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◆第1778号 (2013年8月15日付)◆
59年ぶりに給与勧告を行わず

 人事院は8月8日、国会と内閣に対し、職員の給与等に関する報告並びに国家公務員制度改革等に関する報告などを行いました。「賃下げ法」による減額後の給与が民間に比べて7・78%(2万9282円)も低いことを確認しながら、俸給表の官民格差が極めて小さいとして昨年に続いて月例給、一時金とも改定を見送りました。諸手当を含め給与の改定勧告を行わず、報告のみにとどめたのは1954年以来、59年ぶり。国家公務員法に定められた情勢適応の原則、5%以上の格差がある場合の勧告義務に照らして、実額比較に基づく改善勧告を行うべきでした。労働基本権制約の「代償機関」としての役割を放棄した人事院に対し、怒りを込めて抗議するものです。

[代償機能の放棄]
 今回、人事院は現行のラスパイレス方式による勧告が確立した1960年以降では初めてとなる、俸給表や諸手当などの改定勧告は一切行わず、「給与等に関する報告」のみを行いました。人事院は、報告のなかで「労働基本権制約の代償機関として、平成26年4月以降は民間準拠による給与水準が確立される必要がある」とし、国会と内閣に対して人勧制度への理解を要請しています。しかし、「賃下げ法」に基づく給与減額によって、「民間準拠による給与水準」が確保されていない現状を来年3月までは是認するもので重大な問題です。

[給与制度の見直し]
 さらに、社会経済情勢が急激な変化を続けていることを理由に、「給与制度の総合的見直し」の検討を打ち出しました。給与減額支給措置終了後に見直しを実施できるよう準備を進める構えです。具体的な検討課題は4点。(1)組織形態の変化への対応、(2)地域間の給与配分の見直し、(3)世代間の給与配分の見直し、(4)職務や勤務実績に応じた給与(人事評価の適切な実施と給与への反映、行二職員の自動車運転手や守衛などの職種についての給与の有り方、諸手当の在り方)です。これらは、行政を第一線で支えている職員の誇りと働きがいの基本となる重大な労働条件であり、国公労連との充分な交渉・協議を尽くし、合意と納得を得ることが検討の大前提です。「早急に結論を得る」ことを優先した一方的な制度見直しの押しつけや制度改悪を許してはなりません。

給与等に関する報告より

□月例給、ボーナスの改定なし

(1)月例給の格差について、給与改定・臨時特例法に基づく給与減額支給措置による減額前の格差を算出し、併せて減額後の格差も算出

(2)公務の期末・勤勉手当(ボーナス)の支給月数は、民間と均衡しており、改定なし
○月例給の格差
(給与減額支給措置での減額前)       76円 0.02%
(給与減額支給措置での減額後)     29,282円 7.78%

○ボーナス
 公務の支給月数(現行3.95月減額前)は、民間の支給割合(3.95月)と均衡しており、改定は行わない
(参考)減額後の公務の支給月数3.56月分相当

□給与制度の総合的見直し等

 給与構造改革に対する勧告を行ってから8年が経過し、我が国の社会経済情勢は急激に変化。国家公務員の給与については一層の取組を進めるべき課題が種々生じてきている。
 国家公務員の給与に対する国民の理解を得るとともに、公務に必要な人材を確保し、職員の士気や組織の活力の維持・向上を図っていくため、俸給表構造、諸手当の在り方を含め、給与制度の総合的な見直しについて検討を進め、早急に結論

□雇用と年金の接続

 閣議決定を踏まえ、各府省において現行の再任用を活用した雇用と年金の確実な接続を図る必要

○雇用と年金の確実な接続のための取組
○任用職員の給与

□適正な給与の確保の要請

 給与減額支給措置が終了する平成26年4月以降の給与については、本年の報告に基づく民間準拠による給与水準が確保される必要。国会及び内閣に対し、勧告制度の意義・役割に深い理解を示し、民間準拠による適正な給与を確保するよう要請


