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◆号外 (2010年9月1日付)◆
全厚生第74回定期大会
2010年度運動方針(案)
[1]たたかいの到達点と基本課題

 全厚生はこの1年間、労働者の誇りと希望をもって、組織の総力をあげてたたかってきました。全厚生労働運動の中でも、特別に厳しい時期の1年間を振り返り、たたかいの到達点を明らかにします。

1.「道理ある要求」を掲げ、たたかう

 厚生労働行政の担い手である全厚生は、構造改革の攻撃に常に対峙してきました。社会保険庁改革は、2004年夏から始まり、6年に及ぶたたかいになっています。改革のねらいは、社会保険行政の民営化です。この公務破壊、雇用破壊の攻撃に真正面から立ち向かうために、最重要課題に位置づけました。さらに、民営化された日本年金機構の中でのたたかい、国立福祉施設の組織再編・統廃合の課題での取り組み、国立試験研究機関、独法研究所の再編課題での取り組みなど、構造改革の嵐の中で、憲法25条を活かす道理ある要求を掲げ、全力でたたかってきました。

2.たたかいの前進めざし奮闘

 たたかいの渦中にあるからこそ、その到達点を確認することが大切です。その第1は、全厚生の基本組織を維持してきたことです。構造改革は、公務破壊の推進とともに、行政の担い手・職員を削減することと一体不可分で、公務労働運動を壊しにかかってきました。激しい攻撃の中で、全厚生は、組織的な後退を余儀なくされています。しかし、各職場での基礎組織と本部機能を維持していることが重要な到達点です。第2は、攻撃に対し、受け身にならず、果敢にたたかい、新たな体制を築き、要求前進の取り組みを開始していることも重要な到達点です。社会保険部門は、ブロック単位の支部に再編し、県協議会、職場分会を構成員として、活動をすすめています。これらは、仲間たちの期待に応え、たたかいを継続・発展させる土台です。

3.不当解雇撤回闘争に全力をあげる

 昨年末、長妻厚生労働大臣は、社会保険庁職員525人もの分限免職(解雇)を強行しました。国の行政機関の廃止に伴う解雇は、実に45年ぶり、許されざる暴挙です。全厚生は1月18日、人事院に対し、全厚生の組合員31人(最終39人、全体では75人)が公平審査請求(不服申し立て)を行いました。さらに7月23日、15人の組合員が分限免職処分の取り消しを求めて、京都地方裁判所に提訴しました。この構えと対応こそ、たたかいの到達点です。まさに、「たたかいはここから、たたかいは今から」です。この到達点を踏まえ、不当解雇を撤回させるまで、たたかいを発展させることが重要です。

(1)大会後〜年末までのたたかい
 2009年8月、社会保険庁廃止を前にして、歴史的な政権交代が実現しました。全厚生第73回定期大会では、民主党政権の下で、日本年金機構の設置凍結の要求を確立。国会議員要請を緊急に取り組み、各支部も独自で地元選出議員への要請を行い、奮闘しました。しかし、長妻厚生労働大臣の「熟慮」(10・8)の結果、民主党のマニフェスト(日本年金機構の廃止で歳入庁)の方向とは裏腹に日本年金機構の設立方針を踏襲。年末に向かい、たたかいは大詰めの段階となりました。このままでは、大量の分限免職処分が出る可能性が強くなる下で、厚生労働大臣に対し、分限免職回避の努力を尽くすよう、要求行動を徹底的に強めました。全厚生はもとより、厚生共闘、国公労連、安心年金つくろう会の力をフルに活かし、厚生労働省前行動を展開。当事者の手記も公表し、宣伝カーから直接訴えるなど、事の重大性・緊急性を鮮明にして取り組みを強化しました。

(2)不当解雇撤回のたたかいを展開
 仲間の人生が踏みにじられ、生活と権利が一瞬にして壊された不当解雇が年末に強行。これに対し、2010年、年明けから、不当解雇撤回のたたかいを開始しました。公平審査請求(1・18)、全厚生不当解雇撤回闘争団の結成(3・13)、不当解雇撤回闘争支援愛媛共闘会議の結成(4・28)、全厚生闘争団を支える会の結成(5・24)、全国弁護団会議(第1回=5・9、第2回=8・2)、京都地方裁判所に提訴(7・23)に至るまで、支部・本部の取り組み(団結・たたかい)が背景となって、現在の到達点を築いています。
 この間、中央でも地方でも、当事者(本人)をたたかいの主人公に、たたかいの主体である全厚生の決意を示し、支援の輪を広げてきました。また、不当解雇撤回闘争は国公労連の最重要課題に位置づけられ、闘争財政は国公労連全体で支える体制を確立しました。

4.日本年金機構での労働組合運動を開始して8か月

 日本年金機構での労働組合運動を開始して、8か月。労働条件の改善、業務運営の体制確保をめざし一歩一歩、取り組みをすすめました。就業規則に典型的にみられる管理的、威圧的な組織運営方針の下にあって、職場からの取り組みを重視しました。特に、労働基準法の改正に伴い、時間単位の年休取得(5日以内)を実現させる取り組みは、職場からの要求行動を背景にして、本部交渉で要求実現を迫りました。さらに、大量の欠員、相次ぐ退職者、広域異動など、業務混乱の要因を指摘して、業務体制の確保を迫りました。併せて、指導・監督の立場にある厚生労働省に対しても要求しています。これらの課題を解決させるには、日本年金機構での労働組合の前進が不可欠です。今大会では、新たに社会保険支部協議会の体制と運動方針(7頁〜)を確立して、たたかいを強化します。

5.国立福祉施設の組織再編・統廃合に対するたたかい

 国立更生援護機関(国立社会福祉施設)の再編成・統廃合(案)は、総合的な見直し・再編であり、国立施設の今後のあり方を示すものです。この間、全厚生は、再編成(案)に対し、障害者の権利保障及び障害者福祉の拡充の立場にたち、現場の声や意見を反映させるため努力しました。特に、「塩原視力障害センター」及び「伊東重度障害者センター」の統廃合・廃止(案)の一方的な具体化を行わないことを要求し、職場からの上申行動、施設管理室への申し入れ、交渉などを実施してきました。しかし、厚生労働省は、塩原は2012(平成24)年度末、伊東は2013(平成25)年度末を目途に廃止する基本姿勢を変えていません。当面、塩原視力の廃止を前提にした入所者募集の停止を公表する時期が迫る中、7月の全国支部代表者会議等を踏まえ、塩原、伊東の課題と併せ国立8施設全体を視野に入れ、障害者の権利保障や障害者福祉の拡充の立場に立ち、全厚生全体で運動をすすめることを意思統一。この間すでに活動をすすめてきた「塩原視力障害センターの存続を求める会」の運営に学び、「国立福祉施設の存続発展を求める会」を立ち上げると共に、自治体要請や地方議会要請を具体化してきました。
 再編成・統廃合(案)は、政府の減量・効率化方針に沿ったものです。このたたかいには、対抗軸となる政策を示すことが必要です。職場の団結を大切にし、厚社連を軸にした要求・政策活動を一層強化しなければなりません。さらに、国立福祉施設の意義と役割を国民的にも明らかにして共同を広げ、粘り強くたたかうことが重要です。

6.厚生科学研究の拡充めざし粘り強く取り組む

 試験研究機関、独立行政法人研究所は、国立予防衛生研究所(現在の国立感感染症研究所)の移転・再編問題、国立公衆衛生院(現在の国立保健医療科学院)の移転・再編、国立健康・栄養研究所の独立行政法人化及び、公務員型から非公務員型への移行、国立医薬品食品衛生研究所大阪支所の廃止と医薬基盤研究所の設立など、組織再編、統廃合が行われてきました。こうした情勢の下、全厚生は一貫して、医療並びに公衆衛生の向上を図り、国民の健康と福祉を向上・発展させる厚生科学研究をめざし、かつ各研究所の民主的な運営を求めて、労働組合の役割を発揮してきました。この基本を堅持して、粘り強くたたかうことが求められています。

7.「安心年金つくろう会」の活動を広げてきた

 2008年5月28日に結成した「安心年金つくろう会」(=国の責任で、安心して暮らせる年金制度をつくる連絡会)は、老後を安心して暮らせる年金制度を確立するという、旬の課題を担う組織です。県段階では、岐阜・愛知・香川・愛媛・京都・東京で県連絡会が結成され、活動を広げる下地をつくっています。中央では、宣伝行動を定例で行っています。「安心年金つくろう会」は、国民的な共同を広げる組織です。併せて全厚生の奮闘次第で、不当解雇撤回への支持を広げ、日本年金機構での問題点を明らかする上でも頼りになる組織です。運動をさらに広げるために、県段階での組織づくりを粘り強く行うことが求められています。

8.運動前進めざし、弱点を克服して、展望を切り拓こう!

