長が連帯のメッセージを寄せた。核兵器廃絶にむけた国際世論の広がりがあらためて明らかになった▲政治や経済などで閉塞感に苛まれる今日だが、核兵器禁止条約の実現にむけ、世論と運動が国際社会を動かそうとしていることに勇気がわく。世界大会に参加した多くの若者が被爆者の証言に涙し、核兵器廃絶の決意を刻んでいることも希望だ▲しかし、日本の政府は国連での核兵器廃絶の案件に一貫して反対や棄権の態度をとってきた。日米同盟を絶対視し、核抑止力論に固執する政府からは何も生まれない。それどころか、自治体や住民が反対する米軍のオスプレイ配備に異議すらも申し立てない▲いま、日米安保条約の是非を問う声があがっている。世界中でいまでも戦争をしているアメリカと異なる価値観を持つ日本のあり方を検討する時機を迎えている。
▼2面の記事
◆日本標準時刻を維持・供給する業務が
新規採用不十分で継続困難に〈全通信〉
25回目の「うるう秒」
今年7月1日に「うるう秒」が3年半ぶりに実施され、日本標準時では、午前8時59分59秒の後に8時59分60秒が挿入され、その後、9時00分00秒となりました。
世界共通の標準時刻はもともと地球の自転などに基づき決めていましたが、1958年からは高精度の原子時計を使うようになりました。地球の自転速度は厳密には一定ではないことから、原子時計とのずれを調整するため数年に一度うるう秒の調整を実施しています。
時刻は現代社会では、時を知るためだけに使われているのではなく、社会・経済活動の重要な基準情報となっており、ネットワークやコンピューターなどにも使われています。例えば、ネットワークは正確な時刻管理のもとに運用されています。また電話などの料金も秒単位で決められています。そのため、ネットワークやコンピューターの運用には正確な時刻情報が要求されるようになってきています。
日本標準時刻の維持
独立行政法人情報通信研究機構(NICT)では、日本標準時及び標準周波数を決定・維持・供給する業務を担っています。
標準電波(JJY)は、標準周波数と日本標準時を日本全国に供給するために、おおたかどや山標準電波送信所(40kHz・福島県)、はがね山標準電波送信所(60kHz・佐賀県/福岡県)の2カ所から送信し、日本全土をカバーしています。
東日本大震災による原発事故の影響で、おおたかどや山標準電波送信所が福島第一原発から20㎞圏内の警戒区域内にあるため、一時標準電波の送信を停止せざるを得ない状況になりました。40kHz標準電波の停止により、60kHz標準電波が受信できない東日本の地域では電波時計に影響が現れ多くの問い合せが殺到しました。
震災から1年半が過ぎ、標準電波送信所がある福島県田村市や川内村の地域は、12年4月1日から避難指示解除準備地域となり、一時的なら自由に立ち入りができる事になりました。課題は残るものの、現在は標準電波の安定した送信を行っています。
人件費削減で研究継続が困難に
しかし、別の問題も生じてきています。それは「人」の問題です。独立行政法人であるNICTでは、総人件費の毎年1%削減が続いています。十分な新規採用ができないため、日本標準時の業務を担当する人材の確保や技術の継承が厳しくなってきました。やはり、研究開発で一番重要なのは「人」です。
全情報通信労働組合では継続的な研究、そして人材確保の為に一律的な人件費削減を止めて必要な新規採用ができるよう、国公労連に結集して運動しています。(全情報通信労働組合)
◆労働相談メール
【ひとりで悩まず相談ください】soudan@kokko.or.jp
今年の最低賃金はどうなっているの?
Q 7月末に中央最低賃金審議会の目安答申が出されましたが。
A 中央最低賃金審議会が7月26日に答申した2012年度最低賃金の目安額は、Aランクが5円、B・C・Dランクは4円となりました。全国平均は昨年比1円増のわずか7円です。今後始まる地方最低賃金審議会では、貧困と格差を解消するためにもこの目安額を上回る改定を実現することが求められます。
最賃は、憲法25条の生存権にもとづき、労働者をこれより低い賃金で働かせてはいけないという最低ラインです。最低賃金法は、生活保護との整合性をはかるよう求めています。しかし、北海道、宮城、神奈川、青森、埼玉、千葉、東京、京都、大阪、兵庫、広島の11都道府県で最賃額が生活保護を下回りました。その差額は北海道30円、東京20円、宮城19円、神奈川18円です。
いま日本では、普通に働いても生活できないほどの低賃金によって貧困が拡大し、生活保護受給者が増大しています。政府は生活保護水準を引き下げようとしていますが、憲法25条の社会保障の向上・増進の国の責務に反する暴挙です。
国公一般は、生活保護の改悪に反対し、全国一律最賃制と時給1,000円以上の実現を求め、公務員の賃下げ阻止のたたかいとも結合して運動を展開しています。すべての労働者の賃金底上げと社会保障制度を充実させるためにも、国公一般に加入してご一緒にとりくみましょう。