全厚生労働組合
厚生労働省関係機関(本省、試験研究機関、福祉施設、日本年金機構、全国健康保険協会)に働く職員の労働組合 All Health & Welfare Ministry Worker's Union

旧社保庁職員の分限免職処分取消請求にかかる人事院判定について(声明)

1. 社会保険庁の解体・民営化に伴い2009年12月31日に強行された分限免職処分の取り消しを求めた公平審査請求(不服申し立て)について人事院は、4月5日に全厚生組合員39人のうち4人に対して初の判定書を手交した。 判定では、大阪貝塚社会保険事務所事案の大島琢己さんについて、厚労省の解雇回避努力の不十分さを認めて分限免職処分を取り消す一方、秋田社会保険事務局等事案の3人については処分を承認するとした。
 大島さんに対する処分が取り消されたことは、人事院が今回の分限免職処分の違法性、不当性を認めたものとして評価する。 しかし、本質的には大島さんの事案と異ならない秋田事案について処分を承認したことは許されるものではなく、断固抗議する。

2. 旧社会保険庁職員の525人にも及ぶ大量の分限免職処分は、社会保険庁を2009年末に廃止し、年金業務を日本年金機構に移行させるにあたって「組織廃止」を理由に行われたものである。 日本年金機構は、1000人以上もの新規採用を行ってもなお発足時に300人を超える大量の欠員を生じていたにもかかわらず、年金業務の混乱も考慮せずに厚生労働省は経験ある職員を解雇したのである。
 この間の人事院審理では、社会保険庁はもとより政府も厚生労働省も、閣議決定で定められた解雇回避の責任ある対応を行っていないことが明らかになった。 一つは、社会保険庁廃止後の残務整理で113人分の雇用枠があったにもかかわらず全く活用しなかったこと、二つは、厚生労働省にも日本年金機構にも欠員があったにもかかわらず補充採用しなかったこと、三つは、政府の雇用調整本部による省庁間配転を行わなかったこと、四つは、厚生労働省への転任手続きがズサンであったこと、などである。

3. 今回の判定は、分限免職回避のための厚労省の取り組みが不十分であったことを認めたが、分限免職回避の有力な方策である厚生労働省への転任の面接評価結果のみを基準とし、救済する範囲を不当に限定したもので重大な問題である。 そもそも、わずか15分程の面接の評価は、客観的な基準もなく、主観的かつ恣意的なものであった。 転任した職員とそうでない職員とどこが違うのか、厚労省の面接担当者は人事院の口頭審理の中でも全く説明できなかったのである。 分限免職処分となった職員を厚労省に転任させることが可能であったと判断するのであれば、請求者全員の処分を取り消すべきである。

4. 人事院の判定には、私たちの主張に対する判断で看過できない根本的な問題点がある。 社会保険庁職員の公務員たる身分を奪うことを目的とした日本年金機構法の違憲性については「判断を行う権限を有しない」とし、民間から1000人以上の採用があり人員整理を行う必要がなかった点については、「基本計画(閣議決定)」等で定めた採用基準により行われたものであり「その妥当性について判断する立場にない」としている。
 また、「分限免職回避のとりくみの方法には裁量」があり、雇用調整本部による他省庁配転以外の方法を採ったことについて「平等取扱原則違反とはならない」としたことは公務員法制の根本に照らして重大である。
 人事院は、内閣から独立し、公正・中立な人事行政の確保とともに、労働基本権制約の代償機関として、公務労働者の生活や権利を守る立場にある機関である。 人事院が分限免職処分の違法性の根幹部分で判断すること自体を避けたことは、政府・厚生労働省の重大な責任を不問にするものであり、断じて容認できるものではない。

5. 今回、分限免職処分の取り消し判定が出たことで、社会保険庁の民営化にともなう分限免職処分の違法性、不当性が改めて浮き彫りになったものである。 全厚生組合員ではあと35人の判定が残されている。 人事院がすべての事案について、分限免職処分を取り消す公正判定を行うよう強く求める。 同時に、政府・厚生労働省は、人事院によって分限免職処分の不適正さが断罪されたことを踏まえ、判定を待つことなく525人の分限免職処分を取り消すよう求めるものである。
 私たちは、請求者全員の分限免職処分の取消・撤回と職場復帰を求め、乱暴な解雇を許さず、「解雇自由化」の流れをストップさせるたたかいとあわせ、社会保険庁不当解雇撤回のたたかいをいっそう強める決意である。

2013年4月8日
国公労連社保庁不当解雇撤回闘争本部
全厚生労働組合(全厚生闘争団)



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