 1年間をふり返り、新たなたたかいにチャレンジします。活動の前進面を活かすとともに弱点を克服して、展望を切り拓く1年にしようではありませんか。

 (1)要求確立は、たたかいの出発点です。すべての支部で、職場を基礎に要求づくりをすすめます。労働条件、労働環境をチェックし、全ての職場で労働条件の改善の課題を鮮明にします。活動は、「みんなで討議し、みんなで決め、みんなで行動(実践)する」ことを重視します。

 (2)直面する全厚生の基本課題を前進させるには、政府の基本方針や閣議決定の誤りを質し、厚生労働行政を憲法25条の活かす方向で、共同を広げることが重要です。そのためには、職場の団結を基礎にして、組織内での合意形成をより丁寧に行うことが大切です。

 (3)不当解雇撤回は、最重要課題です。解雇は、労働条件の最も過酷な切り下げです。分限免職処分(解雇)に対して組織の総力をあげるのは、労働組合の原点のたたかいだからです。「一人はみんなのために、みんなは一人のために」を合い言葉に、たたかう体制を強化して取り組みます。

 (4)非常勤職員を主人公にした取り組みを重視します。本省支部は、8月の人事院勧告後に非常勤職員を対象にして、労働条件問題で昼休み学習会を呼びかけ、50人の参加で大成功。職場の現状をリアルに把握し、労働条件改善や仲間づくりの出発点となりました。大切なことは、具体化したことです。一歩一歩、取り組みを積み重ねることが重要です。

 (5)ここ数年、社会保険庁改革の課題に全力をあげてきました。特に社会保険各支部では役員体制を継続させてきました。今後は、組合活動を次につなげ、発展させなければなりません。組合活動を次の世代に確実にバトンタッチする、最も重要な仕事に本格的に取り組みます。

 (6)組織人員はこの間、大幅な減少を余儀なくされています。この事態は、深刻です。組織的な後退は、要求前進の力を弱めます。さらに、専従役員や書記局体制にもストレートに反映するからです。組合員の減少傾向に歯止めをかけるには、すべての支部で組合員の加入をすすめることです。要求実現の取り組みと一体で、組織の強化・拡大につながるように追求します。この課題は待ったなし、正念場の課題です。今年1年、組織の強化・拡大に全力をあげて取り組みます。→組織強化・拡大の方針は、[10]を参照

[2]歴史の節目にふさわしいたたかいを

1.今の時代をとらえるー歴史的な変革の時代

 今、世界も日本も大きな歴史的な変化の時代に入っています。その内容は、20世紀後半から21世紀初頭にかけて、猛威をふるってきた「新自由主義」路線が、貧困や格差の拡大を引き起こしたこと。市場原理を徹底して、経済の効率性のみ追い求める政策が、社会の隅々に歪みをつくってきたこと。そして、この「新自由主義」路線に対し、世界の労働者・国民の粘り強いたたかいが展開されていることが特徴です。中南米でも、ヨーロッパでも、アフリカでも、そして、この日本でも社会を変える歴史的な変化がつくりだされているという点です。まさに、歴史的な変革の時代です。
 特に日本では、「新自由主義」路線が強行された結果、急激に貧困と格差が拡大し、人間らしい生活が根底から脅かされています。雇用破壊と社会保障解体によって、国民生活が深刻な危機に陥っています。労働者・国民の怒りは、昨年秋の総選挙で、政権交代を実現させました。これは、主権者国民が、選挙によって政権交代を成し遂げるという、歴史的・画期的な意義をもつものです。しかし、政治の中身を変える事業は、一直線にはすすみません。現政権が、国民の期待を裏切れば、良識ある国民の審判が必ず下ります。この夏の参議院選挙結果を見れば明らかです。国民の世論と運動によって、希望のもてる政治、政治の中味をかえるために、引き続き、奮闘しなければなりません。

2.公務労働運動の真価を発揮して、たたかう

 公務労働は、この国の政治のあり様と一体です。国民の期待を裏切り、構造改革を推進する下では、国民生活の安全・安心は守ることはできません。公務員の総人件費2割削減、地域主権戦略大綱にもとづく国の出先機関改革、労働基本権回復と公務員制度改革などは、国民生活とも直結します。これらの課題は、2011年の通常国会に向けて、正念場を迎えます。
 私たちの旗印は、@定員合理化・純減計画の中止・撤回、国民本位の行財政・司法を支える体制の確立、A地方自治の本旨を歪める「地域主権改革」、国の責任を放棄する道州制の導入反対、B労働基本権の回復、中立・公正・効率的な行政を担保する民主的公務員制度の確立、C社会保障や公務員の総人件費削減など国民・労働者犠牲の「構造改革」路線の根本的転換です。憲法をくらしと行政に活かす「21世紀国公大運動」路線をたたかいの中に位置づけ、国民との対話を重視して、たたかうことが重要です。
 とりわけ、公務員制度改革が加速し、労働基本権回復が現実の課題となっています。国家公務員法「改正」案は、第174通常国会で廃案となりました。しかし、審議の中で政府は、労働基本権を付与したうえで、交渉によって給与を含む総人件費を適切に削減していく考えを示しました。さらに、6月に開催されたILO第99回総会で細川厚生労働副大臣は、「日本政府は、労働基本権の付与を目途に検討を加速し、次期通常国会に関連法案を提出するよう全力をあげる」と表明。労働基本権の制度設計は、公務員制度全般にわたる改革の検討と一体ですすむことが濃厚です。また、公務員削減を旗印にしている「みんなの党」の動向も無視できません。今こそ、公務労働運動の真価を発揮する時です。この課題を学び、深め、世論への働きかけを強めることが重要です。

3.憲法25条を活かし、人間らしく生き、働き続ける社会へ

 構造改革によって壊された雇用、暮らし、社会保障、地域社会を再び取り戻し、元気な姿にもどすこと、これは国民共通の願いです。貧困な社会を変え、生活危機を突破するためには、社会保障のたたかいを前進させることです。その担い手は、労働者・国民です。
 とりわけ労働組合には、持続的にたたかい、かつ共同を広げる推進者の役割が期待されています。憲法25条を活かす社会保障制度の再建は、年金、医療、介護保障、生活保護などを含む総合的な政策として練り上げ、国民・労働者の総意でつくりあげる大事業です。構えを大きく、新しい福祉国家をつくる展望を持って、意気高くたたかいます。
 いま、無権利で過酷な労働現場で働く労働者が、一人でも入れる地域労組(ローカルユニオン)に参加し、元気にたたかっています。残業代未払い、有給休暇を取らせない、社会保険未加入など、劣悪な労働現場から、勇気を出して現状を告発し、たたかっています。
 人間らしく生き、働くために、労働組合の出番です。なぜなら、この課題を真正面に据えてたたかう組織は、労働組合以外にはありません。働くものが要求を実現する唯一の力は、団結の力。労働者はたたかってこそ、人間らしい生き方ができるのです。労働者の働く権利と社会進歩のために、新たな歴史を築こうと日夜奮闘している勇気ある仲間たちと思いを共有しながら、たたかいます。

4.全厚生運動の原点に立ち、国民の願う社会保障行政をめざす

 1946年4月20日に結成された全厚生(当時は、厚生省職員組合)は、今年(2010年)、結成64周年を迎えました。全厚生は結成当初から、社会保障闘争の分野で重要な役割を担ってきました。1954年、吉田内閣がすすめた再軍備策動に反対し、社会保障を守るための行動を起こした歴史は、全厚生運動の原点です。
 そして、労働条件の改善と共に、厚生労働省(旧厚生省)で働く職員で組織された労働組合として、一貫して行政の民主化、社会保障を守るたたかいを重視して取り組んできました。全厚生規約第3条は、「社会保障の確立のために行政の反動化に反対し、わが国の平和と民主主義の確立に寄与する」と記しています。これは、行政民主化のたたかいを積極的に位置づけている証です。さらに、社会保障を守る共同のたたかいの一翼を担い、中央社保協(=中央社会保障推進協議会)をつくる上で一定の役割を果たした事実は、先輩たちの重要な貢献です。全厚生運動の歴史と原点を知り、たたかいを一歩一歩、着実に前進させていきましょう。
 憲法15条は、公務員を全体の奉仕者として位置づけています。また、第99条によって、公務員は憲法を尊重し擁護する義務を負っています。これは、極めて重要な規定です。
 全厚生はこの憲法の条文を踏まえた上で、憲法25条を行政に活かすために、「何のため、誰のため」に厚生労働行政があるかを真剣に問い続け、国民の願いに応える厚生労働行政の確立をめざし奮闘してきました。今後とも、この立場を全厚生運動の基調に据えて、考え、行動し、知恵と力を結集します。今の課題は、社会保険行政の解体・民営化攻撃の本質を明らかにし、社会福祉の再編成や厚生科学研究のあり方を問い、憲法25条を活かす厚生労働行政を再生させることです。9条改憲がねらわれている下で、歴史的な使命を受け止め、その役割を発揮する瞬間(とき)です。ここに、全厚生の存在価値があるのです。

