見出し

◆号外 (2012年9月5日付)◆
全厚生76回定期大会 2012年度運動方針(案)
全厚生第76回定期大会・2012年運動方針(案)目次

[1]全厚生運動の新たなたたかいの到達点

 全厚生はこの1年間、団結の力を基礎にして、要求と組織の前進のために総力をあげて奮闘しました。そのたたかいの到達点を2年間の歴史的経緯を踏まえて明らかにします。

1.2年間の歴史と活動を踏まえ、ふりかえる

 第74回定期大会(2010・9月)は、社会保険庁解体・民営化後、不当解雇撤回闘争を開始した後の最初の大会となり、組織建設、職場活動の再構築への誓いを立てた原点の大会です。
 社会保険庁改革という激しい攻撃の中で、全厚生は組織的な後退を余儀なくされました。しかし、各職場での基礎組織を維持している事実を確認。職場を基礎にした活動の再構築をめざし、要求前進の取り組みを開始しました。
 すべての支部で組合員の加入拡大を促進させ、組織の強化・拡大で奮闘。昨年の75回定期大会(2011・9月)時点で、「歴史的かつ貴重な成果を築くことができた」と総括。1年間で160人の仲間を迎えることができました。活動の特徴は、すべての部門で対話し、組織拡大をすすめる工夫を行い、一歩、二歩と足を踏み出したことです。仲間の加入は、運動前進への確信につながりました。職場活動を活発にする方向性も見えました。
 仲間たちの期待に応え、組織建設の土台づくりの1年を踏まえ、次ぐ年(昨年度)も果敢にたたかいました。旧社会保険庁職員の不当解雇撤回闘争は39人の当事者を主人公にして、全厚生を丸ごと闘争団と位置づけ、全力で奮闘。また、国立福祉施設の組織再編に対する体制強化や雇用保障の課題、厚生科学研究の拡充や独立行政法人研究所での要求前進のたたかい、日本年金機構での本格的な要求闘争、全国健康保険協会での要求前進の取り組み、国家公務員の賃金切り下げ反対から「公務員賃下げ違憲訴訟」まで、多彩な活動を展開。これらの要求前進の活動と一体で組織の強化・拡大に全力で奮闘しました。

2.道理ある要求を掲げ、たたかう

 構造改革路線は、社会保障とは相容れません。厚生労働行政を担う全厚生の各職場の要求・課題は、政治・社会のあり方とも直結して、構造改革に立ち向かう最前線の課題になっています。
 社会保険庁職員の不当解雇撤回、日本年金機構や協会けんぽの体制強化の課題は、公務の民営化や社会保障解体に対決して取り組む課題です。国立福祉施設の組織再編・統廃合に対する存続・発展の課題や、厚生科学研究の役割発揮を求める課題は、憲法25条が活きる厚生労働行行政を確立する課題そのものです。
 全厚生はこの時期、国民の願いに応える厚生労働行政の確立をめざしてたたかってきました。憲法25条を活かす道理ある要求を掲げて、たたかい抜きました。さらに、政府が人事院勧告を無視した賃下げ攻撃や公務員制度改革の課題に対し、公務員の労働基本権の全面回復をめざすたたかいと一体で取り組んできました。団結こそ力、たたかってこそ労働組合です。その基本を踏まえ、全労連、国公労連に結集する仲間とともにたたかいました。

3.不当解雇撤回闘争で奮闘し、創意ある活動を開始

 旧社会保険庁職員の不当解雇撤回闘争は、全厚生の最重要課題として、全力でたたかってきました。国家公務員の大量解雇は歴史上も例がありません。全厚生闘争団は、39人の当事者を主人公にして、全厚生を丸ごと闘争団として、元気にたたかってきました。
 今年2月27・28日、人事院本院で口頭審理が行われました。全国10都道府県・15事案(39人)の口頭審理の到達点にたち、私たちの要求を踏まえ、人事院が職権で重要証人(当時の人事課長など、キャリアの幹部職員)の尋問を実施。政府・厚労省の分限免職回避努力が責任と自覚をもって行なわれていない事実がより一層、浮き彫りになりました。
 全労連は昨年5月に「社保庁職員分限解雇撤回闘争対策会議」を発足させ、定例会議を行い、厚労省と人事院に全労連として要請を行い、各県での活動交流やたたかいの計画立案・調整等を行っています。運動の規模を国公労連の産別からさらに広げ、ナショナルセンター規模で運動展開するための重要な役割を発揮しています。
 全厚生闘争団は、新たな取り組みを実践しています。5月19日に開催した全厚生アピール集会(in大阪)では、近畿社会保険支部が合唱構成を創作し、「とどけよう!16人の声」と題して、原告と職場の仲間の思いが歌とともに語られました。合唱構成の歌は、「働きたいのに」「お父さんの背中」「笑顔の意味は」「はな」の4曲(その後、新曲「風をかんじて」も完成)。仕事への思いや誇り、仲間への思い、解雇された悔しさ、団結して生き抜く決意にあふれています。労働者として、真実を語り、伝える方法の新たな探求であり、豊かな表現方法として活かしていくことが大切です。
 人事院の公平審査請求は、口頭審理の総仕上げの段階に入ります。年度内での処分取消し判定(解雇撤回)をめざし、全力を尽くすことが求められています。

4.公務員賃下げ違憲訴訟で、たたかう

 国公労連は5月25日、人事院勧告に基づかない「国家公務員の給与の臨時特例に関する法律」(以下、「特例法」という)は憲法違反として、国に賃金の減額分や慰謝料などの損害賠償を求める「公務員賃下げ違憲訴訟」を東京地方裁判所に提訴しました。原告は、国公労連と370人の組合員で構成しています。全厚生も、中央執行委員会で議論を積み重ね、支部にも提起して6人の組合員(中央執行委員会より4人、各支部より2人)が原告団に加わりました。勇気ある決意に拍手を送ります。この訴訟の意義は、国家公務員の労働基本権が制約されている下で、人事院勧告に基づかない公務員給与の賃下げの違憲・違法性を司法の場で明らかにするものです。
 政府は、国家公務員の賃下げの理由として、国の財政事情や震災復興の財源を捻出するためと説明してきました。しかし、社会保障と税の一体改革と称して、消費税大増税と社会保障の総改悪を強行。国家公務員の賃下げ攻撃は、国民総犠牲の突破口であることが鮮明になりました。裁判闘争では、法廷内のたたかいと併せ、公務員攻撃のねらいを明らかにして、国民の支持と共感を得ながらたたかいます。全厚生のすべての組合員が原告の立場で奮闘することが求められています。

5.組織強化・拡大を粘り強く

 組織強化・拡大は、全厚生の最も重要な課題です。この間の組織的な後退に歯止めをかけ、組織を維持・前進させるたたかいを開始して2年、歴史的かつ貴重な成果をあげています。一昨年から昨年の定期大会までに150人の仲間が加入し、その後の1年間で新たに100人の仲間が加入しました。2年間の積み上げは、247人(8月31日現在)となり、2年前に掲げた500人目標の約半数となる到達点を築いています。
 組織拡大の特徴は、職場での対話をすすめ、一歩、二歩と足を踏み出し、かつ粘り強く取り組みを継続させていることです。本省支部は、非常勤職員の仲間の要求を大切にしてランチ会などを開催。学び、交流し、組合の風をさわやかに吹かせ、仲間を迎え入れています。年金機構本部支部では職場集会への参加がきっかけになって組合加入が実現しました。労働組合の存在があり、日常活動を地道に行うことで、組織強化・拡大につなげています。しかし、まだまだ一部での奮闘になっています。さらに前進し続けるには、全支部の持続的、より集団的な取り組みにすることが大切です。2年間の取り組みを踏まえ、新たな発展が求められています。

6.たたかいを継続・発展させよう!

