地方事務官制度廃止にあたっての声明

 1947年の地方自治法施行以来、半世紀余の長い間にわたり、懸案となっていた「地方事務官問題」に決着がついた。
 全厚生は、この度の決着及び決着内容については基本的に歓迎するものである。
7月8日に国会において成立した「地方分権関連一括法」では、社会保険行政にかかる国の責任を明らかにするとともに、その事務にたずさわる社会保険職員については2000年4月から厚生事務官(国家公務員)になることとなった。
 「地方事務官制度」に関わっては、長い間、労使間はもとより、国会、地方議会の場においても「政治問題」としてさまざま議論が繰り返えされてきた。
 全厚生はこの間、ねばりづよくかつ民主的に議論を積み重ね、この問題の基本的解決の方向をみいだしてきた。社会保険行政は国の責務であり、その事務は国が直接執行すべきであること。同時に、変則的な地方事務官制度は廃止し厚生事務官とすべきと主張し、その実現に努力してきた。とりわけ、今通常国会における審議の重要段階での全厚生各支部の奮闘は、この度の決着に直接的役割をはたすとともに、今後の運動と組織の前進からもきわめて重要な成果を得ることができた。
 地方分権一括法には、「今後の制度改正時に社会保険の事務処理体制、従事する職員の在り方等について、被保険者等の利便性等の視点に立って、検討し必要があると認められるときは、所要の措置を講ずる。」とする附則が加えられたが、社会保険制度は、将来とも国が責任を持って運営すべき制度であり、独立行政法人化、民営化など、安易に国の責任を放棄することは許されるものではない。
 現在、社会保険制度は、全国オンラインシステムによって、適正かつ効率的な事業運営がはかられている。私たちは、1980年以来、被保険者等の利便性を確保するために築き上げてきたオンラインシステムをさらに発展させ、民主的な行政運営と事務処理の効率化を通じて、より確かな国民サービスが提供できるよう奮闘するものである。
 戦争法(新ガイドライン関連法)、中央省庁再編関連法など、国民生活に関連する分野を縮小・後退させる動きが強まっているいまこそ、憲法25条に基づく社会保障制度にかかわる労働者は、きわめて重要な役割を発揮しなければならない。
全厚生職員労働組合は、国民世論とともにa国民サービスの向上、b民主的で効率的な行政の確立、c労働条件の改善を総体として前進させる立場から、真に国民生活を重視した社会保険制度の実現と、それを担いうる行政機関の実現、確かな事業運営を保障する労働条件の確保をめざし、全力をあげて奮闘するものである。

1999年7月9日  全厚生職員労働組合