[3]団結と組織の力を発揮して、たたかう

1.すべての部門(職域)で活動を強化する

 全厚生は、すべての厚生労働省関係機関に働く職員でつくる労働組合です。現在は、厚生労働本省、地方厚生局、試験研究機関、独立行政法人研究所、社会福祉施設、日本年金機構、全国健康保健協会で組織しています。これらのすべての部門の要求前進のために、全力を尽くします。各部門の取り組みをすすめるために、各協議会の活動を強化します。
 (1)本省協議会
 (2)厚社連(=全厚生社会福祉支部連絡協議会)
 (3)厚研連(=全厚生試験研究機関支部連絡協議会)
 (4)新たに社会保険支部協議会の体制を確立し、本格的にたたかいを開始します。

2.公務部門で、要求前進をめざす

 本省、社会福祉、試験研究機関は、国家公務員労働者として、公務部門としてのたたかいを強化します。職場を基礎に、厚生労働省との団体交渉で要求前進をめざします。

3.社会保険支部協議会の体制を確立し、要求前進をめざす

 2010年1月に、日本年金機構が設立されました。これにより、全厚生の構成員は、国家公務員、独立行政法人、全国健康保険協会(民間型公法人)、日本年金機構(民間型公法人)となります。それぞれの労使関係を構築して、運動発展をめざすために、社会保険支部協議会の体制を確立します。これにより、すべての職域・部門で、要求を前進させる体制を確立します。

4.中央執行委員会を機能的に強化する

 中央執行委員会を機能的に強化します。その基本方向は2つです。すべての課題を協議できる役員配置に努めます。中央執行委員会は、各協議会の役割を明確にさせ、より戦略的な位置づけで議論ができる場とします。

5.厚生共闘、厚生労働省3組合の連携強化を図る

(1)厚生共闘に結集する
 1980年12月11日、厚生省労働組合共闘会議(厚生共闘)が結成され、30年の歩みを刻んできました。今年度も厚生共闘が結成以来かかげてきた、医療<CODE NUM=00A5>年金<CODE NUM=00A5>福祉・介護など社会保障闘争を軸に国民・労働者との共同の輪を広げ、幅広い共闘を発展させ、要求の前進を図ります。

(2)厚生労働省3組合の連携強化を図る
 2001年1月の厚生労働省の発足以降、3単組(全厚生、全医労、全労働)は一貫して、労働条件の改善や国民の願う厚生労働行政の確立をめざし、協力・共同の取り組みを行ってきました。全厚生本省支部、統計情報支部、全労働本省支部は、2001年2月に本省共闘(厚生労働本省労働組合共闘会議)を結成して以降、交流を力に、恒常的な残業改善の要求を中心にして大臣官房人事課長交渉を行っています。引き続き、3組合の連携を強化します。

6.国公労連に結集し、要求前進をめざす

 国家公務員に対する政府の政策は、個別省庁ではなく全体でつくられます。定員削減の基本方針、公務員制度改革など、国家公務員の産別運動をすすめる国公労連、地方自治体や教職員の運動を束ねた公務大産別の運動をすすめる公務労組連絡会への結集は、益々重要です。
 国公労連は、国公労連(本部)、各単組、ブロック国公及び県・地区国公の三位一体で活動しています。とりわけ、ヨコの機能となる県・地区国公は、たたかいの幅を広げ、国民にもアピールする重要な機能を発揮しています。県国公の強化は、地域での国公産別運動をすすめる母体です。各支部(及び社会保険協議会)は、県国公、地区国公に結集し、運動の強化に努めます。

7.「21世紀国公大運動」に結集する

 国公労連は、新たな政治状況のもとで、憲法を暮らしにいかす「21世紀国公大運動」を軸に、「国民の中へ、国民とともに」のスローガンの下で、国民本位の行財政・司法の確立をめざしています。特に、市民対話集会や地域宣伝をすすめる「総対話MAP」運動を継続して取り組む方針です。この方針に沿って、暮らしを支えるために、行政サービス拡充への支持と理解を広げるために、国民との対話をすすめます。全厚生は、国民本位の社会保険行政、社会福祉、厚生科学研究をめざし、宣伝・対話し、憲法25条の活きる厚生労働行政の確立をめざします。

[4]すべての職場から要求前進のたたかいを

1.職場を基礎に、要求に根ざしてたたかう

 すべての職場から要求前進のたたかいをすすめます。その出発点は、要求の確立です。労働組合が職場の切実な要求をかかげて、使用者に迫り、使用者も真剣に応える努力をすれば、その中から職場改善の知恵が生まれます。労働組合が生活と労働条件改善を積極的に要求し、「緊張感ある労使関係」をつくってこそ、活力ある職場がつくれます。職場で様々な問題を充分に討議し、要求に練り上げ・確立し、建設的・積極的に提起します。行政の専門家として、職場の一つ一つの業務内容を見直し・改善を図ることは、行政民主化をめざす活動の基礎となります。労働条件の改善の課題でも、具体的な改善提案をしながら、改善を迫ります。

2.団体交渉で粘り強く、たたかう

 憲法28条は、「勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する」としています。労働組合は、要求実現をめざし、団結を背景にして、団体交渉することが使命です。
 切実な要求の実現をめざし、本部・支部が一体で団体交渉を取り組みます。 すべての職場(支部)で要求書を提出し、団体交渉を実施します。春闘や夏季闘争、秋のたたかいなど、全厚生統一要求を軸に、支部独自要求も確立します。大臣官房人事課長交渉、施設管理室長交渉、厚生科学課長交渉を実施します。全国健康保険協会、日本年金機構との団体交渉を実施します。また、厚生共闘(=厚生省労働組合共闘会議)として、厚生労働大臣交渉、大臣官房長交渉等を実施します。

3.すべての職場で、健康で働ける職場をつくる

 働くルールの確立は、労働組合の最も重要な仕事です。一人ひとりの労働者の生活を守る基礎になるからです。労働条件は、人間らしく生きる基本です。健康で働き続けることは、労働者の権利です。すべての職場で、労働条件、労働環境を厳しくチェックし、健康で働ける職場づくりの知恵を出し、改善の取り組みに力を尽くします。
 どの職場も一人当たりの業務量が増え、業務内容は複雑になり、精神的・肉体的な負担が大きくなっています。長時間労働に加え、過度のストレスを生む職場環境は、労働者のいのちと健康を蝕んでいます。こうした下で、メンタルコールド(心の病)による病休者が増えています。健康で働ける職場づくりは、労働組合の重要な役割です。メンタルヘルスの基礎知識を職場の隅々に徹底させ、相談しやすい環境をつくります。メンタルコールドによる病休者を出さない職場、病休者が復帰できる職場をめざします。また、職場環境とともに、社会環境を変える取り組みも重視します。

4.非常勤職員のたたかいの前進を

 非常勤職員は、同じ職場で働く仲間であり、ともに行政の担い手です。しかし、正規職員と比べて、劣悪な労働条件の下で働いています。非常勤職員の労働条件の改善は、職場全体の課題です。部門ごとに、勤務条件や契約関係を把握し、処遇改善の課題や組織化の条件を探求し、働きかけを強めます。非常勤職員との交流・懇談の場をつくり、あらゆる機会を通じて交流を深め、組合加入をすすめます。本省で働く非常勤職員に対しては、本省支部が交流・懇談の場を積極的につくっています。こうした取り組みを重視します。試験研究機関(国立研、独立行政法人)での取り組みを強化します。全国健康保険協会、日本年金機構での取り組みを強化します。

5.文化・レク活動を重視する

 文化・レクは、人間として“生活を豊かにする”活動です。労働組合は、この分野の活動に光を当てなくてはなりません。なぜなら、働く者が仕事と生活を見つめ、自らで考えることが必要だからです。社会の閉塞感を打ち破り、生きる活力を生み出す力にもなるのです。忙しく追い立てられる日常だからこそ、文化・レク活動を重視して取り組みます。

