[第1号議案]2003年度運動方針(案) 《目次》 はじめに〜憲法を生かし、職場と地域に根ざした労働組合を T 情勢の特徴と労働組合の役割 U 全厚生運動の目標 V 頼りになる組合活動をつくる W 要求前進のための道筋  1.賃下げ攻撃に歯止めをかけ、賃金改善をめざす  2.働くルールの確立、健康で働ける職場をつくる  3.独立行政法人のもとでの組合活動を前進させる  4.真の男女平等をめざし、男女共同参画の社会に  5.民主的な公務員制度確立、国公権利裁判の前進を  6.国民の願いに応える厚生労働行政の確立をめざす  7.憲法25条を守り、社会保障闘争での役割発揮を  8.平和と民主主義を守り、憲法が生きる21世紀に X 年間のたたかいを構想し、要求の前進を はじめに〜憲法を生かし、職場と地域に根ざした労働組合を  人間として、働いている 毎日、生きいきと働いていますか? 仕事に生きがいをもって、働いていますか? 家族は、地域の仲間は、みんな笑顔で元気ですか? だれもが、そう思う−「こんな働き方でいいはずがない」    私たちは、物でも奴隷でもない       使い捨ての歯車には、決してならない         ならば、状況を変える決意を固めあおう!  手をつなぎ、枠をこえる 職場でも地域でもバラバラでは、たたかえない 必要なのは、みんなの力を結集すること 狭い関係にとどまっていては、展望はつくれない   従来の枠こえる幅広い団結    手をつなごう−そう、この広がりだ  これに決める−憲法を生かす道 2つの道。「暴力と戦争」か「対話と平和」か まさに、歴史の転換点。新しい価値観が生きていく時代 相手が競争原理なら、私たちは、共同原理を探求しよう!   崇高な理想をめざす!でっかく「志」もって     憲法を生かす道。勇気をもって、これに決める T 情勢の特徴と労働組合の役割  「人間らしく生き、人間らしく働く」−これは、ごく当たり前の要求です。しかし、職場の現実は、この願いに逆行しています。仕事は忙しくなり、残業は減らず、賃金は切り下げられ、しんどい思いで生活をしています。健康で働き続けられるか、不安がいっぱいです。こんな思いにさせる根本原因を突き止めます。組合活動の指針は、情勢を正確につかむことから始まります。 1.小泉「構造改革」の本質と根本解決の道  改革の中味を根本から問いただす  政府は、「構造改革」の名の下に、大資本・大企業の利益を最優先して規制緩和をすすめています。この結果、雇用と暮らし、経済、教育、社会のあらゆる分野に渡り、危機的な状況をつくりだしています。市場経済にすべてを委ね、経済効率の一辺倒で全てを切っていく手荒な手法です。国民にがまんと犠牲を押しつけてすでに3年目です。これからも、ガマン、ガマンで明日はないのが、小泉「構造改革」です。まやかしと分かっていても「改革」と叫ぶと、期待してしまうなら、改革の中味を根本的に問いただすことが重要です。  勝手放題な多国籍企業の活動  なぜ、小泉「構造改革」を財界は支持するのでしょうか。それは、日本の大企業が多国籍企業化したことと直結しています。多国籍企業は、大企業を親会社として、諸外国に多くの子会社を作り、その親会社と子会社が一体化して、世界をまたにかけて最高の利益を求めて、企業活動を行っています。日本の大企業は、アメリカの持つ経済的・軍事的な優位性に依存して、企業利益を最大限に得ようとしています。この勝手放題の社会をつくる考え方が新自由主義(=ネオ・リベラリズム)といいます。多国籍企業の活動を自由自在におこなう上で障害になるすべてを悪とみなし、それぞれの国の「規制」を緩和し、「公共性」を縮小・撤廃し、武力行使も辞さない野蛮な手法で市場開放を迫り、市場原理を最優先する体制をつくろうとするものです。その結果は、弱肉強食の競争社会をつくりだします。これが小泉「構造改革」の本質です。  日本経済を元気にさせる王道を  小泉「構造改革」は、悪循環に陥っています。「強引な不良債権処理→企業倒産の激増→失業者の増大→生活破壊→将来不安の増大→消費の停滞→企業の売り上げ減少」の負の連鎖から抜け出す政策が必要です。日本経済を元気にさせるには、国民の暮らしと雇用を安定させ、中小企業の経営を守る政策を実行することです。この基本政策を変えさせることは、日本経済の回復と国民の暮らしをよりよくし、労働者・国民の生活改善と働くルールを確立していく王道です。 2.戦争する国へと突き進む危険と憲法第9条の意義  戦争か平和かの国際的なせめぎあい  今、世界の各国、労働組合を含む各団体・組織、一人ひとりの個人が戦争への道か、平和への道をめざすのか、それぞれの位置でどちらの流れに加わるかが大きく問われています。アメリカやイギリスが国連憲章を踏みにじり、無法なイラクへの侵略を行ったことから生まれている国際的な二つの大きな流れです。これは、21世紀初頭に生まれた平和をめぐる国際的な対抗関係です。平和を脅かしているのは、多国籍企業のなりふりかまわぬ活動を守るための軍事的な活動が背景にあります。とりわけアメリカは、世界で活動する多国籍企業を擁護する上で、アメリカの価値観とそれに基づく行動を最優先する一方、それとは異なる者に侵略的な武力攻撃を仕掛けています。これが、イラク攻撃の本質です。この事態に対して、小泉内閣がどのような対応をしたかも問題です。小泉内閣は平和を求める流れに加わるのではなく、アメリカが起こす戦争に加担する有事法制やイラク特別措置法を通常国会で強行したのです。  日本の姿勢は、安保条約にもとづいている  日本政府がアメリカに追随する立場は、安保体制(=日米安全保障条約にもとづく日米関係)の枠組みが歴史的な根拠になっています。この体制は、日米軍事同盟の規定ですが経済面でも同様に深刻です。第2条では、「締約国は、その自由な諸制度を強化することにより、これらの制度の基礎をなす原則の理解を促進することにより、並びに安定及び福祉の条件を助長することによって、平和的かつ友好的な国際関係の一層の発展に貢献する。締約国は、その国際経済政策におけるくい違いを除くことに努め、また、両国の間の経済的協力を促進する」となっています。  国際社会において、名誉ある地位になる運動を  今、多国籍企業化した日本の大企業は、日米軍事同盟の海外展開に飛び乗って、積極的な役割を果たそうとしています。しかし、このアメリカに依存した関係では、何の展望も見えないことは、明らかです。もっと、世界に対して、自主的で積極的な外交政策を展開する時期に来ています。その方向は、日本国憲法が示しています。日本国憲法第9条は、日本国民の宝だけではありません。9条の精神を貫くことが戦争を防ぐことにつながる−−このことが、世界中の多くの人々の共通の思いになっています。世界に189の国と地域があります。その国の軍隊が第2次界大戦後に一度も戦争に参加していない国は、日本、スイス、アイスランド、スウェーデン、フィンランド、ブータンの6カ国にすぎません。日本の姿勢には、日本国憲法の存在が大きく働きます。国際社会において、名誉ある地位を占めるための運動は、日本と世界にとっての平和への貢献になるものです。 3.新しい時代の労働組合の役割 (1)人間を大切にする社会の物差しを持つ  いま、政府・財界は、経済効率を最優先し、その追求はどこまでも続きます。資本や大企業にとって、競争原理や効率性という物差しがあることで自由身勝手な活動が可能になるのです。私たちは知らない間に、この物差しに慣れてしまっています。子育てや教育、介護や福祉、暮らしや文化など、人間らしい生活にとって、経済的な効率のみの尺度は、有効ではありません。むしろこれらは、画一的でなく、回り道をしたり、試行錯誤を重ねたりしながら前進します。地域で対話し、協力・共同の関係をつくり、お互いに励まし合い、成長しあうのが人間関係です。全厚生は、人間を高めあう関係を大切にします。  政府・財界の価値観や物差しを絶対のものとせず、労働者としての価値観を身につけることが必要です。この基準はさしあたり、憲法にもとづき判断することです。憲法が示す理想を語り、生活やたたかいの中で生かします。労働組合は、人間を大切にする社会のあり方を探求します。 (2)すべての労働者・国民を視野にたたかう  日本の労働者数は、約5400万人に達しています。その内、労働組合に組織されている労働者は約5人に1人(組織率は20%)です。パート労働者や派遣労働者などの非正規雇用が急速に広がり、その数は1千万人を超えています。しかし、大半が組合に組織されていません。労働条件は、正規職員と同じように働いても賃金が低く抑えられ、休暇制度などでも差別を受けています。