 全厚生は、厳しい攻撃にひるまず、あらゆる活動の場で希望とロマンを語り、元気一杯たたかいました。要求実現の活動と一体で、組織の強化・拡大に全力をあげました。果敢に挑んだからこそ、貴重な成果・教訓が生まれました。
 これからの1年を展望します。人事院の公平審査請求で処分取り消し判定を勝ち取る年です。塩原視力障害センターの廃止に伴う雇用確保は重要な課題です。道理ある要求を掲げ、全力でたたかおうではありませんか。組織強化・拡大も前進させなければなりません。社会を変えることも可能です。解散・総選挙が必ず行われます。社会を良くするために奮闘できる年なのです。志を大きく、共同を広げ、たたかいを継続・発展させましょう。旬のたたかいを担う中心組合としての自覚をもって、意気高く、活動を一歩一歩、前進させていきましょう。


[2]情勢の特徴と基本の構え

1.今と未来をきり拓く転換点

 この国のあり方が根本から問われています。長年にわたる構造改革によって、雇用破壊、貧困と格差の拡大は深刻です。東日本大震災及び原発事故の未曾有の被害に対する復旧復興は、最優先の課題です。にもかかわらず、野田政権は、国民・労働者に背を向けて暴走しています。民主・自民・公明3党の談合政治に対して、国民の怒りが大きく広がっています。憲法25条の生存権保障や基本的人権を基礎に据え、人間らしく生き、働くことのできる社会を築く絶好の機会です。日本の将来を見据え、社会を良くする共同をさらに広げる年にしましょう。歴史的な時代の転換点にふさわしく、輝く未来を展望して、たたかう‐最大の課題は、ここにあります。

2.旬の課題で国民的な共同を広げていく

 日本の未来を切り拓くために、国民的課題で共同することが大切です。旬の課題は、TPP(環太平洋連携協定)交渉参加の阻止、消費税の増税実施を中止させる、社会保障の大改悪をストップさせる、原子力政策の根本的見直しと「原発ゼロ」の社会をめざす取り組み、沖縄・普天間基地問題及び墜落事故が相次ぐオスプレイ配備撤回などで、どれもが国の行方を左右する政治課題ばかりです。
 特に、「原発ゼロ」の共同が全国で大きく広がっています。「原発ゼロ」「原発再稼働反対」のたたかいは、野田内閣を包囲しています。3月から始まった毎週金曜日夜の首相官邸前での抗議行動は、6月、7月、8月と大きく広がっています。東京・代々木公園で開催した「さようなら原発10万人集会」(7・16)は、17万人を結集。国民運動の新しい活動の探求が始まっています。ツイッターやフェースブックで呼びかけ、広げる活動スタイルで、運動が急速に広がっています。この到達点を自らで実感し確信し、共同の取り組みを前進させることが重要です。

3.社会保障の再建めざす共同を広げる

 消費税増税法案は7月10日、民主、自民、公明3党の密室談合によって参院段階でも採決を強行し、可決・成立しました。社会保障と税の一体改革と称して、消費税10%増税と併せて「社会保障制度改革推進法案」を強行しました。この推進法は、制度の基本に「自助」「共助」をあげ、憲法25条で明記している社会保障の国の責任を放棄し、民間保険の発想で作り替えることを意図した社会保障解体法です。また、社会保障の公費の主要な財源に「消費税及び地方消費税の収入を充てる」と明記。消費税増税か社会保障削減か、過酷な選択を迫る仕組みです。
 今、この路線を食い止めて、新たな行財政の方向を展望しなければなりません。消費税増税と社会保障総改悪の攻撃に対し、社会保障の再建・拡充をめざし、国民的な共同を広げることが重要です。憲法25条を活かす社会保障制度の再建は、年金、医療、介護保障、生活保護などを含む総合的な政策として練り上げ、国民・労働者の総意でつくりあげる大事業です。構えを大きく、新たな福祉国家をつくる展望をもって、意気高くたたかい続けることが大切です。

4.乱暴な解雇を許さない!

 人間らしく働くルールを確立する‐この課題は、労働組合の最も重要な課題です。政府・財界は、雇用破壊の政策を推進しています。非正規雇用労働者は、労働者全体の36%に達し、更に増加しています。労働者を使い捨てにする労働を野放しにする政府の責任は重大です。
 JAL不当解雇撤回裁判をはじめ、労働事件において今、東京地裁での不当判決が相次いでいます。労働者・国民の基本的人権を守る最後の砦、司法の役割が問われています。首切り自由の社会にさせないために、社会的世論をつくることが大切です。民間の整理解雇4要件((1)人員整理の高度な必要性、(2)解雇回避努力、(3)人選基準の合理性、(4)手続の妥当性)を徹底させ、乱暴な解雇を許さない共同を広げることが大切です。

5.公務分野を敵視する危険な動きを見抜く

 公務員は、国民全体の奉仕者です。この立場から、公務バッシングとは何か、を見抜かなければなりません。時の政権が良からぬことを企てようとする時、悪事の本質を覆い隠すため、悪者を意図的につくり、悪事をすすめる常套手段です。嵐のように吹き荒れた社保庁バッシングは、その典型です。公務員労働者と国民を分断し、公務員労働者のたたかいを萎縮させ、足を止める攻撃です。
 こうした観点から、橋下「維新の会」の活動には注意しなければなりません。公務員を意図的に悪役・悪玉に仕立て上げ、そこに攻撃を集中しています。特に、公務員の身分保障や処遇などに対して、事実をねじ曲げ、庶民のうらみや怒りが起きるように意図的に働きかけています。争点を単純・単一化して二者択一を迫ることも特徴です。国民に思考停止を強制し、紋切り型(ステレオタイプ)の連鎖にはめ込んでいく手法です。
 「維新の会」は、危険な国づくりを唱え、国政選挙にも打って出る構えです。
騙されてはなりません。政治的な影響力を強めさせてはなりません。本質を見極めるためには、民主的な対話の方法を深め、探求することも忘れてはなりません。

6.全厚生労働運動の歴史的な使命

 1946年4月20日に結成された全厚生(当時は、厚生省職員組合)は、今年(2012年)、結成66周年を迎えました。全厚生は結成当初から、社会保障闘争の分野で重要な役割を担ってきました。1954年、吉田内閣がすすめた再軍備策動に反対し、社会保障を守るための行動を起こした歴史は、全厚生運動の原点です。そして、労働条件の改善と共に、厚生労働省(旧厚生省)で働く職員で組織された労働組合として、一貫して行政の民主化、社会保障を守るたたかいを重視して取り組んできました。全厚生規約第3条は「社会保障の確立のために行政の反動化に反対し、わが国の平和と民主主義の確立に寄与する」と記しています。これは、行政民主化のたたかいを積極的に位置づけている証です。
 現在の課題は、社会保険行政の解体・民営化攻撃の本質を明らかにし、社会福祉の再編成や厚生科学研究のあり方を問い、憲法25条を活かす厚生労働行政を確立させることです。構造改革によって雇用・暮らし・働くルールが壊され、社会保障の解体攻撃が続いています。こうした下で、「何のため、誰のため」に厚生労働行政があるかを真剣に問い続け、考え、行動することです。この役割を担うことは、歴史的使命です。全厚生の存在価値は、ここにあるのです。全厚生運動の歴史と原点に学び、組織された労働者としての自覚を高め、国民本位の行政をつくりあげるために不断の努力を続けていきましょう。


[3]職場を基礎に要求前進をめざす

1.日常活動を重視し、支部・分会体制を確立する

 労働組合の基礎になるのは、職場であり、支部・分会です。職場での日常活動が行われているか否かは、運動のバロメータです。会議を定期的に開催する、新聞を発行する、新聞を組合員に配布する、組合員と対話する、職場集会を開く、要求討議を行う、要求書を提出する、団体交渉を行う、学習会を開く、レク・文化行事を行う、組合加入をすすめるなど、様々な活動を通じて、労働組合のさわやかな風を吹かせ、職場の民主的な力を高める努力が大切です。職場でみんなの笑顔をつくるには、この力を高めることです。生き生きと働くための原動力は、ここにあります。労働組合の原点にたって、仲間づくり、団結づくりを職場で行います。活動の中で、新しい役員の担い手づくり、支部・分会体制の確立に努めます。

2.職場を基礎に、要求に根ざしてたたかう

 労働組合は、切実な要求の実現をめざすことであり、要求で団結することです。要求づくりは、労働組合の出発点であり、要求こそ命です。すべての職場から要求前進のたたかいをすすめます。
 たたかいの出発点は、要求の確立です。労働組合が職場の切実な要求をかかげて使用者に迫り、使用者も真剣に応える努力をすれば、その中から職場改善の知恵が生まれます。労働組合が積極的に要求し、「緊張感ある労使関係」をつくってこそ、活力ある職場がつくれます。
 行政の専門家として業務を見直し、改善を図ることは、行政を民主的に運営するための基礎となります。職場にある様々な問題を充分に討議し、要求に練り上げ、建設的・積極的に提起します。労働条件も、具体的な提案で改善を迫ります。

