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◆号外 (2015年9月1日付)◆
全厚生第79回定期大会 2015年度運動方針(案)
2015年度 運動方針(案)目次

[1]第79回定期大会の意義と目的

 全厚生第79回定期大会は、戦後70年の節目で迎える大会です。今、「戦争する国」か「平和な国」か、重大な岐路に立っています。厚生労働省及びその関連職場は、国民の期待に応えるにはほど遠い現状にあります。トップダウンの業務運営、労働環境の悪化、労働者使い捨て、過酷な労働条件も広がっています。こうした状況を打開する基本方向をみんなで見極め、希望の持てる方針を確立します。
(1)生き生きと働ける職場、希望のもてる社会をつくるために全厚生の位置と役割を明確にします。
(2)全厚生は、来年4月20日に70年の節目を迎えます。厚生労働省等に働く労働者で組織する労働組合として、誇りと生き甲斐のもてる職場と行政をつくる方針を確立する。
(3)改憲と戦争する国づくりを阻止し、憲法9条と25条を守り、活かす国民的な共同を広げるための方針を確立する。
(4)困難を乗りこえ、組織強化・拡大をすすめ、展望を切り拓く1年にするための意思統一を行う。


[2]全厚生運動のこの間の到達点

 厚生労働行政は、公務破壊や民営化政策のターゲットになり、組織再編や組織改革が続いています。全厚生は、その動きに対応して、たたかい続けています。全厚生運動の到達点について、過去5年間を振り返り、明らかにします。

1 道理ある要求を掲げて、たたかう

 政府の進める民営化や規制緩和、成長戦略は、厚生労働行政の拡充に背を向け、社会保障の拡充の方向とは相容れません。厚生労働行政を担う全厚生の各職場の要求とたたかいは、政治・社会のあり方と直結し、政府の政策に立ち向かう最前線の活動になっています。
 社保庁職員の不当解雇撤回、日本年金機構や協会けんぽの体制強化の課題は、公務の民営化や社会保障の解体攻撃に対決して取り組む課題です。国立福祉施設の存続・発展の課題や、厚生科学研究の役割発揮を求める課題は、憲法25条に基づく厚生労働行政を確立する課題と一体です。全厚生はこの間、「何のため、誰のために」厚生労働行政があるかを真剣に問い続け、国民の願いに応える厚生労働行政の確立をめざし、憲法25条を活かす道理ある要求を掲げて、たたかい抜いています。

2 職場を基礎に、切実な要求前進のために本部・支部一体でたたかう

 全厚生は、道理ある要求を掲げるとともに、要求前進のために全力を尽くしてきました。職場(支部)は、所属長交渉を追求してきました。秋季年末闘争、春闘、夏季闘争の中で本部段階の交渉を実施。(1)大臣官房人事課長交渉、(2)施設管理室長交渉、(3)厚生科学課長交渉、(4)日本年金機構本部交渉、(5)全国健康保険協会本部交渉、(6)人事院交渉を実施してきました。さらに、厚生共闘として、(1)厚生労働大臣交渉、(2)大臣官房長交渉等を実施してきました。各交渉の到達点を踏まえ、引き続き粘り強く要求前進をめざすことが重要です。

3 不当解雇撤回闘争に全力をあげる

 不当解雇撤回闘争は、開始して5年8カ月が経過。全厚生の最重要課題と位置づけ、たたかってきました。政府・厚労省が行った社会保険行政の解体・民営化攻撃と一体で強行した525人の大量解雇に対し、当事者(原告)を主人公に、闘争団の団結と国公労連、全労連規模での闘争体制を力に、多くの仲間の支援でたたかい抜いてきました。
 人事院闘争では画期的な処分取消判定を勝ち取り、組合員10人が職場復帰しました。不当判定となった当事者は大阪高裁、5地裁での裁判闘争を軸にして解雇撤回、全面解決を求めてたたかい続けています。全国の裁判闘争では、政府の責任を不問に付し、救済(取消)の枠組みを不当に限定した人事院判定を乗り越え、解雇撤回を勝ち取るために奮闘しています。

4 主体的に取り組んだ様々な集会

 社保庁不当解雇撤回闘争の開始以降、全厚生が主体的に取り組む集会や共催団体として取り組んだ集会を数多く成功させてきました。特に2012年11月2日に「社保庁職員の不当解雇撤回11・2中央総決起集会」(主催:全労連、国公労連、全厚生闘争団)は、600人を超える参加者で成功させました。
 今年度は、2014年12月8日に「社保庁職員の不当解雇撤回12・8全国決起集会」(大阪、140人)、5月16日に「ILO国際基準で日本社会を変えるシンポジウム」(東京、100人)、5月30日に「若い人も高齢者も安心できる年金シンポジウム」(東京、103人)などを成功させてきました。

5 公務員賃下げ違憲訴訟で、たたかう

 公務員賃下げ違憲訴訟は、国家公務員の労働基本権が制約されている下で、人事院勧告に基づかない公務員給与の賃下げの違憲・違法性を司法の場で明らかにするものです。2012年5月25日に提訴して3年3カ月。2014年10月30日の東京地裁の不当判決後、11月13日に控訴し東京高裁でたたかっています。原告は、国公労連と359人の組合員で構成し、全厚生は6人の組合員が原告になっています。社保庁不当解雇撤闘争と共に公務員労働者の権利確立のカギを握るたたかいです。公務員攻撃のねらいを明らかにして、国民の支持と共感を得ながらたたかいを前進させることが大切です。

6 組織強化・拡大は正念場の課題

 全厚生は、組織強化・拡大を最も重要な課題として、第74回定期大会以降の5年間で約380人の拡大を行ってきました。各支部は、職場での対話と交流を行い、労働組合の活動を伝え、新しい仲間を少しずつ迎えています。本省支部では、非常勤職員の仲間の要求を大切にしてランチ会などを開催。学び、交流し、組合の風をさわやかに吹かせ、毎月新しい仲間を迎え入れ、画期的な組織の純増を勝ちとっています。こうした経験があるにもかかわらず、組織の減少に歯止めがかかっていません。これまでの取り組みを総括して、全厚生全体での純増をめざし、引き続き、奮闘することが大切です。

7 たたかいを継続・発展させよう!

 全厚生はこの5年間、厳しい攻撃にひるまず、あらゆる活動の場で希望とロマンを語り、「活かそう憲法!増やそう仲間!必ず勝ち取る解雇撤回!知恵だし、声だし、元気だし、さあみんなでやろう!」のスローガンを胸に刻み、全力でたたかいました。果敢に挑んだからこそ、貴重な成果・教訓が生まれました。
 これまでの到達点を踏まえ、新たな情勢の下で、道理ある要求を掲げ、粘り強くたたかい続けることが重要です。組織強化・拡大の取り組みは、なんとしても前進させなければなりません。来年の夏には、参議院選挙が行われます。社会を良くする絶好の機会です。志を大きく、共同を広げ、たたかいを継続・発展させましょう。


[3]情勢の特徴と全厚生の役割と使命


1 この国の歴史的な岐路に立つ1年

 日本は今、「戦争する国」か「平和な国」か、その重大な岐路に立っています。
 国会では、戦争法案をめぐる攻防が激しく展開され、極めて重大な局面を迎えています。安倍内閣は採決を強行し、7月16日に衆院を通過させました。国会を9月27日まで95日間という大幅な延長を行い、戦争法案を強行しようとしています。このことに象徴されるように、これからの1年は、この国の平和と暮らし、社会のあり方の根本を問う歴史的な対決の年になります。また、この「戦争する国づくり」は、労働者・国民に犠牲を強いる政治と一体のものです。労働法制改悪や社会保障の解体、原発再稼働、TPP交渉など、働くルールや暮らしを壊す大改悪が乱暴に推進されています。その対決点は、鮮明です。
 歴史的な時代の転換点にふさわしく、日本の将来を見据え、輝く未来を展望して、社会を良くする共同を大きく広げることが大切です。

2 国民の願う厚生労働行政を確立する対抗軸

 安倍政治は、行政体制に重大な影響を与えています。社会保障や社会福祉分野は、社会保障制度改革推進法で自立・自助を強調し、社会保障改革のプログラム法で改悪メニューとその時期を明示し、改悪を推進しています。
 政府はこうした制度改悪の推進と一体で、定員削減と民営化攻撃をすすめています。政府は、2014年7月に「5年間で10%」の定員合理化計画を閣議決定し、2015年度から毎年2%の定員削減計画を進めています。どの現場も、これ以上の定員削減を受け入れる余地はありません。
 憲法25条を活かす厚生労働行政を確立させるには、厚生労働行政の後退の根本原因を明確にしなければなりません。そのために「何のため、誰のため」に厚生労働行政があるかを真剣に問い続け、考え、行動することが大切です。

3 働くルール破壊の攻撃を許さない

 安倍内閣がすすめる「雇用改革」は、雇用の安定と働くルールを壊し、賃金格差を拡大し、非正規雇用を増やし、低賃金で働く労働者を大量につくるものです。特に労働者派遣法の大改悪は、「生涯ハケン・正社員ゼロ」をめざすものです。低賃金の上、いつでも解雇できる働かせ方を当たり前にするものです。「残業代ゼロ」制度や労働時間規制の全面的な弾力化もねらわれています。この安倍「雇用改革」は、日本中をブラック企業化するものです。この方向は、許してはなりません。
 今、労働法制大改悪をはね返す共同を大きく広げることが大切です。乱暴な解雇は許さず、雇用を安定させることが重要です。賃金の底上げを行い、均等待遇を実現させ、普通に働けば人間らしいまともな暮らしができる労働条件、働くルールを確立することは緊急の課題です。

