国民年金不適正事務処理問題に対する処分について(談話)

2006年8月31日
全厚生労働組合書記長
杉浦 公一

                              
1.社会保険庁は8月28日、国民年金業務にかかわって不適正な事務処理が行われていたとして、監督責任も含め職員1,752人に対し停職をはじめとする処分を公表した。
 公平・公正が求められる行政運営において、法を逸脱する不適正な事務処理があってはならないことはいうまでもない。全厚生は、当該職員を組織する労働組合として自省し、引き続き、組織的な事情や背景についての徹底した原因解明と真の再発防止策を求めて取組みを進める。

2.処分の基本となった、「第三次調査報告書」(8月3日公表)において社会保険庁は、本庁職員の関与を否定している。しかし、3県の社会保険事務局職員は本庁職員が不正免除処理を把握していた可能性を指摘した報告を行っていること、厚生労働省の検証委員会も「本庁職員の側にも、メールなどによる情報提供で不正を広めることにつながりかねない軽率かつ不適切な行動があった」と指摘していることは重く受止める必要がある。今回の問題での本庁の責任は免れないことは、改めて指摘しておく。
 処分は、もっぱら地方庁の監督・実行責任に重きをおいた内容となっている。社会保険庁改革の最大のテーマとして位置づけられた「国民年金保険料収納率改善」に向けて、業務命令として休日や夜間も含め一丸となって努力してきた多くの職員からすれば、やりきれない思いを抱かざるを得ない。

3.不適正処理問題の背景等について全厚生は、深刻さを増す国民年金制度の構造的矛盾や、異常なノルマの設定、民間手法的な人事評価制度の問題点などを指摘すると共に、政治的な圧力や懲戒権者の恣意的判断などがあってはならないことを指摘してきたが、今回の処分では、その点は全く省みられていない。
 社会保険庁は2008年10月に組織が廃止され、「全国健康保険協会」と「ねんきん事業機構」に分離される予定であるが、新組織への移行に当たっては「職員の引継規定」は設けられていない。また、「今回の処分を重視しつつ勤務成績に基づき厳正に判断する」としているが、このような雇用不安をあおりながら、「命令と服従」の労務管理を強要することでは、公正な社会保険行政は維持できない。職員の雇用・利益確保に万全を尽くすべき使用者としての責任発揮を強く求めるものである。

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