3.全支部・職場で要求確立、団体交渉を実施する

 憲法28条は、「勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する」としています。労働組合の重要な役割は、要求実現のために執念を持って団体交渉することです。切実な要求の実現をめざし、本部・支部が一体で団体交渉を実施します。すべての職場(支部)で要求書を提出します。要求提出後は交渉を強化し、粘り強く、要求実現をめざします。

4.本部交渉で要求前進をめざす

 職場の切実な要求を積み上げ、全厚生統一要求及び部門別の重点要求を確立します。部門別では、公務部門、試験研究機関、社会福祉施設、社会保険の各部門別の重点要求を確立します。各部門・支部段階の交渉を積み上げ、春闘、夏期闘争、秋季年末闘争の中で本部交渉を実施し、粘り強く要求前進をめざします。全厚生として、(1)大臣官房人事課長交渉、(2)施設管理室長交渉、(3)厚生科学課長交渉、(4)日本年金機構本部交渉、(5)全国健康保険協会本部交渉、(6)人事院交渉等を実施します。
 厚生共闘として、(1)厚生労働大臣交渉、(2)大臣官房長交渉等を実施します。

5.全員参加型の活動を実践する

 全厚生にとって、正念場のたたかいを開始して2年。あらゆる分野の活動スタイルを見直し、みんなで担い、みんなの力を束ね、その力を高め、全員参加型の活動に変えていく取り組みを実践してきました。職場を基礎にして、統一と団結の力で、切実な要求実現に向かって、一歩一歩着実に前進させています。改めて組合員が主人公の立場を鮮明にして、「みんなで担い、できるところから、たたかいを始めよう」の立場で実践しています。この方向は特別なことではなく、労働組合の本来の姿です。常にめざすべき活動の基本です。この時期、この瞬間、全厚生運動を強く、鍛えていく絶好の機会にして、全員参加型の活動を実践します。

6.機関紙の発行で組織活動を生き生きと

 生き生きとした組合活動をつくり、要求実現のたたかいを職場、地域から力強く前進させるには、機関紙活動は不可欠です。支部の顔である職場新聞は、組合員で育てていく活動です。組合員に確かな情報を正確に伝え、職場の声を集めて、対話を促進させる機能は、要求闘争をリードします。職場新聞は、「継続こそ力」です。今年度も定期大会において、支部の教宣・機関紙活動を励まし、編集内容の質的向上をめざし、交流するために、機関紙フェスティバルを実施します。本部は、中央機関紙としての全厚生新聞を月1回で発行します。速報性を重視した闘争情報、社会保険協議会ニュース、闘争団ニュースを発行します。

7.学習教育活動を前進させる

 学習は、たたかう力の源泉です。世の中のしくみや相互の関連を見抜き、要求実現の道筋や展望を見いだすには、労働組合の基礎学習が不可欠です。本部役員はもとより、支部や分会役員は、常に学ぶ活動の先頭にたちます。学習活動の方法・スタイルは、あらゆる工夫を行います。15分程度のミニ学習会、ランチ学習会、休日を利用した本格的な学習会など、組合員の様々な条件を活かし、学ぶ活動をすすめます。
 学習教育活動は、持続的・計画的に取り組むことが重要です。とりわけ、青年層は、学ぶことが成長に結びつく世代です。学習する場を積極的につくり、参加を保障することが重要です。各県・地域の学習会には、支部役員はもとより、組合員が積極的に参加します。各支部は、「学習の友」の購読をすすめ、活用します。地域で開催する労働学校に参加します。勤労者通信大学(基礎コース・労働組合コース)の受講組織は、今年度19人が基礎コースで学んでいます。引き続き、励まし合いながら学べる集団受講に努め、本部は学習援助を強めます。国公労連が主催する労働学校をはじめとする各種学校に参加します。

8.青年を主人公にして活動する

 青年は、学び、たたかう中で成長します。厳しい情勢をはね返す活動の中で、青年との対話を重視します。特に、若い仲間を育てる視点をもって対話します。
 この1年間、青年対策部は、支部を超えた青年同士のつながりを強める役割を果たしてきました。7月には青年学習交流会を1泊2日で開催し、5支部12人が参加。ハ病研支部OBの儀同政一さんを講師に、原水禁世界大会の歴史的意義と原発ゼロに向けた運動について学習。2日目は地引網で一緒に遊び、交流しました。また、原水爆禁止2012年世界大会への参加を位置づけ、4支部11人が参加。被爆体験を聴き、核兵器廃絶運動を学ぶなど、平和への思いを深めました。青年が自らの関心を中心に、学び交流できる成長の場をつくることが大切です。
 各支部は、若い組合員を主人公にして活動できるように援助します。青年自らで考え、創意工夫して活動できるよう、青年層の団結が強まるように先輩組合員の援助を惜しみなく行います。
9.女性部の活動を前進させる

 女性部は、昨年11月19日に第16回総会を開催し、「集まる・しゃべる・食べる・学ぶ・行動する」をモットーに、「つぶやきを要求へ」「愚痴も磨けば要求になる」などの名言を大切にして、みんなで力を合わせてたたかう決意を固め合いました。6月16・17日には、第36回女性交流集会を秩父で開催し、9支部40人が参加。「緑深まる秩父でリフレッシュ〜食生活から考えるQOL(クオリティ・オブ・ライフ)♪」をテーマに、国立リハビリテーションセンターの訪問、夕食交流会、国立健康・栄養研究所OGで元全厚生副委員長の池上幸江さんの講演などで学び、語り合いました。また、全労連女性部、国公労連女性協に結集し、日本母親大会やはたらく女性の中央集会にも積極的に参加し、社保庁職員の不当解雇撤回での宣伝・アピールを行ってきました。引き続き、女性部の活動をすすめます。
10.厚生共闘に結集する

 厚生省労働組合共闘会議(厚生共闘)は、1980年12月11日に結成され、32年の歴史を刻んできました。今年度も厚生共闘が結成以来かかげてきた、国民の願う厚生労働行政の確立をめざし、共闘の力で要求の前進を図ります。

11.厚生労働省3組合の連携強化を図る

 2001年1月の厚生労働省の発足以降、3単組(全厚生・全医労・全労働)は一貫して、労働条件の改善や国民の願う厚生労働行政の確立をめざして、協力・共同の取り組みを行っています。2001年2月に本省共闘(厚生労働本省労働組合共闘会議)を結成以来、恒常的な残業改善の要求や期間業務職員の処遇改善などを中心にして、本省交渉を行っています。引き続き、3組合の連携を強化します。

12.国公労連に結集し、要求前進をめざす

 国家公務員に対する政策は、政府全体でつくられます。国家公務員及び独立行政法人等の要求前進ためには、国公労連(=日本国家公務員労働組合連合会)への結集が益々重要です。各支部は、県・ブロック国公への結集を強めます。

13.組織・財政検討委員会を設置する

 昨年に続き、組織・財政検討委員会を設置します。この委員会では、全厚生の財政及び組織・体制課題を集中的に検討します。


[4]組織強化・拡大の取り組み ―― みんなの力で前進させよう

1.最重要課題として全支部が取り組む

 組織強化・拡大は、労働組合の最重要な課題です。全厚生の職場活動の再構築をめざす取り組みを開始して2年。すべての職場での対話をすすめ、歴史的かつ貴重な到達点を築きました。現在(2012年8月31日)までに247人の仲間を迎え入れた到達点は、本省、試験研究機関、社会福祉、社会保険の各部門で対話し、着実に組合員を迎え入れた結果です。この運動をさらに大きなうねりにするために全力を尽くします。
 今年の活動は、取り組み開始の1年目と較べてやや息切れの状態になっています。中心的な役員の活動から、もっと幅の広い活動に変えていくことが必要です。職場に労働組合の風を吹かせ、日常活動と一体で組織拡大を強めることが大切です。改めて、正念場のたたかいを開始した原点に立ちかえり、組織の強化・拡大に取り組みます。

2.対話し、要求闘争と一体で取り組む

 新しい仲間の加入は、運動前進への確信につながっています。各支部は、組織拡大で様々な工夫を行っています。この間数多くの対話を通じて、職場で声をかけられるのを待っていることも実感しました。要求実現のためには、組織拡大が決定的に重要です。大切なことは、要求実現の取り組みを通じて対話を進めることです。非常勤職員の雇用を守り、労働条件を改善させる取り組みを重視し、新しい仲間の加入めざし奮闘します。

