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◆第1770号 (2012年10月15日付)◆
知恵だし、声だし、元気だし さあ、みんなでやろう!
全厚生第76回定期大会ひらく

 全厚生は9月15・16日、「活かそう憲法!ふやそう仲間!必ず勝ち取る解雇撤回!知恵だし、声だし、元気だし さあ、みんなでやろう!」をメインスローガンに、静岡県熱海市で第76回定期大会を開催。全国から代議員・傍聴など69人が参加し、2012年度の運動方針と財政方針を全会一致で採択し、たたかう方針を確立しました。
 大会は、40人が発言。大会宣言を採択し、新役員を選出しました。来賓として国公労連・岩崎恒男副委員長、全医労・岸田重信委員長、日本共産党・田村智子参院議員が連帯あいさつをしました。

委員長あいさつ 「当たり前」実現しよう

 いま、世の中が大きく動いている。
 3・11大震災以来国民を大切にしない政治の実態があらわになっているが、このことは、反原発の世論、消費税増税反対の声、米軍のオスプレイ配備反対の切実な要求などの広がりにつながっている。
 自分の意見を言い、行動に移す空気が広がり、「当たり前のこと」を「当たり前に言う」、そのことが「当たり前」になってきている。
 特に原発問題では、財界本位の原発推進のエネルギー政策をすすめるためにマスコミを使って世論誘導をしても、国民の「原発ゼロ」の世論は揺らいではいない。どんな圧力にも負けない国民の強さがいま発揮されつつある。
 こうした状況は、私たちの職場とも無縁ではない。
 私たちの要求をめぐっては、大きな前進ではないが、国公労連が「賃下げ違憲訴訟」を提起した。公務員バッシングの中で、批判的な意見もあるが、「賃金下げるな」という当たり前の要求を当たり前に主張したことが重要だ。
 社保庁解体時の不当解雇撤回のたたかいでは、「働くものの首を切るな」という当たり前の要求を実現するために大いにたたかおう。
 いま憲法がますます輝いている。当たり前のことを当たり前に書いてある憲法を後ろ盾に、仲間を増やし、一人一人の知恵と声を出し、元気を出して、みんなで大いにたたかうための方針をしっかりつくりあげよう。

書記長・運動方針の提案 輝く未来を展望して

 今、この国のあり方が根本から問われている。歴史的な時代の転換点にふさわしく、輝く未来を展望してたたかおう。
 職場でみんなの笑顔をつくるには、労働組合のさわやかな風を吹かせ、民主的な力を高める努力が大切。労働組合の原点に立ち、仲間づくり、団結づくりを職場で行おう。
 本省職場で働くルールの確立をめざす。塩原視力障害センター廃止に伴う職員の雇用を守る。厚生科学研究の拡充をめざす。社会保険行政の安定した業務運営をめざす。このために、全厚生は道理ある要求を高く掲げてたたかう。
 組織強化・拡大は、労働組合の最重要な課題。すべての職場で対話を進め、2年間で新しい仲間を約250人迎えた。2年前に掲げた500人目標の半数に到達した。この運動を大きなうねりにするために奮闘する。
 不当解雇撤回をめざす人事院公平審査請求は、総仕上げの段階に入っている。年度内での処分取消し判定(解雇撤回)をめざし全力を尽くす。併せて、裁判闘争に全力で取り組む。11月2日の中央総決起集会を成功させるために全力をあげる。
 公務員賃下げ違憲訴訟は、公務員攻撃のねらいを明らかにし、国民の支持と共感を得ながらたたかう。高齢期雇用や退職手当の削減阻止の取り組みを強化する。
 たたかいの土台に憲法を据えて、要求の前進をめざす。社会保障講師団をつくり、活動する。草の根から、平和と核兵器廃絶をめざす。「原発ゼロ」をめざす共同をを広げる。今後の1年、志を大きく、共同を広げ、たたかいを継続・発展させよう。