4 社会を変える労働者・国民の反撃

 安倍内閣がすすめる国民に背を向ける政治に対し、全国各地で国民・労働者のたたかいが広がっています。最も旬の課題は、戦争法案廃案を求めるたたかいです。安倍政治の暴走に対し、国民の怒りが全国に広がり、「安倍政治を許さない」「戦争法案は廃案に」の世論と運動が日増しに大きくなっています。特にSEALDs(シールズ=自由と民主主義のための学生緊急行動)や「安全保障関連法案に反対する学者の会」の活動にみられるように若者や研究者の活動の広がりは、国民・労働者の行動を励ましています。また、原発再稼働反対や沖縄辺野古沖への米軍新基地建設の中止・撤回、TPP交渉妥結を許さない課題など、日本の未来を左右する課題での共同の取り組みが全国各地で前進しています。
 この労働者・国民の要求行動のエネルギーは、悪政推進の政治の転換を求める力になっています。日本の今と未来に責任を持つ主権者として、政治を変え、社会を変える課題に真正面から向き合うことが重要です。

5 全厚生労働運動の歴史的使命と役割

 1946年4月20日に結成された全厚生(当時は、厚生省職員組合)は、来年(2016年)に結成70周年を迎えます。全厚生は結成当初から、社会保障闘争の分野で重要な役割を担ってきました。1954年、吉田内閣がすすめた再軍備策動に反対し、社会保障を守るための行動を起こした歴史は、全厚生運動の原点です。また、全厚生は、労働条件の改善をめざすと共に、厚生労働省(旧厚生省)で働く職員で組織された労働組合として、行政の民主化、社会保障を守るたたかいをを重視して取り組んできました。全厚生規約第3条は「社会保障の確立のために行政の反動化に反対し、わが国の平和と民主主義の確立に寄与する」と記しています。これは、行政運営を担う労働者で組織する労働組合として、行政民主化のたたかいを積極的に位置づけている証です。
 人間らしく生き、働くために、労働組合は、今こそ出番です。なぜなら、この課題を真正面に据えてたたかう恒常的な組織は、労働組合以外にないからです。
 全厚生は、厚生労働行政を担う労働者で組織する労働組合として、職場を変え、暮らしを改善し、社会を良くするために活動します。


[4]たたかいの旗印(基本要求)

〔国家公務員の賃金・昇格改善〕
1.公務員労働者の生活と労働の実態をふまえ、職務給の原則に沿った賃金改善を行うこと。
2.高齢層職員の賃金抑制を是正し、職務と生活の実態に見合った水準に改善すること。
3.職務評価の引き上げによる級別標準職務表の抜本的な改正とともに、行(二)部下数制限の撤廃など、昇格改善をはかること。

〔国民本位の行政体制の確立〕
4.憲法25条の理念を活かし、医療並びに公衆衛生の向上を図り、国民の健康と福祉を向上・発展させるために増員を行うこと。
5.「定員合理化計画」を撤回し、大幅な増員を行うこと。
6.現場の職員の意向を十分考慮し、必要かつ充分な人員と予算を確保すること。

〔非常勤職員の労働条件の抜本改善〕
7.非常勤職員制度を抜本的に見直し、雇用の安定、均等待遇などをはかる法制度を整備すること。
8.非常勤職員の休暇等は、常勤職員と同等の制度に改善すること。
9.期間業務職員制度の運用にあたり、安定的な雇用保障に努め、安易な雇い止めを行わないこと。

〔再任用制度の改善〕
10.職員の意向をふまえ、働き続けられる勤務環境を整備し、希望者全員を再任用すること。
11.再任用職員の賃金は、年金支給開始までの生活維持にふさわしい賃金水準とすること。

〔旧社会保険庁職員の不当解雇撤回〕
12.各地裁、大阪高裁での勝利判決。政府・厚労省の責任で処分撤回・全面解決を行うこと。
13.被懲戒処分者を一律不採用とする閣議決定を撤回すること。
14.日本年金機構に経験と専門性ある元社会保険庁職員を正規職員として採用すること。

〔日本年金機構の体制強化〕
15.国民への信頼を回復し、国民サービスの向上と安定的な業務運営を行うため、正規職員を増員して業務体制を拡充すること。
16.「当面の業務運営に関する基本計画」の閣議決定を見直し・撤回すること。
17.有期雇用職員について、安易な雇い止めは行わず、希望する職員の継続雇用を行うこと。
18.日本年金機構の実態を正確に把握し、必要な予算を確保すること。

〔国立福祉施設の組織再編〕
19.国立施設の機能の充実強化を図るとともに、施設運営に支障をきたさないよう現場の職員の意見を十分に反映させた体制を確保すること。
20.地方センターを廃止せず、存続・拡充させること。
21.伊東センターで働く職員の意向や希望を十分に尊重し、職員の身分・労働条件の後退を招かないよう万全の措置をとること。

〔試験研究機関の体制強化〕
22.国立試験研究機関について、国が責任をもって運営し、独立行政法人化は行わないこと。
23.各研究機関の役割を発揮するために、研究現場の意向を反映させ必要かつ充分な人員と予算を確保すること。
24.光熱水道費の予算や研究設備の維持など、基本的な研究環境を確保すること。
25.国立医薬品食品衛生研究所の川崎移転について、国民の要請に応えうる必要な施設とシステムを構築し、移転が完了し移転後の安定的な研究運営が可能となるまで充分な予算を確保すること。
26.国立感染症研究所の確保する公務員宿舎について、研究所の使命を果たし、充分な役割発揮を行うために業務遂行に必要な戸数を確保すること。

〔独立行政法人の体制強化〕
27.国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所の研究業務の維持・拡充を図るため、必要な運営費交付金を確保すること。
28.独立行政法人の賃金・労働条件決定は、労使対等の原則並びに自主性を尊重し、不当な介入・干渉を行わないこと。

〔超勤縮減やハラスメントの根絶〕
29.超過勤務を大幅に縮減し、不払い残業を根絶すること。
30.恒常的で異常な残業実態を改善するため、業務量に見合う定員の確保、勤務時間管理の徹底や、超過勤務時間の上限規制を設けるなど、実効ある対策を講じること。
31.疲労蓄積の防止、メンタルヘルス対策など、職員の健康と安全を確保すること。人権侵害行為であるパワーハラスメントを根絶するため、職員の安全確保、職場環境確保、職場環境整備の観点に立ち、使用者責任を果たすこと。


[5]共同の力で、改憲と戦争する国づくりを阻止する

1 戦争法案阻止の共同行動に結集する

 戦争法案を止めるには、国会行動や全国各地の共同行動を成功させ、さらに日々の活動量(国民運動の総和)を飛躍的に高めることが求められています。戦争法案廃案のための共同行動を推進している「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」並びに全労連・国公労連の行動提起に沿い、全国で実施する行動に積極的に結集します。

2 改憲阻止と「戦争する国づくり」を許さない共同を大きく広げる

 今、安倍政権は「戦争する国づくり」と改憲に向かって突き進んでいます。日本国憲法を守るために、主権者国民の力が試される瞬間(とき)です。戦後日本は、侵略戦争の反省を踏まえ、二度と海外では戦争はしない、軍事力は持たないと決意しました。その誓いが憲法です。この憲法が歯止めとなり、自衛隊は他国と一度も戦火を交えず、一人の外国人殺してはいません。9条は平和を守る原点です。この憲法を守るために改憲阻止の共同を広げるために全力を尽くします。


[6]大幅賃上げと働くルールの確立を

 暮らしと雇用を守ることは、幸せに生きる上で基本となるたたかいです。すべての働く人々の賃金底上げを求め、全国一律最賃制の実現をめざし、全労連の進める最賃闘争に結集します。2016年国民春闘での大幅賃上げ実現をめざし、国民春闘共闘に結集してたたかいます。
 公務員労働者の大幅賃上げの実現、非常勤職員や有期雇用職員の雇用を守ることは、誰もが安心して働き続けられる社会の実現、景気回復にとって不可欠な課題です。民間も公務もすべての労働者の大幅賃上げと賃金底上げ、働くルールの確立のためにたたかいます。


[7]職場を基礎に要求前進をめざす

1 日常活動を重視し、支部・分会体制を確立する

 労働組合の基礎になるのは、職場であり、支部・分会です。職場での日常活動が行われているか否かは、運動のバロメータです。(1)支部執行委員会を定期的に開催する、(2)新聞を発行し、組合員に配布する、(3)組合員と対話する、(4)職場集会を開く、(5)要求討議を行う、(6)要求書を提出する、(7)団体交渉を行う、(8)学習会を開く、(9)レク・文化行事を行う、(10)組合加入をすすめるなど、様々な活動をできるところから行ない、労働組合のさわやかな風を吹かせ、職場の民主的な力を高めることが大切です。元気な職場とみんなの笑顔をつくるためには、この力を高めることです。生き生きと働くための原動力は、ここにあります。労働組合の原点にたって、仲間づくり、団結づくりを職場で行います。活動の中で、新しい役員の担い手づくり、支部・分会体制の確立に努めます。