財界は、労働条件に格差をつけ、労働者全体の労働条件を低く抑えることに利用しています。  労働組合は、増加する非正規労働者の要求を積極的にかかげ、すべての労働者を視野に入れて、労働条件の底上げをめざすことが大切です。さらに、共にたたかう仲間として、組合に迎え入れる課題も重要です。国民の中には、労働者だけでなく様々な階層の人がいます。商工業者や農民、漁民、学生などさまざまです。どの階層の人も、それぞれ固有の要求をもち、実現をめざす運動をしています。労働者の要求だけでなく、国民全体の要求も位置づけてたたかうことが求められています。  政府や財界の攻撃を打ち破って、21世紀の新しい国民的なたたかいを切りひらくために、克服する課題があります。それは、労働組合の「企業内主義」を打ち破ることです。政府・財界による全面的な攻撃に対して、要求を前進させるには、個々の企業や産業でのたたかいを強化していくとともに、それだけでなく、社会的な力関係を変えるたたかいを発展させなければならないからです。これまで積み上げてきたたたかいの到達点を踏まえ、大胆に運動を改革していくための探求が求められています。 (3)歴史に学び、時代を切り拓く担い手をつくる  今ほど、働く者の生活と権利を守るという労働組合の役割が問われている時はありません。小泉「構造改革」は、あらゆる産業、階層に困難や苦しみをもたらしているからです。リストラ「合理化」、労働法制の改悪、賃金切り下げ、社会保障の改悪など、決して一部の労働者だけに攻撃の嵐が吹き荒れているのではありません。人間らしく生き、働くためには、団結してたたかわなければなりません。今の情勢は、この条件と可能性が労働者一人ひとりにあることを教えています。  時代の転換点では、運動の担い手をどれだけ多くつくれるかが、運動を広げるカギを握っています。画一的でなく創造的に、柔軟な思考で運動を切り拓いていく担い手が必要です。とりわけ若い仲間への働きかけは決定的に重要です。人を育てるには、学習が大切です。ユネスコの学習権宣言(1985年3月24日、第4回ユネスコ国際成人教育会議)は、学習することの意味を考える上で示唆に富んでいます。学習権とは、「問い続け、深く考える権利」「想像し、創造する権利」「自分自身の世界を読みとり、歴史をつづる権利」と説明しています。さらに、「個人的・集団的力量を発達させる権利」であると指摘しています。全厚生運動を発展させる担い手になるように、学び、実践(たたかう)し、さらに学び、実践(たたかう)する中でお互いに切磋琢磨していきます。全厚生は、時代を切り拓く担い手を、少なくとも10年先を見通しながら、つくる努力を開始します。 U 全厚生運動の目標  全厚生は、組合員と家族の幸せを願い、その具体的な保障となる要求実現をめざし、全力でたたかいます。要求実現をめざす運動目標は、@職場を基礎に、仲間たちの要求実現をめざす、A県国公に結集し、国公産別運動で要求実現をめざす、Bこの国のあり方を問い、根本的な解決をはかりながら要求実現をめざす、この3つです。 1.職場を基礎に、仲間たちの要求実現をめざす (1)職場組織を確立し、職場の変化に対応する  労働組合にとって職場とは、どんな意味をもつでしょうか。職場は、労働者が働く場所です。毎日、顔をあわせ、仕事の段取りをつけ、業務を協力してすすめます。先輩、後輩、同期の仲間など、年齢のちがいなどで、様々な人間関係がつくられます。仕事を進める中で、様々な不満、不安、悩み、怒りが絶えず生まれます。人間らしく生き、人間らしく働くための様々な要求は、この職場でつくられます。職場の隅々を見渡し、労働環境をチェックします。これが要求づくり、たたかいの出発点です。  組合活動をすすめるホームグラウンドは、職場です。その職場組織は変化します。仕事のシステムや流れ、体制が常にかわっているからです。人事異動でも職場は変わります。このことで、団結を崩してはなりません。支部・分会は、職場組織をしっかりと確立し、どんな状況でも、組合員を主人公にして活動することを何よりも大切にします。 (2)全厚生4部門の活動を強化する  全厚生は、厚生労働省関係機関に働く職員でつくる労働組合です。現在は、本省庁、試験研究機関、社会福祉施設、社会保険の4つの部門(職域)で構成しています。企画立案部門である本省庁、厚生科学研究の担い手である試験研究機関、国立として社会福祉をリードする役割を担う社会福祉施設、社会保険行政の担い手である社会保険の各部門は、全厚生運動の基本的な担い手です。各部門ごとに労働環境も大きく異なります。この4部門の運動をすすめる体制の強化に努め、会議配置を効果的に行い要求前進をめざします。  本省庁支部は、本省庁協議会の定期開催を軸にすすめます。試験研究機関支部は、試験研究機関支部委員長会議を軸にしてすすめます。社会福祉支部は、厚社連(=全厚生社会福祉施設支部連絡協議会)を軸にすすめます。社会保険支部は、社会保険支部代表者会議を軸にすすめます。 (3)全厚生ブロック機能を強化します  全厚生は、1996年に結成した東海ブロック連絡協議会(静岡県支部、愛知県支部、岐阜県支部)を出発点にして2000年に近畿ブロック協議会(神戸支部、国衛研支部大阪分会、滋賀県支部、京都支部、大阪支部)、四国ブロック協議会(香川県支部、愛媛県支部)をつくりました。さらに、瀬戸内海に隣接する3支部(愛媛県支部、香川県支部、大分県支部)が瀬戸内ブロックとして交流・懇親を深めています。  現在、こうしたブロック機関について、全厚生規約には正式な機関として位置づける規定がありません。しかし、支部間の交流会で懇親を深め、人事院地方事務局との交渉で要求実現を迫っています。また、東海ブロック、近畿ブロック、四国ブロックは、国公労連のブロック機関の構成員として活動しています。支部間で交流し、共同してたたかうことは、励まし合い、元気をつくります。引き続き、活動経験を積み重ね、ブロックとしての機能を積極的に生かした取り組みをすすめます。 (4)厚生労働省3組合の連携強化  2001年1月の厚生労働省の発足以降、厚労省の3単組(全厚生、全医労、全労働)は一貫して、協力・共同の取り組みを強めてきました。これまで、3単組学習交流集会(02.6.6)、厚生労働省前要求行動(02.11.21)、厚生労働省包囲行動(03.3.4)を実施し、着実に行動を積み上げてきています。厚生労働省に働く労働者として、労働条件の改善や行政を国民本位にするために、より一層、協力・共同の取り組みを強めます。さらに、厚生労働省内の労働組合の共闘を強めるために、厚生共闘(厚生省労働組合共闘会議)の関係を考慮し、今後の基本方向を3単組間で検討します。  全厚生本省支部、統計情報支部、全労働本省支部で2001年2月に結成した本省共闘(厚生労働本省労働組合共闘会議)は、2年半が経過しました。今年度は、大臣官房人事課長交渉を行い、恒常的な残業改善を現場から追及しました。さらに、春闘の山場では本省共闘として初めての職場集会を成功させ、団結して結集すれば元気になれることを実感しました。引き続き、厚生労働本省で働くすべての職員を視野に入れて、人間らしく働き続けられる本省、国民から信頼される厚生労働行政の確立をめざして取り組みを強めます。 2.県国公に結集し、国公産別運動で要求実現をめざす (1)国公産別運動なくして要求の前進なし  国公労連は、1975年に当時の共闘組織(国公共闘)から連合体に改組し、国家公務員の産別運動としてたたかってきています。「職場と行政に憲法を生かす」ことを運動の基本に据え、1980年代の臨調「行革」路線とのたたかいを通じて、職場から国民の中へ、地域へと足を大きく踏み出し、運動の広がりをつくりだしました。  政府の国家公務員に対する政策は、個別の省庁でなく全省庁の全体でつくられます。定員削減の基本方針、公務員制度改革など、国家公務員の産別運動としての国公労連、地方自治体や教職員の運動を束ねている公務大産別運動としての公務労組連絡会への結集は、益々重要になっています。職場でのたたかいを基礎にして、産別運動への結集を強め、要求実現をめざします。 (2)県国公を強化し、地域から「国民の中へ 国民とともに」  国公労連は、国公労連(本部)、各単組、ブロック国公及び県・地区国公の三位一体で活動しています。とりわけ、ヨコの機能となる県・地区国公は、たたかいの幅を広げ、国民にもアピールするための重要な機能を発揮しています。この県国公の強化は、地域での国公産別運動をすすめていく母体です。各支部は、県国公、地区国公に結集し、運動の強化に努めます。  