3.基本目標
4.具体的な取り組み
5.国公共済会の加入を促進させる

 国公共済会は、仲間同士の「助け愛」の精神で、もうけを目的とせず、「小さな掛金、大きな保障」を実現しています。組合員と家族の福利厚生として、現在約2万5千人が加入しており、安定的な運営がなされています。国公共済会では、新入組合員に対し「ワンコイン共済」のプレゼント(半年間)を行っています。あたらしく組合に加入した仲間が、プレゼント期間に給付を受けるなど、組合員の福利厚生を保障し、団結を強める力になっています。


[5]たたかいの旗印 ―― 重点要求

 1. 国家公務員の賃金について、生活と労働の実態にふさわしい水準に改善するために最大限の努力を行うこと。そのために、労働基本権制約の「代償措置」である人事院勧告制度を踏みにじる「国家公務員の給与の改定及び臨時特例に関する法律」を廃止すること。
 2. 独立行政法人や日本年金機構に対し、給与臨時特例法に基づく賃金等の減額措置を押しつけず、労使自治を尊重すること。
 3. 公務と民間の退職金や関連制度の違いをふまえ、官民比較を唯一の根拠とした退職手当の引き下げを行わないこと。
 4. 公務員労働者の労働基本権について、憲法28条の原則に立ち、ILO勧告など国際基準にそって全面的な回復を実現すること。併せて、公正・中立・民主的な公務員制度を確立すること。
 5. 国民サービスの向上・充実にむけ大幅な増員を行うこと。行政ニーズ・職場実態に応じた定員を確保すること。公務員の総人件費削減を行わないこと。行(二)職の不補充政策を撤廃すること。
 6. 「地域主権改革」による事務・権限の委譲や国の出先機関の廃止は行わないこと。行政サービスの後退、公共性を損なう公務の市場化や民間開放を安易に行わないこと。
 7. 組織・機構の改編にあたっては、情報を公開し、労働組合と十分協議を行うとともに、職員の身分、勤務・労働条件の後退を招かないよう、万全の措置をとること。
 8. 非常勤職員の賃金・労働条件の改善のために最大限の努力を行うこと。非常勤職員の休暇等は、常勤職員と同党の制度に改善すること。期間業務職員制度の運用にあたり、安定的な雇用保障に努め、安易な雇い止めを行わないこと。
 9. 超過勤務を大幅に縮減し、不払い残業を根絶すること。本省庁職場の恒常的で異常な残業実態を改善するため、勤務時間管理の徹底や、超過勤務時間の上限規制を設けるなど、実効ある対策を講じること。超過勤務した場合は、給与法に基づいて超過勤務手当を正規に支払うこと。疲労蓄積の防止、メンタルヘルス対策など、職員の健康と安全を確保すること。パワーハラスメントを根絶するため、職員の安全確保、職場環境整備の観点に立ち、使用者責任を果たすよう指導すること。
10. 社会保険庁職員の分限免職処分の撤回、雇用確保について最大限努力すること。
  • (1)社会保険庁の廃止にともなう不当な分限免職処分を撤回するとともに、使用者責任を果たし、安定した雇用を確保すること。
  • (2)被懲戒処分者の一律不採用とする閣議決定を撤回し、日本年金機構に経験と専門性ある元社会保険庁職員を正規職員
       として採用するよう指導すること。
  • (3)当初、地方厚生局に2年3カ月の有期雇用で採用された非常勤職員について、任期後の安定した雇用を早期に確保すること。
  • (4)北久保和夫さんの分限免職処分を取り消し、厚生労働事務官の身分と権利を回復すること。北久保さんの意向を踏まえ、
      厚生労働省の責任において、日本年金機構の正規職員とすること。
11. 日本年金機構について、国民への信頼を回復し、安定的な業務運営を行うため、業務体制を拡充し、欠員状態を早期に解消するよう厚生労働省として最大限の努力を行うこと。そのために「当面の業務運営に関する基本計画」の見直しを行うこと。
12. 日本年金機構及び全国健康保健協会職員の処遇改善について、厚生労働省として、最大限の努力を行うこと。特に非正規職員の処遇改善を行うこと。継続雇用を希望する有期雇用職員はすべて継続雇用すること。日本年金機構の有期雇用職員(準職員、特定業務契約職員、アシスタント契約職員の更新回数の上限を撤廃すること。
13. 国立更生援護機関の組織再編にあたり、塩原視力障害センターと伊東重度障害者センターを廃止せず、存続・拡充させること。国立施設の機能の充実強化を図るとともに、施設運営に支障をきたさないよう職員の意見を十分に反映させた体制を確保すること。憲法25条を活かし、国立福祉施設の存続発展に努めること。
14. 塩原視力障害センターについて、施設廃止までは利用者が不利益を被らないよう現在の学習環境並びに支援体制を維持すること。また、職員の身分・労働条件の後退を招かないよう万全の措置をとること。人事異動について、塩原で働く職員を最優先して対応すること。
15. 伊東重度障害者センターについて、利用者のニーズに積極的に応えるため、施設の役割・機能を正確に評価し、施設の拡充を図ること。当面、施設機能の維持及び安全確保のために医師の欠員補充を直ちに行うこと。また、看護師の後補充を必ず行うこと。国立障害者リハビリテーションセンター病院の医師・看護師不足を解消するなど、サービス向上、安全確保のための体制を確保すること。
16. 厚生労働省の国立試験研究機関について、憲法25条の理念を活かし、医療並びに公衆衛生の向上を図り、国民の健康と福祉を向上・発展させるために引き続き、国が責任をもって運営すること。
17. 独立行政法人国立健康・栄養研究所と医薬基盤研究所について、国民の命と健康を守るために、国が責任をもって拡充するよう努力すること。2つの研究所の統合について、ビジョンや目的を明確にするとともに、労働組合に情報を公開し、職員・労働組合との合意形成に努め、一方的に作業を進めないこと。
18. 国立医薬品食品衛生研究所の川崎市への移転が進行中であることを踏まえ、今後の計画について、労働組合に随時、情報を公開すること。移転までの期間、老朽化した現在の研究施設について、耐震施設などを含む必要な整備を継続して行うこと。また、移転実行時には、転居を強いられる職員のため、公務員宿舎を必要戸数確保すること。
19. 国立保健医療科学院の教育業務体制について、公衆衛生の第1線に立つリーダーを育成するために、研修機能及び研究機能の維持に努めること。各機関との協力体制を確保し、拡充を図ること。
20. 任期付研究員について、一律的な採用拡大は行わないこと。継続的な研究業務や行政支援業務を遂行する部門は、短期雇用でなく任期のない恒常的な研究職員の配置に努めること。任期付研究員の導入は、研究部門の業務の性格や内容を十分考慮した上で行うこと。任期付研究員の任期後は、任期のない職員として採用する道を開くこと。
21. 研究所に勤務する非常勤職員の業務や技能を適正に評価し、雇用の安定・継続を図るとともに、賃金・労働条件を改善すること。その実現のために、人件費の予算措置を計画的に行うこと。
22. 新たな人事評価制度については、公平性・客観性・透明性・納得性を備えた職員参加、育成重視型の仕組みとし、評価結果は全面開示し、労働組合が参加する民主的な苦情処理シムテムを確立すること。評価結果を直接給与決定に反映する仕組みとしないこと。なお、人事評価制度の実施等にかかわり、全厚生との充分な協議を尽くし、合意のもとで行うこと。
23. 男女共同参画社会の実現をめざし、女性職員の採用と登用の拡大を積極的に推進すること。「女性職員の採用・登用拡大計画」の実効性を高めるために数値目標を各機関・部局ごとに設定させるなど、指導・徹底をはかること。
24. 再任用制度の趣旨を踏まえ、希望者全員の雇用を実現すること。雇用と年金の連携を図る観点から、各機関で対象職員の配置が可能となるよう最大限の努力を行い、円滑かつ公正、民主的な運営が行われるよう指導・徹底すること。また、実効ある制度とするため、定員管理のあり方を含め制度改善を行うこと。
25. 公務における高齢期雇用は、定年延長を基本とし、賃金水準の連続性を保ち、すべての職員の雇用確保、安心して働き続けられる充実した制度を確立すること。職員が健康で意欲をもって働き続けられるよう、職場環境の整備に努めること。
26. 医療、年金、福祉、介護制度の改悪を行わず、憲法25条にもとづき、社会福祉、社会保障の拡充をはかること。