2 職場を基礎に、要求に根ざしてたたかう

 労働組合は、切実な要求の実現をめざすことであり、要求で団結することです。要求づくりは、労働組合の出発点であり、要求こそ命です。すべての職場から要求前進のたたかいをすすめます。
 たたかいの出発点は、要求の確立です。労働組合が職場の切実な要求をかかげて使用者に迫り、使用者も真剣に応える努力をすれば、その中から職場改善の知恵が生まれます。労働組合が積極的に要求し、「緊張感ある労使関係」をつくってこそ、活力ある職場がつくれます。
 行政の専門家として業務を見直し・改善を図ることは、行政を民主的に運営するための基礎となります。職場の様々な問題を充分に討議し、要求に練り上げ、建設的・積極的に提起します。労働条件は、具体的に提案し改善を迫ります。

3 全支部・職場で要求確立、団体交渉を実施する

 憲法28条は、「勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する」としています。労働組合の重要な役割は、要求実現のために執念を持って団体交渉することです。切実な要求の実現をめざし、本部・支部が一体で団体交渉を実施します。すべての職場(支部)で要求書を提出します。要求提出後は交渉を強化し、粘り強く、要求実現をめざします。

4 本部交渉で要求前進をめざす

 職場の切実な要求を積み上げ、全厚生統一要求及び部門別の重点要求を確立します。部門別では、公務部門、試験研究機関、社会福祉施設、社会保険の各部門別の重点要求を確立します。各部門・支部段階の交渉を積み上げ、春闘、夏期闘争、秋季年末闘争の中で本部交渉を実施し、粘り強く要求前進をめざします。全厚生は、(1)大臣官房人事課長交渉、(2)施設管理室長交渉、(3)厚生科学課長交渉、(4)日本年金機構本部交渉、(5)全国健康保険協会本部交渉、(6)人事院交渉を実施します。厚生共闘として、(1)厚生労働大臣交渉、(2)大臣官房長交渉等を実施します。

5 全員参加型の活動をすすめ、みんなで担う組合活動を探求する

 全厚生は、あらゆる分野の活動スタイル見直し、みんなで担い、みんなの力を束ね、その力を高め、全員参加型の活動をめざしてきました。改めて、職場を基礎にして、統一と団結の力で、切実な要求実現に向かって、一歩一歩着実に前進させることをめざしています。
 この方向をすすめる根本は5年前、本部書記局が2人体制(専従役員1、書記1)を余儀なくされた時、改めて組合員が主人公の立場を鮮明にして、「みんなで担い、できるところから、たたかいを始めよう」と意思統一したことがきっかけでした。
 この方向は、特別なことではなく、労働組合の本来の姿です。常にめざすべき活動の基本です。「請負主義」や「お任せ」では、要求前進は叶いません。引き続き、全員参加型の活動を実践し、みんなで担う組合活動をすすめます。

6 機関紙の発行で組織活動を生き生きと

 生き生きとした組合活動をつくり、要求実現のたたかいを職場、地域から力強く前進させるには、機関紙活動は不可欠です。支部の顔である職場新聞は、組合員で育てていく活動です。組合員に確かな情報を正確に伝え、職場の声を集めて、対話を促進させる機能は、要求闘争をリードします。職場新聞は、「継続こそ力」です。定期大会では、支部の教宣・機関紙活動を励まし、編集内容の質的向上をめざし、支部機関紙を交流するコーナーを設けます。本部は、中央機関紙としての全厚生新聞を当面、隔月で発行します。速報性を重視した闘争情報、社会保険協議会ニュース、闘争団ニュースを発行します。

7 学習教育活動を前進させる

 学習は、たたかう力の源泉です。世の中のしくみや相互の関連を見抜き、要求実現の道筋や展望を見いだすには、労働組合の基礎学習が不可欠です。本部役員はもとより、支部や分会役員は、常に学ぶ活動の先頭に立ちます。学習活動の方法・スタイルは、あらゆる工夫を行います。15分程度のミニ学習会、ランチ学習会、休日を利用した本格的な学習会など、組合員の様々な条件を活かし、学ぶ活動を進めます。
 学習教育活動は、持続的・計画的に取り組むことが重要です。とりわけ、青年層は、学ぶことが成長に結びつく世代です。学習する場を積極的につくり、参加を呼びかけることが重要です。各県・地域の学習会には、支部役員はもとより、組合員が積極的に参加します。各支部は、「学習の友」の購読をすすめ、活用します。地域で開催する労働学校に参加します。勤労者通信大学(基礎コース・労働組合コース)の受講組織は、励まし合いながら学べる集団受講に努め、本部は学習援助を強めます。全労連が新しく開講した「労働組合入門“わくわく講座”」に今年度、中部支部の執行部10人が受講しています。国公労連が主催する労働学校をはじめとする各種学校に参加します。

8 青年を主人公にして活動する

 青年は、学び、たたかう中で成長します。厳しい情勢をはね返す活動の中で、青年との対話を重視します。特に、若い仲間を育てる視点を大切にして対話します。各支部は、若い組合員を主人公にして活動できるように援助します。青年自らで考え、創意工夫して活動できるよう、青年層の団結が強まるように先輩組合員の援助を惜しみなく行います。
(1)青年層に対して、学び、交流する取り組みを重視します。
(2)青年の要求実現のために国公労連青年協議会に変え、新たに設置される青年運動推進委員会に参加し、青年の要求前進のために奮闘します。
(3)平和の取り組みに積極的に参加するように援助します。
(4)青年対策部とも協力し、労働組合の基礎を学ぶ学習講座を開催します。
(5)青年対策部の活動への援助を行います。
(6)あらゆる機会を活かし、青年を取り組みの中心になるように努力します。

9 女性部の活動を前進させる

 女性部は、昨年11月16日に第19回総会を開催し、「集まる・しゃべる・食べる・学ぶ・行動する」をモットーに、「つぶやきを要求へ」「愚痴も磨けば要求になる」の合言葉を大切にして、女性が生き生きと働き続けられる職場をめざして、力を合わせてたたかう決意を固め合いました。
 7月19日には、第39回女性交流集会を浅草セントラルホテルで開催し、31人が参加。集会メイン企画となる講演は、日蓮宗妙蔵寺(静岡県伊豆市)住職の佐治妙心(サジ ミョウシン)さんのお話「サンゴの祈り」を聴きました。沖縄戦を描いた紙芝居で読み語り、いちの大切さ、平和の大切さを学び、交流しました。また、全労連女性部、国公労連女性協に結集し、日本母親大会やはたらく女性の中央集会にも積極的に参加し、社保庁職員の不当解雇撤回での宣伝・アピールを行ってきました。引き続き、女性部の活動をすすめます。
(1)働き続けられる職場をめざして、労働条件の改善に全力を尽くします。雇用形態にとらわれないすべての職員の組合加入の取り組みを推進します。女性の要求実現をめざし、人事課との懇談を実施します。
(2)第20回総会を実施します。
(3)第40回全厚生女性交流集会を実施します。
(4)各支部で女性の組合員の加入をすすめ、女性組織の確立・強化をめざします。

10 厚生共闘に結集する

 厚生省労働組合共闘会議(厚生共闘)は、1980年12月11日に結成され、35年の歴史を刻んできました。今年度も厚生共闘が結成以来かかげてきた、国民の願う厚生労働行政の確立をめざし、共闘の力で要求の前進を図ります。

11 厚生労働省3組合の連携強化を図る

 2001年1月の厚生労働省の発足以降、3単組(全厚生・全医労・全労働)は一貫して、労働条件の改善や国民の願う厚生労働行政の確立をめざして、協力・共同の取り組みを行っています。2001年2月に本省共闘(厚生労働本省労働組合共闘会議)を結成、恒常的な残業改善の要求や期間業務職員の処遇改善を中心にして本省交渉を実施しています。引き続き、3組合の連携を強化します。

12 国公労連に結集し、要求前進をめざす

 国家公務員の基本政策は、政府がつくります。国家公務員及び独立行政法人等の要求前進のために、国公労連(=日本国家公務員労働組合連合会)に結集してたたかいます。具体的な行動は、中央に結集するとともに、日常的には地域での活動が重要です。職場を基礎に、地域での活動を重視します。各支部は、県・ブロック国公への結集を強めます。

13 経験を伝え、安定した引き継ぎを

 全厚生は、本部・支部役員の世代交代の時期が続いています。全厚生運動を引き継ぎ、発展させるには、この課題を着実に行うことが重要です。支部活動の担い手を育てるために、本部機能を安定的に維持するために組織的かつ系統的な努力を積み重ねます。

