全厚生労働組合
厚生労働省関係機関(本省、試験研究機関、福祉施設、日本年金機構、全国健康保険協会)に働く職員の労働組合 All Health & Welfare Ministry Worker's Union
 自由法曹団が厚生労働大臣宛に年金記録問題の解決等にかかわって申し入れ

 労働者の権利擁護を中心に弁護活動を行っている「自由法曹団」は、10月1日午後、長妻厚労大臣宛の「年金記録問題の解決等にかかわっての申し入れ書」を提出し、日本年金機構凍結と記録問題解決のための提言、そして社保庁職員の雇用確保を求めました。自由法曹団からは加藤事務局長以下3名の弁護士が参加。厚労省は、社保庁総務課福井室長補佐以下3名の担当官が対応しました。
 冒頭加藤事務局長は、(1)年金記録問題について、本質的な問題がどこにあるか調査解明してできる限り照合して欲しい。年金記録問題をすべて現場の職員の責任とするのは誤り、(2)現状でも人員が不足しているのだから、機構に移行した際の人員削減では、運用できるか危惧しており必要な人員の確保をお願いする、(3)採用内定者については、年金記録問題に特化した委員会に改組して、首を切ることはしないで欲しい、(4)機構を凍結して社会保険庁を存続して欲しい、 (5)基本計画によれば、処分歴がある職員を採用しないという採用基準については、職員の雇用確保、膨大な雇用問題が生じることを考え採用基準を見直して欲しい。採用基準は閣議決定であることや、党利党略から処分歴の在る職員は採用しないと言うことが盛り込まれたのであるから、その点は見直せるのではないか、などと申し入れの主旨について説明しました。
 引き続き小部弁護士が、自由法曹団がこれまで夕張炭坑や国鉄など、多くの労働争議で最後までたたかってきた団体であるということで、こういう問題を黙ってみていられない団体であるということや、処分された職員の分限免職は、比例原則、二重処分禁止の原則から言って法律家の判断であれば到底許されるものではないこと等、裁判になるという不幸な事態にいたらないため、1人の免職者もだすことなく雇用をできるだけ確保して欲しい、と強調しました。
 さらに菅野弁護士が、査定がよかった職員でも不採用にされたということもあるように、採用基準が非常に不透明で職員の抱えている不安は大きいのでそういう点にもきちんと配慮してできるだけ分限免職を回避する手段を尽くして欲しい、と要請しました。
 これに対し、福井室長補佐は、(1)(2)については年金記録問題については、国家プロジェクトとして集中的に取り組んでいきたい。(ただし、国家プロジェクトの具体的な予算、体制についてはまだ決 まっていない)、(3)十分に配慮すべき問題だと考えている。(4)(5)機構にいくかどうかは、先月新しい大臣を迎えたので、早急に検討して結論を出したい。機構に移行することになったら、分限免職回避に向けてできる限り努力していきたい。採用基準の見直しについてはあり得るかどうかについて、今の時点ではなんともいえない、などと回答しました。




 年金記録問題の解決等にかかわっての申し入れ

2009年10月1日

内閣総理大臣 鳩山 由紀夫 殿
厚生労働大臣 長妻  昭  殿
自由法曹団
東京都文京区小石川2-3-28
DIKマンション小石川201号

日本年金機構発足を凍結し、設立委員会を「年金記録問題解決委員会」(仮称)
に改組して、現行社会保険庁職員と年金機構採用予定者の総力をあげた解決を

                     
 新政権が発足し、わが国の年金問題について、どのような方向で解決するかがあらためて注目されています。すでに自由法曹団は、「社会保険庁改革についての意見」(2008年02月25日)、「社会保険庁の解体・民営化を凍結し、公的年金制度の確立を求める決議」(2008年05月26日研究討論集会)、意見書「社会保険庁の解体・民営化を凍結し公的年金の保障を」(2008年07月19日)により、(1)年金記録問題の責任は必要な体制整備を怠った政府にあり職員への責任転嫁は許されないこと(2)年金記録問題は知識と専門性のある現行社会保険庁職員により政府の責任で解決すべきこと(3)加入期間短縮や最低保障年金の確立など公的年金の改善は経済的弱者に負担の消費税増税によるべきでないこと(4)社会保険業務と年金記録問題の解決のために社会保険庁の職場は人員不足で法令に反する休日時間外労働が蔓延しており緊急に改善すべきこと(5)当面年金機構への移管は凍結すること、を提言してきました。
 新政権は旧政権のもとで進められてきた社会保険庁解体と日本年金機構への移管について批判をしていますが、法律上2010年4月までの移管、政令上2010年1月の移管、そのために社会保険庁職員に内定や異動が通知され、民間からも千人あまりの年金機構採用予定者に採用内定が発せられているという現時点の状況のもとで、緊急に現実的な対応が求められています。
 そこで本提言では、公的年金制度の再構築に先立ち、日本年金機構法の成立しているもとで、どのような手順で年金問題の解決をはかるべきであるかについて提言するものです。

1 旧政権の進めてきた社会保険庁解体・年金機構移管の誤りを明確にする
 自民党公明党の旧政権の進めてきた社会保険庁解体・年金機構移管政策は、政府が責任をもって管理すべき体制の整備を怠ってきた責任をあいまいにしたまま社会保険庁職員の資質の問題に責任転嫁しようとするものであり、誤りです。新政権はこのことを明確にし、国民の大切な公的年金の管理運用を誰が担うべきかの議論と、一部の社会保険庁職員の不祥事等の問題とを切り離すべきであることを、国民に向けて宣言すべきです。

2 社会保険庁解体と日本年金機構への移管を凍結する
 現時点でなお、年金記録問題の解決のためには、膨大な年金記録の整備統合や再裁定業務などがあります。にもかかわらず、日本年金機構は現行社会保険庁組織に比べて大幅に削減した人員体制が想定されています。このような機構への移管を強行すれば、年金記録問題の解決はできません。したがって、2010年1月以降も社会保険庁を存続し、日本年金機構の設立も凍結すべきです。
 このためには、日本年金機構法附則の施行時期の規定を削除すべきです。

3 年金機構設立委員会は「年金記録問題解決委員会」(仮称)に改組する
 すでに旧政権のもとで年金機構移管のための事務を行い年金機構採用予定者の採用内定や研修を実施してきた年金機構設立委員会は、委員を入れ替え、厚生労働省所管で厚生労働大臣が直接監督する「年金記録問題解決委員会」(仮称)に改組して、年金記録問題の解決にあたる必要があります。
 年金機構設立委員会により採用内定された者で、このような改組の後も就労を希望する者は、全員を「年金記録問題解決委員会」(仮称)で雇用すべきです。

4 社会保険庁は存続して年金業務と制度改善を実現する
 現行社会保険庁は存続して年金業務と公的年金制度の改善にあたる必要があります。
 予算は、年金機構の予算を存続する社会保険庁と「年金記録問題解決委員会」(仮称)に配分するほか、補正措置をして確保します。
 現行社会保険庁職員については、存続する社会保険庁における年金業務のほかに、その専門的な知識と経験を生かして記録調査や再裁定処理にあたれるよう、必要に応じて厚生労働省あるいは「年金記録問題解決委員会」(仮称)で業務に従事することとします。弁護士が全員加盟する日本弁護士連合会の意見書も、日本年金機構法の社会保険庁職員排除の規定は違法であることを指摘しており、法的紛争をまねくことが必至である分限免職処分等は行わないことが必要です。

以 上


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