第2議案提案 拡大に全力・専従体制強化

 第2号議案を提案した市川副委員長は、決算は、拡大目標500人をかかげ2年で半数の250人を達成するなど、全支部で組織拡大に奮闘したこと、その一方で組合員の減少もあり、約80万円の減収となったことを報告。来年度は、安定した財政確立に向け、引き続き組織強化拡大を前進させること、専従体制を現行の1名から2名に強化することなど財政方針と予算案を提案しました。
 12年度の本部組合費は次の計算方式が適用されます。
 一般会計分=本俸×1・1%+420円+120円(専従役員保障特別会計分)。非常勤職員の本部組合費は、1000円です。
 なお、公務部門で06年3月以前からの組合員は、昨年度に引き続き、06年3月時点の本部組合費の額です。


大会宣言(要旨)

 全厚生は「活かそう憲法!ふやそう仲間!必ず勝ち取る解雇撤回!知恵だし、声だし、元気だし さあ、みんなでやろう!」をメインスローガンに第76回定期大会を開催し、2012年度運動方針を全会一致で確立しました。
 野田内閣は、国民に負担を強いる冷たい政治を行っています。この動きに対し、原発再稼働反対の首相官邸前の抗議行動などに国民が自主的に参加するなど大きなうねりを起こし始めています。
 不当解雇撤回のたたかいは、全労連規模に広がり、年度内の人事院勝利判定に向けた山場の運動として、全国的なオルグ活動を展開。11月2日に1000人規模で開催される中央決起集会の成功に向け、全厚生は大いに奮闘することを確認しました。
 「公務員賃下げ違憲訴訟」では、全厚生から6人の組合員が原告団に加わり、賃下げ自由を許さないたたかいをはじめました。
 本省職場ではこの間、期間業務職員の処遇改善の取り組みを進める中、新入(正規)職員を対象とした労働条件の説明会などの地道な取り組みにより、新しい仲間を迎え入れています。今後、恒常的残業の改善などの要求実現のため、更なる組織強化・拡大の決意が表明されました。
 日本年金機構の職場では、今後も続く有期雇用職員の任期切れ問題など、今すぐに解決しなければならない問題をかかえています。安心して働き続けられる職場づくりのために、みんなの声を集めて要求に変えていくことが重要です。
 試験研究機関は、厚生行政に科学的根拠を与える責務をもって業務を遂行するために、研究・労働条件の改善に向けて引き続き努力を行います。
 国立福祉施設の組織再編では、塩原視力障害センターの廃止で分限免職は絶対に許さないことを強く決意。利用者のための更なる機能強化・拡充を求める運動を障害当事者や地域とともに進めます。
 労働者の健康や働く権利を守るべき厚生労働省の職場で、パワハラの問題が深刻です。職員が健康で生き生きと働き、その力を十二分に発揮できる職場をつくるために、勤務時間管理の適正化や人権侵害行為であるパワハラを根絶させるために力をつくします。
 全厚生のこの間の積極的な取り組みが、共感を広げています。さらに要求実現の花を咲かせるまで、組合員みんなで知恵を出し、声を出し、元気を出してやりぬきましょう!!
 以上、宣言します。

2012年9月16日
全厚生第76回定期大会


組織強化・拡大に全力

 討論では、18支部・40人の代議員・傍聴者が発言しました。

不当解雇撤回めざし全国で奮闘

 不当解雇撤回闘争について、東北の代議員は、闘争団で団結激励集会を開催し40人が参加。今後、街頭宣伝なども頑張ると発言。四国の代議員は、愛媛県の不当解雇撤回の闘いを報告。また年金事務所で職場集会を行ったと述べ「全厚生の旗を守って前進していく」と決意を表明。北海道の代議員は裁判の第4回口頭弁論を11月に行う。有志の会は100人、支える会は180人を超え運動の広がりに確信、道内オルグを行うと発言。中部の代議員は、全国オルグのトップを切って北陸3県と三重県を中部支部の役員を配置して実施した経験を報告。中部の代議員は、静岡で安心年金つくろう会と闘争団を支える会を軸に活動を広げていると報告しました。四国の代議員は、分限免職後、准職員で採用、さらに正規職員として登用された。当初の機構不採用がなぜだったのか人事院審理で追及していくと発言。当事者は「訴えを広げ、勝利に向け奮闘したい」と決意を表明しました。