14 組織検討委員会を設置する

 組織検討委員会を設置します。この委員会は、全厚生の将来を見据え、今後の専従役員体制並びに全厚生運動の組織課題について検討します。


[8]英知を結集した職場政策づくり

1 職場の困難をいかに打開するか

 今、職員の懸命な努力にもかかわらず、厚生労働行政を担うどの職場でも苦労と困難が生じています。
 社会保険行政の解体・民営化後の日本年金機構の業務体制はその象徴であり、業務委託を推進する民営化路線では国民の安心は守れません。今、有期雇用職員の雇用継続は、年金の安定的な業務運営を保障する上でどうしても必要です。国立福祉施設の地方センターの廃止は、障害者福祉行政の根本が問われる課題です。独立行政法人制度は、制度創設以来、独法改革の下にさらされ、整理合理化・統合・廃止がすすめられています。厚生科学研究を拡充するには、短期的な成果を求める傾向を改めさせ、基礎研究を地道にすすめ、学問研究の苗床となる裾野の広い研究体制の基盤をつくらなければなりません。職場の困難を真に解決する道筋を各部門、分野でつくることは、要求実現を進める上で、カギを握ります。

2 職場政策活動を推進する

 現在、全厚生の構成組織は、公務部門と民間型公法人(独法研究所、日本年金機構。全国健康保険協会)とに分かれています。
 全厚生の各部門の要求前進の道筋を明らかにすることは、極めて重要です。政策活動は、要求前進の道筋を探求する活動です。今回「職場政策」と銘打ったのは、要求実現の道筋を「職場(の視点)から」具体的に示すものにするためです。

3 職場政策活動の基本方向

(1)職場政策をつくるために英知を結集します。この職場政策活動は、短期間で仕上げる性質のものではなく、恒常的な活動として位置づけます。

○公務部門
 〈1〉厚生労働本省・地方厚生局
 〈2〉国立福祉施設(国立障害者リハビリテーションセンター)
 〈3〉国立試験研究機関(国立感染症研究所、国立医薬品食品衛生研究所、国立保健医療科学院、国立社会保障・人口問題研究所)

○民間型公法人・独立行政法人
 〈1〉国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所
 〈2〉日本年金機構
 〈3〉全国健康保険協会

(2)前記の組織構成ごとに、どのようにたたかえば要求前進が勝ち取れるかを探求し、要求実現の方法を具体的に示します。その内容は、国の政策に対する対抗軸を示し、国民の立場にたつ政策づくりになります。厚労省の政策や政府の政策を改めさせる課題も当然、含まれます。
(3)全厚生の組織構成と要求前進の道筋は、現状の正確な分析と認識から始めます。要求実現を阻むものは何かを明らかにし、その阻むものを打ち破り、実現をめざします。
(4)職場政策づくりの活動は、行政民主化の取り組みの一環です。各部門の政策活動を強め、提案型の要求闘争を推進します。その政策は、国民の支持と共感を得るものに仕上げ、社会的にアピールして、要求実現をめざします。


[9]社保庁不当解雇撤回の取り組み

 不当解雇撤回闘争を開始して、5年8カ月が経過しました。人事院闘争では、処分取消を求めた71人の内、全厚生組合員10人を含む25人の解雇を取り消しました。現在、全厚生組合員28人が5地裁、大阪高裁で解雇撤回・全面解決を求めてたたかっています。北海道、愛媛事案は、年度内にも判決が出されます。勝利判決を勝ち取るために「3年闘争」の構えと体制をつくり、この秋のたたかいを節目にして、奮闘します。

1 裁判闘争で、たたかう

 不当解雇撤回闘争は現在、大阪高裁、札幌地裁、仙台地裁、東京地裁、名古屋地裁、高松地裁の1高裁、5地裁でたたかっています。この間、各地の裁判期日に併せ、宣伝行動を強め、傍聴者で包囲し、不当・違法な解雇の実態を多くの国民に伝え、支援の輪を広げてきました。各県、ブロック段階で、闘争を支援する会(支える会、共闘会議)が作られ、運動を支え、推進しています。新たに「東京の会」も結成(2015・8・17)されました。引き続き、全国で支援の輪を広げてたたかいます。

〔当面する口頭弁論期日〕
○北海道・札幌地裁  第18回   9月 8日
○秋田・仙台地裁  第10回  10月21日
○東京・東京地裁  第 8回
 第 9回
 10月 7日
 12月 9日
○愛知・名古屋地裁  第10回
 第11回
  9月17日
 10月28日
○京都・大阪高裁  第 1回  12月 1日
○愛媛・高松高裁  第 7回
 第 8回
 11月16日
  1月13日

2 解雇撤回・全面解決をめざす取り組み

(1)大阪高裁並びに5地裁宛の公正・公平な判決を求める要請署名を全国で推進します。
(2)政府・厚労省宛の全国署名(第2次)を推進します。
(3)宣伝チラシ、リーフレットを積極的に活用し、宣伝・学習を全国で推進します。
(4)「全厚生闘争団を支える会」の会員をさらに大きく広げます。

3 闘争団の団結を強める

 歴史上も例がない不当解雇を撤回させるには、粘り強く、国民世論を味方につけて、幅広い共同をつくりあげることです。その要は、闘争団の団結を強めることです。当時者と所属支部、各県闘争団を基礎にして団結を強化し、経験交流の機会を積極的につくります。闘争団全体の活動力を高めてたたかいます。

4 運動推進のオルグ団づくり

 支援の輪を広げるカギは、オルグ活動を強めることです。不当解雇撤回の活動を推進する力を高めることです。そのためには、当時者以外の組合員が訴える場に立つことです。宣伝や要請行動に積極的に参加することです。本部役員、支部役員を軸にしてオルグ団の力を高めます。

5 運動の全国展開のために努力する

 この間、全労連の対策会議(社会保険庁職員の分限免職撤回闘争対策会議・2011・5・20に発足)が設置され、不当解雇撤回闘争がナショナルセンター規模で取り組まれています。国公労連は、当初から社保庁不当解雇撤回闘争本部を設置し、産別闘争として全力をあげています。全労連、国公労連の組織の力を活かし、支援の輪を全国に広げることが重要です。全厚生闘争団として、各県オルグを具体化し、支援と共同の輪を広げます。

6 裁判勝利決起集会(仮称)を成功させる

 この秋、不当解雇撤回闘争の節目として、10月30日(金)午後6時30分より、社保庁不当解雇撤回・裁判勝利決起集会(仮称)を東京・全労連会館ホールで行います。集会成功のために都内及び在京・近県のオルグを実施します。全厚生は、当事者(原告)の参加はもとより、在京・近県支部を軸にした積極的な参加、OBの参加等で成功のために奮闘します。

7 全面解決を求め、政府に解決を迫る

 2013年11月4日・5日、社会保険庁改革の中で行われた団結侵害行為に対し、ILO(国際労働機関)結社の自由委員会にILO87号条約、98号条約違反で申し立てを行いました。ILO事務局(ジュネーブ)に出向きました(申し立ては、その場で受理、社会保険庁解雇案件‐3051号)。ILO国際基準部の副部長は、「これは的確なILO条約違反のケースだ」「ILOは権威と専門性を持って対応する」とコメントしました。その後、ILO理事会では審議されていませんが、近々審議される模様です。ILOからの勧告が出されればそれを有効に活かし、政府を政治的に包囲し解雇撤回・全面解決に向けて奮闘します。

8 乱暴な解雇を許さない共同を広げる

 政府・財界は、雇用破壊の政策を推進し、解雇自由化の社会をつくろうとしています。社保庁の不当解雇やJALの不当解雇は、整理解雇の4要件やルールを無視した乱暴な大量解雇の典型です。公務員の乱暴な解雇、ルールを無視した大企業の解雇を許してはなりません。
 JAL不当解雇撤回闘争、日本IBMロックアウト解雇撤回闘争をはじめ、すべての争議の解決をめざし、各争議団と連帯し、乱暴な解雇を許さない共同を大きく広げるために全力を尽くします。


[10]国民本位の公務労働の確立をめざす

1 公務員労働者の誇り

 公務員労働者は憲法15条によって、「すべて公務員は、全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない」と位置づけられています。更に「憲法を尊重し擁護する義務を負う(第99条‐憲法尊重擁護義務)」のが公務員です。国民のために公務(行政)はあり、国民の願いに応えるために日々努力するのが公務員です。行政を国民の立場にたって考え、見直すことは、憲法に基づく公務員労働者の本来の姿です。
 独立行政法人研究所は、厚生科学研究の担い手です。日本年金機構、全国健康保険協会は、社会保険行政の担い手です。経営形態が変わろうとも、国民のための公務労働であることには変わりません。全厚生は、憲法が公務労働及び公務労働者に要請する基本点を自覚し、誇りをもって活動を展開します。

2 まもろう憲法・国公大運動(仮称)を推進する

 国公労連は、改憲阻止と戦争する国づくりを許さないたたかいを最重点の課題に位置づけ、「憲法をまもり、暮らし・行政・司法にいかす国公大運動(略称:まもろう憲法・国公大運動)」(仮称)を推進します。この運動は、改憲阻止と戦争する国づくりを許さないたたに重点を置きながら、それに加えて従前からとりくんできた「21世紀国公大運動」や公務員労働者の権利を守るたたかいを包含して、この1年間の国公労働運動の基調をなすたたかいとして、職場・地域からとりくみを展開するものです。全厚生は、「まもろう憲法・国公大運動」の方針に沿って全力で取り組みます。

