全厚生は3月16日、「日本年金機構法案」および「国民年金法等の一部改正案」の国会提出にあたって「公的年金事業の『分割・民営化』に反対する」との 中央執行委員会の見解を発表しました。全文は次の通りです。


公的年金事業の「分割・民営化」に反対する
〜「日本年金機構法案」などの国会提出にあたって(見解)〜


2007年3月16日
全厚生労働組合中央執行委員会

1.政府は3月13日、「日本年金機構法案」および「国民年金法等の一部改正案」を閣議決定し、国会に提出した。法案は、公的年金の運営を新たに設置する「日本年金機構」(非公務員型の公法人)に委任し、実務の多くを民間委託するという年金業務の分割・民営化法案である。また、新組織への移行にあたって、社会保険庁職員の引継規定が措置されていないばかりか、選別採用の枠組みが設けられていることは、重大な問題である。

2.老後の命綱でもある公的年金の業務運営を営利企業に委ねることは、社会保障制度に対する国の責任放棄であり、安心・安全の崩壊である。民間企業による不祥事は連日のように報道されている。民間委託が不祥事根絶の方策になり得ないことは明白である。加入者や受給者の貴重な年金個人情報や加入事業所のデータなどが、企業の営利目的に流用される危険性は否定できない。

3.公的年金は、50年から60年に及ぶきわめて長い間の記録・保険料の管理が求められるものであり、安定的、効率的な運営のためにも適用・徴収・給付・相談等の一体的運営が必要である。この間の度重なる制度「改革」の中で、複雑な経過措置が設けられ、正確な理解と運営のためにも、専門性と継続性が強く求められる。入札によって業者が入れ替わることも予想され、倒産もありうる営利企業による公的年金事業の運営は、ふさわしくないものと考える。

4.職員の雇用不安は深刻である。社会保険庁職員からの採用については第三者機関で検討するとしているが、雇用・労働条件に責任を負わない者が関与すること自体異常といわざるを得ない。この間、分限免職の発動まで議論されているが、断じて容認できない。社会保険庁職員は、不祥事について既に処分という制裁を受けている。信頼回復にむけて一丸となって努力している職員に対し、使用者である政府は、雇用に責任を負うのは当然である。

5.「国民年金法等の一部改正案」では、国民年金保険料未納者に、国民健康保険の「短期被保険者証」を発行して権利を制限する制裁措置が設けられている。国民年金法と国民健康保険法は、経過や目的も異なり全く別の制度として設置されている。保険料未納の制裁を他の制度に課すことなど言語道断である。  また、本来国が負担すべき事務費を、恒久的に年金保険料を充当する措置も含まれている。不祥事の原因の一つに事務費への保険料充当問題があったことは明らかであり、保険料は年金給付のみに使用することを強く要求する。

6.構造改革路線により、国民生活の「格差」と「貧困」が拡大し、社会保障制度を直撃している。国民年金の加入対象者の4割が未納・未加入・免除、厚生年金の対象事業所の3割が未加入と、公的年金制度の空洞化は悪化の一途をたどっている。公的年金を論ずるなら、組織改編ではなく制度の改善こそ急ぐべきである。  全厚生は、老後の命綱である公的年金の充実と、全額国庫負担による最低保障年金制度の実現にむけて、労働者・国民の権利擁護を求める広範な人々と力を合わせ、廃案をめざし全力でたたかうものである。


以  上



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