要求前進と一体で組織強化・拡大を取り組む

 近畿の代議員は、労働組合の重要性をツイッターなどで工夫して広げたい。非常勤職員の雇止め撤回を求め頑張る。近畿の代議員は組合を辞めたい人に話をしたことで残ってくれた。組合は人間関係が大事であり、1人ひとりとつながりたい。機構本部の代議員は、雇用・人事異動のルールの明確化が重要だと指摘。組合員拡大を引き続き頑張ると発言。函館の代議員は、組合で視野が広がり誘ってくれた先輩に感謝。函館国公に結集し、組合員拡大をしていくと決意を語りました。本省の代議員は、青年の組合加入が増加、超勤縮減問題も取り組んでいる。さらに多くの仲間と交流していきたいと発言しました。

機構・けんぽの労働条件改善・非常勤の雇用守るたたかい

 機構発足後2年9カ月、ブロック本部交渉や職場集会を開催し要求前進の取り組みを開始している報告が相次ぎました。中部の代議員、機構本部の代議員、四国の代議員、中部の代議員は、人事異動、パワハラなどで当局を追及している経験を報告。広域人事異動の改善を求める発言も多く出されました。近畿の代議員は、自分の生活や人とのつながりを引き剥がすもので、意味のない異動はやめるべきと指摘。関東の代議員は、新潟は県外異動が多く、戻ってきても単身赴任など家庭の事情が考慮されない。機構本部の代議員は、広域異動者は準備のための引越し休暇が必要。もっと職員を大切にすべきと発言しました。
 中部の代議員は人事評価制度が進められてきた。職場はうつ病が多発し、パワハラ問題も生じている。職場のコミュニケーションが大切。レクで団結を強めたいと発言。関東の代議員は、長い経験がある有期雇用職員が雇止めになり職場が混乱した。1月にブロック交渉を行ったが、引き続き職場環境の改善を進めていく。機構本部は運動方針はたたかいの旗印。非常勤の雇用を守るたたかいを進める。近畿の代議員は各職場訪問、団体交渉を2回行ったことを報告。近畿の代議員は、雇い止め反対署名を480枚集めた。今後、職場の問題点を分析し、組合員の声を反映させることが重要だと発言。また9月に近畿全県で早朝ビラ配布を行うなど組織拡大の取り組みを報告。関東の代議員は、けんぽ協会で広域異動に伴う宿舎問題や契約職員の処遇改善を訴えました。

国立福祉施設の存続・雇用確保

 福岡の代議員は、交渉を重ね、国立施設を残し拡充を求める国会請願を行なった。組合も地域に溶け込み積極的にアピールしていく。国リハの代議員は、自立支援法は、国が県から指定を受けるという、全くおかしな規定。自立支援法から漏れる人を救うのが国の役割。国民サービスの視点で国リハの役割は重要と発言。塩原の代議員は「存続を求める会」の活動を頑張ってきた。今はセンター長と廃止に伴う雇用確保の交渉を行っており、職員の雇用を守るたたかいを最後まで頑張ると決意。伊東の代議員は、脊髄損傷の障害をもたれた方が、在宅ケアに行ってしまっている。重度障害の専門化がいるこの施設をなくしていいのかが問われていると発言。神戸の代議員は理想を現実にするため、利用者の立場で組合として声を上げ、今後もたたかっていきたい。別府の代議員は、40年間の活動をふりかえり、地道な活動を紹介し、引き続き頑張っていきたいと発言しました。