[6]不当解雇撤回の闘いで勝利をめざす

 不当解雇撤回闘争を開始して2年8カ月。人事院公平審査請求は、総仕上げの段階に入りました。夏から秋、年内・年度内まで、処分取り消し判定を早期に出させるための活動に全力を尽くします。併せて、裁判闘争に全力で取り組みます。

1.闘争団の団結を強める

 全厚生闘争団は、全厚生全体を丸ごと闘争団として位置づけています。不当解雇は、社会保険行政を解体し、年金・健保の業務運営を民営化するために行ったものです。国民の願いを踏みにじる攻撃に対して、全厚生が組織をあげてたたかうのが当然です。
 今、39人の当事者を主人公にして元気にたたかっています。国家公務員の大量解雇という歴史上も例がない不当解雇を撤回させるには、粘り強く、国民世論を味方につけて、幅広い共同をつくりあげることです。その肝心要は、全厚生闘争団の団結を固めることです。当事者と所属支部、各県闘争団を基礎にして団結強化、経験交流の機会を積極的につくります。闘争団全体の団結を強めてたたかいます。

2.運動推進のオルグ団づくり

 支援の輪を広げるカギは、オルグ活動を強めることです。不当解雇撤回の活動を推進する力を高めることです。そのためには、当事者とともに多くの組合員が積極的にオルグ(オルガナイザーの略で組織者を意味する)となり、宣伝や要請行動に参加することが決定的に重要です。この秋から、人事院の判定を出させるまで、全国津々浦々に活動を広げるためのオルグ団づくりを進めます。

3.全国展開のために努力する

 全労連の社会保険庁職員の分限免職撤回闘争対策会議が昨年5月に設置され、不当解雇撤回闘争がナショナルセンター規模で取り組まれています。国公労連は、社保庁不当解雇撤回闘争本部を設置し、産別闘争として全力をあげています。全労連、国公労連の組織の力を活かし、支援の輪を全国に広げていくことが大切です。全厚生闘争団として、全県オルグの具体化をすすめ、本部・支部役員の積極的な参加で支援と共同の輪を広げます。

4.人事院宛の署名を取り組む

 人事院公平審査請求は、口頭審理の立証段階の総仕上げに入っています。併せて、総括段階で提出する最終陳述書の作成にも入っています。この最終陳述書を提出すれば口頭審理の終了です。その後、人事院会議で事案を審査して判定を行います。遅くとも年度内には判定を出させるために、取り組みを強化します。その具体化として、人事院宛の分限免職署名の取消し判定を求める署名を国公労連、全労連規模で取り組みます。全厚生闘争団は、その推進役を果たします。

5.中央総決起集会の成功を

 この秋、不当解雇撤回闘争の最大の節目として、11月2日(金)午後6時30分より、中央総決起集会を東京・日本教育会館ホール(座席数800人)で行います。全労連規模の取り組みとして、会場満席(国公労連の大会方針は千人の目標)の参加で成功させるために、都内及び首都圏でのオルグを実施します。全厚生は、当事者の参加、全支部からの代表参加、在京支部からの積極的な参加、OBの参加等、全体で100人の目標で結集します。

6.北久保和夫さんの早期の職場復帰をめざす取り組み

 人事院は昨年9月、北久保和夫さんの懲戒処分(無許可専従にかかる懲戒処分)の取消し判定を行いました。この判定により、分限免職の前提がなくなりました。
 厚労省は、直ちに北久保さんの身分と権利を回復しなければなりません。しかし、厚労省は懲戒処分の誤りを認めず、分限免職の取消しを行っていません。全労連規模で取りんでいる「北久保氏の身分と権利の回復を求める要請ハガキ」の取り組みを強め、広げます。秋の労使交渉でも厚労省の責任を追及し、要求前進をめざします。

7.裁判闘争で、たたかう

 2010年7月に京都地裁に提訴した京都の当事者15人に続いて、昨年12月15日には、北海道、大阪、香川の4人がそれぞれの地裁に提訴しました。京都の裁判は大阪地裁に移送され、1月11日に口頭弁論が始まり、それ以降、各地裁での口頭弁論が続いています。各地の裁判を多くの傍聴者で包囲し、不当・違法な解雇の実態を多くの国民に伝え、支援の輪を広げてたたかいます。


[7]国民本位の公務労働の確立をめざす

1.公務員労働者の誇り

 公務員労働者は憲法15条によって、「すべて公務員は、全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない」と位置づけられています。更に「憲法を尊重し擁護する義務を負う(第99条‐憲法尊重擁護義務)」のが公務員です。国民のために公務(行政)はあり、国民の願いに応えるために日々努力するのが公務員です。行政を国民の立場にたって考え、見直し、改善することは、憲法に基づく公務員労働者の本来の姿です。
 独立行政法人研究所は厚生科学研究を担い、日本年金機構、全国健康保険協会は社会保険行政を担っています。経営形態が変わろうとも、国民のための公務労働であることには変わりません。全厚生は、憲法が公務労働及び公務労働者に要請している基本点を自覚し、誇りをもってあらゆる活動を展開します。

2.「公務員賃下げ違憲訴訟」の取り組み

 「公務員賃下げ違憲訴訟」の訴状では、「人事院勧告に基づかない国家公務員労働者の賃金を減額して、原告らの労働条件につき既得の権利を奪い、一方的に不利益を課すことは、憲法第28条の保障する労働基本件の侵害であり、憲法第72条及び第73条4号に違反するというべきである」と訴えています。8月2日(木)の第1回口頭弁論では、岡村弁護団長が提訴理由を陳述しました。次回第2回口頭弁論(10月29日に決定)では、被告・国による答弁書が提出され、裁判闘争が本格化します。
 改めて、訴訟でたたかう意義・目的は、(1)給与臨時特例法の違憲性を裁判の中で明らかにし、その無効を勝ち取ること。(2)労働基本権制約という無権利状態の下にあって、その代償措置である人事院勧告をも無視する前代未聞の行為が国会で行われたことから、労働基本権回復を視野に入れ、たたかいを通じてその道筋をつけること。(3)賃下げスパイラルを断ち切り、大震災からの復興のためにもすべての労働者の賃上げと安定した雇用確保、内需拡大で景気回復をめざす国民的な運動と一体でたたかうこと。この3点です。この裁判で勝利するには、国民的な世論の後押しが欠かせません。国家公務員の賃下げのねらい、訴訟の意義・目的を学び、事の本質を多くの国民の皆さんに伝え、共感を広げる取り組みが重要です。裁判傍聴行動に結集し、中央・各県で行う宣伝行動に積極的に参加します。東京地裁宛の個人署名、団体署名に取り組みます。

3.労働基本権の全面回復、民主的公務員制度の確立を

 国家公務員制度改革関連4法案は、公務のあり方を大きく変え、しかも重大な問題点を持っています。労働基本権問題では、争議権の回復を先送りし、基本的人権としての労働基本権回復の立場に立っていません。国家公務員法改正法案の内容では、人事行政の公正・中立性の確保が損なわれる危険性があります。法案は、6月1日に衆議院本会議で審議入りし、内閣委員会に付託されたものの実質的な審議は行われず、継続審議になりました。引き続き、憲法とILO基準に沿った労働基本権の全面回復の立場で法案の抜本的修正を要求します。国公労連に結集して運動を展開します。国公労連の作成する討議資料を活用し、職場での学習活動を強化します。

4.高齢期雇用・定年延長に対する取り組み

 公務の高齢期雇用をめぐる動きは、政府が定年延長ではなく、再任用の義務化で対応しようとしています。
 人事院は昨年9月30日、人事院勧告と同時に「定年を段階的に65歳までに引き上げるための国家公務員法等の改正についての意見の申し出」を内閣と国会に行いました。その内容は、(1)65歳まで定年年齢を段階的に引上げる、(2)60歳を超える職員の年間給与は、60歳前の7割に制度設計する等でした。この「意見の申し出」にもかかわらず、政府は有識者による意見交換会を開催し、再任用の義務化に向けた動きを強めてきました。これに対し国公労連は、政府・総務省に対して定年延長の実施を強く要求。それにもかかわらず政府は3月23日、「再任用の義務化」で対応するとした基本方針を一方的に決定しました。今後も国公労連に結集し定年延長の要求を堅持し、公平で納得性の高い制度確立と安心して働き続けられる職場環境の整備を求めます。「再任用の義務化」に関する国家公務員法改正法案の策定にむけて交渉・協議を強めます。

