社会保険庁の解体・民営化を凍結し、公的年金制度の確立を求める決議



 政府・与党は、いわゆる「消えた年金」問題に端を発した年金行政に対する国民の不信・不満を利用して、社会保険庁の解体・民営化を決定した。年金業務については、2007年6月、社会保険庁改革関連法案を成立させた上で、年金業務組織再生会議を発足させ、2010年1月の新機構設立に向けた準備が進められている。
 現在進められている社会保険庁改革は、年金記録問題の責任が専ら社会保険庁と現場の職員にあるかのような前提で進められている。しかし、年金記録問題の原因は、年金保険料の杜撰な管理、すなわち、適正に管理できるだけの人員体制もないまま、管理システムの頻繁な変更と変更の都度生じた管理漏れの累積の結果であって、歴代政府が責任を負うべき歴史的構造的問題である。
 また、年金記録問題解決のためには、年金実務に熟達した職員によって正確なデータが入力されることが必要であり、そのための人員と体制の確保こそが不可欠である。これに対し、現在進められている社会保険庁の解体・民営化は、年金記録問題の責任の所在をあいまいにしたまま、人員をさらに削減し、年金管理に対する公的責任を投げ捨てるものにほかならなず、公的年金の崩壊につながりかねない重大な問題点を持っている。
 また、年金行政の責任が現場の職員に転嫁される中で、社会保険庁の職場では、慢性的な人員不足に加えて、年金記録関係の業務が増大し、職員の業務負担が増大している。その結果、職場では、時間外・休日出勤が常態化し、違法なサービス残業等の違法行為が横行している。この中で、職員は心身共に疲弊し、休職や退職が急増している。さらに、人員不足であるにもかかわらず、新組織の職員については、国鉄の分割民営化と同様に「新規採用方式」がとられ、職員の選別と分限免職(解雇)までが予定されている。社会保険庁の解体・民営化がもたらしている労働者の基本的権利の破壊を許すことはできない。  誰もが安心して老後を迎え、健やかに暮らしていくためには、憲法25条に基づく公的年金制度の確立が不可欠である。
 私たち自由法曹団は、公的年金の確立に逆行する社会保険庁の解体・民営化を凍結し、社会保険庁職員の異常・違法な職場実態を一刻も早く改善することを求めるものである。

自由法曹団2008年5月研究討論集会

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