[5]闘争団の力で、不当解雇撤回、雇用確保を

 国民の政府に対する要望では、社会保障制度の改善を求める声が常にトップを占め、健保や年金など命と暮らしにかかわる制度には多くの国民が不信と不安を募らせている実態が浮き彫りになっています。特に老後生活の基盤である年金制度の拡充を求める声はますます強まっています。
 しかし政府・与党は2010年1月、公的年金業務を運営する社会保険庁を廃止し、新たに日本年金機構(民間型・公法人)を設置し、多くの業務を民間委託する解体・民営化を強行しました。また、宙に浮いた年金などの記録整備も含めて業務は急増し、正確・迅速な処理が求められているにもかかわらず、3000人もの経験ある社保庁職員を排除し、そのうち525人は不当にも整理解雇しました。整理解雇された職員は、国家公務員試験に合格し社保庁に採用され、長年にわたり年金行政のために働いてきました。整理解雇は、一瞬にして生活の基盤である収入を奪う過酷な処分です。整理解雇された職員の200人強は懲戒処分歴のない者です。また、育児休業中や病気休職の職員も含まれています。
 政府・厚労省の不当な処分に対して1月18日31人(最終的に39人)の全厚生組合員が、人事院に対して処分の取消を求めて不服申し立てを行ないました。3月13日には、全厚生闘争団を結成し、広範な支援を求めて取り組みを展開しています。また、5月24日には、自由法曹団団長、全労連議長、婦団連会長、国公労連委員長を代表世話人とする「全厚生闘争団を支える会」が結成されました。社保庁をめぐる厳しい情勢の下、さらに、地域に足を踏み出すことなど経験したことのない仲間たちがほとんどですが、それでも怒りと勇気をもって、少しずつ前に進もうとしています。
 一方、申し立てから半年を経過したにもかかわらず、人事院での口頭審理は早くて来年2月以降となっています。運動の大衆化による取り組みの強化をめざし7月23日、15名の組合員が行政事件訴訟法第8条に基づき、分限免職処分の取り消しを求め京都地方裁判所に提訴しました。
 全厚生は、国家公務員法や労働法理を踏みにじった解雇であること、整理解雇の必要性もまったくない解雇であること、さらに、雇用の安定と労働者の権利確保を行政目的とする厚生労働省による不当な解雇であることを明らかにしてたたかいます。
〔不服申し立て者〕
 北海道2 秋田6 埼玉1 東京4 愛知4 岐阜1 京都15 大阪1 香川1 愛媛4

(1)広範な支援体制を構築する
 @社保庁の廃止・解体に伴う不当解雇は、社保庁に対する政府・マスコミなどの厳しいバッシングや、歴代政府、厚生労働省などによる現場職員への責任転嫁が大きな背景となっています。こうした攻撃を跳ね返し、要求を実現するために、国公、民間も含めた全労働者の理解と支援を基礎に更なる運動の大衆化など、たたかいの輪を広げてたたかいます。
 A全厚生闘争団は「社保庁不当解雇撤回全厚生闘争団を支える会」の会員拡大の先頭に立つとともに、各単産や単組の大会や集会に積極的に参加して要請を行います。また、ブロック・県国公や県労連の支援と協力を受けつつ、全国オルグを具体化します。
 B闘争団のいる都道府県では、たたかいを支える組織(支援共闘会議等)の早期結成をめざします。
 C厚生労働大臣に対する不当解雇撤回を求める要請署名と人事院総裁に対する迅速・公正な判定を求める要請署名のとりくみを継続します。
 D中央社保協と安心年金つくろう会連名の「安心・信頼の年金制度国会請願署名」を不当解雇撤回のたたかいと一体のものとして宣伝・署名の取り組みを展開します。請願署名は秋の臨時国会での採択をめざすこととし、地元選出の議員要請など国会議員に対する働きかけを強めます。
 E日本年金機構や協会けんぽでの全厚生組織の整備と強化・拡大に全力をあげます。
 F年金記録問題の解決や専門的・安定的な公的年金業務を確保するため、安心年金つくろう会に結集して日本年金機構の問題点を社会的に明らかにし、是正させるとりくみを進めます。年金機構の実態を告発するため院内集会やシンポジウムの開催し、公的年金業務を国が直接実施することを求める世論構築をめざします。
 G全労連争議統一行動に参加します。
 H弁護団との連携を強化します。
 
(2)公平審理の取り組みと併せ、裁判闘争をたたかう
 @裁判闘争は、口頭審理が具体化されようとしている人事院へのたたかいと一体で、裁判における国側の対応や問題点の整理などの相乗効果も展望し、さらに、運動をより大衆化することなどを追求して、たたかいます。
 A今後の裁判闘争の提訴については、当事者、弁護団、支援体制などの条件整備を前提に、中央執行委員会での協議を踏まえ、具体化します。

(3)財政活動を強化する
 現在の到達点は、約400万円弱のカンパが集約されています。OBへの呼びかけは現在も行われています。当面する財政活動は、次の方向で具体化します。他労組、民主団体等へ支える会の加入を呼びかけます。全厚生退職者会、社会保険0Bの会にも呼びかけます。カンパに協力した方にも支える会への加入を改めて呼びかけます。地方の特産品、オリジナルTシャツなど、物販活動を取り組みます。

(4)事務局体制を拡充する
 「全厚生闘争団を支える会」の事務局体制を確立・強化し、会員の拡大と、財政確立を進めます。具体的には、全厚生特別中央執行委員(国公労連派遣)と、全厚生顧問制度を活用して、担当配置や専従体制などを確立し、オルグ活動、情報宣伝、会員拡大活動等を強化します。

[6]国民が求める社会保障の確立をめざす取り組み
 〜厚生労働行政の担い手としての誇りをとりもどそう!〜


 社会保険庁を解体し、日本年金機構を設置した「社会保険庁改革」は、「失われた信頼の回復」を掲げてきましたが、この中で行政運営を支える最も重要な柱までも切り捨てられてきました。厚生行政を担うすべての者に共通するもの、それは、働く者の「誇り」です。
 全厚生は、厚生行政に関わる仕事に携わることを誇りとし、公平・公正な事業運営と行政の民主化をめざしてきました。構造改革路線は、働く者の「誇り」を奪うものです。
 社会保険庁の解体によって、医療保険と年金は分割され、民間化された公法人に委託され、責任の所在が曖昧にされています。また、国立福祉施設も「政治の意向を伺う」ように統廃合の方針が押しつけられています。厚生科学研究の分野も、その本質の議論を抜きにした再編が議論されています。本省では、国民の視線から乖離した政策の立案と実施が求められる中、国民世論との対立が激しくなっています。
 私たちは今、この切り捨てられた「誇り」を取り戻さなければなりません。この誇りを取り戻さなければ、国民のための厚生行政を担うことはできません。そのために、主体的な研究活動を発展させるとともに、広範な共同をめざします。当面、社会保険庁解体によって大きな危機に瀕している「年金」を中心に広範な共同を広げ、国民が求める社会保障の確立めざす運動の発展をめざします。

(1)安心年金つくろう会の先頭に立つ
 安心年金つくろう会の活動の中心的な役割を担い、急速に世論を拡大するため、引き続き全国での結成と共同の拡大をめざします。@定期的に宣伝行動を行います。A積極的に年金学習会等の講師活動をすすめます。B年金制度の改善について研究活動をすすめます。
この活動には、0Bの参加も検討します。

(2)国民参加型の年金制度づくりを
 被保険者や受給者はもとより、国民が制度運営などに主体的に関われるような制度改善を求める取り組みをすすめます。@国会議員や政党に積極的に提言する取り組みを進めます。A被保険者が積極的に参加できるような資格記録の提供等について提言します。B制度や運営に被保険者や受給者が意見をいえるような機構づくりを研究します。

(3)医療の改善をめざす政策活動を
 健康保険が全国健康保険協会の管掌となり、都道府県毎に保険料率が設定されました。後期高齢者医療の広域連合のあり方を含め、とりわけ医療保険のありようが問われはじめています。日本の医療保険制度の優れた点を有効に活かし、国民本位に改善するための研究活動をすすめます。

(4)消費税増税を許さない政策活動を
 参議院選挙では、消費税増税が議論になりましたが、国民の中には「消費税増税もやむなし」とする見方も少なくありません。消費税が「福祉目的」で導入、増額されたにもかかわらず、社会保障は切り捨ての一途をたどり、一方で法人税は減税に次ぐ減税が行われています。何ら真実が示されないまま、「国にお金がないなら仕方がない」あるいは「公務員の人件費を減らせば・・・」など、本質から目を反らす世論誘導も行われています。
豊かな社会保障を実現する財源について、税制のあり方を含めて国民的な議論を巻き起こすため、研究と政策活動をすすめます。

(5)国民が求める社会保障への貢献
 本省の各部局における政策立案、事業などについて提言ができるよう研究活動を強化します。そのために、各分野の様々な団体との意見交換や情報交換などの取り組みを模索します。