研究機関の労働条件改善を

 感染研の代議員は、4人の非常勤職員が組合加入。再任用では、希望者の全員採用に向け頑張る。基盤研の代議員は、国に合わせた賃下げの課題で当局交渉をした。青年対策部で開催した青年学習交流会に2人が参加し、組合活動の幅の広さに認識を新たにした。もっと職場で組合員が集まれる企画を考えていきたいと発言しました。

本省で労働条件の改善めざす

 本省の代議員は非常勤職員を中心にランチ学習会など様々な企画を積み重ね、新しい仲間を迎えている。正規職員も加入した。うつ病での病休者が増加、超勤の縮減は重要課題。退職金の削減は関心が高い。色々な問題点を出し宣伝したい。本省の代議員は本省共闘で、人事課長交渉を7月に実施。今後は、宣伝行動などを取り組み、職場を基礎に要求前進をめざすと発言しました。

平和・女性・青年・権利守る闘争

 原水禁世界大会の報告では、機構本部の代議員は「福島県民は放射能の恐怖の中で暮らしている。原発はすぐになくすべき」。「近畿の代議員は、被爆体験を聞いて戦争は何も生まないと感じた」と発言。近畿の代議員は青年対策部の取り組みを報告。「若い人の力をつなげて、今後も青年部の取り組みを進めたい」。近畿の代議員は青年学習交流会で原水禁運動について学び、継続した運動が変化をつくると確信した。私たちも職場や社会を変えるために頑張りたい。関東の代議員は女性交流集会など女性部の活動を報告。さらに地域の労働組合で訴えて、社保庁解体の実態を伝えていきたい。近畿の代議員は、労働組合は民主主義の学校。橋下「維新の会」の暴走をとめるために自らの責任を発揮したい。国公法弾圧事件でたたかう関東の代議員は、闘争支援に感謝。歴史を変えるつもりで頑張ると決意。本省の代議員は、賃下げ違憲訴訟の原告として、人事院の裏切り行為を許さずたたかうと決意を述べました。


労働組合の力大きく 委員長が総括答弁

 2日間で40人の発言を通じて、職場での豊かな実践に基づいて、運動方針が分厚く濃厚に肉付けされた。
 福祉職場からは、国リハに組織的に統合されたことによって、所属長が問題解決のために努力をしない実態が強調され、研究機関の職場からは、パワハラの問題が出された。社会保険関係の職場でも、所属長の権限が制限されていることによる問題が指摘された。
 いずれも職場における民主主義を破壊することであり、放置できない、重要でかつ共通する課題として共有することができた。
 年金機構の職場からは、ブロック本部との交渉や職場集会の開催が報告された。このことは、要求実現をめざすたたかいの方向が、展望をもって見え始めたことを示している。本省支部で、期間業務職員の処遇に関する学習会などを開催し、権利を確認するとともに問題や課題を知ることは、一人一人が、その解決に主体的に関わるきっかけとなっていることもわかった。自らしっかりと職場を見つめ、職場・仕事のあり様、要求など自らの政策づくりが重要になっている。
 一人一人の仲間がしっかりつながり合いながら、労働組合の力を大きくし、あらゆる分野で大いに努力と工夫をして、次に会うときには要求の実現や職場の変化などを多いに喜びあおう。


期待に応える行政体制を 大臣官房人事課長と交渉

 全厚生は8月2日、大臣官房人事課長交渉を実施。人事課からは小川人事課長、樽見参事官、上沼人事調査官らが対応しました。
 冒頭、山本委員長は、(1)憲法違反の国家公務員の賃金削減法の廃止を前提にして、人事院勧告に向けて、国家公務員の賃金改善にむけて最大限の努力を行うこと、(2)社会保険庁職員の不当解雇撤回と北久保和夫さんの分限免職処分の取り消し、有期雇用(当初2年3カ月)の非常勤職員の雇用確保、(3)塩原視力障害センターの廃止に伴う人事異動での職員の意向を最大限尊重し、万全の措置を求めることを強調。誇りと働きがいのもてる職場環境づくりへの努力を求めたのに対し、人事課長が一括回答。回答後、各課題について交渉団が要求前進にむけた厚生労働省当局の努力を迫りました。