そして、地域での運動をすすめる時、公務員労働者、労働組合として重視する立場は、「国民の中へ 国民とともに」です。「いま、国民の中へ、国民とともに」は、1999年12月に開催した国公労連全国活動者会議で確認したスローガンです。たたかいの基本方向は、「あらためて国民の視点で職場と行政、そして自らの運動を総点検し、来るべき21世紀にむけて、国民とともに日本国憲法の平和的・民主的原則にのっとった新しい『国づくり』のために奮闘する」ことで意思を固めました。全厚生は、この立場を重視して、憲法25条を厚生労働行政に生かすために職場からたたかいます。 (3)実力行使態勢でたたかう組織力を高める  ストライキは、労働組合の基本的な闘争戦術であり、要求実現の最大の力です。公務員労働者は、国家公務員法で不当にも争議権が剥奪されています。こうした下でも、全厚生は、幾度となく自らの生活と権利を守るために、国公産別運動に結集して、ストライキ闘争を果敢にたたかってきました。賃金課題をはじめ要求実現にとって重大な情勢であると判断した時には、国公労連の全体の議論を踏まえ、ストライキ権を行使してたたかう態勢を職場の総意で確立できるよう、組織の力量を各支部が高めます。 3.この国のあり方を問い、根本的な要求実現をめざす (1)根本的にこの国のあり方を問う  小泉「構造改革」や財界の姿勢は、労働者・国民のあたり前の要求前進を阻んでいます。人間らしく生き、働くためのルールは、たたかいでつくるものです。労働者の賃金引き上げ要求は、資本の飽くなき利潤追求との対決であり、労働時間の短縮のたたかいは、ギリギリまで効率を求める資本の本性とのぶつかりあいです。これらは、単なる話し合いの調整で解決できるものではなく、労資の力関係が左右します。労働者は要求に根ざし、たたかってこそ、一歩前進できるのです。  大切なことは、この国のあり方を根本的に問い、社会や経済を健全に発展させる方向を見据え、根本的にこの国のあり方に対して、要求と政策を対置してたたかうことです。 小手先での手直しでなく、たたかいの構えを大きくもち、職場、地域から労働者・国民が力を合わせていくことが大切です。 (2)新しい春闘の前進めざし、04春闘を準備する  当面するたたかいの大きな節は、04春闘になります。全労連は、21世紀の新しい国民春闘の方向を次のように示しています。ナショナル・センターが提起する運動構想について、率直に議論します。国公労連のたたかいに結集しながら、具体化していきます。   《「21世紀の新しい国民春闘の前進にむけて」より                 −全労連第33回評議員会、2003.7.24〜25》  21世紀の新しい春闘の前進にむけた課題の第一は、国民総ぐるみによる「市民型春闘」の追求である。労働者をはじめ中小企業・業者、農民、市民など、あらゆる国民に新たな収奪が襲いかかっているなかで、国民総ぐるみの春闘をたたかう客観的条件は成熟している。労働者の最低賃金と下請け単価や農産物価格保障、最低保障年金、生活保護基準、失業者給付など、全国民の所得保障闘争と結合した春闘にとりくむことが期待されている。  また、労働者にとって個人の努力や企業内の交渉だけでは解決しきれない医療、年金、介護、教育、子育て、文化、自然環境、街づくりなどの社会問題が広がっている。しかし日本の労働組合は、これまで企業や産別の枠をこえた地域からの運動を前進させることはきわめて不十分であった。全労連が2002年春闘から呼びかけた国民総決起春闘の提起は、こうした弱点を克服して社会的な「市民型春闘」に挑戦しようとしたものである。  春闘を国民総ぐるみの運動として前進させるために、労働組合は産別レベルで討議を集約する統一要求とともに、地域を基点とした「市民的目線」による要求を積極的にとりあげていくことが必要である。統一行動についても、これまで「タテ型指令」による偏重しがちであった統一闘争の形態を見直し、住民団体やNGOなどとも連携してその実現をめざす「地域総行動」をさらに発展させることが期待されている。 V 頼りになる組合活動をつくる  みんなで生きいきと組合活動ができたら、どんなに楽しいでしょう。私たちは、元気で笑い声のたえない組合活動をめざします。労働者が信頼しあい、団結を常に高めるには、どんな活動に心がければよいでしょうか。全厚生のすべての支部、分会の活動を元気にしていくために、5つの観点を重視して組合活動を改善します。 1.職場での日常活動を粘り強く (1)職場活動を抜本的に改善する  組合活動が執行部だけの「請け負い業務」になっていないでしょうか。がんばっていることは事実ですが、それでは運動は前進しません。みんなの知恵と力をいかに引き出すかが、ポイントです。そこで大切なのは、「みんなで討議し、みんなで決め、みんなで実行する」ことです。この組合運営のことは、組合民主主義と呼びます。活動のすべてにわたり、組合員が主人公であることを貫きます。そのためには、組合員一人ひとりが自由に発言でき、要求や方針を決定する過程で民主的な討議を保障します。実際には、なかなか難しいことです。しかし、合意と納得ですすめる運動は、組合員の自覚を高め、団結を強めることに必ずつながります。民主的な組合運営は、組合員の力を引き出す教育的な効果をもつことを深く理解して、組合運営をすすめます。この方向にそって、支部・分会での組織活動をチェックして、職場活動を抜本的に改善します。 (2)実践編−心がけよう次のチェックポイント  そんな基本の活動をする上で、次のことを心がけて活動します。 [気軽に話せる雰囲気づくり]  組合員の自由な討議を保障します。そのために、誰でも発言しやすい雰囲気の話し合いの場を工夫します。執行部の姿勢や発言に誘われて、意見が次から次へと出てくる、そんな会議をめざします。 [決めるプロセスを重視する]  みんなで方針を決めて、実行します。そのために、要求や行動する意義を伝え、押しつけでなく自主的に「決め合う」プロセスを重視します。組合員との対話を大切にして、意見を汲み取り、さらに深めることのできる民主的なリーダーになるように努力します。 [みんなの参加を呼びかける]  どんな時にも執行部は、多くの組合員が行動に参加するように呼びかけます。一人ひとりの条件のちがいを考慮して、一律・機械的でない活動を工夫します。 (3)要求を丁寧に確立し、交渉水準を高める  要求づくりは、話し合い(=対話)から始まります。労働組合は、酒場(イギリスのパブ)から始まったと言われますが、話し合いの場は、様々です。昼食時を活用したり、仕事を終えて、たまには居酒屋で対話することも大切です。労働者が気軽に話し合う場をつくることが大切です。  春闘や秋季年末闘争では、要求にもとづき、団体交渉を所属長と実施します。この交渉は、粘り強く、毎回毎回積み上げて、しっかりと労使関係を築くことが重要です。各支部ごとの交渉のレベルや水準はちがいますが、交渉の水準をあげながら、常に誠意ある回答をめざし追及します。@要求に対し、応える努力をしているか、A職場の仲間の生活実態や切実な思いをどれだけ受けとめているか、B責任ある対応になっているか、などを基準にして、「誠意ある回答」を引き出し、要求の前進をはかります。 2.学習・教育活動の重視、機関紙活動の前進 (1)持続的・計画的に学習教育活動を推進する  学習は、たたかいの力の源泉です。今、世の中のしくみや相互の関連を見抜き、要求を阻む理由を明らかにし、要求実現の道筋や展望を見いだすには、基礎的な学習が不可欠です。本部役員はもとより、支部・分会執行委員会は、学ぶ活動の先頭に立ち輝きをもった役員になるために努力します。  学習教育活動は、持続的・計画的に取り組むことが重要です。とりわけ、青年層は、学ぶことが成長に結びつく世代です。積極的な学習の場をつくり、参加を保障することが重要です。新入組合員教室や労働組合の基礎を学ぶための学習会を支部で開催するように「学習の手引き」を作成します。各支部は、「学習の友」を積極的に活用します。地域で開催する労働学校に積極的に参加します。「勤労者通信大学」の受講組織は、励まし合いながら学べる複数受講に努め、本部は学習援助をすすめます。国公労連が主催する労働学校をはじめとする各種学校に積極的に参加します。 (2)機関紙活動を組織活動の動脈に位置づける  生きいきとした組合活動をつくり、要求実現のたたかいを職場、地域から力強く前進させるためには、機関紙活動は不可欠です。支部・分会の顔である職場新聞は、組合員みんなで育てていく活動です。