5.退職手当の削減阻止の取り組み

 人事院は、総務省と財務省からの依頼にもとづき退職給付の調査を実施し、その調査結果を3月7日に公表。公務が民間を402・6万円上回るとし、官民均衡の観点から民間との格差を埋める必要があるとの見解を示していました。政府は4月7日、人事院の調査結果を受けて有識者会議を発足させ、7月5日に官民格差の調整は退職手当の支給水準引き下げにより行い、法的措置を速やかに講じるとする最終報告とりまとめました。
 政府は8月7日、退職給付に402・6万円の官民格差があるとして、納得できる合理的な説明もないまま、退職手当の一方的な切り下げを閣議決定。退職後を含めて様々な制約が課せられる公務の特殊性や賃金の後払い的な性格をふまえず、民間水準のみを唯一の理由に機会的に削減する極めて乱暴なやり方です。今後、退職手当の大幅削減は、法案策定を経て国会での法案審議の段階に入ります。国公労連に結集し、国会内外で広く訴え、国会請願署名に取り組み、国会闘争を強化します。

6.裁判闘争をたたかい、権利守ろう

 公務をめぐる裁判闘争は、公務員の権利や公務のあり方、この国の行方に直接かかわる課題ばかりです。労働者の権利を守る裁判闘争は、大衆的な裁判闘争として、運動を広げることが勝利のカギを握ります。公務員労働者の権利にかかわる裁判闘争を全力でたたかいます。具体的には、(1)厚生共闘の仲間である全医労不利益雇い止め是正裁判で勝利をめざすために奮闘します。(2)国家公務員法違反で起訴された2つに弾圧事件(国公法弾圧堀越事件、世田谷国公法弾圧事件)は、日本国憲法と国際人権規約が保障する結社の自由、言論・表現の自由を侵害する政治弾圧であり、許せません。最高裁判所の大法廷回付を実現させ、違憲無罪判決を勝ち取るために奮闘します。

7.「21世紀国公大運動」を発展させる

 「地域主権改革」の「国の出先機関の原則廃止」の課題について、重要局面が続いています。「地域主権戦略大綱」(2010年6月閣議決定)にもとづき、「アクション・プラン〜地方出先機関の原則廃止に向けて〜」(2010年12月閣議決定)は、事務・権限の委譲ありきで議論がすすみ、国民の権利保障の観点はかえりみず、国と地方の適切な責任と役割の分担に関する議論も行われていません。ブロック単位での事務・権限の委譲は、経済産業局、地方整備局、地方環境事務所の3機関を先行して議論をすすめつつ、13機関(都道府県労働局、地方厚生局、地方運輸局、地方農政局、北海道開発局、総合通信局、法務局、漁業調整事務所、沖縄総合事務局、森林管理局)を対象に事務・権限の丸ごと委譲が前提です。
 また、地域主権改革は、道州制の導入と軌を一にしています。この方向は、小さな政府をめざすもので、全国一律に保たれていたものが、地域ごとに分断され、格差が生じることは国の責任と役割の放棄につながりかねません。
 この秋以降、国・地方で様々な動きが予想されます。関西広域連合、九州広域行政機構など地方から地域主権を国に求める流れも活発になっています。道州制基本法案の提出をめざした自民党をはじめ、各政党の動向にも注視が必要です。橋下大阪市長らがリードしている関西広域連合は国の出先機関の廃止の受け皿になることを表明するなど、関西財界の意向に従って地域主権改革を推進しています。「大阪維新の会」が進める大阪都構想もこうした流れを加速させる政治的な動きとして見過ごせません。
 今、東日本大震災で浮き彫りとなった公務・公共サービスの重要性、国の出先機関が果たす役割を検証することが重要です。国民本位の行財政・司法の確立と「地域主権改革」・道州制導入をはじめ、国民・労働者犠牲の「構造改革」路線を根本から変えるために、憲法をくらしと行政にいかす「21世紀国公大運動」の取り組みを軸にして、公務・公共サービスの拡充にむけて国民の理解と共感を広げるために奮闘します。今後の取り組みは、国公労連の方針提起に沿って具体化します。


[8]本省職場で働くルールの確立をめざす

 国家行政機構の中枢である本省で人間らしく働くルールを確立する課題は、行政民主化の課題とも深く結びつく、重要な課題です。

1.長時間残業の改善をねばり強く

 本省職場では一貫して、無定量で恒常的な残業改善の取り組みを進めています。当局も、全省庁一斉のキャンペーンや管理職員の意識を高めたり、業務改善策、休暇取得促進、メンタルヘルス対策を強め、一定の効果はありますが、根本的な改善には至っていません。職員の健康問題にも大きく影響を与えています。
 恒常的な残業をなくすためには、業務量に見合う定員確保が最も重要です。超勤予算が全く不足していることも重大です。時間管理を徹底させ、本省内での働くルールを確立させる運動を本部・支部一体で強めます。
 また、本省共闘(厚生労働本省労働組合共闘会議)の団結を強め、要求前進の取り組みを進めます。

2.霞が関の労働組合と交流し、日常活動を重視する

 本省職場では、恒常的な残業が続く特有の原因も、組合活動上の困難さや悩みも共通しています。本省での組合活動を前進させるために、霞が関の他の組合の経験に学び、交流しながら活動を進めます。東京国公及び霞国公に結集します。5者共闘(国公労連、東京国公、霞国公、単組本部、本省支部)で協議し、組織強化・拡大のための宣伝行動等を実施します。
 また、本省職場での働くルールの確立や抜本的な業務改善を図るには、政策的な解明も必要です。活動を再開する「本省庁対策プロジェクト」(東京国公、霞国公、本省支部、単組本部、国公労連)に参加し、本省組織の要求前進と組織強化・拡大に努めます。

3.非常勤職員・期間業務職員の交流・懇談の場づくり

 この間、本省支部では、非常勤職員部会を確立し、定期的に会議を開催し、非常勤職員のリアルな要求をとらえ、申し入れや交渉を行い成果をあげています。特に、制度学習ランチ会や小規模な座談会を開催。労働条件や制度の基本学習、労働条件の交流で得た知識を生かし、相談にのり、アドバイスをする中で、組合加入につながるなど、多面的な広がりを見せています。要求に応え、学び、交流し、仲間づくりの中で加入拡大がすすんでいます。要求こそ命、非常勤職員の切実な処遇改善に知恵と力を集中する本省支部の新たな活動が前進しています。引き続き、非常勤職員・期間業務職員の交流・懇談の場をつくり、切実な処遇改善、組織強化・拡大のために努力します。本部機能を活かし、活動を前進させます。


[9]国立福祉施設の組織再編・統廃合に対する取り組み

1.組織再編・統廃合に対する取り組み

 政府・厚生労働省は、国立更生援護機関の今後のあり方に関する検討会報告(2009・3・25)に基づき、組織再編を行なっています。その基本方針は、(1)国立施設として持つべき機能の実現(リハセンター中心の機能強化)、(2)各センターの機能の一元化(四類型の予算、組織・定員を一本化)、(3)利用実態等を踏まえた施設配置の見直し(2012年度末で塩原視力障害センター、2014年度末で伊東重度障害者センターを廃止)です。
 これに対し全厚生は、(1)塩原視力障害センターと伊東重度障害者センターを廃止せず存続・拡充させること、(2)組織再編の具体化にあたり、国立施設の機能強化を図るとともに、施設運営に支障をきたさないよう、障害者並びに職員の意見を反映させた体制を確保すること、(3)職員の身分・労働条件の後退を招かないよう万全の措置を取ることを要求しています。引き続き、この基本要求を堅持し、障害者の権利保障及び障害者福祉の拡充の立場で全力を尽くします。

2.塩原視力障害センター廃止に伴う職員の雇用を守るたたかい

 塩原視力障害センター(2012年度末で廃止)で働く職員の雇用確保は、最重要課題です。7月12日に実施した施設管理室長交渉では、「人事異動について、塩原で働く職員を最優先して対応すること。具体的には転勤において、職員の意向や希望を十分に尊重し、最後まで万全の対応を行うこと」を要求。これに対し室長は「退職勧奨せず、職員をきちっと受け入れる立場でやっていく。(塩原の職員の)要望を踏まえて、できる限りの努力を行う」と回答しました。いよいよ今秋が重要な段階です。この活動は、伊東重度障害者センターでの今後の取り組みにも直結します。すべての職員の雇用確保の取り組みに全力を尽くします。

3.誇りと働きがいある職場をつくる

 全厚生は、これまで施設機能の充実や障害者に優しい施設づくりと職員の処遇改善を一体で運動を進めてきました。政府・厚生労働省が進める減量・効率化施策及び組織再編は、国立施設総体の機能・役割を縮小方向に向かわせ、利用者サービスの低下はもとより施設運営にも支障をきたす状況です。国立リハセンターでは医師不足等から機能強化どころか維持すら危うくなっています。誇りや展望のもてる国立福祉施設、働きがいある職場をつくるために、厚社連(全厚生社会福祉支部連絡協議会)の役割発揮が必要です。昇格・諸手当などの処遇改善や体制強化など、現場から施設拡充のために全力を尽くします。

4.存続発展を求める運動の継続を!