3 憲法を守る「21世紀国公大運動」の取り組み

 私たちがめざす社会を実現するためには、国民の生活と権利を保障する公務・公共サービスの拡充が必要不可欠です。しかし、いまの政府は、財界の求めに応じて、「公的サービスの産業化」などで、自助・自立を前面に公務・公共サービスを切り捨てて「小さな政府」づくりに躍起になっています。
 そのため、引き続き、憲法をくらしと行政にいかす「21世紀国公大運動」を推進します。とりわけこの1年間は、この運動を「まもろう憲法・国公大運動」(仮称)の一環として、憲法が保障する国民の生活と権利を守る職務を担う公務・公共サービスの役割やその体制確立の必要性を訴え、大幅増員の実現や定員削減計画の中止・撤回など、幅広い国民諸階層の理解と支持を広げます。
(1)「21世紀国公大運動」を推進し、憲法の要請による国民の生活と権利を守る公務・公共サービスの必要性に対する国民の理解と支持を広げ、安倍政権の改憲の危険なねらいを訴えます。
 具体的な取り組みは、職場からの学習強化と地域からの運動を柱に据え、定員削減や地方自治体への業務・権限の移譲、地方分権改革や道州制が行政サービスの低下や国民の安全・安心社会へ与える影響などを訴える「総対話MAP運動」を軸に進めます。また、この取り組みを通じて、独法や民営化した法人等を国の機関に戻すことも含め、国の役割とその機関のあり方の議論を進めます。
(2)国の機関の体制確保のための大幅増員を求めるとともに、総定員法の廃止と新たな定員合理化計画の中止・撤回にむけて、政府との交渉を強化します。
(3)政府に総定員法廃止・定員削減計画中止と定員管理の柔軟化を求める「国の定員管理に関する要求署名(仮称・国会請願とどちらが効果的か要検討)」を春闘期(1月〜5月)に取り組む。その際、総定員法と定員削減計画による国の定員管理の問題点や柔軟な定員管理の必要性を訴えるために国公労連が作成するビラ・リーフ等を活用して、学習を強化し、宣伝活動に結集します。

4 公務員賃下げ違憲訴訟の取り組み

 2012年5月25日に提訴した公務員賃下げ違憲訴訟は、2014年10月30日に東京地裁で判決が行われました。原告の給与改定・減額特例法は憲法違反であり、誠実交渉義務違反であるとした主張をことごとく退けた不当判決でした。
 11月13日に国公労連と一審原告370人中359人が控訴(全厚生はの一審原告6人中6人が控訴)しました。すでに控訴審の第1回口頭弁論が7月8日に東京高裁で行われ、控訴人を代表して国公労連宮垣委員長が意見陳述を行いました。次回の第2回口頭弁論期日は10月14日です。
 訴訟でたたかう意義・目的は、(1)給与臨時特例法の違憲性を裁判の中で明らかにし、その無効を勝ち取ること。(2)労働基本権制約という無権利状態の下にあって、その代償措置である人事院勧告を無視する前代未聞の行為が国会で行われたことから、労働基本権回復を視野に入れ、たたかいを通じてその道筋をつけること。(3)賃下げスパイラルを断ち切り、労働者の賃上げと安定した雇用確保、内需拡大で景気回復をめざす国民的な運動と一体でたたかうこと。この3点です。
 「公務員賃下げ違憲訴訟」の逆転勝訴をめざして全力をあげます。裁判傍聴行動に結集し、中央・各県で行う宣伝行動に積極的に参加します。東京高裁宛「公正な判決を求める要請署名」の取り組みを進めます。

5 権利確立のカギを握る2つの裁判闘争の勝利めざし奮闘する

 民間では、労働者の永年のたたかいによって労働条件不利益変更や解雇権濫用に対する法理が確立され、それが労働契約法として立法化されています。したがって、国家公務員労働者も労働者であり、憲法で保障された労働者の権利を有していることから、不当に制限された権利の代償機能が確保されない場合は、民間の法理が適用されなければまりません。
 公務員賃下げ違憲訴訟の一審判決は、権利の代償機能である人事院勧告によらない賃下げを交渉も尽くさず一方的に強行したことについて、憲法で保障された権利の侵害と認定しない不当判決です。
 憲法で保障する権利を制限された上に、政府による労働条件の一方的な不利益変更を容認するもので、国家公務員労働者を無権利状態にするものです。
 社会保険庁職員不当解雇撤回求める京都事案の大阪地裁の一審判決も、年金業務が存続されているにもかかわらず社会保険庁を廃止してまで、分限免職した不当性を認定しない不当判決です。これは、整理解雇の4要件((1)人員整理の必要性、(2)解雇回避努力義務の履行、(3)被解雇者選定の合理性、(4)手続の妥当性)に照らしても不当です。また「国民全体の奉仕者」として公正な職務を担うために不可欠な身分保障を形骸化するもので、公正・中立な公務の性格を歪めるものです。
 2つの判決は、国家公務員労働者の権利を不当に侵害した政府の主張のみを採用した不当判決であり、この裁判闘争は、国家公務員労働者の権利確立にとって、重要な意義を持つものです。2つの裁判勝利のために、全力で奮闘します。


[11]本省職場で働くルールの確立めざす

 国家行政機構の中枢である本省で人間らしく働くルールを確立する課題は、行政民主化の課題とも深く結びつく、重要な課題です。

1 長時間残業の改善をねばり強く

 本省職場では一貫して、無定量で恒常的な残業改善の取り組みをすすめています。第23回残業実態アンケート結果(2015年3月実施)では、平均月51・8時間です。また、過労死ラインと言われる月100時間を超える残業があったと答えた人は35・4%、連続して2カ月ないし6カ月間の平均残業時間が80時間を超える場合があったと答えた人も34・0%と、3人に1人は過労死の危機にある異常な実態です。当局も、全省庁一斉のキャンペーンや管理職員の意識を高めたり、業務改善策、休暇取得促進、メンタルヘルス対策を強め、一定の効果はありますが、根本的な改善には至っていません。職員の健康問題にも大きく影響を与えています。
 恒常的な残業をなくすためには、業務量の増加に伴う、業務量に見合う定員確保が最も重要です。超勤予算が全く不足していることも重大です。時間管理を徹底させ、本省職場での働くルールを確立させる運動を本部・支部一体で強めます。
 また、本省共闘(厚生労働本省労働組合共闘会議)の団結を強め、要求前進の取り組みをすすめます。

2 非常勤職員・期間業務職員の交流・懇談の場づくり

 本省支部は、非常勤職員部会を確立し、定期的に会議を開催し、非常勤職員の交流を重視し、切実な要求をとらえ、申し入れや交渉を行い貴重な成果をあげています。特に、組合主催の制度学習ランチ会を定期的に開催し、多くの非常勤職員とつながり、リアルな実態をつかみ、切実な声や要望を人事課に伝え、改善させるなど、組合の力を発揮しています。もっと働きやすい職場にしようと期間業務職員自らが「この人を誘ってみよう、この人は入ってくれると思う」など、積極的に声をかけ、組合員を増やしています。要求に応え、学び交流し、楽しく活動する中で、本省支部の諸活動が好循環を生み、前進しています。引き続き、非常勤職員・期間業務職員の交流・懇談の場をつくり、切実な処遇改善、組織強化・拡大のために奮闘することが大切です。

3 霞が関の労働組合と交流を深め、日常活動を重視する

 霞が関の本省職場は、長時間残業の本省特有の原因も、組合活動上の悩みも共通しています。本省での組合活動を前進させるために、霞が関の他の組合の経験に学び、交流しながら進めます。東京国公及び霞国公に結集します。5者共闘(国公労連、東京国公、霞国公、単組本部、本省支部)で協議し、組織強化・拡大のための宣伝行動等を実施します。「本省庁対策プロジェクト」(本省支部、単組本部、国公労連)に参加し、本省組織の要求前進と組織強化・拡大に努めます。


[12]国立福祉施設の組織再編に対する取り組み

1 組織再編・統廃合に対する取り組み

 厚労省は、国立更生援護機関の今後のあり方に関する検討会報告(2009・3・25)に基づき、組織再編を進めています。その基本方向は、(1)国立施設として持つべき機能の実現(リハセンター中心の機能強化)、(2)各センターの機能の一元化(四類型の予算、組織・定員を一本化)、(3)利用実態等を踏まえた施設配置の見直し(2012年度末で塩原視力障害センター、2016年6月末で伊東重度障害者センター廃止)等です。これに対し全厚生は、(1)地方センターを廃止せず存続・拡充させること、(2)組織再編の具体化にあたり、国立施設の機能強化を図るとともに、施設運営に支障をきたさないよう、障害者並びに職員の意見を反映させた体制を確保すること、(3)職員の身分・労働条件の後退を招かないよう万全の措置を取ることを要求しています。引き続き、この基本要求を堅持し、障害者の権利保障及び障害者福祉の拡充の立場で引き続き、全力を尽くします。

2 伊東重度障害者センター廃止に伴う職員の雇用を守り、体制を確保するたたかい

 伊東重度障害者センターが来年6月末に廃止となり、国立障害者リハビリテーションセンターに統合されます。統合後の施設や訓練環境は、国が行う障害者福祉のモデルとなる事業として、必要で充分な施設づくりが求められています。(1)統合に際し、具体的なスケジュールや職員配置などを示すとともに、現場の職員の意見を尊重した体制づくりに努めること。また、統合後の業務体制や運営について、各部門の調整・協議を十分に行うこと。(2)施設廃止まで、利用者が不利益を被らないように支援体制を維持すること。利用者のニーズに積極的に応えるため、最大限の努力を行うこと。(3)伊東センターで働く職員の意向や希望を充分に尊重し、職員の身分・労働条件の後退を招かないよう万全の措置を取ること。また、廃止・統合にむけて、職員の異動についての考え方を示すこと。(4)希望する職員全員が入居できるよう公務員宿舎の確保に努めることを要求します。

3 厚社連の役割発揮で、誇りと働きがいある職場をつくる

 この間、施設機能の充実や障害者に優しい施設づくりと職員の処遇改善を一体で運動を進めてきました。政府・厚生労働省がすすめる減量・効率化施策及び組織再編は、国立リセンターを強化する一方、国立施設総体の機能・役割を縮小方向に進めるものであり、利用者サービスの低下はもとより施設運営にも支障をきたす状況を指摘してきました。誇りや展望のもてる国立福祉施設、働きがいある職場をつくるために厚社連(全厚生社会福祉支部連絡協議会)の役割発揮が必要です。厚社連の事務局機能の強化に努め、現場から国立福祉施設の拡充のために全力を尽くします。
 引き続き、障害者の権利保障及び障害者福祉の拡充を求め、障全協(=障害者の生活と権利を守る全国連絡協議会)の取り組みに結集します。

4 存続発展を求める運動の継続を!

