行政サービス後退の公務員制度改悪は許さない
厚生共闘、坂口大臣と交渉!

厚生労働大臣と交渉する厚生共闘  11月26日、厚生共闘(全厚生・全医労)は坂口厚生労働大臣と公務員制度改革をはじめとする諸課題で交渉しました。厚生共闘からは保木井議長(全医労委員長)、杉下副議長(全厚生委員長)をはじめ、幹事会メンバーの12名が参加しました。
 冒頭、厚生共闘側出席者の自己紹介のあと、保木井議長が職場状況も含めて要求事項(別掲)の説明を行いました。とりわけ、一方的に押し進められている「公務員制度改革」では行政サービスの後退をまねくものであることを指摘、労使対等の立場での十分な協議を要求しました。これに対し、坂口大臣は「改革」が職員の勤務条件の基本に関わるとの認識を示したうえで、関係職員団体の意見も十分聞いて、労働基本権の問題も含めて検討されていくもの、と回答しました。最後には、杉下副議長が大臣としての使用者責任にもとづき、切実な声を関係機関にはたらきかけるよう再度要求し、交渉を終えました。
 交渉ではそのほか、試験研究機関の再編問題にかかわって情報提供、身分保障・雇用確保の問題や国立病院・療養所の拡充、廃止・移譲の撤回問題、増員問題、とりわけ看護婦の増員について当局の考えを質しました。
 交渉でのやりとりは次のとおりです。(○:厚生共闘、●:坂口大臣)

○公務員制度は公務員の勤務条件を定めているもので、能力等級を中心とする人事管理の「改革」は、労働条件の重大な変更だ。したがって、労使対等の立場で十分協議するよう求めておきたい。行政改革推進事務局は12月中旬には「公務員制度改革大綱」を発表するとしているが、現在までの「基本設計」や「新人事制度の原案」によれば、各省の人事管理権限を強化し、人事院機能の縮小、人勧制度を形骸化するものであり、労働基本権問題は先送りにできない問題だと考えている。
 私たちは、「改革」の内容が「能力」「業績」を全面にたて、職員を際限のない競争にかりたて、労働強化、労働条件の不安定化がすすみ、その結果、行政サービスの質的後退を招くものとなると考えている。こうした信賞必罰の人事管理を柱とする公務員制度「改革」を行わないよう、強く求めておきたい。
○厚生労働省は2004年度の独立行政法人化までに、国立病院・療養所の再 編成計画を完了させるということで、今春「対処方策」を発表し具体化を図ってきている。この「対処方策」には、移譲予定だった所が「廃止」されるなど、地域医療の継続及び職員の雇用確保について大きな不安がある。職員にとっては国家公務員の身分を失うばかりか、職まで奪われる国家的リストラということになる。職員の雇用問題については、最大限の努力をお願いしておきたい。
 また、独立行政法人化個別法の国会提出がいつになるのか、職員とりわけ賃金職員の身分の承継がどうなるのかについても、お伺いしたい。
○平成7年度から試験研究機関の組織・機構の改編が具体化されすすめられているが、とくに国立医薬品食品衛生研究所大阪支所を改組して医薬基盤技術研究所を新たに立ち上げることが大詰めを迎えている。大阪支所職員の生活と研究の継続など一人ひとりの意向を十分尊重し、雇用の承継がされるよう格段のご尽力をお願いしたい。
○要員確保について、どの部署でも人手不足は深刻だ。とりわけ、国立病院・療養所の看護現場は緊急に増員配置が必要だ。医療事故は病院に対する信頼を失わせ、社会不安に直結する。医療事故のカゲに人手不足の問題が潜んでいる、ということは周知の事実だ。
 国立病院の看護婦数は、他の公的医療機関と比較して100床当たりで6〜7割程度で、圧倒的に2人夜勤止まり。坂口大臣はドクターですからご理解いただけると思うが、現在の医療・看護レベルは2人夜勤で対応できる状況にはない。3人以上夜勤は当然という立場で、看護婦定員増に格段の努力をお願いしたい。

