中央省庁等再編法の成立にあたっての声明

 7月8日参議院本会議で、中央省庁等改革関連法案と地方分権一括法案の採決が強行され、自民・自由・公明・社民各党などの賛成で、可決・成立した。これによって「1府12省」などの省庁再編を2001年1月から実施すること、国と地方の事務配分を2000年4月から整理することが確定した。大規模な行政組織の再編、行政事務の再配分は、国民に対する国の責務と関与の変更を伴うものであり、国民的な議論を尽くすことが求められていにもかかわらず、国会内の「数の多数」を背景に、国民的な議論抜きに「21世紀のこの国のかたち」を強引に決定した。
 成立した中央省庁等改革法の中心的な内容は、a国の役割を治安、防衛、外交や基本的な政策の企画立案などにおくこと、b企画立案部門と実施部門を「分離」し、実施部門については民営化、独立行政法人化、民間委託などの手法で「減量化」を行うこと、c首相に重要な政策の決定権限を集中させること、d首相を補佐する内閣官房、内閣府の中心的機関(経済財政諮問会議など)に民間人を登用して、財界の求める施策を行政に反映させる仕組みを作ること、e「国家公務員の25%削減」「行政経費の30%削減」などを行政改革の「中心的課題」とし、公務を減量化・効率化すること、などとなっている。
厚生省と労働省を統合し、新たに「厚生労働省」を設置することになっているが、両省の統合は、国民の基本的権利である労働権、社会福祉、社会保障の権利を保障すべき行政機関が、基本的法体系の変質をともないながら、確実に縮小・後退の方向に向かっている。このことは新省の任務でも明らかなように、経済の発展を確保するために社会福祉、社会保障及び公衆衛生等の整備をはかろうとしており、このことからも、両省の統合が社会福祉、社会保障、労働者保護行政の後退を招くことは明らかである。しかし、国民のいのちと暮らしを守る厚生行政への国民的要求は大きな広がりを持っており、私たちは広範な国民と共同した取り組みを展開し、厚生行政の後退を許さない運動を進めていく。
中央省庁等改革の「目玉」とされる独立行政法人問題では、厚生省所管で唯一国立健康・栄養研究所がその対象とされた。国立健康・栄養研究所は生活習慣病対策や栄養所要量調査など、国民の健康問題にかかわる重要な研究機関であるにもかかわわらず、これを切り捨てようとする政策は断じて容認できない。
国民の生活や基本的人権を軽視し、国民サービスの提供・実施にかかわる国の責任を放棄しながら、国家による国民への統制のみを強化することは、国民との矛盾をいっそう深刻化させる。国民生活切り捨て、大企業奉仕の「この国のかたち」づくりを具体化させないためにも、公務のリストラ「合理化」の強行を阻止していかなければならない。
全厚生は、行政改革会議の設置から3年間、情勢の厳しさを跳ね返し、国民本位の行財政改革を求め、職場・地域からの運動を積み重ね、街頭宣伝や署名行動をつうじて世論に訴えてきた。
中央省庁等改革法の成立をうけて、政省令の策定や、独立行政法人個別法案策定などが進められようとしている今、国民本位の行財政確立、厚生行政の拡充を求めて引き続き奮闘するものである。

1999年7月9日 全厚生職員労働組合