 厚社連が提唱した「国立福祉施設の存続発展を求める会」はこの間、障害者福祉の後退を許さず、塩原・伊東の廃止反対・存続を求めて国会請願署名を取り組み、国会議員要請や国会行動などの活動を展開しました。今後の方向について、地道に活動を継続させる基盤をつくり、引き続き、国立福祉施設の存続発展をめざします。


[13]厚生科学研究を拡充させる取り組み

1 新たな環境の下での厚生科学研究を拡充させる取り組み

 政府の推進する科学技術政策並びに健康・医療戦略の下で、健康・医療分野の研究開発は成長戦略の重要な柱となっています。併せて独立行政法人改革の具体化が進めら、4月には国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所が並びに医療研究開発機構が設立され、新たな体制が確立しました。これらの諸施策は、厚生労働科学研究並びに各研究所のあり方に影響を及ぼすことは必至です。
 現在、厚生労働省(旧厚生省)の試験研究機関は4機関が国立試験研究機関(国研)、独立行政法人(独法)は今回統合した1機関です。殆どが独立行政法人となっている他省庁とは異なります。4つの試験研究機関について当局は、「政策研究所、研修機関、緊急時に国の責任において直接実施すべき健康危機管理を担っている等の理由により、独立行政法人化されなかったもの。現在も状況の大きな変化はないと考えている」と回答。現行体制を維持する立場です。
 この4つの国研と独法は、厚生科学研究を担う点で共通しています。定員削減は各研究所のマンパワーを低下させています。独立行政法人は運営費交付金の削減も続いています。各研究所は、運営の土台である光熱水道料の捻出も困難な状況です。誇りと働きがいの持てる研究所・職場をつくるために、研究現場から必要な要員と確保を要求します。研究条件や研究環境の改善、研究者・職員の処遇改善を要求します。非常勤職員の業務や技能、経験などを適正に評価し、雇用の安定・継続を図るとともに賃金・労働条件の改善を要求します。人権侵害行為であるパワーハラスメントを根絶させるために労働組合の役割発揮し、知恵と力を結集します。また、研究所の民主的な運営のために努力します。

2 安定した研究体制をつくる重点課題での取り組み

 国家公務員宿舎の削減計画に基づく具体化が進められる中、2014年秋に国立感染症研究所の今後の宿舎確保数が極めてわずかであることが明らかになりました。研究所の使命を果たし、十分な役割発揮を行うために本部・支部が一体になり宿舎確保の取り組みを進めました。支部では全所員を対象にした署名を集め、支部交渉、本部段階での交渉で要求。さらに、国公労連、東京国公が行なった財務省及び関東財務局交渉で実情を訴えるなど、様々な取り組みを実施する中で、宿舎確保数を一定程度、増やすことができました。今後さらに恒常的な確保に向け、取り組みを進めます。
 国立医薬品食品衛生研究所の神奈川県川崎市殿町への移転は、2016(平成28)年度末の竣工をめざし建設工事に着手しています。研究所の移転は、厚生科学研究体制を確立する上での重要な事業です。国民の要請に応えうる必要な施設とシステムを構築し、移転が完了し移転後の安定的な研究運営が可能となるまで充分な予算確保を要求します。
 塩崎厚労大臣は8月3日、国立感染症研究所村山庁舎にある高度安全試験検査施設(BSL‐4施設)を特定一種病原体等所持施設として指定しました。施設整備や体制確保、安全対策など、課題や影響について検討し対応します。

3 独立行政法人改革、運営費交付金増額の取り組み

 独立行政法人の目的は、「国民生活の安定及び社会経済の健全な発展に資すること」とされ、「国民生活及び社会経済の安定等の公共上の見地から確実に実施されることが必要な事務及び事業」を行うと位置づけられています。この実現のためには、運営費交付金の拡充が欠かせません。2016年度概算要求期の取り組みとして、国公労連に結集して団体署名に取り組み、財務省への提出行動にも参加しました。引き続き、国の責任で独立行政法人の拡充を求める取り組みに結集します。

4 独法研究所の統合に対する取り組み

 独立行政法人改革の最も早い具体化として2015年4月に健康・栄養研究所と医薬基盤研究所の統合が行われ、国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所が設立されました。両研究所は、設立経過や歴史、規模や体制が全く異なる研究所です。それぞれ膨大な諸規程があり、研究所運営、労働条件などのルールが異なります。このルールの統一・調整にあたり、健栄研支部、基盤研支部と本部が一体で統合に対する取り組みを強めました。
 両支部は、就業規則等の改定にあたり、交流を行いながら対応しました。特に健康・栄養研究所では、大幅な変更提案となりました。これに対し栄研支部は、新たに労働者代表を選出し、不利益変更につながらないよう意見を述べ、修正・改善を粘り強く迫りました。今後、統合した研究所に対する要求整理や新たな交渉ルールの確立に向け、基盤研支部、栄研支部と協議し対応します。

5 厚研連の活動を強化する

 医療並びに公衆衛生の向上を図り、国民の健康と福祉を向上・発展させる厚生労働科学研究の役割発揮が強く求められています。試験研究機関の運動は、厚研連(全厚生試験研究機関支部連絡協議会)の活動を軸にして、各機関・職場の状況や課題を交流し、要求を練り上げ厚生科学課長交渉を準備し、実施しています。
(1)厚研連(全厚生試験研究機関支部連絡協議会)の活動を軸に各試験研究機関の現状を交流し、要求前進をめざします。(2)研究環境並びに研究・労働条件の改善の課題を深め、共通・重点要求に練りあげ、厚生科学課長交渉を準備します。
(3)厚生科学研究の拡充をめざし、政策活動を重視します。特に政府の科学技術政策の動向を注視し、国立試験研究機関及び独立行政法人研究所の課題を鮮明にさせ、要求実現の取り組みに活かします。(4)これらの活動の到達点を踏まえ、厚研連交流集会の準備を進めます。
(5)上記の活動を進めるために、厚研連の事務局機能を強化し、厚研連の活動強化を図ります。


[14]社会保険行政の安定した業務運営をめざす取り組み

 年金・医療制度は、社会保険行政の中核です。憲法25条を活かし、国の責任で制度を拡充し、安定的な業務運営を行う‐これこそ、国民みんなの願いです。日本年金機構と全国健康保険協会で、要求闘争を前進させることは、その期待に応える道です。とりわけ、事業運営が民営化された下で、行政民主化の立場から、たたかいを構築することが大切です。
 1 団体交渉で要求前進をめざす

 職員が安心して働ける環境、職員が誇りを持って働ける職場をつくることは、安心の健保・年金制度を確立する課題と結びついています。私たちの要求は、安定的な業務運営や公平・公正な事業運営、窓口サービス等の拡充をめざす、国民の願いを実現するためにも必要です。
 働くルールの確立、労働条件の改善、有期雇用職員の処遇改善及び希望する職員の継続雇用のために、団体交渉を積み重ね、要求前進をめざします。全国健康保険協会では、支部交渉、本部交渉で要求前進をめざします。日本年金機構では、ブロック本部との交渉(各支部対応)、本部交渉を通じて要求前進をめざします。
 また、日本年金機構では、安定的な業務運営を行うために正規職員の増員が必要です。そのためには、「当面の業務運営に関する基本計画」(2008・7・29閣議決定)の見直しが不可欠であり、厚労省との交渉で追及します。
 こうした社会保険関係職場の要求闘争を前進させ、社会保険各制度にかかる要求・政策活動を強化するために、社会保険支部協議会の活動を強化します。

2 有期雇用職員の雇用確保の取り組み

 日本年金機構は、2010年1月の発足時に正規職員を社保庁時代と較べ2200人削減。その定員を10880人とし、有期雇用職員15167人を加えて合計26047人の体制にしました。有期雇用職員の比率は、全体の6割にもなりました。
 2012年度末からは、年金記録整備の規模縮小に伴う予算削減で「雇い止め」が機械的に行われた結果、経験者が不足し、経験の蓄積ができず、職場で混乱が生じました。信頼回復の道筋とはかけ離れた深刻な事態が続いています。
 有期雇用職員の雇用確保は、発足当初から大きな柱に位置づけ、「今度こそは職場で涙を流させるな!」の思いで運動を展開してきました。毎年、厚労大臣及び機構本部宛の「有期雇用職員の雇用継続を求める要請署名」を集約。機構本部との交渉を積み重ね、厚労省大臣官房人課長交渉では雇用確保に向けた予算確保に最善の努力をするよう要求しました。