よく遊び、よく学び 楽しく全厚生青年学習交流会

 青年対策部は7月27〜28日、神奈川県で青年学習交流会を開催。4支部と本部から、子ども含め11人が参加しました。
 1日目は講師に日本平和委員会理事を招き、「平和とは何か?」をテーマに学習会を行いました。講師が投げかけるテーマに対して、1人1人が考え、意見を言い合うという形式で進められました。色々な思想や立場の違いがある中でも、お互いを認め合い、いかに戦争を許さない声を広げていくかを考える学習会でした。
 2日目は、朝から海水浴&スイカ割りで盛り上がりました。午後からは横須賀港の米軍基地を船に乗って見学。神奈川平和委員会の新倉裕史さんに解説をしていただき、在日米軍基地があることの矛盾について学びました。
 1日目夜の花火大会が、風が強すぎてうまくいかなかったり、2日目の軍港めぐりのチケットが予想外の売り切れで一部の人しか見学できなかったりと、色々ハプニングはありましたが、内容の充実した2日間でした。参加者からは、「平和とは何か?議論しながら聞いた話は、身につく度合いも段違いだと思う」「普段働いていておかしいと感じることを皆と交流でき心が軽くなった」「スイカ割りは人生初」「軍港めぐりは講師の方の話が本当に良かった」などの感想が寄せられました。
 あとはもう少し参加人数が充実すればいうことなしなのですが、これは来年へ向けての課題としたいと思います。


期待に応える行政体制を
大臣官房人事課長と交渉

 全厚生は7月31日、夏期闘争の重点要求で大臣官房人事課長と交渉を実施。交渉団は、山本委員長、市川・杉浦・山崎副委員長、川名書記長、梅澤書記次長、北久保・小出・佐藤・茂木中央執行委員が主席。人事課からは、土屋人事課長、浜谷参事官、上沼人事調査官らが対応しました。
 冒頭、山本委員長は、今、公務の民営化政策が様々な問題を引き起こしている。国が責任をもってこそ、安定的な行政運営の保障となると指摘した上で、(1)生活と労働の実態にふさわしい賃金改善、(2)非常勤職員の処遇改善・安定的な雇用確保、(3)国立福祉施設の拡充や組織再編の課題、(4)日本年金機構の業務体制の拡充、(5)人事院判定をふまえ、社保庁職員の不当解雇撤回・全面解決の課題を強調。誇りと生きがいのもてる職場環境づくりへの努力を求めました。これに対し、土屋人事課長が一括回答。回答後は、交渉団が各課題について厚労省当局の引き続く努力を迫りました。


回答要旨(◇要求 ◆回答)
生活と労働の実態にふさわしい賃金改善のために努力すること。
職員の給与は、公務の特殊性及び職員の生活実態等を十分考慮し、職員が安心して職務に精励できるように、適切な措置を講ずるよう人事院に要望していく。
人事評価制度は、公平性・客観性・透明性・納得性を備えた育成重視型の仕組みとすること。
人事評価制度の運用にあたり、職員に十分な説明を行うとともに、評価者研修の受講促進を図るほか、期首・期末面談で職員の方とコミュニケーションをとることが大事。評価結果の開示、苦情処理手続を通じて、公平性・客観性・透明性・納得性を備えた制度に高めることが大切。問題点を把握、検証し、適切な運用に努めたい。
パワーハラスメントを根絶するため、使用者責任を果たすこと。
パワーハラスメントは、どの機関でも、あってはならない前提で予防・防止に努めなければならない。事務次官通知等で幹部職員、全職員に周知を図っている。圧倒的に幹部職員の意識が重要。研修等で注意喚起を進めていきたい。
非常勤職員の処遇改善、安定的な雇用保障に努めること。
非常勤職員の処遇改善は、同じ職場で働いている仲間という意味で非常に大事。安心して公務に専念できる環境をつくるよう努力していきたい。休暇等の改善は、人事院に要望している。引き続き機会を捉えて要望していく。期間業務職員の採用は、公募が原則。実績がある方は、勤務実績に基づき公募によらない採用ができ、原則として2回まで。2度更新された方は、適正な公募の結果で採用されることは制度上否定されていない。各現場の管理者によって運用が異ならないよう徹底していく。
伊東センターを廃止せず、存続・拡充させること。職員の身分・労働条件の後退を招かないこと。
伊東センターは、国リハへの統合を決めている。政府の方針をふまえ、効率的な施設運営のためにはやむを得ない。利用定員70名を国リハにそのまま移す。伊東センターに勤務する職員は、国リハに移動する利用者の対応を最優先に適材適所の観点できちんと対応していきたい。また、職員の意向を個別に聞き、対応していく。
厚生科学研究は、国が責任を持って拡充を。独法改革は、情報公開し、一方的に進めないこと。
成長戦略の中で拡充の方向で動く。そこを捉え、実質を確保していく。独立行政法人改革は、新しい議論が始まるところで、しっかりと固めていく。行政改革推進会議の動きも注視して、情報提供に努めるとともに、両研究所と充分な合意形成を図るように厚生科学課としても努力するよう伝える。
日本年金機構の安定的な業務運営を行うために、基本方針を見直し、業務体制を拡充すること。
厚労省としても国民の信頼回復の観点から、日本年金機構をバックアップし一体となって年金事業の運営に取り組むことが必要であると強く認識している。年金局でも安定的な業務運営を行うべく、必要な予算確保のために努力していると認識している。基幹的な業務が損なわれることがあってはいけない。現場の状況を年金局にもよく確認してもらいやっていく。
政府・厚労省の責任で分限免職処分の撤回・全面解決のために最大限の努力を行うこと。
処分が取り消された者は、人事院の判定に従い、すみやかに身分の復活等の対応を行っている。公平審理は、請求者ひとりひとりの事情を踏まえて判断をしている。他の請求者は、今後の人事院の判定を待つことになる。基本計画の閣議決定を撤回することは難しい。