組合員に確かな情報を正確に伝え、職場の声を集めて双方向の対話を促進する機能を高め、要求実現の取り組みをリードします。職場新聞は、とにかく「継続こそ力」です。大変なことですが年間を通して安定的に発行させることが大切です。 さらに、「読まれる魅力」を持つ紙面になるよう常に努力します。その基本は、紙面に仲間たちの怒りや喜びを表現することです。機関紙は、@組合員や職場の仲間を励まし元気づける、A情報・話題を提供し、今職場に何が起きているかを伝える、Bいかにたたかうかを示し続けます。機関紙は、組織活動の動脈の役割を担っています。まさに、要求とたたかいのあるところには、「機関紙あり」です。  今年度も定期大会において、支部・分会の教宣・機関紙活動を励まし、編集内容の質的向上を支援するために機関紙フェスティバルを実施します。さらに、機関紙担当者交流会(仮称)を開催し、職場の機関紙活動の向上をめざします。  本部は、中央機関紙としての全厚生新聞を旬刊で発行してきました。DTPによる編集は、編集実務をより効率的に行い、読みやすい紙面づくりに効果をあげています。引き続き、たたかいをリードし、仲間を激励し、団結強化に役立つ紙面作りをめざします。日常的に支部・分会との連携を強め、職場活動を生き生きと紙面に反映させるように努めます。全厚生ホームページの充実、全厚生闘争情報の随時発行に努めます。 3.憲法の精神を生かし、行政研究活動を本格的に強化する (1)憲法25条を厚生労働行政に生かす立場で奮闘する  全厚生の組合員は、厚生労働行政の担い手として、一人ひとりが誇りとやりがいを持ち、仕事がしたいと願っています。しかし、現在の行政は、社会保障を切り捨てる政策、定員削減の強行などによって、本人の意思とは裏腹に国民に犠牲を強いる結果になっています。悔しい思いを抱くだけで済ますのでなく、全厚生は何ができるか、何をすべきかを率直に考え、行動することが求められています。  そもそも、「公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負う」(第99条−憲法尊重擁護義務)ことになっています。この規定は、権力を行使する公務員に対する義務であり、国民に対する義務ではないことが核心です。この点に着目すれば、行政を国民の立場から考えたり、見直したりすることは、憲法理念を具体化する仕事に位置づけられます。厚生労働省に働く職員は、あらゆる場面で、基本的人権を尊重する立場にたつことが必要です。憲法25条を行政に生かすために、全厚生は、「何のため」「誰のため」に厚生労働行政があるのかを真剣に問い続け、国民の願いに応える厚生労働行政をめざして奮闘します。 (2)政策活動を強化し、行政研究活動をすすめる  2000年9月の第64回定期大会は、「労働条件の改善とともに、社会保障の拡充、厚生行政の民主化をめざすたたかいは、厚生行政の担い手である全厚生の存在意義をかけた重要な課題です」と規定しました。とりわけ、行政研究活動を大衆的にすすめることを強調し、「それぞれの職場から、自らの仕事と労働を国民の立場から見直し、検証する活動に取り組みます」との方針を決定しました。それから3年が経過し、各部門での議論と実践がはじまっています。試験研究機関の部門では、2年連続で交流集会を成功させました。社会保険の部門では、いよいよ来年3月の開催に向けて、社会保険行政研究集会の準備がすすめられています。  この行政民主化や行政研究活動は、3年から5年くらいを視野に入れ、全厚生の基本的な活動に位置づけて推進しています。当面は、各部門ごとに活動をすすめます。企画立案部門である本省庁、厚生科学研究の担い手である試験研究機関、国立としての役割を担う社会福祉施設、年金・医療の社会保険行政の担い手である社会保険の4つの行政部門のそれぞれの性格や位置づけなどを踏まえて、内容を工夫しながら進めます。 4.青年、女性、階層別のたたかいで幅を広げる (1)生きいきした青年活動を  青年層は本来、@不正を憎む正義感、A真理に対する探求心、B文化・スポーツで交流し楽しむ、Cこれらの実践にむけた情熱と行動力を持っています。そもそも大人社会が根本からゆがんでいることや、学校教育の詰め込みや競争のもとで自主的、民主的に行動する力が育ちにくい環境にあることを、労働組合は率直にみておくことが大切です。青年のエネルギーを最大限に引き出すことは、青年対策の基本的な役割です。  新たに職場に入った青年と支部・分会の組合活動とは、初めての出会いになります。青年に対し「はじめまして、私たちは労働組合です。これから、ともに働く仲間として、私たちの活動と歴史と仲間を紹介します。組合に入って、職場を社会をかえていきましょう」と真剣に語り、呼びかけます。青年にとって、組合加入を感動あるものにする先輩の側の努力が大切です。青年組合員とは、学び、たたかう中で、青年との豊かな関係を支部・分会が築くことが大切です。まさに、頼りになる良き先輩になることです。各支部の青年部活動は、青年の要求に応え、明るく、生きいきした組合活動を展開するために重視します。  青年対策部は、今年の春闘時には、国公青年協の中央行動と連動させ、青年役員学習交流会を成功させました。さらにこの秋、11月22日(土)〜24日(月)に青年交流集会を愛知県で開催します。この集会準備の取り組みの中で、青年部活動の前進をめざします。 (2)輝く女性活動の前進を  全厚生女性部は、昨年秋に第7回総会を開催し、真の平等社会の実現、生きいき働き続けられる職場環境をつくるために、女性の要求を束ね、一歩でも前に前進するようにねばり強くたたかうことを確認しました。  こうした運動の総集約として、大臣官房人事課、社会保険庁との懇談を年1回実施しています。健康破壊・家庭破壊につながる恒常的な残業をなくし、男女ともに働きやすい勤務環境をつくる、女性職員の採用・登用の拡大、昇任、昇格の男女格差の是正、育児休業や介護休暇などの休暇制度の改善を求めています。この懇談には、職場の代表も参加し、職場実態を訴えて要求前進をめざしています。懇談会の成功のために、幹事会での論議で要求を練り上げ、女性部3役で予備折衝を積み重ねてきています。引き続き、要求を鮮明にさせ、効果的な懇談となるよう努力します。  2月22〜23日、第27回全厚生女性交流集会を神奈川県で開催し、14支部96人が参加しました。今回は、神奈川県支部の女性が実行委員会をつくり、企画から運営まで多彩な力を発揮しました。5月23〜24日、岐阜県で開催した第33回国公女性交流集会には、57人が参加しました。今後も交流し、学びあい、みんなで行動する活動を積極的にすすめます。国公労連女性協議会への結集を強め、展望をもってたたかえるよう、財政面を含め、援助を強めます。 (3)壮年層の豊富な経験を生かす  壮年層は、処遇や仕事の面、家庭や家族、健康上の悩みなど、若い時とはちがった様々な苦労をかかえています。仕事で責任ある部署につくことは、多くの困難が伴います。支部は、壮年層の要求を汲み上げ、壮年層との懇談をすすめます。本部は、各支部の壮年層の活動を紹介し、交流をすすめます。  また、壮年層は、労働組合や行政での豊富な活動経験を持っています。これらの経験を生かし、要求・政策づくりや行政研究活動の重要な担い手として位置づけます。さらに、組合活動全般にわたり、長年の経験や力が生かされるよう工夫します。 5.組織拡大・強化、非常勤職員の仲間とたたかう (1)要求実現と組織活動を一体でたたかう  支部・分会にとって、新しい仲間を迎えることは、最もうれしいことだと思います。団結が一歩前進することだからです。この仲間を迎える取り組みは、労働組合の最も重要な活動です。議案書では、毎年、組織の拡大・強化を重視することを強調しています。この間、各支部は新規加入の仲間を迎え入れる取り組みを着実に進めています。しかし、全厚生全体では、退職者による減員を克服できず、残念ながら純減になっています。本省庁や試験研究機関では、とりわけ困難な実態が続いています。本部、支部・分会の様々なレベルでの本腰を入れた議論を、後回しにせず、行うことが大切です。  労働組合の力とは、何でしょうか。一人ひとりの労働者の要求を束ね、一致した要求の実現のために行動する「団結の力」です。労働組合に新しい息吹、新たな活力を生み出すために、職場のすべての仲間を対象に、組合加入の運動をすすめます。この組合加入は、目的意識を持って取り組むことが必要です。さらに、支部・分会は、すべての労働者を視野に入れ、身近な要求を取り上げてたたかうことと一体で取り組みます。 (2)様々な方法で組合活動を呼びかける  全厚生の各支部は、数人の小規模の支部から、600人を超える支部まで、さまざまです。また、組織率も、ほぼ100%に近い支部から少数で奮闘している支部、競合組織を持つ中でたたかっている支部など、さまざまです。現在の組織率や、支部・分会の確立状況を考慮して、各支部・分会が組織の強化・拡大の目標と計画をつくり、一歩一歩取り組みをすすめます。各支部では、日常的に拡大をすすめる体制を執行委員会につくります。本部は、日常的に、系統的な取り組みにするために努力します。  大会後の秋季年末闘争や春闘時は、労働組合の風が職場に吹き、最も身近に組合を感じる機会です。組織拡大は、基本的に通年で取り組みます。しかし、特にこの時期は、加入促進特別期間に設定し、集中して取り組みます。本部はこの時期に併せ、加入促進に役立つ資材を用意します。また、組織率が過半数に達していない支部は、個別に対策をたて、取り組みを強化します。  「仲間どおしのたすけあい(愛)」をスローガンにする国公共済会への信頼が高まっています。引き続き、組合員の6割の加入をめざして運動を展開します。組合員の加入促進の運動と連携させて、取り組みを強化します。 (3)パート・非常勤職員の要求でたたかう  今、政府や財界は、多様な非正規雇用の労働者を大量に増やし、正規労働者との入れ替えをねらっています。低賃金で無権利な労働者を大量につくることが目的です。この事態を野放しにしていては、全体の労働条件を改善することなど到底できません。職場でも、地域でも、正規労働者と臨時・パート労働者との共同したたたかいがどうしても必要です。めざす方向は、生協労連の仲間が打ち出した「セ・パ(正規とパート)一体のたたかい」です。  パート労働者の「パート」という言葉は、部分(フルタイムでなく短時間)という意味です。この意味から、賃金・労働条件や働く権利が、低い水準でもしかたがないなどという日本の非常識を是正させていくことが重要です。  職場には、さまざまな臨時・パート労働者、公務で言う定員外職員が働いています。定員削減がすすむ中では、こうした労働者は増加傾向にあります。その各々について、各部門ごとに勤務条件や契約関係を把握し、処遇改善の課題や組織化の条件を検討し、働きかけを強めます。 W 要求前進のための道筋  労働組合は、どんな時でもたたかい続けます。その意味は、@組合員と家族、職場の仲間の要求をまとめ、A要求実現の道筋を明らかにし、Bその道筋にそって、団結してたたかうことです。問題は、どう要求を前進させるのか、その道筋を明らかにすることです。 1.賃下げ攻撃に歯止めをかけ、賃金改善をめざす (1)国民春闘に結集し、賃金底上げでたたかう  政府・財界は、春闘解体の攻撃を強め、春闘を終焉させようとしています。しかし、依然として春闘は、要求実現をめざす労働組合の最大の統一闘争です。賃金闘争は、春闘を前進させる中で再構築をめざす課題です。大切なことは、すべての労働者の賃金底上げをはかるためにたたかうことです。なぜなら、賃下げを許さず、賃金底上げの課題は、資本側と労働者・労働組合との最も鋭い対決点になっているからです。たたかいの基本方向は、政府・財界の攻撃が集中し、苦しめられている労動者の立場に立ち、賃下げ攻撃に歯止めをかけ、賃金底上げをめざします。春闘は、すべての労働者を視野に入れ、社会的なアピールを重視し、官民一体でたたかいます。  賃金改善の要求目標は、社会的に注目され、たたかいの接点・焦点となり、すべての労働者の共感と共同をつくる旗印でなければなりません。具体的には、@全労働者の賃金底上げの要求(=誰でも月額○○円以上)、Aパート労働者の時間給の引き上げ要求(=誰でも○○円以上の時給の引き上げ、到達目標として時給○○円以上)、B生活できる最低賃金をめざし、地域別の最低賃金の改善や全国一律最低賃金の確立をめざします。 (2)公務員賃金闘争を年間を通じて描く  国公労働者の賃金は、公務員だけの企業内運動や人事院闘争のみでは、賃金の切りさげを阻止できません。基本は、春闘時のたたかいを重視することです。まず、労働者全体の賃金切り下げをやめさせるために全力をあげることです。全労連は、年間を通した賃金での統一闘争を探求することを新たに提起しています。春闘を民間も公務員労働者も一体でたたかう、5〜7月に山場を迎える最低賃金闘争を共同して取り組む、6〜8月の人事院勧告期のたたかいは官民一体でたたかうなど、年間を通じてたたかう方向です。これは、賃下げの悪魔のサイクルを断ち切るための総合的なたたかいです。その上で、国公労働者の賃金闘争は、たたかいの出発点になる要求組織の活動を重視してたたかいます。人事院勧告の影響を受ける750万人労働者はもとより、民間労働者と共同し、国民の共感を得るよう工夫します。賃金要求は、生活改善をめざす積極的な要求をかかげてたたかいます。 2.働くルールの確立、健康で働ける職場をつくる (1)メンタルヘルス対策を重視し、健康で働ける職場をつくる  労働者は、なんといっても体が資本です。元気に出勤し、職場の仲間に「おはよう」と気持ちよく声をかけあう、こんな一日ではじまっていますか?どこの職場でも、「冗談じゃない」と言いたい程、深刻な事態が広がっています。長時間・過密労働で、休憩もできない職場環境は、労働者のいのちと健康を蝕んでいます。さらに、働き過ぎや過渡のストレスを生む職場環境は、うつ病をはじめとしたメンタルヘルスの悪化を広げています。  健康で働き続けることは、労働者の基本的な権利です。健康で働ける職場づくりは、労働組合の重要な仕事です。職場を点検し、職場における健康・安全衛生の取り組みを重視し、環境改善、労働条件の改善のためにたたかいます。メンタルヘルスに対する基礎的な知識を職場に徹底させ、相談しやすい環境づくりを求めるなどの対策を強めます。職場環境を改善させる取り組みと併せ、社会環境もかえる立場で労働組合として取り組みを強めます。 (2)「タダ働き・サービス残業」の根絶をめざす  人間らしく働くルールの確立にとって、労働時間のルールは根本課題であり、決して曖昧にしてはなりません。賃金が支払われない「サービス残業」という言い方は、働くルールを曖昧にしている用語です。本来は、純然たるタダ働きと言うべきで、違法行為そのものです。  この間、強行されてきた労働法制の改悪によって、8時間労働制は骨抜きにされ、長時間労働は隠蔽されかねません。どんなに働いても労使で定めた時間しか労働時間とみなさない裁量労働制は、その最たるもので、公務も民間の職場でも、基本的には導入すべきではありません。すべての職場から、「タダ働き・サービス残業」の根絶はもちろん、労働時間短縮の流れをつくるために力を尽くします。  本省庁職場の無定量で恒常的な残業実態は、深刻かつ異常です。本省支部が実施した残業実態アンケート(今年4月に実施)の結果では、平均的な退庁時間が午後9時以降から深夜となっている人が66%にも及んでいます。これでは、定時退庁が出来る、出来ないの水準には遠く及びません。本省支部では、定時退庁を呼びかける早朝宣伝や退庁時に庁舎を回り、鐘をならし、ハンドマイクで退庁を呼びかけています。本省職場は、国家行政の中枢機関として、国会待機や国会対策など、政策的かつ政治的にも改善を図らなければなりません。誇りをもって、健康で働き続けられる本省庁職場をつくるために、ねばり強く取り組みます。 (3)昇格・諸手当改善の取り組みを重視する  昇格改善の要求は、職員一人ひとりの賃金を規定するとともに、職務の正当な評価をもとめる課題です。安定した公務を遂行し、民主・公正な立場にたった行政サービスを国民に提供するためにも業務内容と経験の蓄積にみあった公平な処遇をめざします。引き続き、標準職務表の抜本的改善、深刻な昇格の頭打ちの解消、長年の昇格・昇任の非民主的な運用によって取り残されている男女格差の是正、行(二)職をはじめ少数職種の改善、研究職の2級から3級への昇格、さらには上位級への昇格、社会保険の職務と機関の評価を引き上げるたたかいなど、ねばり強くたたかいます。  諸手当改善や調整額を適用させることは、職務の正当な評価を求めるたたかいです。福祉施設の調整額の全職員への適用、夜間特殊業務手当ての改善、社会保険の特別滞納処分手当(仮称)の新設など、業務に立脚し、要求を裏づける職場実態を訴えてたたかいます。  昇格改善や諸手当改善のたたかいは、「継続こそ力」です。公務員制度改革では、能力・業績主義の強化をめざす能力等級制度を導入しようとしています。これは、職場からのたたかいをや運動を根本から否定する仕組みです。