[7]国立福祉施設の組織再編・統廃合に対する取り組み

1 この間の取り組み

 国立福祉施設の組織再編は、2010年度4月1日より具体的に動き出しました。国立リハに自立支援局を設置、地方センターをその内部組織とし、地方施設事務部門の業務を国立リハに移管、庶務課5名体制(庶務課長を除く)とするものです。
 国立リハセンターが発表(4.1)した「中期目標」の中でも、国立塩原視力障害センター及び伊東重度障害者センターの廃止が記載され、国立リハセンターの機能強化を図る一方で、国立施設総体としては機能と役割を縮小する方向に動いていくことが危惧されます。
 厚社連は国立施設の機能と役割を、正しく評価するための資料として「国立施設として視覚障害者への支援のあり方に関する意見書」(1・22塩原支部)、「国立伊東重度センターのあり方に関する提言」(3・17 伊東支部)をまとめました。
 これまでの管理室交渉では、組織再編(案)の具体化は、障害者や組合と充分協議を行うこととしてきました(12・14管理室交渉)。しかし、春の交渉(6・21)時に管理室長は、「伊東、塩原センターの統廃合(案)は、決定事項であり、塩原視力センターのH23年度利用者募集は行わない」との一方的な回答を行いました。
 施設の統廃合(案)の具体的な実施は、塩原センターの利用者募集の停止が最も早い時期に行われるため、この間の中心的課題として施設の充実強化、募集継続を求める申し入れ(3・26、5・28)を実施しました。
 塩原視力センター存続運動については塩原支部が「塩原視力障害センターの存続を求める会」(4・1)を発足させました。マスコミ等に広く訴えるとともに、要請ハガキ行動や議員要請行動等、障害者運動との共闘を探りながら取り組んでいます。

2 国立施設の充実発展を求める取り組み

 国立施設の再編統合(案)は、政府並びに総務省がすすめる国の減量効率化政策の一つであるとともに、障害者自立支援法をはじめとする障害福祉施策後退の一環です。
 障害者自立支援法違憲控訴原告団との基本合意(1・17)、障害者自立支援法の一部改正案の廃案(6・16)などは、障害者施策に対する国民の怒りの現れです。今後の新たな障害者制度の改革のため「障害者制度改革推進本部」や同総合福祉部会において同法に変わる新しい法整備が議論されています。日本の福祉制度改革は、障害当事者や現場で働く労働者の意見を聞くことなく、一方的に進めることができないことを示すものです。
 地域や国民とともに障害者福祉を守り発展させる立場に立って幅広い運動が求められています。全国支部(協議会)代表者会議(7・17)で、「国立施設の充実発展を求める会(仮称)」の立ち上げを確認し、翌日の福祉部門支部代表者会議において「国立福祉施設の存続発展を求める会」の規約と代表委員の選出、地方議会請願(陳情)に取り組む等の具体的な運動方針を確認。8月20日には伊東市議会に、23日には塩原市議会に陳情書を提出し、マスコミにも大きく取り上げられるなど、運動を広げています。

3 障害者に優しく、誇りをもって働ける職場づくりをめざす取り組み

 現在の国立施設は障害者にとって優しい施設になっているのでしょうか。利用したくても利用出来ない障害者が大勢いるのではないでしょうか。
 国立施設の事業所指定は、障害者自立支援法下で都道府県が行います。全国にいる多くの障害者ニーズに対応することは難しく、利用者募集も充分に出来ていないことも事実です。加えて、都道府県の指定がないいわゆる「独自事業(再理療教育、臨床研修等)」については、職員の努力により運営されています。
 当局が提案する統廃合を含めた組織再編(案)で、どのような展望があるのでしょうか?
 国立施設に働く労働者の団結の力で、誇りや展望のもてる国立福祉施設づくりをめざし、充実発展に結びつく運動に全力で取り組みます。

[8]厚生科学研究を拡充させる課題と取り組み

1.国立試験研究機関を拡充させる基本方向

 厚生労働省(旧厚生省)の試験研究機関は、4つの国立試験研究機関(=国立研)と2つの独立行政法人が併存しています。数と規模では、「国立研」が軸になっています。他省庁では、圧倒的多数が独立行政法人ですので、この状況は、試験研究機関をもつ他省庁と較べて大きく異なっています。現在、当局は「4つの試験研究機関は、@政策研究所、A公務員の研修機関、B緊急時に国の責任において直接実施すべき健康危機管理を担っている等の理由により、独立行政法人化されなかったもの。現在でも、状況の大きな変化はないと考えている」と回答し、現行体制を維持する立場です。
 「4つの国立研究機関」と「2つの独立行政法人」は、ともに、医療や公衆衛生の向上を図り、国民の健康と福祉を向上・発展させる厚生科学研究を担う研究所であることには変わりません。全厚生は、憲法25条の理念を活かし、医療並びに公衆衛生の向上を図り、国民の健康と福祉を向上・発展させる厚生科学研究をめざし、取り組みを強化します。運営の枠組みは異なりますが、誇りと働きがいの持てる研究所・職場をつくるために、予算と体制確保、研究所の民主的な運営を要求します。

2.独立行政法人研究所に対する取り組み

 独立行政法人の「整理合理化計画」として、国立健康・栄養研究所と医薬基盤研究所の統合方針が閣議決定(07.12.24)されました。その後、政権交代によって独立行政法人に対する基本的な政策変更があったものの、「統合」を含めた協議は、厚生労働省及び各独立行政法人ですすめられてきました。しかし、今後の方向が定まっている訳ではありません。省内及び行政刷新会議の事業仕分けを経て、新たな方針が示されることも想定されます。
 全厚生は、「統合」にあたり、国民の健康と福祉を向上・発展させる厚生科学研究をめざし、当該法人及び労働組合の意向を尊重して具体化・実施することを求めてきました。
 当面、次の基本政策・要求を重視して、取り組みを強化します。

(1)独立行政法人研究所の基本政策
 独立行政法人の「新たな見直し」にあたり、国立健康・栄養研究所と医薬基盤研究所について、国民の命と健康を守るために、国が責任をもって拡充するよう努力することを要求します。
 @医薬基盤研究所の設立経過や目的を踏まえ、生物資源部門の拡充を図り、日本で唯一の機能である霊長類医科学研究センター及び薬用植物資源研究センターを維持・強化 することを要求します。
 A国立健康・栄養研究所について、健康・運動・栄養の総合的な研究をすすめ、健康の保持及び増進、栄養と食生活など、国の施策をすすめる中心的な役割を担い続けるために拡充することを要求します。

(2)当面する対応方針
 @独法2支部と本部による対策会議を継続させ、要求・政策を練り上げ、厚生科学課長交渉を実施します。
 A両独立行政法人支部との連携を強化し、独法での申し入れ・団体交渉等をすすめます。
 B法案審議を想定し、国会闘争の準備をはじめます

3.厚研連の活動を重視し、厚生科学研究の拡充をめざす

 この1年間、厚研連(全厚生試験研究機関支部連絡協議会)の活動を軸にして、厚生科学課長交渉を準備してきました。各機関・職場の課題を交流をしながら、要求を練り上げ、交渉を準備してきた経験は貴重です。引き続き、厚研連の活動を重視し、厚生科学研究の拡充をめざします。

(1)基本方針
 @厚研連交流集会を開催し、政策活動を強化します。
 A厚研連の活動を軸に厚生科学課長交渉を準備します。
 B国立試験研究機関全国交流集会運動に結集します。

(2)重点課題に取り組む
 @試験研究機関の組織再編及び統廃合について、労働組合に情報を公開し、職員・労働組合との合意形成に努め、一方的にすすめないこと。強権的、画一的な統廃合は行わないこと。
 A研究分野の統合、研究機関の統合などの検討を行う場合は、拙速な結論を導くことなく、当事者を含めた幅広い意見を踏まえて進めること。研究支援部門及び管理部門の安易な統合・削減を行わず、研究機関の適正規模を踏まえ、支援部門の配置を行うこと。
 B国立医薬品食品衛生研究所の府中移転計画の状況及び計画の実行について、労働組合に随時、情報提供を行うこと。老朽化している現在の研究施設について、必要な整備を継続して行うこと。移転に伴い転居を強いられる職員のため、公務員宿舎を必要戸数確保すること。
 C国立保健医療科学院の研修業務体制について、公衆衛生の第1線に立つリーダーを育成するために、研修機能、研究機能を充実・強化すること。各機関との協力体制を確保し、拡充を図ること。組織の見直し・再編にあたっては、当該科学院の研究者・職員が納得できるように充分な説明をできるだけ早期に行うこと。また、非常勤職員も含め各職員の意向を考慮し、むやみに人員の削減を行わないこと。
 D国立感染症研究所について、新型インフルエンザに対応する緊急業務体制及び労働条件確保のための予算措置を行うこと。検査検定や品質管理に関わる研究・業務体制を抜本的に強化すること。
 E研究所に勤務する非常勤職員の業務や技能、経験などを適正に評価し、雇用の安定・継続を図るとともに、賃金・労働条件を改善すること。その実現のために、人件費の予算措置を計画的に行うこと。

