アピール
厚生労働行政の発展と相いれない有事法制3法案を廃案にするために全力をあげよう

 有事法制3法案は、国会審議を通じて危険な内容が浮き彫りになっています。この法案は、「周辺事態」とも重なる武力攻撃の「予測」「おそれ」があると首相が判断するだけで、自衛隊の武力行使を可能にする仕組みをもち、アメリカが引き起こす戦争に追随・参戦協力し、自衛隊の海外での武力行使に道を開くことがねらいです。
 さらに、自治体や指定公共機関はもとより、すべての国民を強制的に動員する国家体制をつくり、国民の自由と権利は際限なく制限することを盛り込んでいます。戦争に反対し協力を拒否すれば、犯罪者に仕立てる悪法です。
 まさに、平和と民主主義、日本の進路にとって重大な局面にあります。軍事を最優先し、憲法を停止状態に追い込むこの法案に対し、結論は一つです。日本を戦争する国につくりかえる有事法制は、絶対に許してはなりません。

 厚生労働省に働く私たちは、厚生行政と労働行政が戦時体制下において、戦力に直結する健兵健民政策、治安対策、労務動員対策等を担った歴史を決して忘れません。
 厚生行政では、スポーツ振興を目的にした「明治神宮体育大会」(1924・大正13年)を、「国民錬成大会」にかえ、「国民体力法」の実施で国民の体力管理、青年の徴兵検査の甲種合格率の向上に活用しました。厚生年金保険法(1941・昭和16年)は保険料を強制的にとりたて、戦費の調達がねらいでした。
 医療の分野でも、命を守る医師や看護婦を有無を言わせず、赤紙一枚で従軍させ、沖縄では軍の要請で、戦時看護婦として「ひめゆり部隊」を編成し、戦火の中で戦死、自決に追いやられました。医学・医療の分野でも科学研究の統制・動員、軍事化がすすみ、細菌戦争の準備のために生体実験を繰り返した731部隊による狂気の沙汰に及んでいます。

 労働行政も戦時中の戦時労務統制を推進するための産業報国運動を担い、戦争に荷担した悲惨な歴史を持っています。雇用、賃金、労働時間等のすべてを国家総動員法(1938・昭和13年)に基づいて統制し、「労資一体、産業報国」のスローガンの下で、労使関係に強力に介入していきました。また、職業安定所の前身である国民職業指導所は、労務動員対策を担う勤労動員署となって、労働者(14歳以上)を軍需工場へ送り込みました。
 こうして、厚生・労働行政は、戦争とファシズムの体制下で、戦争政策の一環として遂行され、行政の担い手である先輩たちは、強制的に動員された痛恨の歴史をもっています。この侵略戦争に突き進んだ時の愚かな悪夢、歴史を二度と繰り返してはなりません。

 「国は、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」と高らかに宣言する憲法25条は、厚生行政の原点です。厚生省から労働省が分離・独立(1947・昭和22年)した経緯は、憲法が勤労権(27条)、労働三権(28条)、職業選択の自由(22条)など、多様な労働者の権利を基本的人権として保障したことに由来します。戦争と社会保障は絶対に相いれません。平和なくして、医療、年金、福祉の拡充、働くルールの確立はできません。
 そしてこれらは決して与えられるものでなく、不断の努力によってたたかいとるものです。厚生労働省の3組合、全労働省労働組合、全日本国立医療労働組合、全厚生労働組合は、憲法を尊重し擁護する義務を負う公務員労働者、労働組合として、国民の願いに応える厚生労働行政の確立を使命にしています。人間の尊厳、平和のうちに生きる権利を蹂躙する有事法制は、廃案以外にありません。本集会の名において、平和を愛する広範な団体、国民とともに手を取り合ってたたかうことを表明します。憲法を擁護し、有事法制3法案の成立を阻止するために力を合わせましょう。

 2002年6月6日
厚生労働省3単組学習交流集会


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