職務の正当な評価を求めて、取り組みを強めます。 (4)行(二)職の処遇改善を全体で取り組む  行(二)職の仲間は、定員削減や欠員不補充、業務の民間委託という攻撃の中で、懸命に職場を支え、業務に従事しています。各機関、施設では、少数職種で部下数制限という壁があるため、切実な昇格改善のたたかいは、どの機関でも厳しいのが現状です。引き続き、全体の課題に据えて要求を前進させるために努力します。行(二)不補充政策に対し、現に果たしている重要な役割を示し、その必要性を認めさせ、前進的な解決にむけて力を注ぎます。国公労連が毎年開催している行(二)労働者交流集会に積極的に参加し、交流を重視してたたかいます。 (5)新再任用制度で希望者の雇用を実現させる  2001年4月から施行された新再任用制度は、定年退職後の雇用と年金との連携を図るとともに、長年培った能力・経験を有効に発揮するよう設けられた制度です。要は、希望すれば、雇用を保障することが基本です。「国家公務員高齢者雇用促進に関する方針」(01.6.27・人事管理協議会)は、「再任用を希望する者については、その意欲及び能力に応じ、できる限り採用するように努めることが求められる」との方針を示しています。この課題は、生活に直接関わる雇用問題として、任命権者の判断、各機関長の責任は重大です。これまでの取り組みを通じて、定数運用上の改善や、制度改善も必要です。この制度の趣旨を第一義的に尊重し、希望者全員の雇用を実現するために引き続き努力します。 3.独立行政法人のもとでの組合活動を前進させる  国立健康・栄養研究所は、2001年4月1日から独立行政法人(公務員型)となりました。それから2年半、新たな労使関係の中で、研究・労働条件の維持・改善をめざし、本部と支部一体で取り組んできました。春闘での要求書提出、夏期闘争、秋季年末闘争と年間を通じた運動を主体的に確立しつつあります。賃金水準の改善は、人事院勧告の内容を考慮する枠組みは依然としてありますが、労使協議で決着を図っています。個人評価制度は、研究の自主的及び創造的発展を助ける目的で行い、評価基準、評価方法は公平性、客観性、透明性、納得性を確保することを要求しています。新たな課題として、任期付研究員の処遇改善や継続雇用の道を確保する要求を重視しています。  独立行政法人は、各機関、厚生労働省、総務省の評価委員会で2重、3重に縛られています。特に総務省の評価委員会は、中期目標の期間の終了時に、主務大臣に勧告します。その内容については、主要な事務及び事業の改廃に関し、直接判断を行うことになっています。今後の動きには、十分注意する必要があります。  これから、国立大学や国立病院など新たに規模の大きい独立行政法人が誕生します。また、独立行政法人の新設や再編では、公務員型でなく、非公務員型に移行する流れが強められています。労使自治の世界に移行したもとで、労働条件の維持・改善をはかるためには、労働組合の役割が極めて重要になっています。引き続き、国公労連独立行政法人対策委員会に結集し、栄研支部から委員を派遣します。職場要求を練り上げ、引き続き労働協約闘争に全力をあげます。 4.真の男女平等をめざし、男女共同参画の社会に  1999年に制定された「男女共同参画社会基本法」は、男女が互いに人権を尊重しつつ、仕事も家族的責任も分かち合い、性別にかかわりなく、その個性と能力を発揮することができるように男女共同参画社会の実現をめざしています。  男女平等、女性の地位向上、健康で働き続けられる職場づくりは、女性の切実な要求です。また、母性保護は、真の男女平等を実現する上での前提にしなければなりません。こうした要求は、労働者全体の働くルール確立、権利保障にとって不可欠な課題です。働き過ぎの社会の中での機械的、形式的な「平等」を克服し、男も女も人間らしく働くルールの確立めざしてたたかうことが大切です。  人事院は2002年5月に「女性国家公務員の採用・登用の拡大に関する指針」を各省に通知し、それを受けて厚生労働省は同年11月に「厚生労働省女性職員採用・登用拡大計画」を策定しました。この計画の実効性を追求し、女性の採用・登用の拡大を迫るとともに、超勤縮減などの勤務環境の整備をポジティブアクション(積極的改善措置)の観点から具体的に改善を図るよう、職場からの取り組みを強めます。 5.民主的な公務員制度確立、国公権利裁判の前進を (1)公務員制度改革の現局面とたたかいの基本方向  政府・行革推進事務局は通常国会の会期末が近づく7月2日、各省や国公労連に対し、公務員制度改革関連法案を提示(非公式)しました。法案の閣議決定をめざす政府に対し、 国公労連、各単組は労働組合との協議なしで公務員制度改革関連法案の一方的な閣議決定を行わないよう、職場からの取り組みを強め、交渉・申し入れ等を精力的に行いました。  全労連や公務労組連絡会規模になった運動が繰り広げられる中で、ILO勧告を無視する内容に対する批判が高まり、一方、政府・与党内でも意見調整が進展せず、閣議決定は見送りにさせました。手続きの面、ILO勧告を無視する姿勢、そして、そもそも能力等級制度を導入する内容から見ても、この結果は当然のことです。しかし、引き続き、重要な局面にあることには変わりません。昨年11月と今年6月にILO理事会は、「日本政府は公務員の労働基本権に対する現行の制約を維持するという言明された意図を再考すべきである」との勧告を行いました。政府はこの趣旨を尊重して、根本的に議論をし直すべきです。  全厚生は、国公労連に結集して、ILO勧告を踏まえた国際的な監視があるもとで、新たな決意をもってたたかいます。「公務員制度改革大綱」の撤回・修正、ILO勧告に沿った民主的な公務員制度の確立を求めて取り組みを前進させます。@国民的な支持と共同を大きく広げるために運動する、A政府・当局の使用者責任を徹底して追及する、B労働条件の一方的変更に反対する職場からたたかう態勢をつくる、この基本方向で奮闘します。こうした取り組みにもかかわらず、一方的に公務員制度改革関連法案が閣議決定・国会上程された場合には、民主的な公務員制度改革を求める立場で国会闘争を強化します。 (2)国民の立場で公務員制度を見直す立場でたたかう  政府がすすめる公務員制度改革は、小泉「構造改革」を推進する行政体制の忠実な担い手に仕立てる改革です。そもそも、行政や公務員に対して、国民が望む改革は、官僚の腐敗、汚職、不祥事をなくす改革です。天下り廃止し、政・官・財の癒着構造を断ち切る改革こそ必要です。  公務員制度改革にとって必要なことは、憲法の理念をさらに発展させる方向にたち、現行制度を改革することです。@公務員は国民全体の奉仕者であること、A公正で科学的・客観的な基準にもとづいて人事行政が行われること、B労働基本権や政治活動の自由をはじめ、公務員の基本的人権を保障することなど、未だ不十分な制度上の課題をより具体化する方向で改革がなされるべきです。国家公務員法第1条が示す「公務の民主的且つ能率的な運営を保障することを目的とする」との規定こそ、改革をすすめる基本の考え方に据えられなければなりません。国民の願う厚生労働行政を実現させる立場にたち、民主的な公務員制度の確立をめざしてたたかうことが重要です。 (3)国公権利裁判をねばり強くたたかう  「不利益遡及は許さない」ための国公権利裁判は、3月5日、原告団139人が東京地裁に提訴しました。全厚生は、勇気ある7人の仲間が原告団に加わっています。裁判の内容は、国家賠償法1条1項にもとづき、期末手当での減額相当額の損害賠償の請求事件という形をとっています。しかし、その本質は、不利益遡及の根本的な違法性を問うものです。具体的な争点は、@憲法28条の団体交渉権保障の侵害による違憲・違法性、A適切な「代償措置」とは到底言い得ない機関(=人事院)による給与減額のための立法の違憲・違法性、Bそもそも日本が批准しているILO87号、98号条約違反による違法性、C不利益遡及は脱法行為、不利益不遡及の原則の法理に違反し、法的に許されない、などを根本的に争うものです。  すでに口頭弁論が3回開催され、これから本格的な議論に入ります。大衆的な裁判闘争として、組合員全員が原告団の立場でたたかいます。公務員労働者の労働基本権確立のたたかいとして、腰を据えてたたかいます。職場では、権利裁判の意義や争点・たたかい方についての学習をすすめます。全厚生の7人の原告団は、出身支部はもとより、各支部への裁判闘争オルグになって奮闘します。ブロック国公・県国公に結集してたたかいます。 6.