[9]平和・憲法・社会保障のたたかい

 「平和な社会なくして、社会保障の前進なし」を合言葉に、平和への取り組み、憲法闘争、社会保障闘争の前進をめざします。

1.改憲を許さず、憲法の理念を拡げよう

(1)憲法「9条」と「25条」の価値を追求する
 第2次世界大戦(戦争)の多くの犠牲と深い反省のもと、「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する(憲法前文)」としています。そして、憲法の第9条と第25条、すなわち平和探求の理念と社会保障の理念は、『生きる』という点で密接に結びついています。
 平和に向けた動きについては、今年5月に開催された核不拡散条約(NPT)再検討会議では、核軍縮の進展や核不拡散体制の強化をうながす行動計画を盛り込んだ最終合意文書が採択されています。また、今年8月に開催された広島原爆死没者慰霊式・平和祈念式(平和記念式典)では、核保有国の米英仏がそろって初めて参加することになり、核兵器廃絶を提唱するオバマ米大統領の方針を反映した動きがありました。
 核兵器廃絶、世界平和を願う取り組みの気運が高まっていますが、本当の実現をめざすためには、やはり、行動が必要になってきます。そのため、憲法の理念を学び、平和を守る活動に積極的に取り組みます。
 また、私たちの職場は、定員の削減や、業務の独法化・民営化により、社会保障サービスが質量ともにどんどん縮小され、すべての人に公平なサービスが与えられない状況になっています。お金のある人だけが社会保障サービスを受ける世の中に変化し、貧困層が拡大し、働いて賃金を得てもその賃金では生活ができないワーキングプアが発生しています。
しかし、このことは憲法25条で定める、国の生存権保障や、社会福祉などの社会的使命から大きく離れ、『生きる』ということをないがしろにするものです。社会保障サービスを担う職員として、この問題に立ち向かい、社会保障サービスの充実をめざします。

(2)憲法の理念を学び、たたかう
 @憲法学習を重視します。支部及び社会保険協議会・分会単位で、執行委員会で、組合員が集まる場など、あらゆる機会に憲法学習を行い、憲法の理念を学び、たたかいます。
 A国公労連の提起する憲法闘争を全力で実践します。
 B「9条の会」のアピールを深くかみしめ、全国の「9条の会」の運動に学び、活かし、 運動の担い手となるために奮闘します。

(3)平和を守る取り組みを重視する
 @核兵器を地球上からなくすため、毎年開催する「原水爆禁止世界大会」、日本から米軍基地をなくすために行う「日本平和大会」、太平洋ビキニ環礁沖でアメリカの核実験により被災したことから始まった「3・1ビキニデー」など全国的な平和運動に参加します。
 A「原水爆禁止世界大会」の成功にむけて取り組む「国民平和大行進」には、東京から神戸まで全厚生の通し行進旗をつないでいきます。
 B地域の平和運動の中にも、全厚生の旗が立つように、重視して取り組みます。

(4)憲法25条を守り、社会保障闘争で役割を発揮する
 @国民の権利としての社会保障制度の確立のために、中央社保協(=中央社会保障推進協議会)に結集します。
 A年金・社会保障講師団としての活動に積極的に取り組みます。
 B反貧困をめざすたたかいとして、誰もが安心して暮らせる世の中をめざし、ワーキングプアからの脱却、非正規雇用の正規化・均等待遇の実現を図り、生活保護給付制限の改善を含め「再び派遣村をつくらない」運動に結集します。

2.権利をめぐる裁判闘争で勝利をめざす

 公務をめぐる裁判闘争は、公務員の権利や公務のあり方、この国の行方に直接かかわる課題ばかりです。労働者の権利を守る裁判闘争は、大衆的な裁判闘争として、運動を広げることが勝利のカギを握ります。公務員労働者の権利にかかわる裁判闘争を全力でたたかいます。

(1)全医労不利益雇い止め是正裁判で勝利を
 国立病院は、2004年4月に独立行政法人化されました。その際に、法人は@一方的に職員の賃金を引き下げ、Aフルタイム非常勤の「賃金職員」を全員雇い止め、B病院内保育所を全面委託し、保育所職員の解雇、などを強行しました。
全医労は、こうした賃下げ・雇い止めは不当であると、裁判闘争をたたかっています。しかし、一審の東京地裁判決では「請求を全面棄却」という不当な判決(06年12月)が出され、現在、東京高裁で審理が行われています。
 この裁判の動向は、行政機関から独立行政法人へ移行する際の賃金・労働条件決定システムに大きな影響を及ぼすものです。兄弟組合である全医労のたたかいの勝利めざし、全力で支援します。

(2)国公法弾圧事件で勝利をめざす
 国家公務員法違反で起訴された2つの弾圧事件(国公法弾圧堀越事件、世田谷国公法弾圧事件)は、日本国憲法と国際人権規約が保障する結社の自由、言論・表現の自由を侵害する政治弾圧であり、許せません。裁判を支援し、勝利をめざしたたかいます。
 国公法弾圧堀越事件の控訴審では、職務とは無関係に休日に一私人として行なった堀越さんのビラ配布行為には、「行政の中立的運営とこれに対する国民の信頼」を侵害する抽象的な危険性も認められないから、堀越さんの行為を刑罰の対象とすることは憲法21条1項、31条に違反するとして、無罪判決を言い渡しました。これに対し、世田谷国公法弾圧事件の控訴審では、宇治橋さんのビラ配布行為の具体的な検討を行うことなく、有罪判決(罰金10万円)を言い渡しました。
 両事件ともに最高裁に上告となり、たたかいが続いています。言論表現の自由を守り、公務員の政治活動禁止の違法性を問い、公務員の市民的、政治的な自由の権利を勝ち取るために、「国公法弾圧を許さず、言論・表現の自由を守る会」「世田谷国公法弾圧を許さない会」に結集します。

3.労働者・国民の願いに応える社会をめざす

 政治の行方は、私たちの暮らしに直結します。雇用破壊をやめさせ、平和な社会、社会保障の充実をはかるには、政治の中身を変えることです。全厚生は、憲法が保障する国民の政党支持、政治活動の自由を守り、職場でも地域でも家庭でも、政治を語ります。全厚生は、国民・労働者の切実な願いや要求が届く民主主義政治を実現させるために奮闘します。

[10]頼りになる労働組合をつくる

1.組織強化・拡大に全力を尽くす

労働組合の力は、団結の力です。切実な要求を実現するには、その団結を強化する以外にありません。組織拡大こそ、最大の要求闘争だと言って過言ではありません。
 「たたかいの到達点」の項で示した通り、組織人員がこの間、大幅な減少を余儀なくされています。これ以上の減少を許せば、専従役員・書記局体制の更なる縮小となり、要求前進の力を弱めてしまいます。組合員の加入促進は、最も重要な課題です。すべての支部は、要求実現の取り組みと一体で、組合員の加入の取り組みに全力をあげます。待ったなしの正念場の課題として取り組みます。
 @中央執行委員会に、組織強化・拡大をめざす推進員会を設置し、取り組みます。中央執行委員会は下より、機関会議・各部門の会議、支部執行委員会では、組織の強化・拡大の課題を位置づけ、毎回議論し、実践に移します。
 Aこの秋、すべての職場・支部で、非常勤職員を含む職員の過半数を組織する組合をめざします。この過半数組合は、労働基準法に基づく労使協定の労働者代表に組合がなるための基礎的な条件です。この趣旨を活かし、すべての支部の基本目標とします。過半数を超えている支部は、更に高い峰をめざします。
 B全厚生は、4月〜6月を「組織拡大特別期間」に設定し、事前の準備を行い、組合加入の運動をすすめます。新規採用者はもとより、職場のすべての仲間を対象にして、組合加入をすすめます。

2.国公共済会の加入を促進させる

 国公共済会は、少ない掛け金で大きな給付を目的とした「助け愛」事業です。民間の生命保険会社とは異なり、もうけ第1主義ではなく、組合員による、組合員のための共済です。
 現在加入者は、約3万人強おり、安定的な運営がなされています。加入促進のために、国公共済会では、新入組合員に対し「ワンコイン共済」のプレゼント(半年間)を行っています。全厚生独自では、4月新入職員への組合加入対策として、新たに全厚生に加入した職員に対し、「セット7型共済」の最長2カ月分をプレゼントしています。団結の力を強めるために、組合員と家族の安心をつくるために加入を促進させます。

3.青年を活動の主人公にする

 青年は、学び、たたかう中で成長します。厳しい情勢をはね返す取り組みの中で、青年との対話を重視します。特に、若い仲間を育てる視点をもって対話します。各支部は、若い組合員を主人公にして活動できるように援助します。青年自らで考え、創意工夫して活動できるよう、青年層の団結が強まるように先輩組合員の援助を惜しみなく行います。

