全厚生労働組合
厚生労働省関係機関(本省、試験研究機関、福祉施設、日本年金機構、全国健康保険協会)に働く職員の労働組合 All Health & Welfare Ministry Worker's Union

 どうなる私たちの年金?「年金法廷」を開催
社保庁解体・民営化を検証する集会に180人が参加


年金法廷  5月16日、「日本年金機構でどうなる?私たちの年金」をテーマにした「年金法廷」を、安心年金つくろう会と全労連が主催して社会文化会館(東京)で開催し、180人が参加しました。
 国民が原告となって、国(被告)を訴える裁判形式で、社会保険庁を解体・民営化して来年1月に発足する日本年金機構で、公的年金制度は本当に安心・安全なのかなど問題点を検証しました。原告である国民の代理人は、「社会保険庁の解体・民営化は、国と企業の責任を縮小し、国民に負担増を押しつけようとする『社会保障構造改悪』にほかならない」と指摘しました。「日本年金機構への移行する過程において、業務に精通した多くの社会保険庁職員が排除される。複雑な制度の下、運営されている年金業務には専門的な知識が必要で、こうした職員の喪失は国民にとっても大きな損失」とし、「年金記録問題の早期解決や専門性ある職員による安定的な業務運営を実現し、安心できる公的年金制度を確立するために、日本年金機構の設置は凍結することを求める」と主張しました。
 証人尋問では、年金受給者が「給付の引き上げや最低保障年金制度の確立など、制度の改善こそ必要」と陳述したのに対し、国側証人の財界代表は「財源は、消費税を充てるべき」と述べ、企業の負担逃れなど制度改悪の狙いが明らかになりました。
 記録問題など一連の不祥事問題では、年金受給者が「社保庁を厳しく見直すのは必要。しかし、ひとり社保庁職員だけを悪者にして事を済ませるような問題ではなく、長年にわたる公的年金制度の様々な矛盾が背景にあり、その責任を負うべきは政府・厚労省である」と述べました。また、社会保険庁職員は「保険料の不適正免除は、収納率アップを目的とした上からの業務命令であって、拒否できない実態にあった」と証言しました。
 原告側証人の学者は、「業務は日本年金機構に承継するのに雇用は承継しないということや、懲戒処分者は既に済んでいるにもかかわらず、再度、一律に不採用とする二重の処分は極めて違法性が高い」と指摘しました。
年金法廷 フロアーからは、兵庫県の社会保険事務所の職員が「自治労を脱退して全厚生に入った。厳しい状況の中、国民のための公的年金制度の確立を求めていく全厚生の方針と運動が展望を指し示してくれている。全厚生が職場で多数を占めていたら今日とは違った状況にあるのではと思う。引き続きがんばる」と発言。
 最終陳述として全厚生の杉浦書記長が、「年金法廷で、社会保険庁を廃止し日本年金機構に移行することは、国民にとって何ら利益にならないことが明確になった。社会保険庁職員の雇用を守る課題と、国民が安心できる年金制度の確立を求めるたたかいを結合させ、引き続き奮闘する」と力強く決意を表明しました。
 裁判長は、この場での判決は下さず「判決は参加者一人ひとりに委ねることとする」と締めくくり、年金法廷を終了しました。


全厚生 杉浦書記長の最終意見陳述

杉浦書記長  全厚生労働組合・書記長の杉浦です。原告の一員として、社会保険庁で働く職員を組織する労働組合として、最終の意見陳述を行います。社会保険庁改革が始まって5年。来年1月には、日本年金機構が設立されようとしています。改めて、この今、この時期に、国を相手取り、裁判を起こした理由は、社会保険庁改革がどんな中味で、何のために行われているのか、その本当の姿を明らかにするためです。さらに、国民の老後の命綱である公的年金制度を守り、拡充・発展させたいと願うからです。

 傍聴されている皆さん。社会保険庁改革とは、社会保険行政を解体・分割し、民営化する攻撃です。国の責任を放棄して、社会保障を解体する攻撃です。そこに、保険資本が侵入し、大企業のビジネスチャンスを拡大する仕掛けと一体ですすめられています。しかし、政府は、年金制度や記録問題など、国民の不信・不満を逆手にとり、歴代政府の責任を棚上げして、すべての責任を職員に転嫁する、社保庁バッシングを意図的に行ってきました。そのバッシングを最大限に利用して、国民と公務員・社会保険庁職員・労働組合との間を分断させ、「民営化」を推し進めています。この偽装トリックにだまされてはなりません。

 社保庁改革の異常さは、職員の雇用問題に象徴的に現れています。業務は継承するにもかかわらず、職員の引き継ぎ規定が全くありません。新組織への採用は、国鉄「分割・民営化」と同様の枠組みです。「民営化という」改革に後ろ向きな職員を排除し、懲戒処分者は一律不採用とする採用基準が示され、閣議決定までされています。公務リストラである、組織廃止に伴う「分限解雇」の発動がねらわれています。人が全く足りないにもかかわらず、今いる労働者の首切りを公然と行い、民間から千人も採用する。こんなことを断じて、認めることはできません。

 また、この改革によって、公的年金制度が良くなることはありません。100年安心の制度をつくると言って、5年前に政府が強行した年金改革。この中味は、国会の審議なしで、毎年連続して保険料を引き上げ、給付水準を自動的に削減する大改悪でした。政府の公約にもかかわらず、先送りしてきた基礎年金の国庫負担割合の2分の1への引き上げ。その財源には今、消費税大増税がねらわれています。消費税は、庶民犠牲の最たる税制であり、この消費税を財源とすることは、世界の労働者のたたかいで築いてきた社会保障の考え方とは、絶対に相容れません。

 今、年金制度で求められるのは、改悪を中止させ、老後を安心して暮らせる年金制度をつくることです。国民年金の保険料は、現在、ひと月・1万4千660円です。こんなにも高い保険料を最低でも25年間、払い続けなければ、年金はもらえません。40年間払い続けて、65歳から支給される年金は、月額・約6万6千円。これでは、老後が安心とは到底、言えません。保険原理を徹底する方向ではなく、憲法25条の理念を活かして、国と大企業が必要な財政負担を行い、年金制度を改善させることこそ、みんなの願いではないでしょうか。

 みなさん! 公的年金制度の運営には、40年、50年という長い期間、確実な管理が必要です。国が責任をもってこそ、安定的な制度運営が保障されます。その担い手は、国民全体の奉仕者、すなわち、公務員であることがふさわしいと考えます。  年金記録問題の根本解決には、知識と経験が必要です。複雑な制度に習熟した、職員の力が不可欠です。安心・信頼できる業務運営のためには、社会保険庁職員の役割がなによりも必要です。基本的人権を尊重し、幸せに生きる権利を実現するには、民営化は止めさせなければなりません。日本年金機構の設置は、凍結する以外にありません。

 全厚生は、結成して63年。大切な原点は、憲法25条です。規約には、労働条件の改善はもとより、「社会保障の確立のために、行政の反動化に反対し、わが国の平和と民主主義の確立に寄与することを目的とする」ことを掲げています。  公的年金、社会保障は、平和で、国民が主人公の社会を実現させる中でこそ、輝きを放ち、位置づく制度です。憲法を守り・活かし、国民全体の奉仕者として、誇りをもって働き続けることが、私たち職員の何よりもの願いです。必ずや、真実にもとづき、道理ある判決が下されるものと確信しています。本日ご参加の皆さんに、心から感謝を申し上げて、私の陳述を終わります。ありがとうございました。



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