 厚社連が提唱した「国立福祉施設の存続発展を求める会」はこの間、障害者福祉の後退を許さず、塩原・伊東の廃止反対・存続を求めて国会請願署名を取り組み、国会議員要請や国会行動などの活動を展開しました。今後の方向について、「活動を継続するための基本方向、会のあり方などについて、協議・検討します」(昨年の大会方針)、「会の体制整備と今後の運動を検討します」(2012年春闘方針)にもとづき、地道に活動を継続させる基盤をつくり、引き続き、国立福祉施設の存続発展をめざします。

5.障害者の権利保障及び障害者福祉を拡充させる

 政府は6月20日、参議院本会議で「障害者総合支援法案」を民主・自民・公明の賛成多数で可決・成立させました。この間、障害者自立支援法違憲訴訟団と国(厚生労働省)は、「自立支援法を廃止し、応益負担も速やかに廃止。新たな総合福祉法制を創設する」で合意。内閣府に設置された「障がい者制度改革推進会議・総合福祉部会」で議論を積み重ねてきたにもかかわらず、法案内容は自立支援法を延命させる「改正案」でした。新法に問われた「障害者の基本的人権の保障」という権利法としての位置づけが「支援法」のままの見直しにとどまり、かつ法文上で「応益負担」が残され、応益負担廃止の根本課題は解決していません。引き続き、障害者の権利保障及び障害者福祉の拡充を求め、障全協(=障害者の生活と権利を守る全国連絡協議会)などの取り組みに結集します。


[10]厚生科学研究を拡充させる取り組み

1.政府の科学技術政策の動向

 第4期科学技術基本計画(2011・8・19閣議決定)は今後5年間、「震災からの復興、再生、災害対応の強化等に関わる政策を幅広く含め、他の重要政策との一層の連携を図りつつ、我が国の科学技術政策を総合的かつ体系的に推進する」政策です。特に、「科学技術とイノベーションを一体的に推進することにより、様々な価値創造をもたらすための新たな戦略と仕組みを構築する」と位置づけています。しかし、いくら科学技術の重要性を際だたせても効率化、重点主義であり、調和のとれた政策にはなっていません。
 今、公衆衛生、厚生科学研究の果たすべき役割・使命は極めて重大です。国民の願いに応える研究所・研究体制をつくるため、研究所の労働組合としての役割発揮で奮闘します。

2.厚生科学研究を拡充させる

 現在、厚生労働省の試験研究機関は4機関が国立試験研究機関(国研)、2機関が独立行政法人です。殆どが独立行政法人となっている他省庁とは大きく異なっています。4つの試験研究機関について当局は、「(1)政策研究所、(2)研修機関、(3)緊急時に国の責任において直接実施すべき健康危機管理を担っている等の理由により、独立行政法人化されなかったもの。現在も状況の大きな変化はないと考えている」と回答。現行体制を維持する立場です。4つの国研と2つの独法は、医療や公衆衛生の向上を図り、国民の健康と福祉を向上発展させる厚生科学研究を担う点で共通しています。
 誇りと働きがいの持てる研究所・職場をつくるために、研究現場から必要な要員と予算確保を要求します。研究条件や研究環境の改善、研究者・職員の処遇改善を要求します。また、研究所の民主的な運営のために努力します。国立医薬品食品衛生研究所の神奈川県川崎市への移転計画に対する要求実現の取り組みを本部・支部一体で進めます。人権侵害行為であるパワーハラスメントを根絶させるために力を尽くします。

3.独立行政法人での労働組合の前進を

 独立行政法人改革が続いています。政府は1月20日、「独立行政法人の制度及び組織の見直しの基本方針」を閣議決定。国立健康・栄養研究所及び医薬基盤研究所は統合し、研究開発型の成果目標達成法人とする、併せて医薬基盤研究所は創薬支援を中心的に取り組むと位置づけました。閣議決定の具体化した「独立行政法人通則法の一部改正法案」は、通常国会で継続審議。創薬支援の体制は、「医療イノベーション5か年戦略(医療イノベーション会議・2012・6・6)」で「オールジャパンでの創薬支援体制として、医薬基盤研究所が中心となる創薬支援ネットワークを構築する」方針です。
 独立行政法人の制度及び組織の見直しに対し、独法研究所が国民の命と健康を守るために、国の責任で拡充するよう要求します。「通則法改正案」の今後の法案審議に対し、国公労連に結集して国会対応を強めます。統合方針では、ビジョンや目的を明確にさせ、労働組合に情報を公開し、職員・労働組合との合意形成に努め、一方的に作業を進めないよう支部・本部一体で取り組みます。
 独立行政法人の両支部は、国家公務員の大幅な賃金削減と同様の措置を提起した当局に対して要求書を提出。(1)憲法違反である国家公務員の賃金削減を踏襲する重大問題、(2)賃金・一時金の大幅削減という不利益変更を2年間にわたり決定する提案は認められない、(3)不利益不遡及の原則の基本点で追及。今秋、来春闘での賃金・一時金交渉に引き継ぎ、賃金改善をめざします。また、医薬基盤研究所では、労働基準法、労働組合法に基づく労使関係の基本ルールを確立するために引き続き努力します。

4.厚研連の活動を強化する

 厚研連(全厚生試験研究機関支部連絡協議会)は、各試験研究機関・職場の状況や課題を交流し、要求を練り上げ厚生科学課長交渉を準備します。情報交換と交流、要求・政策活動を重視します。特に、国立試験研究機関及び独立行政法人研究所について組織再編の動向や移転等の情報を積極的に収集します。また、厚研連交流集会の準備を始めます。これらの活動を推進するため、厚研連委員会の活動強化に努めます。


[11]社会保険行政の安定した業務運営をめざす取り組み

 年金・医療制度は、社会保険行政の中核です。憲法25条を活かし、国の責任で制度を拡充し、安定的な業務運営を行う‐これこそ、国民みんなの願いです。日本年金機構と全国健康保険協会で、要求闘争を前進させることは、その期待に応える道です。とりわけ、事業運営が民営化された下で、行政民主化の立場から、たたかいを構築することが大切です。

1.団体交渉で要求前進をめざす

 職員が安心して働ける環境、職員が誇りを持って働ける職場をつくることは、安心の健保・年金制度を確立する課題と結びついています。私たちの要求は、安定的な業務運営や公平・公正な事業運営、窓口サービス等の拡充をめざす、国民の願いを実現するためにも必要です。
 働くルールの確立、労働条件の改善、有期雇用職員の処遇改善及び希望する職員の継続雇用のために、団体交渉を積み重ね、要求前進をめざします。全国健康保険協会では、支部交渉、本部交渉で要求前進をめざします。日本年金機構では、ブロック本部との交渉(各支部対応)、本部交渉を通じて要求前進をめざします。
 また、日本年金機構では、安定的な業務運営を行うために正規職員の増員が必要です。そのためには、「当面の業務運営に関する基本計画」(2008・7・29閣議決定)の見直しが不可欠であり、厚労省との交渉で追及します。
 こうした社会保険関係職場の要求闘争を前進させ、社会保険各制度にかかる要求・政策活動を強化するために、社会保険支部協議会の活動を強化します。