 @青年層に対して、学び、交流する取り組みを重視します。
 A青年の要求実現のために国公労連青年協議会の取り組みに結集します。
 B平和の取り組みに積極的に参加するように援助します。
 C青年(対策)部とも協力し、労働組合の基礎を学ぶ学習講座を開催します。
 D青年(対策)部の活動への援助を行います。
 Eあらゆる機会を活かし、青年を取り組みの中心になるように努力します。

4.女性が要求実現の先頭に立って働き続けられる職場づくりをめざす

 女性部は、昨年11月23日に第14回総会を開催し、@核兵器のない平和な世界をめざす活動A女性の労働条件改善を求める要求書の作成と当局との懇談実施B雇用形態にとらわれないすべての職員の組織化と要求実現C女性交流集会の開催D女性組織の確立強化の方針を決定。「集まる・しゃべる・食べる・学ぶ・行動する」をモットーに連帯した女性の力を最大限に発揮して活動してきました。
 09春闘では、「つぶやきを要求へ」と女性の要求アンケートに取り組み、要求書に練り上げ、4月13日に提出しました。重点要求に絞って9月8日には人事課との懇談を実施しました。また、日本年金機構における年次有給休暇の時間単位取得を求めて要求ジャンボ葉書行動に取り組みました。5月には、NPT再検討会議NY行動にチョコレート財政を活用して近畿社会保険支部の小川さんを代表派遣しました。6月19・20には第34回全厚生女性交流集会を開催。国立更生援護施設の統廃合・廃止(案)の対象施設としてあげられている伊東重度障害者センターを見学・体験し、廃止は絶対許さないとの意思統一を行いました。女性組織の確立強化については、厚生労働省当局への対応としての女性部組織は役員配置含め組織強化を図りました。日本年金機構と全国健康協会当局への対応としては、社会保険支部協議会に、女性部担当幹事をおき、組織確立をすすめます。全労連女性部、国公労連女性協に結集し、各種行動や集会、日本母親大会やはたらく女性の中央集会などで、社会保険職員の不当解雇撤回の訴えを行いました。
 @働き続けられる職場めざして、労働条件改善へ全力を挙げます。
 A女性の要求アンケートを実施し、要求書に練り上げ、提出し、当局懇談(交渉)実施で女性の要求実現をめざします。
 B第35回全厚生女性交流集会を実施します。
 C第15回総会を開催します。幹事の選出、幹事会の定例開催で、安定的に女性部活動を行います。
 D厚生労働省関係支部(本省・研究機関・福祉)と社会保険関係支部協議会に女性組織を確立します。

5.学習活動を積極的にすすめる

(1)学習の場をつくる
 学習は、たたかう力の源泉です。職場で積極的な学習の場をつくることが重要です。これまでの組合活動の学習スタイルにこだわらず、あらゆる工夫を行います。20分程度のミニ学習会、休日を利用しての本格的な学習会など、組合員の様々な条件を活かし、学ぶ活動をすすめます。
 学習教育活動で重要なことは、持続的・計画的に取り組むことです。とりわけ青年層は、学ぶことが成長に結びつく世代です。新入組合員教室や労働組合の基礎を学ぶ学習会を各支部で積極的に開催します。
 各県・地域の学習会には、支部役員をはじめ、多くの組合員が積極的に参加します。支部(社会保険協議会)役員は、学習活動の先頭に立ち、職場での活動をすすめます。

(2)労働学校、勤通大に取り組む。「学習の友」を積極的に活用する
 要求実現の道筋や展望を見いだすには、社会のしくみや矛盾を深く理解するための基礎学習が必要です。この学習には、様々な労働学校や大衆的学習教育運動を活用することが効果的です。特に、「学習の友」の定期購読者(読者)を増やし、職場学習に積極的に活かします。地域の労働学校に積極的に参加します。「勤労者通信大学」の受講組織は、支部での集団受講に努めます。国公労連の労働学校をはじめ、各種学校に積極的に参加します。

6.情報・機関紙活動の前進をめざす

 大会時に機関紙フェスティバルを開催しました。昨年の応募は、10支部13機関紙でした。職場活動がますます厳しくなる中において、情報の伝達や、組合員同士の交流へ、仲間を励ます機関紙を粘り強く発行した支部がありました。今年も機関紙フェスティバルを第74回定期大会時に開催します。
 中央機関紙「全厚生」は、月2回発行し支部・協議会・分会経由で組合員に配布しました。また、「全厚生ホームページ」にHTML版を、「全厚生組合員限定ホームページ」にPDF版を掲載しました。全厚生組織改編後は、個人宛の発送先を増やすなど、組合員のもとに確実に届くように対応しました。
 全厚生ホームペーシは、開設して13年目になります。2007年4月にリニューアルしてから約8万件のアクセスがありました。特に、社会保険庁職員の分限免職を許さない闘いの情報の掲載には1日300件程度のアクセスがあり、マスコミからの問い合わせの他、全厚生組合員以外がHPを通じて繋がりを持ちたたかいに参加して来るなど、HPは全厚生への窓口として重要な役割を果たしてきました。
 全厚生(社保庁)闘争情報、厚社連情報などを随時発行し、メール配信しました。また、国公労連の社保庁職員不当解雇撤回闘争本部ニュース(国公労連社会保険庁改革ニュース)を各支部へメール転送するなど、情報伝達を迅速に行いました。
 @すべての支部・協議会で機関紙発行をめざします。
 A「全厚生」新聞は、月1回発行とします。必要に応じて号外を発行します。
 B「全厚生ホームページ」を充実させます。(「全厚生組合員のページ」は廃止します。)
 C全厚生闘争情報を随時発行します。

7.組織・財政検討委員会を設置します

 昨年に引き続き、組織・財政検討委員会を設置します。この委員会では、全厚生の財政及び組織課題を集中的に検討します。


社会保険支部協議会の活動方針(案)

1.社会保険支部協議会の設置目的と主な課題・目標

(1)設置目的
 全国健康保険協会(2008.10)、日本年金機構(2010.1)と社会保険庁の廃止に伴って、民間型の公法人が相次いで設置されました。同時に国家公務員法、人事院規則が全面的に適用されていた労働条件等については、労働基準法を中心とする労働法制関係に移ることになりました。そのため、「労使自治」による労使関係の構築、要求闘争の強化が基本的に必要です。全厚生は、こうした情勢の中で、全厚生としての組織状況や質的な運動関係等を強化する立場から、社会保険関係支部による「協議会」を設置し、運動の効率的な推進と、要求闘争の前進をめざします。

(2)主な課題・目標
 @社会保険関係職場で働く仲間の要求実現をめざす
 A社会保険関係職場で働く仲間の働きがいと誇りを取り戻す
 B社会保険関係各制度にかかるサービス等の向上をめざす
 C社会保険関係各制度の拡充をめざす
 D社会保険関係各制度を安定的に運営できる組織・機構の実現をめざす

2.要求の実現をめざす〜職場のたたかいを背景に団体交渉を!

 全国健康保険協会及び日本年金機構は、国民の年金不信とその怒りを回避するための社会保険庁及び職員への激しいバッシングを背景に設置されており、その特徴から多少の差はあるもの労働条件の劣悪さは共通しています。同時に、社会保険庁時代の労使関係を批判されたことから、労働組合を敵視する動向も共通しています。
 こうしたもとで、社会保険関係職場の労働条件を改善する課題は、サービスの向上とそれを支える体制の拡充をはじめ、被保険者・受給権者の利益にも直結する重要な課題となっています。私たちの要求は、「自己のため」に止まらず、安定的な事業運営、公平・公正な事業運営、窓口サービス等の拡充を確かなものとするものであり、堂々と要求し実現めざすべきではないでしょうか。私たちの要求の実現が、国民的な要求の実現に直接繋がっていることを確信し、理事者と対等にたたかうことが重要です。そのため、2011年春闘に向けて、職場でのたたかいを背景に団体交渉を実施、切実な要求の実現をめざします。

(1)要求闘争をたたかえる体制づくり〜すべての職場に世話役を!〜
 要求闘争を堂々とたたかうためには、団結したたかう体制の確立が重要です。また同時に、たたかう体制は、たたかいなしに確立されるものではありません。具体的に取り組みを訴えつつ、各職場に世話役づくりをすすめ、たたかう体制の確立をめざします。
 @要求づくりの取り組み
 労働組合の基本は、要求の実現をめざすことであり、この要求に団結することが、たたかいの基本です。こうした立場から、要求づくりの取り組みを重視し、次の取り組みをすすめます。
 ・要求アンケートの実施と職場討議
 ・分会要求の確立と要求書の申し入れ
 A分会での取り組み
 労働組合法では、労使の交渉関係について規定し、労働条件に関わる交渉の実施を労働者の権利としてするとともに、使用者の義務としています。このことを重視し、分会単位で次の取り組みをすすめます。
 ・身近な情報を提供または共有するため、分会ニュースの発行をめざします
 ・職場単位で要求討議をすすめます
 ・各分会で所属長に要求書を申し入れます
 ・所属長の判断で実施可能な事項については、積極的に交渉を実施します
 B支部での取り組み
 支部は、分会の要求づくりや所属長への申し入れ、交渉の課題や状況を把握します。年金機構部門について、ブロック本部の機能に照らして有効な課題はブロック本部との意見交換の課題とし、ブロック本部での検討や機構本部への要望を求めます。
 C協議会の取り組み
 要求アンケート結果に基づいて、要求項目を整理し、統一要求を確立します。また、春季、夏季、年末等、各時季の重点要求を各本部に申し入れ、団体交渉を行います。
 さらに、監督または委託官庁である厚生労働省に対して、予算等にかかる重点要求を申し入れ、交渉します。(全厚生本部で実施)