〔有期雇用職員の雇用継続を求める要請署名の取り組みの到達点及び交渉回数〕
 2012年度
    1145筆 機構本部交渉3回
 2013年度
    1151筆 機構本部交渉4回
    1503筆(厚労省宛)
 2014年度
    3766筆 機構本部交渉3回
    3953筆(厚労省宛)

 安定的な業務運営を確保し、有期雇用職員の雇用を守るために、厚労省前、機構本部のある高井戸駅前での宣伝行動を実施し、年金業務には豊富な知識と経験が必要であることを訴えました。この問題は国会でも取り上げられ、日本共産党が衆・参両院の厚労委員会で質問し、厚労大臣を追及しました。これらの運動が力になり、2012年度は事務センターのアシスタント職員の雇用延長、2013年度は准職員の雇用延長、2014年度は無期転換雇用の実現など、貴重な成果を勝ち取りました。
 一方、5年間で約1万人が期間満了等を理由に雇い止めとなりました。公的機関だからこそ、安定的な雇用が確保されなければなりません。予算削減を理由に自由に首切りが認められることは重大な問題です。
 2016年度には、発足時から働いている有期雇用職員が期間満了(約4千人)となるため、無期転換職員の定数を大幅に拡大することが求められています。
 さらに有期雇用職員の雇用確保の取り組みを継続・発展させ、要求闘争と一体で仲間を増やし、団結強化につなげることが重要です。
 有期雇用職員の雇用を守るには、社保庁不当解雇撤回闘争をはじめ、IBM、JALなどの乱暴な解雇を許さない共同を広げることが重要です。国民への理解を広げ、信頼回復に逆行する年金機構の実態を訴え、引き続き、雇用確保の取り組みに全力を尽くします。

3 年金流出問題に対する取り組み

 日本年金機構は6月1日、サイバー攻撃によるウイルス感染で約125万件の年金記録が流出していることを公表しました。通常国会でも衆参両院で集中審議が行われ、重大な社会問題になっています。この問題は、原因の徹底究明を行うことが重要です。事の本質は、社会保険庁の廃止・民営化によって政府並びに厚労省の責任が曖昧になったことです。省庁LANから外し、国の重要情報から除外し放置してきた政府の責任は重大です。セキュリティ対策について、指導責任のある厚労省の対応も重大です。厚労省年金局や日本年金機構職員の個人責任にするのではなく、政府の責任を明確にして対応することが求められています。
 全厚生は日本年金機構に対する申し入れや交渉、厚労省人事課長交渉、官房長交渉(厚生共闘)で追及しています。国公労連と全厚生は7月24日、「年金情報流出はなぜ起きたのか〜日本年金機構の現状とベテラン職員の職場復帰にむけて〜」と題して参議院議員会館で院内集会を開催し100人が参加しました。
 日本年金機構は8月20日、調査結果を報告。問題の根底には「ガナバンスの脆弱さ、組織としての一体感の不足、リーダーシップの不足、ルールの不徹底など、旧社会保険庁時代から指摘された諸問題があり、また、厚生労働省が責任を担う公的年金制度の、最も大切な実際の執行部分を責任をもって請け負うという緊張感、責任感、使命感は役職員全員に共有されるに至っていなかった、という組織全体の基本姿勢に関わる問題があります」と指摘しました。こうした認識の下で「日本年金機構再生本部(仮称)」を設けるとしています。しかし、これでは事態の根本解決にはならないのではないでしょうか。
 また、厚労省及び年金機構から独立した第3者機関である「検証委員会」は8月21日、検証報告を行いました。「機構と厚労省の備えは際めて脆弱であり、結果として大規模な情報流出をもたらし国民の信頼を失墜した」とあり、再発防止策は「機構の役職員が今回の事件に正面から向き合って危機意識を持ち、組織が一体になって対応することが前提である」としました。
 今後、政府・厚労省や年金機構での対応に対して、現場の職員に責任転嫁する姿勢を改めさせ、根本原因と事の本質を明らかにし、抜本解決の道筋を示し、国民の願いに応える業務体制の確立のための奮闘することが必要です。

4 人事異動のルールの民主化をめざす

 全国健康保険協会及び日本年金機構は、広域人事を前提に職員を採用しています。事業運営や組織の機能の確保・向上において人事異動がやむを得ない場合がありますが、基本的には生活環境を異にする人事異動は極力少なくするべきです。同時に、可能な限りの手当をする必要があります。(1)人事異動にかかる基本的なルールの確立をめざします。(2)単身赴任手当の増額を求めます。(3)遠距離通勤手当の新設を求めます。

5 年金・医療保険の制度改善をめざす

 日常的な業務を通じて、被保険者・受給権者の要求・願いを把握し、具体的な改善の方策を研究・検討することは、実務に携わっているものに課せられた使命です。国民的要求の実現と私たちの誇りを取り戻すため、(1)年金制度及び運営組織のあり方の研究活動をすすめます。(2)医療保険のあるべき姿と改善方向の研究活動を進めます。

6 労働者の資質の向上をめざす

 新規採用時の研修が十分に行われず、また、日常的に「教え、教えられる」環境にないため、業務に習熟することが困難な状況が続いています。本来、業務研修などは、使用者の最低限の責任ですが、年金機構においてはそうした責任が放置され、結果として被保険者・受給者に不利益が生じかねない状況にあります。
 労働組合として、一人一人の組合員の「知識を高めたい」「いろんな経験を聞きたい」「資質を高めたい」などの要求を実現するため、当局に研修の実施を要求するとともに、自主的に行う「勉強会」などの開催を支援します。


[15]憲法9条と25条を活かし、共同の力で社会を良くしよう!

1 たたかいの土台に憲法を

 憲法を守り、活かすには、憲法に確信をもつことが大切です。私たちは主権者として、借り物ではなく自分自身の言葉で、憲法を語ることが大切です。憲法は、職場や社会に根ざしています。憲法がこの社会でいかに積極的な役割を果たしているかを探求することが重要です。暮らしや働き方から教育・政治にいたる様々な課題に対し、憲法を物差しにして考え、見直すことです。
 憲法理念の実現のために何が妨げなのか、いかにすれば実現するかを深めます。そして、たたかいの土台に憲法を据えて、要求の前進をめざします。

2 憲法9条と25条の相互の価値を探求する

 平和なくして、社会保障の前進・発展はありえません。日本国憲法の第9条と第25条、平和探求の理念、社会保障の原点となる理念は密接に結びつき、輝いています。この相互の関係は、普遍的であり、見事に調和しています。「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利をことを確認する(憲法前文)」は、そのことを見事に表現しています。第2次世界大戦(戦争)・アジア・太平洋戦争の多くの犠牲と深い反省に立ち、この理念が築かれました。改憲勢力はこの双方を邪魔者扱いし、「戦争する国」づくりと「福祉・社会保障の変質・縮小・解体」を同時にすすめています。
 全厚生は、憲法9条と25条の意義や相互の価値を探求し、あらゆる機会を生かし、語る活動をすすめます。9条の会の取り組みに参加します。

3 草の根から、平和と核兵器廃絶をめざす

 戦争のない平和な世界をめざし、軍事同盟や米軍基地に反対する運動が国内外で大きく広がっています。広島・長崎の被爆から70年を経た今も世界で2万発以上の各兵器が蓄積・配備されている下で、核兵器廃絶の実現をこれ以上遅らせてはなりません。唯一の被爆国であり、憲法9条を持つ日本の役割は、被爆の実相を世界に伝え、平和、核兵器廃絶の国際的貢献の先頭に立つことです。この崇高な使命を自覚し、草の根からの運動をすすめます。3・1ビキニデー行動、5・3憲法集会、2016年国民平和大行進、2016年原水爆禁止世界大会、日本平和大会等の成功のために積極的に参加します。

4 「原発ゼロ」をめざす共同を広げよう

 8月11日、安倍政権の原発推進政策に従って、九州電力は川内原発1号機の再稼働を強行しました。重大な問題です。「原発再稼働反対!」の声は、全国各地で展開され、「原発ゼロ」の社会をめざす共同が大きく広がっています。東日本大震災、人災である福島原発事故以来、「今と未来にいかに生きるか」という根源的なテーマを問い、自発的な行動が大きく広がっています。一方政府は、各地の原発再稼働を狙うだけでなく、財界と一体となってアジア、中東、東欧などへの原発輸出に奔走しています。
 今こそ、福島原発事故の当事国として、原発依存のエネルギー政策から脱却するため、真剣に考え、学び、「原発ゼロ」をめざす広範な行動等に結集します。