国立福祉施設の拡充と
施設管理室長と交渉

 全厚生は7月26日、社会福祉部門の重点課題で施設管理室長交渉を実施。交渉団は、山本委員長、今井・杉浦副委員長、川名書記長、小出中執、西田書記、国リハ支部・伊東支部・神戸支部・福岡支部の各支部代表の計15人が出席。施設管理室からは、佐藤室長、島村補佐らが対応しました。
 地方センターを廃止せず、存続・拡充させることや、国立施設の機能強化の要求に対し、「伊東センターの廃止方針は決まっている。移転のところまでの職員配置はこれまで同様、きちんと取り組んでいきたい。訓練が廃止までに終了しないと見込まれる方は、それ以降の意向を確認し必要な支援を行っていく必要がある」と回答。回答後、利用者のニーズに応える施設運営のあり方で問題提起するとともに、伊東で働く職員の意向や希望を充分に尊重し、職員の身分・労働条件の後退を招かないよう、万全の措置を取ることを要求。また、塩原センターの廃止に伴う特別な異動を希望する職員に対する対応では、「国立きぬ川学院という希望は承知している。確認が引き継がれるよう、責任をもって対応したい」と回答しました。
 施設運営に必要な予算・要員の確保の要求では「(1)4年間で10%以上の合理化を行っている、(2)多岐にわたる職種の職員が日々、障害者の訓練・治療等を行っている現業施設であって合理化によりスクラップする事業はない、(3)自立支援局、病院、研究所が三位一体でバランスよく機能・維持しナショナルセンターとして新たなニーズにも適切に対応しなければならない」と説明。省内で合理化の割当で特段の配慮を求めていると回答。介護員の夜間手当の増額要求には、「重要事項として、粘り強く要求していく」と回答しました。


厚生科学研究、国の責任で
厚生科学課長と交渉

 全厚生は7月30日、試験研究機関の重点課題で厚生科学課長交渉を実施。交渉団は、山崎・杉浦副委員長、川名書記長、小浦中央執行委員、感染研・国衛研・科学院・基盤研・健栄研の各支部代表、伊藤厚研連事務局長、西田事務局員の15人が出席。厚生科学課からは、宮嵜課長、中山研究企画官、大重総括補佐、甲田補佐が対応しました。
 冒頭、山崎副委員長が挨拶し、杉浦副委員長が要求趣旨を説明。厚生科学研究の拡充のための基本課題で要求前進を求めました。これに対し、宮嵜課長が一括回答。
 厚生科学研究の体制について、「(1)政策研究所、(2)公務員の研修機関、緊急時の国の責任において直接実施すべき健康危機管理を担っている等の理由により独立行政法人化されなかったもの。現在でもその状況に変化はないと考えている」と回答。
 「日本版NIH」創設などの政策展開では、「厚生科学研究及び各研究所の組織や機能への影響がある場合は、『日本版NIH』創設を円滑に行う観点から関係機関へ今後の政策展開について説明したい」と回答。独立行政法人改革の課題では、「情報提供に努めるとともに、改革に当たっては、両研究所との充分な調整を行いながら進めたい」と回答。国衛研の川崎移転の課題では、「今後とも移転計画の概要は、移転を円滑に進める観点から適宜情報提供するとともに、特定国有財産整備計画に沿った施設整備が実施できるよう努めたい」と回答。情報システム改革の課題では、「必要な対策が講じられるものと認識しているが、システムに支障が来す恐れがあるものがあれば相談されたい」と回答。パワーハラスメントの課題では、「防止についての注意喚起を行うとともに通報者が不利益な取扱いを受けないように配慮するなど適切な対応に努めるよう指導したい」と回答しました。


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