一連の不祥事と社会保険庁改革について
2005.2.22
全厚生労働組合中央執行委員会

 巨額の監修料や特定業者との癒着など相次ぐ社会保険庁の不祥事に対し、国民の不信と怒りが集中し、独立行政法人化や民営化の動きが強まっている。21日に開催された「社会保険庁の在り方に関する有識者会議」においては、@医療と年金の分離の検討A年金制度論からの新組織の検討などを柱とする座長私案が示され、5月にも最終案の取り纏めが行われようとしている。 日々の暮らしや老後生活のために社会保障制度の充実を求める国民の声が益々強まっている中でのこうした事態に対し私たちは、社会保険行政の現場に直接携わる者として、極めて残念であると同時に、社会保険庁幹部に対する激しい怒りを禁じえない。とりわけ国家公務員倫理法制定後も特定業者から日常的になんのためらいも無く餞別や接待等を受けていた事実には、怒りを通り越して情けなくさえ思う。私たちは、当該職員の厳正な処分を求めると共に、国民の権利としての社会保障制度を守り、胸を張り安心して働ける職場のためにも、真の社会保険庁改革の実現に向けて奮闘する決意をまず表明するものである。

 一連の不祥事の背景には様々な要因が考えられるが、一実施庁である社会保険庁が国家予算にも匹敵するような巨額の金銭を動かす中で、感覚が麻痺してしまっていること。さらに、1997年の財政構造改革法の制定により、それまで国の一般財源で措置されていた年金事務費が保険料財源に切り替えられたことなども影響し、構造的な麻痺に輪をかけてしまったことは否定できないと考える。私たちは、来年度からは全額一般財源に戻すよう強く要求してきたが、多くが引続き保険料財源により措置されることとなった事は極めて遺憾である。
 また、1947年の地方自治法制定以来2000年の地方分権一括法による廃止まで続いた「地方事務官」という変則的な身分制度が問題の根底に横たわっていたことも大きな要因と考える。国家公務員でありながら、都道府県知事の指揮・監督を受けて行政に携わるという摩訶不思議な身分制度に置かれてきたこと。一つの制度でありながらも運用は都道府県によって相異があったこと。こうした中で三層構造、社会保険一家として批判されている組織・機構が構築されてきたことなどである。私たちは、早くから本来の国家公務員として、そして、国の行政機関としての位置付けを求めて運動してきたが、長年放置してきた国・政府の責任は大きいものがあることを指摘しなければならない。
 同時に、様々な批判の元ともなったグリーンピアの多くが歴代厚生大臣の地元に建設されてきたことや、財政構造改革法の経緯を見てもわかるように、時々の政治の流れに大きく左右されてきたことなども、真の社会保険庁改革のためには指摘しておかなければならないことと考える。

 社会保険庁改革の根底には、年金や医療保険制度の相次ぐ改悪に対する国民の不信や不安が横たわっている。同時に私たちは、こうした国民の声を「社会保険庁改革」にすり替え、消費税増税や更なる制度の改悪を狙う動きには断固反対する。
 産業構造や就業構造の変化そして経済の長期低迷、さらに予想もしないような少子社会を迎え、制度や組織のあり方について今ほど抜本的な検討が求められている時期はない。私たちは、行政への監視と同時に行政運営に対する積極的な提言等が少なからず弱かったことを省みながら、一連の問題の真の原因を究明し、憲法25条に保障された国民の権利としての社会保障制度、そして国の責任で国民本位の行政サービスが確立される組織・機構を展望し、国民的な運動の構築に向けて奮闘するものである。

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