坂口大臣、労使の話し合いが重要と明言!
厚生共闘、坂口厚生労働大臣と交渉!

厚生労働大臣と交渉する厚生共闘   
 12月2日、厚生共闘(全厚生・全医労)は坂口厚生労働大臣と4つの要求課題(別記)で交渉を行いました。厚生共闘からは保木井議長(全医労委員長)、杉下副議長(全厚生委員長)をはじめ、厚生共闘幹事会メンバー10人が出席しました。
 冒頭、保木井議長は要求項目について次の趣旨説明を行いました。
 (1)公務員制度「改革」については労働条件に直接影響すると指摘。内閣及び各省大臣の権限を強化する内容であり、一方的な実施は行わず、労働組合との十分な協議を求めました。11月20日にはILO結社の自由委員会の勧告が日本政府に出され、国際的な場においても厳しい批判があることに言及。良好な労使関係維持の立場から「改革」の内容やすすめ方について十分な配慮を求めました。また、評価制度の試行を2003年4月から行うという動きになっており、この試行についても、やりやすい職場、偏った試行結果となるような職場の選定等にならないようにすること、評価の基準を事前に明らかにすること、評価結果を情報公開すること等の点について、労働組合との十分な協議、合意を図るよう強く求めました。
 (2)厚生労働省は2004年度の独立行政法人化までに、国立病院・療養所の再編成計画を完了させるということで具体化を図ってきているが、再編成計画の実施にあたっての地域医療の継続と職員の雇用という二つの問題を指摘。万全を尽くすよう要求しました。また、独立行政法人国立病院機構法案が現在国会で審議中だが、2004年度の独立行政法人化にあたっては、職場に混乱を起こすことのないよう、早い段階から誠実な労使協議を行うよう求めました。とりわけ賃金職員の雇用継承については現に働いている職員、それも長く国立病院に貢献してきた職員の不安は、大変大きいものがあると指摘し、これら職員の移行、雇用確保については最大限の努力を要求しました。
 (3)先の国会で成立した健康保険法改正の付則に、医療保険制度の改革等が規定され、「保険者の統合及び再編を含む医療保険制度の体系の在り方」等については、厚生労働省に設置されている医療制度改革推進本部において検討が進められている。政府管掌健康保険はこれまでどおり、国の事業として国の責任で実施していくべきとの厚生共闘の考えを強く主張しました。また「医療保険制度の体系の在り方」で示されている「都道府県単位を軸とした保険運営」は重大な労働条件にかかわる問題であり、労働組合との十分な協議、合意を図るべきだと強調。一方的な在り方の決定や、その実施を行わないよう強く求めました。
 (4)どの部署でも人員不足は深刻。とりわけ国立病院・療養所の看護現場は緊急に増員が必要であり、現場の看護師はまさに医療事故と隣り合わせで働いていると指摘。今年4月に厚生労働省が発表した「医療安全推進総合対策」でも「リスクを考慮した適切な人員配置」や「疲労を招きかねない勤務シフトの回避」などが謳われている。国立病院の看護師が他の公的医療機関と比較して少なく、夜勤体制もいまだ2人夜勤が主流になっていることは、大臣も知っているはずと指摘。3人以上夜勤は当然という立場での看護師定員増に格段の努力を要求しました。