回答要旨(◇要求 ◆回答)
「国家公務員の給与の改定及び臨時特例に関する法律」を廃止し、国家公務員の賃金水準を改善するために最大限の努力を行うこと。
公務員の給与は、社会一般の情勢を反映した適切な水準が基本。公務の特殊性及び職員の生活実態等を十分に考慮して、職員が安心して職務に精励できる水準にすることが必要と認識している。「給与改定及び臨時特例に関する法律」は、人勧の給与改定と未曾有の国難に対処するための臨時かつ特例の措置をされたもの。組合のご意見は、人事院に伝えたい。
独立行政法人や日本年金機構に対し、給与臨時特例法に基づく賃金等の減額措置を押しつけず労使自治を尊重すること。
独法等は、自律的・自主的な労使関係の中で運営される趣旨は、当然である。公的分野で人件費削減に取り組む政府方針の趣旨を各法人の労使で十分ご理解いただき対応されることを期待している。
社保庁職員の分限免職撤回、安定した雇用確保を。被懲戒処分者の一律不採用とする閣議決定を撤回すること。2年3カ月の有期雇用職員は任期後の安定した雇用確保を。北久保さんの分限免職処分を取り消し、厚労省の責任で年金機構の正規職員とすること。
分限免職処分は、組織が廃止されたことに伴って国公法の規定に基づき適切に行われたもの。分限免職処分を撤回する考えはない。基本計画の閣議決定を撤回することは困難。分限免職処分の取消は、厚労省としては、自ら処分を取り消す考えはない。日本年金機構の職員採用に関して、厚労省には何の権限もない。北久保氏の採用に関して機構に対して行えることはない。
日本年金機構について、国民への信頼を回復し、安定的な業務運営を行うため、正規職員を増員して業務体制を拡充すること。
厚労省として、日本年金機構をバックアップし、一体となって年金事業の運営に取り組むことが必要であると強く認識している。
国立更生援護機関の組織再編にあたり、職員の身分・労働条件の後退を招かないよう万全の措置をとること。人事異動では、塩原で働く職員を最優先して対応すること。
職員の身分・労働条件は、統廃合に伴って伊東・塩原センター職員への勧奨退職は行わない。転勤先等の意向調査を行い、職員の意向を可能な限り尊重する。
独立行政法人国立健康・栄養研究所と医薬基盤研究所について、国民の命と健康を守るために、国が責任をもって拡充するよう努力すること。統合について、ビジョンや目的を明確にするとともに、一方的に作業をすすめないこと。
制度及び見直しに基づく取り組みを進めるにあたっては、法人職員の雇用の安定に配慮するとともに、両研究所と十分な合意形成に努めるように引き続き、厚生科学課に伝える。
業務量に見合う定員確保。メンタルヘルス対策、パワーハラスメント対策等、職員の健康と安全を確保すること。
要員確保は、業務の重要性、特殊性を踏まえ、必要な定員確保に最大限の努力を行っていきたい。パワー・ハラスメント対策では、研修等の機会を通じて、防止について注意喚起するとともに、職員からの苦情は通報者が不利益な取り扱いを受けないよう配慮するなど適切な対応に努めている。