5 社会保障を守り、発展させる運動に結集する

 憲法第25条を活かす社会保障の再生・拡充は、国民の願いです。大震災の復興でも生存権保障、社会保障の拡充が求められています。社会保障構造改革の問題点を国民的に明らかにし、社会保障を拡充させる国民的な運動に結集します。中央・各県の社会保障推進協議会に結集して共同の取り組みを広げます。現在8都道府県で結成されている「安心年金つくろう会」(=国の責任で安心して暮らせる年金制度をつくる連絡会)の運動を推進し、新たな県での結成をめざし、共同した取り組みを進めます。

6 社会保障講師団をつくり、活動する

 社会保障講師団の出番です。政府・財界による社会保障の解体攻撃に対し、憲法25条を活かし、社会保障の再建・拡充をめざし、国民的な共同を広げるために社会保障講師団活動を積極的に進めます。
 社会保障講師団は、社会保障の真の発展をめざして当面、次の活動を展開します。(1)常に学習の先頭にたち、深く学びます。(2)日常会話、対話、懇談などの中で、社会保障講師団の自覚をもって話します。(3)会議や学習会で社会保障講師団の自覚をもって、さすがと言われる発言をします。(4)街頭演説や訴える場があれば、社会保障講師団の自覚をもって弁士を引き受けます。(5)身近な学習会の講師を引き受けます。(6)講師団の活動を交流し、レベルを高めながら活動を進めます。(7)講師団の中での研鑽、社会保障論をさらに深めます。

7 労働者・国民の願いに応える社会をめざす

 政治の行方は、私たちの暮らしに直結します。雇用破壊をやめさせ、平和な社会、社会保障の充実をはかるには、政治の中身をかえることです。全厚生は、憲法が保障する国民の政党支持、政治活動の自由を守り、職場でも地域でも家庭でも、政治を語ります。来年の夏には、参議院選挙があります。全厚生は、国民・労働者の切実な願いや要求が届く民主主義を大切にした政治を実現させるために奮闘します。



2015年度組織拡大方針(案)
組織の純増をめざし、みんなの力で前進させよう!
2015年度 組織拡大方針(案)目次

[1]最重要課題に位置づけ、全支部で取り組む

 組織強化・拡大は、全厚生がこの5年間、最も重視した課題です。本省、試験研究機関、社会福祉、社会保険のすべての職場での対話をすすめ、これまで約380人の新しい仲間を迎え入れています。各支部の奮闘による貴重な到達点を築きつつも、5年間のトータルで見ると組織の減少が顕著に起きています。
 5年間の活動は、取り組み開始の1年目と2年目では、250人の拡大を行い、本省、試験研究機関、社会福祉、社会保険の各部門で奮闘し、組織拡大は勢いをもって進めました。しかし後半の3年間では130人の拡大にとどまりました。中心的な役員の活動から、もっと幅広い活動に変えていくことが必要です。職場に労働組合の風を吹かせ、日常活動と一体で組織拡大を強めることが大切です。正念場のたたかいを開始した5年前の原点にかえり、組織の拡大に全力で取り組みます。

〔参考〕5年前の原点‐正念  場で組織建設の取り組みを誓う
 今から5年前、第74回定期大会(2010・9・11、12)の決意を思い起こすことが大切です。なぜなら、この大会は、社会保険庁の解体・民営化後、不当解雇撤回闘争を始めて最初の大会であり、組織建設、職場活動の再構築への誓いを立てた原点の大会だからです。
 重要なことは、社保庁解体・民営化攻撃の中で基本組織を維持したことです。この時の運動方針を抜粋します。
 「たたかいの渦中にあるからこそ、その到達点を確認することが大切です。その第1は、全厚生の基本組織を維持してきたことです。構造改革は、公務破壊の推進とともに、行政の担い手い・職員を削減することと一体不可分で、公務労働運動を壊しにかかってきました。激しい攻撃の中で、全厚生は、組織的な後退を余儀なくされています。しかし、各職場での基礎組織と本部機能を維持していることが重要な到達点です。第2は、攻撃に対し、受け身にならず、果敢にたたかい、新たな体制を築き、要求前進の取り組みを開始していることも重要な到達点です。社会保険部門は、ブロック単位の支部に再編し、県協議会、職場分会を構成員として、活動を進めています。これらは、仲間たちの期待に応え、たたかいを継続・発展させる土台です。」(第74回定期大会、2010・9)


[2]拡大の経験や教訓をすべて活かす

 5年間の組織強化・拡大の取り組みは、貴重な経験と教訓を残していています。これらのすべての経験と教訓を活かすことが大切です。
(1)新しい仲間の加入は、運動前進への確信につながります。多くの対話を通じて、職場で声をかけられるのを待っていることも実感しました。新しい仲間の加入は、運動前進への確信につながり、職場活動を活発にしていく方向性が見えました。
(2)大切なことは、要求実現の取り組みを通じて対話を進めることです。非常勤職員の雇用を守り、労働条件を改善させる取り組みを重視し、新しい仲間を迎えた経験も貴重です。
(3)様々な団結交流企画を通じて、つながりをつくり、気軽に声をかけて、新しい仲間を迎えてきました。一方で組合に興味を持っているにもかかわらず、加入呼びかけを先送りしたケースもありました。これでは、仲間は増えません。
(4)本省支部は、非常勤職員の仲間の要求を大切にしてランチ会などを開催。学び、交流し、組合の風をさわやかに吹かせ、仲間を迎え入れています。非常勤職員の組合員が新しい仲間に呼びかる経験も生まれています。毎月、連続して加入を進め、組織拡大の先進的、画期的な取り組みになっています。
(5)加入を呼びかける行動は、一部の役員の奮闘になっています。前進を続けるためには、全支部の持続的、より集団的な取り組みにすることが大切です。
(6)どの支部も定年、雇用期間満了などで、毎年少なくない組合員が全厚生から離れます。退職者を上回る加入者を迎える取り組みが必要です。また、脱退者を出さないこと、異動した仲間への対応を確実に行うことも重要です。


[3]組織拡大の基本方針と目標

(1)基本方針

 労働組合にとって、新しい仲間を迎えることは、最も嬉しいことです。なぜなら、団結を強めることになるからです。この仲間を迎える取り組みは、労働組合の最も重要な取り組みです。正念場であるからこそ、原点にかえり組織強化・拡大の取り組みを進めます。最優先の課題に位置づけ、自覚を持って取り組みます。
(1)要求実現と組織活動を一体で取り組む
(2)すべての支部で「純増」を目標にする
(3)計画を立て、事前の準備を重視する。自覚を持って取り組む。様々な方法で加入を呼びかける
(4)担い手を広く、全組合員参加で取り組む
(5)各支部、厚研連、厚社連、社会保険支部協議会、女性部など、あらゆる組織で組織拡大を進めるために協議する

(2)目標

(1)各支部は、次期(第80回)定期大会を純増で迎えるために全力を尽くす。全厚生として組織の純増を達成する
(2)すべての職場で、職員の過半数を組織することをめざす


[4]具体的な取り組み

(1)日常的に組織拡大に取り組みます。要求闘争と一体で組合加入の取り組みを推進します。この具体化にあたり、〔本部役員の役割〕〔支部(協議会・分会)の取り組み〕を重視します。
(2)すべての職員を対象にして、組合加入の呼びかけを行います。新規採用者に対して、集中して加入を呼びかけます。
(3)職場実態に合わせて、組織拡大に取りくみます。拡大運動を推進するために、本部・支部が連携して取り組めるよう推進体制をつくり、具体化を図ります。
(4)通年的な組織強化・拡大を取り組み、かつ4〜6月を運動強化期間と位置づけ、全力を尽くします。
(5)本部として、困難をかかえている支部に対する援助を強めます。

〔本部役員の役割〕
(1)本部役員が率先して職場で声をかける(2)支部の運動の中での悩み、疑問に答える
(3)本部役員が労働組合の役割、重要性について学習する
(4)支部執行委員会での講師となって学習会や情勢報告を行う
(5)本部役員それぞれが、各部門、各支部での組織拡大の具体化を追求する

〔支部(協議会・分会)の取り組み〕
(1)支部執行委員会で組織拡大の方針を確認する
(2)支部執行委員会で組織拡大で一歩踏み出すために「何からはじめるか」を討議する
(3)支部の実態を踏まえた独自の取り組みを議論し、「できること」から着手する
(4)組合加入グッズ、掲示板を有効活用し、ポスター等を張り出す
(5)支部機関紙を発行、すべての機関紙を遅延なく配布する
(6)新規採用職員の歓迎会、レクレーションなどを開催し、加入拡大に結びつける
(7)役員を中心に職場の身近な人をはじめ、積極的に声をかける
(8)運動に確信を持つために支部執行委員会で学習会を開催する


[5]国公共済会の加入を促進させる

 国公共済会は、仲間同士の「助け愛」の精神で、もうけを目的とせず、「小さな掛金、大きな保障」を実現しています。組合員と家族の福利厚生として、現在約2万5千人が加入しており、安定的な運営がなされています。
 国公共済会では、新入組合員に対し「ワンコイン共済」のプレゼント(半年間)を行っています。あたらしく組合に加入した仲間が、プレゼント期間に給付を受けるなど、組合員の福利厚生を保障し、団結を強める力になっています。
(1)4月〜6月を拡大強化期間とし、100人の拡大をめざします。
(2)すべての支部役員が国公共済に加入することをめざします。
(3)新入組合員には、必ずワンコイン共済プレゼント券を渡し、期間終了前に引き続く加入を呼びかけます。




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