地方事務官制度廃止法案の衆議院通過をめぐっての談話

1.衆議院本会議は6月11日、地方事務官制度廃止等を含む「地方分権関連一括法案」を一部修正のうえ可決した。今後参議院における審議があるとはいえ、1947年以来、変則的な制度として存在してきた「地方事務官制度」が2000年4月に廃止されることとなり、名実ともに国家公務員(厚生事務官)となることがほぼ確実になった。
全厚生は従来より、社会保険行政は国の責務であり、その事務は国が直接執行すべきである。同時に、変則的な地方事務官制度は廃止し、厚生事務官とすべきと主張し、その実現に向けて組織の総力をあげて取り組んできた。その立場から、基本的に歓迎するものである。
とりわけ、衆議院審議における重要段階での全厚生各支部の奮闘は、運動の前進に大きな力となったばかりか、組織強化の観点からも大きな前進を得ることができた。

2.一方、自治労(国費評議会)は、「国の直接執行事務」とすることは、@地方分権に逆行する。A行政改革に逆行する。B年金制度の崩壊、無年金者の増大につながる。とし、事務処理は都道府県への法定受託事務とし、地方事務官は地方公務員とすべきと主張してきた。その立場で国会対策を行い、公明党・民主党・社民各党はそれぞれの思惑から、社会保険制度に対する根本的問題での質疑どころか、地方事務官制度問題で自治労(国費評議会)の主張に沿った質問を繰り返し、制度運営や事務処理実態を無視した質問に終始した。
このことは、公党が自らの政策を持たないまま、一労働組合の組織問題のために地方分権一括法の本来の問題点を置き去りにし、地方事務官制度廃止後は地方公務員とすべき、あるいは国民・住民の利便性が損なわれる、国民年金制度の崩壊をまねくと主張するなど、いたずらに職員の不安をかき立て、国民の社会保険制度への信頼を損ねるもので極めて問題であると言わざるを得ない。

3.6月9日に開催された自民・自由・民主・公明・社民各党の国会対策委員長会議で自治労の要請を受け入れる形で5党の共同修正として次の点が確認された。@今後の制度改正時に社会保険の事務処理体制、従事する職員の在り方等について、被保険者等の利便性等の視点に立って、検討し必要があると認められるときは、所要の措置を講ずる。A地方事務官から厚生事務官への身分の切替えに当たって、各都道府県の職員団体へ7年間に限って加入を認める。B地方職員共済組合からの切替えにあたって、地方社会保険事務局及び社会保険事務所に勤務する職員で「厚生省社会保険関係共済組合」を新たに設ける。となっている。

4.5党の共同修正は、いずれも今後の社会保険行政にとって極めて問題の残る内容と言わざるを得ない。特に「厚生省社会保険関係共済組合」については、これまでの社会保険庁交渉等の中では全く触れられておらず、全厚生に対しての協議も一切ないままに国会対策レベルで協議されたことは、極めて問題であると言わざるを得ない。
こうした経過は、新聞報道にもあるように、自治労(国費評議会)は組織防衛の観点からの取り組みに終始し、国民の社会保障の拡充に対して無責任であることを明らかにした結果となった。

5.社会保険各支部ではこの間、地元選出国会議員、関係団体、マスコミ等への要請行動を旺盛に展開し、中央段階での行動と連携した取り組みは、教宣・学習活動の強化など、各支部の運動前進に大きな力となった。
全厚生職員労働組合は、各支部での運動の前進に確信を持ち、引き続く参議院の審議段階で、よりよい社会保険行政の確立と職員の労働条件確保のため、全力で奮闘するものである。

 1999年 6月14日
                               全 厚 生 職 員 労 働 組 合
                                   書記長 岡 野 基 喜