2012年人事院勧告 「賃下げ法」を容認、改善勧告行わず
人事院の責任放棄 ―― 労働基本権回復が急務

政府に迎合し、給与改定を見送り

 勧告は、4月から「給与改定・臨時特例法」(賃下げ法)が施行されたもとで、人事院が月例給の官民較差を実支給額の比較で算出するのか、減額前の給与法の俸給表にもとづいて算出するのかが焦点でした。7・67%の官民格差を確認しながら、減額前の俸給表を下に行い月例給の改定を見送りました。また、一時金も、民間の支給月数が公務と均衡していることから改定を見送りました。
 国公法第28条は、公務員の勤務条件の決定原則として「情勢適応原則」を定め、社会一般の情勢に適応させるために人事院勧告を義務付けています。人事院は、減額後の格差は公務が民間を7・67%下回っていることを明らかにしています。5%を超える較差は歴然であり、人事院として改善勧告を行わない義務がありました。
 賃下げ回復勧告を行わなかった人事院は、労働基本権制約の「代償機関」として自らの責務を放棄したものと言わざるを得ません。

50歳代の昇格・昇級制度を改悪

 勧告では、50歳代後半層における官民の給与差を解消するとして、給与水準の上昇を抑制するため昇級・昇格制度を見直し、来年1月から実施するとしています。しかし、50歳代の給与差は人事管理の違いから生じており、単純な官民比較による引き下げは極めて乱暴です。また、人事院が段階的廃止を打ち出した給与構造改革の経過措置は、2014年3月の廃止に先送りされており、来年1月からの実施は容認出来ません。
 人事院は、「昇級・昇格の抑制であり賃下げではない」と説明しますが、職務の複雑・困難度の高まりや、退職手当への影響を考えれば到底認められません。昇級制度は、55歳を超える職員(医療職(一)、行政職(二)は57歳を超える職員)は、これまで以上に抑制されます。昇格は、各職務の級(1、2級を除く)の最高位号俸を含めた上位17号俸から昇格する場合、対応号俸が引き下げられるため、昇格に伴う俸給の上昇幅が圧縮されます。

高齢期の雇用 ―― 再任用の義務化の課題示す

 人事院は、昨年9月、国家公務員の定年を段階的に65歳まで引き上げること等を内容とする「意見の申出」を行いました。しかし、政府は今年3月、国公法第23条で定められた人事院の「意見の申出」を無視し、再任用の義務化の方針を決定しました。
 人事院は、報告の中で新たな再任用制度について、検討すべき課題や留意点をあげています。第1に、再任用希望者の大幅な増加が見込まれる中で、どうのようなポストでどのような仕事を担当させるかなどを課題にあげています。第2に、新たな再任用を円滑に行うため、人事管理全体の見直しや早期退職の支援、定員上の取り扱いなどを課題としてあげています。第3に、人事院が、再任用職員の職務や働き方等を踏まえ、必要な給与上の措置について検討し適切に対応するとしています。今後、国公労働者が長年培ってきた知識と経験を活かし、安心して働き続きられる制度確立に向けた交渉・協議が求められています。

公務員制度改革 ―― 協約締結権付与を否定

 公務員制度改革に関して、昨年に引き続き、人事院としての問題意識を表明しています。
 協約締結権の付与に関しては、第1に、公務の労使交渉における給与決定にあたって、市場の抑制力が働かないことから、自主的な決着が難しいことをあげています。第2に、国会が給与を最終決定する下では、使用者である大臣等も給与決定について最終決定権をもつ交渉当事者とはなれず、仲裁への移行が常態化する懸念があること等を強調し、昨年の報告での問題指摘から協約締結権付与に否定的な内容に変わってきています。
 この協約締結権を付与すること自体を否定することは、ILOによる再三の勧告をも無視するものであり、見過ごすことのできない問題であり、厳しく追及していく必要があります。
 人事行政の公正の確保の関係では、採用試験と研修、幹部職員人事の公正の確保についてふれていますが、この指摘は理解できるもです。