 これらの保木井議長の要求説明に対して、坂口大臣は以下のとおり回答を行いました。
 (1)公務員制度改革は内閣全体で進められており、ILO勧告がだされていることも承知している。今後、労働組合と十分な話し合いをしていきたい。
 (2)国立病院の独立行政法人化については、衆議院を通過し参議院のほうで審議しており、さまざまな議論がされているところだ。政府の方針であり、現実問題として新しい組織になるわけで、みなさん方もいろいろ不安な気持ちをもっていると思う。来年の10月に決定することになっている法人の長にそこからは権限があり、その後はその長と話し合いをもっていただきたい。もちろんそれまでは何もしないわけではなく、これから制度が変わっていくので、十分話を聞いていきたい。中期目標の考え方がまとまれば示して、十分な接触をしていきたいと思う。問題は現在勤めている人のうち、正規の職員の方はそのまま行くので問題はない。賃金職員の皆さんの問題だが、杓子定規な言い方をすれば、新しい長に権限があり差し出がましいことは言えない。これからはそれぞれの国立病院は地域において特色あるものになっていく。どういう分野で人を増やし、どういうところには人を減らすというようなこともある。そのところは新しいところで決めていくことになる。こちらからどうしろとは言わないので、それから議論をしてもらいたい。現在少ない人員で一生懸命取り組んでいただいていることは十分わかっているつもりだ。
 (3)医療制度改革は断行させていただきたいと考えている。医療保険制度、政管健保をどうしていくかはこれから議論していきたい。国が行うかも含めてこれから詰めさせてもらう。今はそこまで答えることはできない。構造改革の柱として、保険制度の統合、もう一つは診療報酬体系の見直しの2本の柱がある。現在の診療報酬体系を見ると、病院のコストがどれだけか積み上げているわけではない。国立病院のような大きな病院ではどれだけのコストがかかるのか、積み上げてみる必要がありこれからの問題だ。
 (4)国立病院の看護師は他の公的病院と比べて少ない人員であることは充分承知している。独立行政法人の機関としてふさわしいものにしていかなければならないと考えており、努力したい。

 この大臣回答を受けて、杉下副議長は次のとおり再度要望をおこないました。  「医療、年金、福祉など国民のくらし、健康といのちを守ることを本旨にしている厚生労働行政を遂行するために、職員は日々懸命にがんばっている。厚生共闘は厚生労働行政をいっそう国民本位に発展させていくうえで、職場環境や職員の労働条件を改善していくことが大変重要だと考えている。
 そうした立場から、公務員制度改革問題をはじめとする諸課題については、労働組合と十分な協議、合意を図ることが必要であり、重ねてこのことをお願いしておきたい。
 また、国立病院の独立行政法人化に当たっての賃金職員の雇用継承や看護師定員増への努力とともに、政府管掌健康保険については、含みのある回答があったが、年金保険との一体的な運営をふまえ、これまでどおり国の事業として国の責任において実施されるよう重ねて要望しておきたい。
 今後とも、厚生労働行政の充実・発展をめざして、話し合いを続けていただくようお願いして、交渉を終えたい。」

 最後に坂口大臣は赤十字病院にいたときの組合との団体交渉の経験にふれ、「一番大事なことは、労使の間で円満な関係が重要。そのためにみなさんとよく話し合いをしたい。」とのべ、交渉を終えました。


2002年11月27日
  厚生労働大臣  坂口 力 殿
厚生省労働組合共闘会議
議長 保木井 秀雄

交渉申入書

 下記事項について団体交渉を行うよう申し入れます。



1 公務員制度については、「民主・公正・効率」の民主的な制度を確立し、公務員労働者の労働基本 権を保障する立場で、労使対等の原則による労働条件決定システムを確立すること。

2 国民の医療要求に基づき国立病院・療養所を整備・拡充すること。
  「再編成計画」の具体化ケースについては、地域医療の継続と職員の雇用確保に最大限の努力を 行うこと。独立行政法人化にあたっては、労働組合と十分な協議を行い、すべての職員の雇用継承 と労働条件の維持を図ること。

3 政府管掌健康保険はこれまで通り、国の事業として国の責任で実施し、都道府県単位への分割は 行わないこと。また、「保険者の統合、再編」等、医療保険制度の改革等は、重大な労働条件にかか わる問題であり、一方的に結論を得、また、その実施は行わないこと。

4 国民の行政要求に応え、長時間労働を解消するため、職場実態を踏まえた増員要求を行うこと。 特に国立病院・療養所の看護師については、医療事故防止の観点からも必要な増員を行うこと。

以 上


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