国民の願いに応える厚生労働行政の確立をめざす (1)必要な定員確保をめざす  職場では今、深刻な定員不足の実態を無視して計画的な定員削減が強行されています。これ以上の削減をすすめれば、行政サービスの後退は避けられません。各部門とも行政に対する国民の信頼を失いかねない厳しい事態です。全厚生は、労働条件の確保と国民本位の厚生労働行政の拡充をめざし、定員削減に反対し、行政ニーズ・職場実態に応じた定員確保に総力をあげて取り組みます。 (2)国民の視点に立って、増員を要求する  私たちは、憲法25条を真に生かし、国民のためになる行政を担いたいと日々努力しています。行政サービスは、国民の立場から見てふさわしいものになっているか、この点が重要です。増員のたたかいは、国民への行政サービスを向上させる立場から各機関の実態を検証し、政策的な裏付けを重視し、かつ労働条件確保の課題を統一させてたたかいます。  本省庁職場では、恒常的な残業が改善されない原因には決定的な定員不足があることを踏まえ、増員のたたかいを強めます。試験研究機関では、業務を継続するための定員確保や技術的支援部門の体制強化、必要な基礎研究をすすめる体制強化の観点を重視します。社会福祉では、より手厚いマンパワーや、質の高いサービスをめざすことを要求します。社会保険では、業務量の増加に伴う体制確保、相談業務では丁寧で質の高いサービスをめざして要求します。 (3)国民のための厚生科学研究をめざす  競争的環境と流動化政策への 対応を強化する  政府の推進する科学技術政策は、競争的環境をつくり、研究者の一層の流動化をはかるものです。競争的研究資金を増額することや、もっぱら任期付研究員を採用していることは、その具体的なあらわれです。この科学技術政策に対応した課題を討議し、要求内容をさらに練り上げる必要があります。現在、継続的な研究業務や行政支援業務を遂行する部門は、短期雇用でなく任期のない恒常的な研究職員の配置の努めることを要求しています。また、基盤的研究費について、基礎研究及び行政研究を支える基本的な研究予算として、増額要求をおこなっています。要求を裏づける研究現場からの問題提起を積極的に行っていくことが重要です。  医薬研究開発機構の課題を重視する  組織再編では、2004(平成16)年度に設立予定だった医薬基盤技術研究所(仮称)については、当初の構想が大幅に変更されています。新設の研究所は、独立行政法人の医薬研究開発機構(仮称)として、2005(平成17)年4月設立で検討しています。この新たな構想では、国立医薬品食品衛生研究所の薬用植物栽培試験場及び国立感染症研究所の筑波医学実験用霊長類センターを各機関から分離し、新設研究所に統合するものです。全厚生はこの新たな課題に対して、厚生労働省として研究資源バンクの理念や長期ビジョンを明確にすることを要求しています。引き続き、異動する職員の身分・労働条件の後退にならないよう万全の対策を図るよう運動を強めます。また、国衛研大阪支所の廃止に伴う支所職員の身分保障及び働く場の確保の要求は、最後まで徹底して取り組みます。  全厚生は、医療並びに公衆衛生の向上を図り、国民の健康と福祉を向上・発展させるために試験研究機関支部の交流をすすめていますが、交流集会を引き続き継続させ、政策活動の強化を図るよう努力します。 (4)国民のための社会福祉施設をめざす  国立福祉施設のあり方が問われている  いま、社会福祉基礎構造改革の名の下に、福祉分野の切り捨てが行われています。この本質は、福祉分野に市場原理を導入していくものです。これまで公立や社会福祉法人をサービス供給の原則にしてきたものを民間営利企業を福祉サービスの分野に積極的に導入しようとしています、介護保険の実施状況をみれば明らかなように、利用者との矛盾は日に日に大きくなっています。  こうした中で国立福祉施設のあり方の議論がすすめられています。国立施設管理室は、2001年3月に「国立更生援護機関の運営に関する検討会」の報告書を公表しています。報告書には、「国立更生援護施設は、国内の同種施設に対し、先導的・指導的役割を果たすべきものであり、今後この役割を堅持するには、障害者のニーズの変化や社会情勢等、その時代、時代の環境の中で、常に国立施設としての役割を見直しそのあるべき姿を追求することが求められている」と述べています。まさに今、国立福祉施設のあり方が問われています。  厚社連を軸に政策活動を強化する  国立福祉施設のあり方の見直し議論は、社会福祉基礎構造改革、定員削減、民間委託、独立行政法人化など、行政や福祉施設にかけられている攻撃の流れと相まって議論されています。この複合的な議論が進めば、国立施設にとって厳しい事態になりかねません。こうした施設のあり方の見直しの議論が進められている時期だからこそ、職場での議論を大切にして、現場から問題点や課題を明らかにし、見解をまとめる政策活動を積極的にすすめることが重要です。  この活動は、厚社連(=全厚生社会福祉施設支部連絡協議会)を軸に、行政研究活動の一環として、重視して取り組みます。こうした中で、「障害者福祉の増進に寄与する」国立施設をめざす取り組みを継続・発展させるために努力します。 (5)国民のための社会保険行政をめざす  働きがいと行政のあり方は直結する  社会保険行政の担い手である社会保険労働者にとって、健康保険法や年金法の改悪は、直接、業務量を増加することにつながっています。さらに、制度改悪が続く中では、国民の苦情、怒りを一手に受けとめなければなりません。社会保険の専門家として年金相談を始め、すべての課・係で国民の立場にたった行政を行うために努力する毎日です。まさに社会保険労働者は、医療、年金など、社会保障制度のあり様と生きがい、働きがいが直結した位置におかれています。  政管健保は国の責任を明確に  昨年7月に「健保法改革案」が強行可決され、同時に可決された「医療保険制度の改革等」(改正法附則)では、@新しい高齢者医療制度の創設、A公的保険給付の内容及び範囲を見直す、B政府管掌健康保険の「組織形態のあり方の見直し」を5年以内に行うことになっています。政府・与党は、3月28日、「医療保険制度体系及び診療報酬体系に関する基本方針」を閣議決定しました。05年の通常国会には法案提出、07年の実施をめざすとしています。全厚生はこの間、組織内に「健保問題プロジェクト」を設置し、医療保険制度をめぐる情勢と問題の本質や政府の狙い、さらに政府管掌健保事業と組織形態のあり方の見直し等について、様々な角度から検討してきました。  全厚生は、医療保険制度の体系のあり方(保険者の再編・統合)の見直しは、社会保障としての制度の拡充とサービスの向上、そして労働条件の改善につながるものであるならば検討に値するものと受けとめます。しかし、閣議決定した政府案は、政府管掌健康保険制度の抱える構造的な問題を何ら解決することなしに、都道府県単位での財政運営の名のもとで、国の責任を棚上げし、国庫補助を削減する一方で患者や被保険者の負担増は当然とするものです。この流れは、容認できません。政府管掌健康保険はこれまで通り、国の責任で国の事業として全国一体で実施すること、さらに、国の責任放棄・縮小につながる「都道府県単位の運営」は行わないことを要求します。  社会保険行政研究集会の準備を精力的に  社会保険事務所では、度重なる年金改悪による法律改正と年金受給者の増加によって業務が煩雑化し、労働強化になっています。年金相談コーナーの緊急あぶれ対策等、繁忙措置は行っているものの急場しのぎの対策にとどまっています。こうした下で職場では、社会保険の将来はどうなるのかの疑問も生まれ、職員に少なくない不安が生じています。   社会保険行政の第一線で日々、来訪者と接している立場から、社会保険行政や職場を取り巻く情勢を深め、探求することが求められています。国民に信頼される社会保険行政の在り方、職場の労働条件確立などをめざし、来年3月に京都で社会保険行政研究集会を開催します。このための準備をこの秋から勢力的に職場から進めます。また、職員の意識・実態調査を実施し、職場の問題点を明らかにし、改善方向をめざす素材にします。 7.憲法25条を守り、社会保障闘争での役割発揮を (1)社会保障をめぐる対決点  医療、年金、福祉などあらゆる分野での連続的な改悪は、部分的な制度改悪を超え、社会保障制度全体の理念や目的を変質させる制度の再編成となっています。特に問題なのは、小泉「構造改革」のすすめる規制緩和のターゲットに社会保障、社会福祉があげられ、かつ現在の焦点になっていることです。