(2)賃金水準の引き上げをめざす〜生活改善につながる賃金改善を〜
 全国健康保険協会は、発足後ベースアップが行われておらず、賃金水準は改善されていません。また、日本年金機構では、移行時に賃金の切り下げを行っており、全体に賃金水準が低く押さえられています。医療保険も年金も利潤を求める事業ではなく、公平・公正で安定した運営こそが求められています。こうした事業運営は、一定程度安定した生活水準が確保される必要があります。
 私たちの賃金改善要求が、被保険者・受給権者の利益にも直結することを確信して次の取り組みをすすめます。
 ・賃金水準の引き上げを要求します。
 ・契約職員の大幅な賃金改善と賞与の支給を要求します。
 ・休日勤務及び月45時間以上の時間外勤務の割増の増額を要求します。
 ・単身赴任手当の増額と遠距離通勤者への手当の新設を要求します。

(3)健康で働ける職場をめざす〜健康診断等の拡充を〜
 社会保険庁は、一般健康診断はもちろん、オンライン機器の操作にかかるVDT検診を実施し、さらに共済組合から人間ドック受検費の補助もありました。全国健康保険協会、日本年金機構ともに健康対策が非常に貧困になっています。とりわけ、健康増進に対する使用者責任が希薄な日本年金機構においては、重要な課題になっています。
 当面、次の課題での取り組みをすすめます。 
 ・健康診断の確立
 ・人間ドック受検の補助の実施
 ・メンタルヘルス対策と職場復帰プログラムの確立

(4)人事異動のルールの民主化をめざす〜人事による生活破壊をさせないために〜
 全国健康保険協会及び日本年金機構は、広域人事を前提に職員を採用しています。事業運営や組織の機能の確保・向上において広域人事もやむを得ない場合がありますが、基本的に生活環境を異にする人事異動は極力少なくするべきです。同時に、可能な限りの手当をする必要があります。
 こうした点を重視し、次の要求の実現をめざします。
 ・人事異動にかかる基本的なルールの確立をめざします。
 ・生活実態にかかる調査の実施を求めます。
 ・転居を伴う場合の可否の再確認の実施を求めます。
 ・広域人事にかかる本人への打診、内内示の時期のルール化を求めます。  
 ・単身赴任手当の増額を
 ・遠距離通勤手当の新設
 ・内示の公表のルール化
 内示の公表は、人事異動後の業務を円滑にすすめる上で重要な影響を及ぼします。事務引継等を考慮し、10日前までに内示を公表すよう求めます。

(5)使用者側との窓口を設置する
 要求課題や、時節ごとの課題の整理、さらに、事業ごとの労働条件への影響など、日常的に労使の窓口を開いて折衝することは、業務を円滑にすすめる上でも重要です。協議会は、全国健康保険協会、日本年金機構のそれぞれに窓口担当を配置し、日常的に窓口を開くことをめざします。具体的な任務配置は、常任幹事会及び全厚生本部中央執行委員会で協議し決定します。

3.制度改善をめざす

 日常的な業務を通じて、被保険者・受給権者の要求・願いを把握し、具体的な改善の方策を研究・検討することは、実務に携わっている私たちにしかできないことであるとともに、私たちに課せられた使命です。国民的要求の実現と私たちの誇りの奪回のため、次の取り組みをすすめます。

(1)全厚生の行政研究活動の歴史と経過を調べ、組合員と世論に公表します。
 全厚生の運動の歴史において、改善につながる様々な提言となる取り組みをすすめていますが、充分に伝えられていません。全厚生OB会などの協力も得て、歴史的財産を掘り起こし、私たちの誇りを取り戻すとともに、労働組合への正しい理解を深めます。

(2)年金制度及び運営組織のあり方について研究活動をすすめます
  長妻厚生労働大臣は、次期総選挙後は「歳入庁」を設置し、日本年金機構を解散するかのごとく吹聴しています。しかし、制度の運営組織ばかりを云々する一方で、制度のあり様は、何ら明確に示されていません。国民が求める年金制度のあり様と改善の方向性、さらにその財政的裏付けを含む展望と国の責任を背景とした本当に責任を持てる運営組織のあり様について研究活動を強化します。

(3)医療保険のあるべき姿と改善方向について研究活動をすすめます
 後期高齢者医療制度の創設によって広域連合が設けられ、医療保険全体がこうした方向に進みかねない状況が生まれてきています。現行の「協会けんぽ」は、適用と保険料徴収という保険制度の根幹を日本年金機構に委ね、保険給付と健康促進事業及び保険料率の決定のみを全国健康保険協会が実施しています。まさに、一貫した責任体制が無いのが実態ですが、こうした姿は、広域連合にも通じており、国民の健康を無視して、地方自治体と国の責任回避の議論の中に巻き込まれる可能性もあります。
 社会保障の基本と被用者保険制度の利点を明確にし、医療保険制度のあるべき姿について研究活動を強化します。

4.労働者の資質の向上をめざす

 新規採用時の研修が充分に行われず、また、日常的に「教え、教えられる」環境にないために、以前に比べても習熟し難いのが現状です。加えて、日本年金機構では、特定業務契約職員については、研修も行われておらず、自助努力によって知識を高めるしかない状況にあります。
 本来、業務研修などは、使用者の最低限の責任ですが、年金機構においてはそうした責任が放置され、結果として被保険者・受給権者に不利益が生じかねない状況にあります。労働組合として、事業運営を直接行うことはできませんし、研修の責任を負うものではありません。しかし、一人一人の組合員の「知識を高めたい」「いろんな経験を聞きたい」「資質を高めたい」などの要求を実現するため、当局に研修の実施を要求するとともに、自主的に行う「勉強会」などの開催を支援します。

5.広範な国民・労働者との共同の拡大をめざす

 社会保険庁改革の名の下に私たちに仕掛けられた攻撃は、まさに国家的攻撃であり、理不尽な解雇は国家的不当労働行為と言わなければなりません。この攻撃の背景には、年金制度の大改悪があり、この改悪に対する国民の怒りを政治から背け、同時に公務員制度改革の推進と連結させて、国民不在のまますすめられました。
 その結果、社会保険庁解体後、年金記録問題もそれに付随する年金再裁定の問題も何ら解決しておらず、かえって解決の展望を失っている始末です。こうした実態を広範に、正確に広げ、「社会保険庁改革(解体)」は国民のためにならなかったこと、国民が求めている制度改善の方向はどういった方向なのか、国民的な議論に広げていくことが重要です。
 引き続き、年金講師団としての活動を強化するとともに、全国各地で連鎖的に年金集会やシンポジウム、学習会などを積極的に開催し、世論喚起をめざします。また、多くの労働組合を訪問し、精力的に訴え、労働者の重要な課題として位置づけられるよう取り組みます。

6.組織の強化・拡大に取り組む

 各職場単位で、労使協定を締結したり、交渉を行う上で組合員が多いことは、決定的に重要です。正規職員、准職員、契約職員など、採用区分と処遇が多様化しています。これは、使用者が労働者を使用しやすく、職場での団結を阻害するために取られている雇用政策に他なりません。
職場にいるすべての働く仲間の要求を実現し、団結して仕事もできるよう、組織の強化と拡大を重視し、教育宣伝活動を強めます。そのために、要求や運動の交流、業務面でのワンポイントアドバイス、組合員の交流などを満載した協議会独自のニュースを発行し、情報や認識の共有化をすすめます。

 すべての職場から要求前進のたたかいをすすめます。その出発点は、要求の確立です。労働組合が職場の切実な要求をかかげて、使用者に迫り、使用者も真剣に応える努力をすれば、その中から職場改善の知恵が生まれます。労働組合が生活と労働条件改善を積極的に要求し、「緊張感ある労使関係」をつくってこそ、活力ある職場がつくれます。職場で様々な問題を充分に討議し、要求に練り上げ・確立し、建設的・積極的に提起します。行政の専門家として、職場の一つ一つの業務内容を見直し・改善を図ることは、行政民主化をめざす活動の基礎となります。労働条件の改善の課題でも、具体的な改善提案をしながら、改善を迫ります。

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