厚生科学研究、国の責任で 厚生科学課長と交渉

 全厚生は7月18日、厚生科学課長交渉を実施。厚生科学課からは塚原課長、尾崎研究企画官らが対応しました。
 冒頭、副委員長が挨拶を行った上で、書記長が要求趣旨を説明。国民の命と健康を守るために厚生科学研究の分野での役割が益々重要になっていることを強調。そのために、研究現場の要求・意見を十分聞き、改善に努めることを求めました。さらに、基盤研・栄研の独立行政法人研究所の統合や今後の政策方向での明確な目的・ビジョンを示すこと、国立医薬品食品衛生研究所の川崎移転問題での要求前進、人権侵害行為であるパワーハラスメントに対する対策強化を求めました。
 これに対し、塚原課長が一括して回答。回答後、各課題について、要求前進にむけて厚生科学課の努力を迫りました。

回答要旨(◇要求 ◆回答)
独法研究所統合のビジョンや目的を明確にし、情報を公開し、職員・労働組合との合意形成に努め、一方的に作業を進めないこと。
平成24年1月に閣議決定された基本方針で、平成26年4月に新たな法人類型及び組織に移行することが定められた。両研究所を統合して研究開発型の成果目標達成法人とする。統合は、事務・事業及び組織をそのまま引き継ぐことでなく、整理・合理化を徹底的に行うことが求められている。今後、両研究所の統合を進めるに当たっては、法人職員の雇用の安定に配慮するとともに、両研究所との十分な調整を行いつつ進めていく。
国衛研の川崎市への移転計画について、随時、情報を公開すること。老朽化した現在の施設の必要な整備を。併設宿舎の廃止方針を撤回すること。転居を強いられる職員のため、公務員宿舎の確保を。
国衛研の移転先は、平成24年4月に府中市から川崎市殿町へ変更決定された。現在の施設が老朽化しており、可能な限り早期に移転できるよう計画の見直しを行っている。計画概要は、移転を円滑に進める観点から適宜情報提供する。移転までの間、研究機能の維持に必要な改修・改造は、今後とも適切に対応する。併設宿舎は移転に併せて廃止する方針でありご理解を。移転後の宿舎は、国家公務員宿舎削減計画と宿舎建設計画の動向を踏まえ対応していく。
国立保健医療科学院の研修機能及び研究環境の維持に努めること。各機関との協力体制を確保し、拡充をはかること。
教育研修は、院内に教務会議等を設け、所要の検討、調整を行い、円滑な研修ができるよう努めている。また、教育訓練運営協議会を設置し、講師派遣等の調整を行っている。平成20年3月に研修運営委員会を設置したところ。今後も、必要な研修体制を確保したい。
感染研について、感染症危機管理体制に対する労働条件確保の予算等の措置を。検査・検定業務体制の及び品質管理の研究業務体制の強化を。情報セキュリティ管理体制の強化を。健康安全管理に関する規定の遵守を指導すること。
危機管理対応時の労働条件確保の予算措置は、必要に応じて財政当局等と相談したい。検定・検査及び品質管理は重要な業務の一つ。今後も国家検定・検査の信頼性が確保できるよう努める。情報セキュリティ政策は、一層の強化に努める必要があると認識している。健康安全管理規程に則り、保健、安全保持に努めている。必要があれば、適切な対応を行いたい。
女性職員の採用と登用の拡大を積極的に推進すること。
昨年8月に「厚労省女性職員採用・登用拡大計画」を一部改定し、政府目標を上回る目標を定めた。今後とも、各機関において適正な運用が図られるよう指導したい。
パワー・ハラスメントを防止・根絶するため、使用者責任を果たし、具体的な対策を。
平成24年2月に事務次官より相談体制の機能強化策を盛り込んだ「パワハラの防止等について」を通知。国立試験研究機関も相談員の設置をした。今後とも、防止の注意喚起を行うとともに、職員からの苦情について、通報者が不利益な取扱いを受けないように配慮し適切な対応に努める指導をしたい。独法で、小さな所帯で解決するのが難しいことは理解できる。内部で解決しにくい事情があれば、厚生科学課にご相談いただければ、秘密を厳取しつつ、できるだけサポートはしたい。