2.賃金・一時金の継続交渉で要求前進をめざす

 春闘から夏期闘争まで、国家公務員の大幅な賃金削減と同様の措置を提起してきた日本年金機構及び全国健康保険協会との団体交渉が展開されました。提案内容の違いはありますが交渉の基本課題は変わりません。(1)憲法違反である国家公務員の賃金削減の問題点をそもまま踏襲する重大な問題、(2)賃金・一時金の大幅削減という不利益変更を2年間にわたり決定する提案は認められない、(3)不利益不遡及の原則を守らせることの3点で激しく追及。交渉及び労使協議は2回、3回と継続して実施しました。提案内容を変更しない当局の姿勢に対し、労使合意には至らず、今秋、来春闘の賃金・一時金交渉での継続課題です。引き続き、賃金改善のために奮闘します。なお、全国健康保険協会とは、「6月期の賞与において、労働基準法や労働契約法及び判例等を踏まえ、不利益遡及は行わない」との労使合意を確認しました。

3.人事異動のルールの民主化をめざす

 全国健康保険協会及び日本年金機構は、広域人事を前提に職員を採用しています。事業運営や組織の機能の確保・向上において人事異動がやむを得ない場合がありますが、基本的には生活環境を異にする人事異動は極力少なくするべきです。同時に、可能な限りの手当をする必要があります。(1)人事異動にかかる基本的なルールの確立をめざします。(2)単身赴任手当の増額を求めます。(3)遠距離通勤手当の新設を求めます。

4.年金・医療保険の制度改善をめざす

 日常的な業務を通じて、被保険者・受給権者の要求・願いを把握し、具体的な改善の方策を研究・検討することは、実務に携わっているものに課せられた使命です。国民的要求の実現と私たちの誇りを取り戻すため、(1)年金制度及び運営組織のあり方の研究活動をすすめます。(2)医療保険のあるべき姿と改善方向の研究活動を進めます。

5.労働者の資質の向上をめざす

 新規採用時の研修が十分に行われず、また、日常的に「教え、教えられる」環境にないため、業務に習熟することが困難な状況が続いています。本来、業務研修などは、使用者が行なう最低限の責任です。しかし、年金機構ではそうした責任が放置され、結果として被保険者・受給者に不利益が生じかねない状況にあります。
 労働組合として、一人一人の組合員の「知識を高めたい」「いろんな経験を聞きたい」「資質を高めたい」などの要求を実現するため、当局に研修の実施を要求するとともに、自主的に行う「勉強会」などの開催を支援します。


[12]憲法9条と25条を活かし、社会を良くしよう

1.たたかいの土台に憲法を

 憲法を守り、活かすには、憲法に確信をもつことが大切です。私たちは主権者として、借り物ではなく自分自身の言葉で、憲法を語ることが大切です。憲法は、職場や社会に根ざしています。憲法がこの社会でいかに積極的な役割を果たしているかを探求することが重要です。暮らしや働き方から教育・政治にいたる様々な課題に対し、憲法を「モノサシ」にして考え、見直すことです。
 憲法理念の実現のために何が妨げなのか、いかにすれば実現するかを深めます。そして、たたかいの土台に憲法を据えて、要求の前進をめざします。

2.憲法9条と25条の相互の価値を探求する

 平和なくして、社会保障の前進・発展はありえません。この相互の関係は、普遍的であり、見事に調和しています。すなわち、日本国憲法の第9条と第25条、平和探求の理念、社会保障の原点となる理念は密接に結びつき、輝いています。
 「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する(憲法前文)」は、そのことを見事に表現しています。第2次世界大戦(戦争)・アジア・太平洋戦争の多くの犠牲と深い反省に立ち、この理念が築かれました。改憲勢力はこの双方を邪魔者扱いし、「戦争する国」づくりと「福祉・社会保障の変質・縮小・解体」を同時にすすめています。全厚生は、憲法9条と25条の意義や相互の価値を探求し、あらゆる機会を生かし、語る活動をすすめます。9条の会の取り組みに参加します。

3.草の根から、平和と核兵器廃絶をめざす

 戦争のない平和な世界をめざし、軍事同盟や米軍基地に反対する運動が国内外で大きく広がっています。広島・長崎の被爆から67年余りを経た今も世界で2万発以上の各兵器が蓄積・配備されている下で、核兵器廃絶の実現をこれ以上遅らせてはなりません。唯一の被爆国であり、憲法9条を持つ日本の役割は、被爆の実相を世界に伝え、平和、核兵器廃絶の国際的貢献の先頭に立つことです。この崇高な使命を自覚し、草の根からの運動をすすめます。3・1ビキニデー行動、5・3憲法集会、2013年国民平和大行進、2013年原水爆禁止世界大会、日本平和大会等の成功のために積極的に参加します。

4.今こそ、「原発ゼロ」をめざす共同を広げよう

 「原発再稼働反対!」の声が毎週金曜日、首相官邸前での大合唱になり、全国各地で怒りの抗議行動が広がっています。この行動を強大なうねりにしたのは、現在日本に54基ある原発がすべて停止し、原発ゼロの状態になった今年5月4日以降、野田政権が関西電力大飯原発(福井県)の再稼働を強行したからです。さらに国民の中に重要な変化が生まれています。未曾有の大震災、人災としての原発事故以来考え続けている「今と未来にいかに生きるか」という根源的なテーマを問い、自発的に行動に踏み出していることです。今こそ、福島原発事故の当事国として、原発依存のエネルギー政策から脱却するため、真剣に考え、学び、「原発ゼロ」をめざす広範な行動等に結集します。

5.社会保障を再建・拡充させる運動に結集する

 憲法第25条を活かす社会保障の再生・拡充は、国民の願いです。大震災の復興でも生存権保障、社会保障の拡充が求められています。社会保障構造改革の問題点を国民的に明らかにし、社会保障を再建・拡充させる国民的な運動に結集します。中央・各県の社会保障推進協議会に結集して共同の取り組みを広げます。現在8都道府県で結成されている「安心年金つくろう会」(=国の責任で安心して暮らせる年金制度をつくる連絡会)の運動を推進し、新たな県での結成をめざし、共同した取り組みをすすめます。

6.今こそ出番‐社会保障講師団をつくり、活動する

 いよいよ社会保障講師団の出番です。政府・財界による社会保障の解体攻撃に対し、憲法25条を活かし、社会保障の再建・拡充をめざす国民的な共同を広げるために社会保障講師団をつくり、活動を進めます。
 4月21日に都内で開催した社会保障講師団学習会では、(1)社会保険の仲間は年金講師団の経験を活かし、さらに社会保障論、社会保障政策を深めてバージョンアップする、(2)社会福祉の仲間は、障害者福祉から社会福祉・社会保障全体を視野に入れて深めていく、(3)研究機関の仲間は公衆衛生、保健衛生、厚生科学研究、環境問題等のテーマで接近する、(4)本省の仲間は、担当分野から出発し、厚生労働行政全体を俯瞰し、行政体制確立の課題から問題提起する等、幅広い講師団づくりの条件や可能性を示しました。
 社会保障の真の発展をめざして当面、次のような活動を展開します。(1)常に学習の先頭にたち、深く学びます。(2)日常会話、対話、懇談などの中で、社会保障講師団の自覚をもって話します。(3)会議や学習会で社会保障講師団の自覚をもって、さすがと言われる発言をします。(4)街頭演説や訴える場があれば、社会保障講師団の自覚をもって弁士を引き受けます。(5)身近な学習会の講師を引き受けます。(6)講師団の活動を交流し、レジュメをつくり、レベルを高めながら活動をすすめます。(7)講師団の中での研鑽、社会保障論をさらに深めます。

7.労働者・国民の願いに応える社会をめざす

 政治の行方は、私たちの暮らしに直結します。雇用破壊をやめさせ、平和な社会、社会保障の充実をはかるには、政治の中身をかえることです。政治情勢は、解散・総選挙に向かっています。全厚生は、憲法が保障する国民の政党支持、政治活動の自由を守り、職場でも地域でも家庭でも、政治を語ります。全厚生は、国民・労働者の切実な願いや要求が届く民主主義を大切にした政治を実現させるために奮闘します。



全厚生第76回定期大会

と き   2012年9月15日(土)午前10時受付 10時30分開会
        16日(日)午後3時閉会
 
ところ   熱海「水葉亭」
   〒413‐0002 静岡県熱海市伊豆山190‐1
   TEL 0557‐81‐7145 / FAX 0557‐82‐2650


Back  to HOME