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◆第1787号 (2016年7月15日付)◆
社保庁職員の解雇撤回を 大幅賃上げ・増員は切実

厚生共闘 政府の責任で解決を
樽見官房長と団体交渉


 全厚生と全医労で組織する厚生共闘は6月29日、樽見英樹官房長と団体交渉を実施。厚生共闘からは佐藤議長、山本・香月副議長、杉浦事務局長が出席しました。
 冒頭、佐藤議長は(1)人事院勧告に向けて、国家公務員の賃金を大幅に引き上げ、職員の生活と労働の実態にふさわしい水準に改善すること。非常勤職員の年数一律の「雇い止め」を行わず、雇用の安定、均等待遇などをはかる法制度を整備すること。非常勤職員の賃金の時間額を最低1、000円以上に引き上げること。休暇について、常勤職員と同等の制度とすること。当面、無給の休暇を有給とすること。夏期休暇を制度化すること。
 (2)「定員合理化計画」を撤回して、大幅な増員と充分な予算を確保すること。国立ハンセン病療養所の医療、看護、介護の充実を図るため、医師、看護師、介護員等の必要な体制を確保すること。看護師の夜勤体制は複数・月6日以内とすることの要求趣旨を説明。
 続いて山本副議長が(3)社会保険庁の廃止に伴う不当な分限免職処分について、人事院の公平審査請求で処分取消の判定が出され、かつ分限免職回避努力が不十分であると認定したことを真摯に受け止め、政府・厚労省の責任で処分撤回、全面解決のために最大限の努力を行うこと。被懲戒処分者を一律不採用とする閣議決定を撤回すること。ILO勧告を尊重し誠実な対応を行うことの要求趣旨を説明。特に新たに全厚生に加入し困難を乗り越えて広島高裁でたたかう組合員さんの状況を紹介しました。

全面解決の英断を
佐藤議長が厳しく追及


 樽見官房長の回答を受け、佐藤議長は再要望を行いました。
 賃金・労働条件の改善の課題では、「公務員賃金は、地域経済に与える影響が極めて大きい。全国で懸命に働く職員に報いるため賃金改善の特段の努力を求める。現場では非常勤職員を抜きには行政運営は成り立たない。この夏の勧告で処遇改善が図られるよう各段の努力を求める」と発言。
 大幅増員及び国立ハンセン病療養所の課題では、「定員削減の影響は深刻な事態だ。国民の願う行政を進めるために現場の職員の意向を十分考慮し、必要かつ充分な人員と予算を確保するために最大限の努力を求める。ハンセン病療養所の増員への努力は評価する。療養環境の改善は、入所者にとって命を懸けた待ったなしの要求だ。増員の一層の努力を求める。行(二)職員の不補充政策は施設運営に深刻な影響がある。必要な職員は、直営の配置を求める」と発言しました。
 社保庁の分限免職の撤回の課題では、「回答は全く納得できない。大阪・高松判決は厚労大臣に分限回避努力義務があることを認める内容だった。人事院判定は、全体で25人の処分取消を行った。個別事情の問題ではなく、全体の枠組みに重大な問題があったことは明らか。厚労省の責任で処分撤回・全面解決の英断を下すべきだ。今、判断することがILO勧告を活かす道だ」と強く求めました。

官房長回答
定員確保に努力する 処分撤回は考えていない


●賃金・労働条件の改善
 公務員給与は、社会一般の情勢を反映した適切な水準にするとともに、公務の特殊性及び職員の生活実態を十分反映して安心して職務に精励できるものでなければならない。この考え方に基づき人事院に対して働きかける。非常勤職員の賃金は予算の制約があり、早急な対応は難しい。財政状況の許す範囲内で処遇改善に向けて検討を続ける。休暇制度の改善は毎年度、人事院関係局長宛に要望書を提出している。今後も安心して公務に専念できるよう機会を捉えて要望する。
●大幅増員、国立ハンセン病療養所の充実の課題
 政府全体で5年間・10%以上の合理化をすすめる大変厳しい目標だが、政府の一員として守っていく。一方で厚労省の重要な政策課題に着実に対応する。業務の重要性、特殊性を丁寧に説明し増員要求をして定員確保に引き続き努力する。ハンセン病療養所は引き続き定員確保に努める。入所者の高齢化が進んでいる状況を踏まえ必要な人員を確保する観点でいきたい。看護師の確保に努力するが「複数・月6日以内」の夜勤体制は今の状況からは難しい。
●社保庁廃止に伴う分限免職処分の撤回の課題
 人事院の処分取消判定は、請求者の個別の事情により処分の妥当性を欠く、公平性を欠くと判断されたもの。処分を行ったこと事態に違法性・不当性があると判断したものではない。裁判は係争中だが、これまでの地裁判決でも国の主張は認められている。処分を撤回する扱いは考えていない。当時、年金記録問題が大きな問題になり、職員が大変苦労した上で人員削減、組織廃止と非常につらい厳しい扱いになった。年金記録という大きな問題、政府に対する国民の信頼をつなぎ止めるための政府の判断の結果ではないかと受け止めて対応することだろうと思っている。懲戒処分者を一律不採用とする閣議決定の撤回は、政府に対する、年金制度に対する国民の信頼を確保する観点から行われたものと理解している。これを撤回することは難しい。ILO結社の自由委員会の報告書は、同委員会の今後の審議経過及び勧告の内容を踏まえ、引き続き適切に対応していく。