未来を信じて行動しよう 青年学習交流会ひらく

 全厚生青年対策部は、7月27〜28日に青年学習交流会を開催し、4支部と本部から、子ども含め13人が参加。1日目はハ病研支部OBを講師に、放射能の影響と原水爆禁止運動について学習。2日目は、神奈川県国公主催の地引き網に参加して一緒に遊び交流を深めました。近畿支部の組合員の感想を紹介します。

 震災から2年目の夏、原水禁大会に参加する前に少しでも現状を知りたいと、青年学習交流会を企画しました。講師は、全厚生に加入して40年間、毎年欠かさず原水禁大会に参加し、日本や世界の草の根平和運動を推進してきた1人です。
 学習会では、原発事故による放射性物質セシウム137の放出量が、広島型原爆の167・5個分だったこと、放射性物質による汚染の影響は未知数であることなど、内部被爆のメカニズムを学びました。なぜ、他のエナルギーと比べ費用もかかり危険な原発を利用するのか?
 そこには、核の平和利用を隠れ蓑に核兵器を持ち続けたいアメリカの思惑や、原発で儲かる団体(電力会社)からの企業献金によって原発NOと言えない政府の姿が…知れば知るほど恐ろしく腹立たしく思いました。
 私たちにできる事は?との質問に、講師から確信に満ちたアドバイスをいただきました。講師の住む東村山市では、草の根の運動を諦めずに継続した結果、今では保守本流の議会が平和都市宣言をし、原爆展を毎年開催するほど平和運動が根づいた町になったそうです。
 今、東京では毎週金曜日に多くの人が首相官邸前に集まって原発反対の抗議が続いています。「人類と核は共存できない」この声を政府が無視できないほど大きくし、諦めずに取り組むことが私達の未来に繋がる。
 こうありたい、こうあってほしいと思うものがあったら、それが叶うまで自分や未来を信じて行動し続けるしかないと強く思えた学習会でした。


1日も早く原発なくそう 原水爆禁止世界大会in広島

 8月4〜6日、原水爆禁止2012年世界大会が広島市内で開催され、全体で6800人が参加。全厚生は、4支部と本部から11人が参加しました。2人の組合員の感想を紹介します。

 先日、両親の実家がある福島県郡山市に行きました。昨年は震災の影響があり、いたる所にブルーシートが貼っていましたが、今年はブルーシートが無くなり一安心しましたが、何気ない所に放射能測定器が普通に置いてあることに驚きを感じました。福島の方は見えないものに対し恐怖を感じながら日々生活していることに対し一日でも早く原子力発電所を全てなくしてほしいと思い、原水爆禁止世界大会に参加して閉会総会時に被災地からの訴えとして、馬場浪江町長から「福島県には人権等はないのか」等を怒りのうったえをしていたことを思い出し、原水爆金大会に参加したことが感慨深いものとなりました。

* * *

 3日間で印象に残ったのは2日目の分科会で、被爆者の方から直接体験したお話を聞いたことでした。小学生の時、8月6日は平和登校日で、戦争や原爆のことを学習し、大勢の方が亡くなったことや恐ろしい出来事であったことを認識していましたが、実際に話を聴いて改めて現実に起こったことだと実感して、自分自身がちゃんとわかっていなかったことを感じました。
 平和祈念式典に初めて行って、テレビで見るよりも実際行くと重くて厳粛な感じがしました。印象に残ったのは原爆死没者名簿の奉納をしているところでした。
 今回広島に行ってみて、戦争や原発のことをこれまでそれほど身近に感じてなかったことを感じました。もっときちんとした知識を付けて考えなければいけないと思います。周りの人にうまく伝えることはできないので、皆に広島に行ってもらいたいです。


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