坂口厚生労働大臣●厚生労働大臣の坂口です。皆さんには、日頃より厚生労働行政の推進にご努力いただいており心からお礼申し上げたい。かつて医療の現場に身をおいていたものとして心を痛めている。私から改めて申し上げるまでもなく、少子・高齢化が進展するなど、大変な中だが、厚生労働行政に対する国民の期待は、ますます高まっている。私は職員の皆さんと心を一つにして、社会保障・雇用施策の充実にむけ、いっそうの努力を傾注して参りたいと考えている。
●要望の第1点目である公務員制度改革については、厚生労働省だけで決着するものではない。公務員が持てる能力を最大限発揮し、社会経済の構造的変化や国際化などに伴う内外の諸課題に適切に対応していくことにより、公務員に対する国民の信頼を確保するために、抜本的な改革を行おうとするものであり、的確・円滑に進めていくことが重要であると考えいる。どう公務員制度を作り上げていったらよいか、みなさん方の要望にも添っていきたい。
 公務員制度改革は、国民の視点に立ち、真に国民のためになることが重要であると同時に、職員の皆さん方の勤務条件の基本に関わる問題である。今後は、来月を目途に「公務員制度改革大綱(仮称)」が作成され、改革に向けた法制化の具体的な内容等が明らかにされるかと思うが、関係職員団体の意見も十分聞いて労働基本権の問題も含め、検討されていくものと考えている。
●要望の第2点目である国立病院・療養所の再編成問題については、私も地元で経験しており、みなさん方の代表の方とも話をしている。予想以上に様々なことが起こっている。再編成を実施するに当たっては、統合、経営移譲及び廃止の各施設における全職員に対して意向調査を行い、職員の希望を尊重し、いままで勤めていた皆さんがお勤めを続けられるような環境づくり、雇用の確保に最大限の努力をしていきたいと思う。
 また、国立病院・療養所の独立行政法人化については、昨年12月の閣議決定に従い平成16年度に移行するように、来年の通常国会に法案を提出する方針はご案内のとおりだ。いつ頃など時期については決定されておらず、ご理解願いたい。賃金職員の独立行政法人移行後の取り扱いについては、法人の運営等も勘案しつつ、今後検討してきたいと考えている。
 いずれにしても、独立行政法人化後の国立病院・療養所の円滑な運営のために、私たちも努力するし、ご協力をお願いする。
●要望の第3点目である試験研究機関の改編についてですが、職員の処遇・勤務条件等は、重要な問題と認識しており、平成16年度に発足する予定の医薬基盤技術研究施設の整備に伴い、国立医薬品食品衛生研究所大阪支所は改組する予定ですので、支所職員の意向にも十分配慮するようにしていきたいと考えている。いずれにしても大阪府知事からも協力依頼があり、立派なものをつくりあげていきたい。みなさんの理解を得たい。
●要望の4点目である国立病院・療養所の増員については、とくに看護婦の問題は現場を知っているのでできる限りのことをしたい、と日頃から思っている。従来からとくに看護体制の強化を重点に増員を図ってきたところであり、引き続き努力したいと考えている。しかし、全体の中で考えなければならないこともある。
 (なお、大臣回答ではふれられなかったが、窓口交渉に際して次の文章が確認されています。「来年度においては、医療事故の防止体制を強化する観点から専任のリスクマネージャー(看護婦長相当)を配置するための増員要求を行っている。」)
●最後になるが、冒頭にも申し上げたとおり、いよいよ国民の皆さんの厚生労働行政に対する関心や期待は極めて高いものがある。職員の皆さんも社会保障施策の充実に向け、引き続きご尽力下さるよう、お願いしたい。今日はお越し下さりありがとう。

○ただいま、大臣から回答をいただいたが、交渉を終えるにあたって一言要望したい。 公務員制度「改革」については、労働者の勤労権を所管する大臣としてぜひともイニシアティブをとってもらいたい。使用者責任にもとづき、私どもの切実な声を関係機関に働きかけていただきたい。
 国民のくらし、健康と生命を守ることを本旨にしている厚生労働行政の職場では、一律の減量化や効率化はなじまない。増えつづける業務に対しては職員は一生懸命がんばっている。しかし、健康を害する人も多く、職員のがんばりも限界にきている。看護婦をはじめ、また深刻な本省庁の長時間残業を改善するためにも必要な増員に最大限のご努力をお願いしたい。
 今後とも厚生労働行政の充実・発展をめざして、話し合いをつづけていけるよう重ねて要望して、交渉を終えたい。本日はありがとうございました。
●よく理解している。今日はありがとう。



厚生共闘発第01−1号
2001年11月22日
 厚生労働大臣
  坂口 力 殿
厚生省労働組合共闘会議    
議長 保木井 秀雄

交渉申入書

  下記事項について団体交渉を行うよう申し入れます。



1.「公務員制度改革の大枠」及び「公務員制度改革の基本設計」にもとづく公務員制度改革は行わないこと。

2.国民の医療要求にもとづき国立病院・療養所を整備・拡充すること。「再編成計画」の具体化ケースについては、地域医療の継続と職員の雇用確保に最大限の努力を行うこと。
  なお、国立病院・療養所の独立行政法人化について、検討状況を明らかにすること。
3.試験研究機関における組織・機構の改編にあたっては、労働組合と十分協議するとともに、職員の処遇の後退を招かないよう努めること。
  特に国立医薬品食品衛生研究所大阪支所の改組により医薬基盤技術研究施設の設置が検討されているが、支所職員の意向を十分尊重すること。
4.国民の行政要求に応え、長時間労働を解消するため、職場実態を踏まえた増員要求を行うこと。
  特に国立病院・療養所の看護婦増員については、医療事故防止のためにも必要な定員増を行うこと。
以 上


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