仲間を増やし大会を迎えよう 軍事研究を考える国研全国交流集会

 国立試験研究機関全国交流集会が6月17日に茨城県つくば市で開催されました。筑波研究学園都市研究機関労働組合協議会(学研労協)、国公労連による実行委員会が主催し、90人が参加しました。
 この集会は1982年に第1回集会が開かれて以降、34回目となる今回は「軍事研究を考える」をテーマに多面的にこの課題を深めました。

防衛省の資金で研究協力

 今、防衛省は研究を委託し資金を提供する「安全保障技術研究推進制度」を15年度から導入し、16年度で6億円に倍増。自民党国防部会は5月30日、17年度予算案の概算要求に百億円規模へ増額を盛り込むことを求める提言を中谷元・防衛大臣に提出。いま、防衛省との研究協力の課題が重大な問題になっています。日本学術会議も検討委員会を発足させデュアルユース問題などの検討を始めました。

議論を尽くすことこそ重要

 新潟大学名誉教授の赤井純治氏が「異常に急進展する軍事研究と研究者・研究機関、それとのたたかい方」と題して記念講演。「研究者を誘惑の罠に誘い込む論点が準備されている。軍事と民生(平和)の両用に使用可能とするデュアルユース論が一番典型的だ」と指摘し、「大学・研究所がこの問題の重大性を自覚し、議論を尽くすことが大事」と呼びかけました。

人が殺される現実の直視を

 パネルディカッション「軍事研究、デュアルユース、研究機関・研究者のあり方を考える」で戦争ジャーナリストの志玲氏は、軍事研究が作り出す武器は現実の戦場で何をもたらしているかと問い、海外取材の写真を紹介し「人が殺される現実を知る人間がいない。メディアも萎縮している。日本の人権感覚が危うくなっている」と指摘。

人類の福祉に役立つ科学を

 元気象研究所の増田善信氏は、太平洋戦争中、天気予報が消えた暗い過去を振り返り、「科学は人類の福祉に役立つもの。デュアルユースは、ごまかしのために使われている。科学は何のためにあるか。憲法の原点にかえって、議論して欲しい」と呼びかけました。

研究者がアンケートに回答

(質問)産官学の共同での研究が強まるなか、防衛省や米軍国防総省が予算を提供する「軍事研究・開発」に参画する大学や国立研究開発法人が増えています。こうした「軍事研究・開発」を進めるべきだと思いますか?(国立研究機関の研究者等797人が回答)


解雇撤回へ意見陳述

全厚生闘争が激励
広島高裁で口頭弁論開く


 6月9日、広島高裁(森一岳裁判長)で社保庁分限免職取消訴訟の第1回口頭弁論が開かれ、傍聴席を埋めた支援者が見守る中、控訴人が解雇撤回を求めて意見陳述しました。控訴人は、「分限免職となったことを自己責任と決めつけた判決は許せない。正義の実現のために処分の取り消しを求めます」と力強く述べました。
 控訴人さんは元福山社会保険事務所に勤務し分限免職になりました。人事院の公平審査請求で不当判定を受けた後、一人で裁判をたたかっていましたが今年5月、全厚生に加入しました。これで、解雇撤回裁判は、京都、広島、高松の3高裁、北海道、秋田、東京、愛知の4地裁でたたかい、原告・控訴人は29人となりました。
 裁判後の報告集会には、裁判傍聴から結集した支援者34人が参加。萩田啓祐弁護士が分限免職に至る背景及び裁判の争点について報告。控訴人さんがお礼と支援を訴えました。
 広島県労連、中国ブロッック国公の組合さんが挨拶。全厚生から各地の闘争につき、愛媛事案、愛知事案、京都事案を報告。最後に全厚生闘争団が合唱し、全厚生山本潔委員長がお礼と決意を述べ、団結ガンバローでたたかう決意を固めました。