内閣府に設置されている総合規制改革会議の議論では、社会保障・社会福祉は、「官製市場」と呼び、「本来の健全な市場経済に移行させ、我が国に潜在する巨大な需要と雇用を掘り起こす」目的で議論が露骨に行われています。まさに、社会保障は危機に瀕しています。そもそも、社会保障・社会福祉は、競争による弱肉強食の世界がつくられるのに抗して出来てきた制度です。規制緩和政策がめざす民活路線や経済のあり方とは相いれません。 (2)全厚生の出番の情勢を受けとめる  全厚生は、1946年4月20日に結成されて以来57年間、常に、労働条件の改善とともに社会保障を守るたたかいの一翼を担ってきました。利潤第一の資本主義社会では、社会保障が自動的に拡充されることはありません。暮らしを守るために、社会保障の連続した改悪に歯止めをかけ、社会保障を何としても再建させなければなりません。憲法25条の精神にそって社会保障の水準を高めていくには、労働者・国民のなばり強いたたかいが必要です。全厚生は、厚生労働行政の担い手として、仕事への誇りと生きがいを真に取り戻すために、この今の時期、「全厚生の出番であり、本番」と受けとめ、たたかいます。  社会保障闘争の前進のために、全労連・中央社保協(=中央社会保障推進協議会)に結集して国民的なたたかいの一翼を担います。各支部は、県労連・地域労連に結集して、積極的にたたかいます。基本要求は、@医療制度改悪を阻止し、誰もが安心して受けられる医療制度の拡充、A年金制度改悪を阻止し、老後を安心して暮らせる年金制度の拡充、B誰もが安心して受けられる介護保険制度の抜本的な見直し・改善などをめざします。 (3)年金闘争で役割発揮してたたかう  政府は2004年の通常国会にむけて、年金「改正」案づくりの議論をすすめています。すでに、厚生労働省は、昨年12月5日に「年金改革の骨格に関する方向性と論点」を今後の議論のたたき台として取りまとめています。その上で現在、社会保障審議会年金部会で議論しています。今秋のできるだけ早い時期には、制度改革の骨子を提示する段取りです。今回の改革は、1985年の改定で基礎年金を導入して以降、第5次になり、給付と負担のあり方の議論では、今後の年金制度のあり方にも関わる大改悪がねらわれています。  この04年の年金改悪に対して、全厚生は専門家としての役割を発揮して、年金闘争を前進させるために全力を尽くします。7月に行った全労連の評議委員会では、 年金闘争について、@「04年・年金改悪」とのたたかいを1年間の最重点課題に据えてたたかい抜く、A改悪案に反対するとともに、「21世紀初頭の目標と展望」にもとづく国民生活の最低保障を確立する実践プログラムとして、最低保障年金制度の確立にむけた本格的な運動を開始する、としています。  「全厚生の出番であり、本番」の立場に立って、年金闘争をたたかいます。中央社保協、県・地域社保協、県労連、県国公に結集してたたかいます。特に年金制度の専門家である社会保険の仲間は、積極的な年金闘争での講師活動を行います。講師団の養成は、支部まかせにせず、本部が積極的な役割を果たします。今回のたたかいの中で、講師団の質と量の両面での強化を図るために努力します。社会保障にかかわるシンポジウムなどに積極的に参加します。また、この機会を通じて、全厚生の組合員が年金・社会保障制度についての学習を一層深めます。こうした取り組みを通じて、「権利としての社会保障」に強い全厚生となるために努力します。  《参考:全労連「21世紀初頭の目標と展望」の3つの目標》  @大企業の民主的規制、人間らしく働くルールの確立、A国民生活の最低保障(ナショ ナル・ミニマム)の確立、B憲法と基本的人権の擁護、国民本位の政治への転換 8.平和と民主主義を守り、憲法が生きる21世紀に (1)憲法改悪を阻止し、有事法制の発動を許さない  仕事や暮らしは、平和であってこそ成り立ちます。社会福祉、社会保障の真の発展も、平和なくしてはありえません。戦争放棄の憲法第9条は、戦争の惨禍をふたたび繰り返さないという反省と決意が日本国憲法に結実したものであり、国際社会にむけた平和宣言です。しかし、改憲勢力は、民主主義と基本的人権を下支えしている第9条を常に敵視しています。「全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」(憲法前文)という平和のメッセージこそ、価値ある存在だからです。憲法擁護の旗をかかげ、憲法改悪を阻止する国民的な運動に結集します。有事法制の発動、より具体的な法律整備を許さないために全力をあげます。 (2)平和学習を重視し、平和運動を日常活動に  全厚生は、平和を脅かす敵を明らかにし、平和と民主主義を守るたたかいを恒常的な活動にして、全力を尽くします。憲法・平和学習を重視し、この学習を通じて社会と行政を見つめ直す機会とします。本部・支部はともに、組合員があらゆる機会を生かし、学習できるように努めます。  核兵器のない21世紀をつくるために、「3・1ビキニデー」「国民平和大行進」「原水爆禁止世界大会」「日本平和大会」の成功のために奮闘します。参加の取り組みは、各支部とも、毎年、過去最高の水準を職場からめざします。国民平和大行進は、今年もリレー旗でつなぎ、全厚生の平和への願いを束ね、原水爆禁止世界大会に結集します。  「憲法遵守・平和職場宣言」運動は、継続させます。この運動は、行政の民主化をめざす取り組みとも結びつけ、憲法を職場と仕事に生かし、平和をめざす恒常的な取り組みにします。宣言運動は、組合員をはじめ、職場のすべての仲間の支持のもとで職場宣言をつくりあげ、内外にアピールするものです。その意義を確かめ、常に新たな情勢のもとで憲法遵守と平和への思いを新たにします。 (3)国民が主人公になる政治の実現  全厚生は、国民犠牲の悪政を阻止し、国民の切実な願いや要求が届く政治を実現させるために奮闘します。憲法が保障する国民の政党支持、政治活動の自由を守り、職場でも地域でも家庭でも、政治の風をさわやかに吹かす取り組みを強めます。全厚生、国公労働者の要求実現の立場にたつ政党とは、一致する要求にもとづき協力・共同を発展させます。  この秋は、解散・総選挙があり得る情勢です。来年の7月には参議院選挙も行われます。国政選挙は、国のあり方を決める政治戦であり、政治をかえる絶好のチャンスです。国民が主人公の政治をめざして、悪政に審判をくだすために、一人ひとりが選挙権を行使します。全厚生は、選挙の争点を浮き彫りにし、政治を身近に語りあえるように努めます。 X 年間のたたかいを構想し、要求の前進を  「職場の活動が時々の課題に追い立てられるようになっていませんか」。これは、支部・分会に問いかけ、秋季年末闘争や春闘の始まりの時には、中央執行委員会もその決意で運動を開始します。ところが、常にたたかいは補強され、活動があわただしく、追われてきます。活動のリズムは、活動の中で取り戻す修正・改善が常に必要です。  1年間のたたかいは、定期大会を出発点にして、秋季年末闘争、春闘準備、春闘本番、メーデーの取り組み、5月連休明けからのたたかい、人事院勧告にむけた夏期闘争と年間を通じてたたかいます。これは、おおよそ日本の四季にあわせたたたかいの節目です。この四季折々のたたかいを、リズムある活動にするために、本部も支部も共に努力します。たたかいにメリハリをつけるためには、常に組織の前進に結びつける目標を持ち、たたかいの構えをつくる議論を各支部で重視することが大切です。 《全厚生の年間活動の流れと全体の会議配置》 【定期大会〜秋季年末闘争】   9月中旬   定期大会で年次方針の決定、全厚生統一要求(案)の提案 10月〜12月 秋季年末闘争で重点要求の実現を迫る、春闘準備を開始する  11月段階   全国支部書記長会議で大会決定の実践や秋季年末闘争の意思統一 【春闘】   1月末         中央委員会で春闘方針の決定、全厚生統一要求の決定   2月(春闘本番)    たたかいの意思統一、要求の確立・要求書の提出へ           (要求書の提出後、年間を通じて要求実現を迫る)   3月〜4月段階     力の集中で交渉強化、国民春闘の山場のたたかい   4月末(又は連休明け) 全国支部委員長会議で春闘総括と引き続くたたかいの強化   5月         メーデー、春闘最終盤の追い上げ、国会闘争へ 【夏季闘争】 6月      国会闘争最終盤のたたかい、夏季闘争の準備   7月初旬〜   全国支部委員長会議で大会方針案の討議、夏季闘争の取り組み強化   7月      人事院勧告期、概算要求期でのたたかい 8月〜9月初旬 人事院勧告直後からのたたかい、定期大会方針(案)の事前討議