分限免職の取消しを切々と訴え

 私は、国民のために働きたいと願って仕事をしてきました。当時、連日深夜23時頃まで残業をし、その日のうちに片付けられなかった案件は、翌日の早朝に出勤して処理をする日々が続きました。過重労働のために精神疾患を発病し約2年間、病気休職を余儀なくされました。厚労省や他省庁への転任を希望しましたが適いませんでした。妻は、私が分限免職になるかもしれないことで将来を悲観し自殺をしました。双子の子供たちが社会人になるまで頑張らなければなりません。
 分限免職は私の自己責任という一審判決は、到底納得できません。こんな解雇が通用するなら安心して国民に奉仕できなくなります。国民のための行政の実現のためにも裁判で勝訴したいです。
 なんとしても分限免職を取り消すためにご支援をお願いします。


不当解雇撤回へ全力
3高裁4地裁での戦い

 元社保庁職員不当解雇撤回裁判は、元職員の職場復帰を求め全国3高裁4地裁でたたかっています。
 各事案の期日日程は以下のとおりです。
 ◆北海道(札幌地裁) 11月24日午前11時半〜第23回口頭弁論
 ◆秋田(仙台地裁) 8月10日午後3時〜 第12回口頭弁論
 ◆東京(東京地裁) 8月29日午前11時〜 第12回口頭弁論
 ◆愛知(名古屋地裁) 7月25日午前10時〜 第15回口頭弁論
 ◆京都(大阪高裁) 7月8日午後3時〜 第4回口頭弁論
 ◆広島(広島高裁) 9月15日午前11時〜 第2回口頭弁論 次回期日で原告側が新たな主張を追加
 ◆愛媛(高松高裁) 第1回口頭弁論の日程は未定


公務職場を元気に
国公青年セミナーに参加して

 6月17〜18日に開催された国公青年セミナーに参加しました。一日目は「伝える」行動として議員要請を行い、二日目は「聴く」行動として学習会を行いました。
 議員要請では、定数削減による過密労働に苦しむ若手公務員の現状を伝え、「定員合理化計画」の中止を要請しました。また、学習会では、「そもそも労働組合とは何か」という労組の存在意義を確認する内容から「いかにして労働運動を広げるか」という実践的な内容まで、大変貴重なお話を聴くことができました。
 さらに、全国から結集した他単組の青年たちとの交流会は、新鮮で刺激的なものでした。
 これらの行動や交流のなかで、公務というものが極めて多様で国民生活に密接に関わっていることを改めて実感しました。そして、労働運動を通じてそのような公務環境の維持・向上に取り組んでいることの誇りと責任を再認識するとともに、公務職場を元気にすることで国民の暮らしも元気にしたいという思いを強くしました。(全厚生本部書記)


全厚生70年と私
朝日訴訟は生存権の原点

 就職した1960年から退職した日までの37年間、全厚生組合員でした。そのうち5年間は全厚生本部の専従をやりました。値切られていた人事院の賃上げ勧告の完全実施を要求するストライキなどを思い出します。
 全厚生は本省、試験研究機関、福祉施設、社会保険と職場、職種が多岐にわたる組合員によって構成されているため(麻薬取締事務所にも団結権がありました)、労働条件も様々でしたがお互いに違いを認め合い、支えあって団結して活動できたと思います。
 当時私は役員ではなかったのですが、生存権の原点となっている朝日訴訟に対して、本省の組合員も含めて全厚生が朝日茂さんを支持し、応援して果たした役割は極めて大きかったと今でも誇りに思っています。(統計情報支部OB)

男女格差の解消に奮闘

 全厚生が結成されて70周年、私も早や、70歳になります。
 「今日の非常識は、明日の常識」という言葉があるように、昇任昇格・男女格差解消の運動の歴史はその言葉そのものです。「だれでも事務所課長昇任を」という要求は、当初はさまざまな議論がありました。しかし、他県との情報交換を進めて、要求の正当性もあり、1975年の雇用均等法の施行などが追い風となって男女の昇任昇格・格差解消の運動が大きく前進していきました。
 当局との団体交渉、人事院との懇談など今は懐かしい思い出です。
 労働組合に結集して働き続けられたことが、今も私の誇りになっています。
 今、職場では雇用の実態が複雑で要求作りさえ難しい時代かと思います。それでも働く者は労働組合が支えです。次の10年を見据えて運動を進めてください。
(愛知県支部OG)


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