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◆第1760号 (2011年10月15日付)◆
憲法25条を活かす社会保障を確立しよう!
組織拡大を前進させ、要求実現へ

全厚生第75回定期大会開催
 全厚生は9月17・18日、「社保庁職員の不当解雇を撤回させよう 憲法25条を活かす社会保障を確立しよう」をメインスローガンに、静岡県熱海市で第75回定期大会を開催。全国から代議員・傍聴など77人が参加し、2011年度の運動方針と財政方針を全会一致で採択し、たたかう方針を確立しました。
 大会は、34人が発言。組合員を増やし職場要求を実現すること、不当解雇撤回闘争勝利へ運動を広げること、国立福祉施設の存続・発展をめざすこと、厚生科学研究の拡充などに向けた取り組みを意思統一。大会宣言を採択し、新役員を選出。来賓として国公労連上田宗一中執、全医労岸田重信委員長、高橋千鶴子衆院議員(共産党)が連帯のあいさつをしました。

委員長あいさつ/国民とともに運動進めよう
 2010年度は、あらゆる面で厳しさが強調されるなかで、実感できるたたかいの実践を通じた要求実現、福祉施設を守る運動の拡大、分限免職処分を跳ね返すたたかいなど、すべてにおいて大きく前進させる展望をもってスタートした。
 この1年は、全体として大きなプラスをつくり出した。福祉施設の存続発展をめざす運動では、6万筆の署名という全厚生史上最高の峰を築き、国会を大いに動かすことを経験した。
 社会保険庁の分限免職では、その不当性が人事院の審理を通じて明らかになった。また、全厚生の運動の正しさも鮮明になり、新たな信頼関係も生まれてきた。
 これらのことが、多くの組合員を迎えることに繋がっている。昨年の大会で、500人の新しい仲間を迎えようと決めた。目標には達しなかったものの、毎月各職場で、各部門で新しい組合員を迎え続けていることをみんなで喜び合いたい。
 今の社会を見ると、私たちの運動が国民の思いとともにあることがハッキリと見える。3・11東日本大震災は、大変な被害をもたらしたが、同時に、大きな変化をつくり出している。災害は、この国の政治の基本的な姿として、事実を伝えないこと、国民を大事にしないこと、新旧政権党は、党略しかないことも明らかになった。
 今の社会は、新しい政治の有り様を模索する国民の声が動かそうとしている。まさに国民の中に入って、一緒に運動をすすめる時。自らの要求が国民要求と一体であることを確信して、おおいに奮闘しよう。

書記長・運動方針の提案/たたかいの継続・発展を
 全厚生はこの1年間、労働者の誇りと希望をもってたたかってきた。不当解雇撤回闘争に全力をあげ、各分野で憲法25条を活かす道理ある要求を掲げてたたかい、組織強化・拡大に奮闘してきた。
 不当解雇撤回のたたかいは39人の当事者を主人公にして、全厚生を丸ごと闘争団として、元気にたたかっている。2月から9月まで全国10都道府県・15事案で人事院口頭審理が行われ、不当解雇の実態を浮き彫りにした。さらに、乱暴な解雇は許さない共同を広げたことは、重要な取り組み。特に、日本航空の不当解雇撤回裁判の原告団の仲間と激励し合い、共同でたたかった経験は貴重だ。不当解雇撤回のために、この秋のたたかいが極めて重要になっている。
 組織拡大では、社会保険庁改革の攻撃の中で生じた組織的な後退に歯止めをかけ、組織を維持し、前進させるたたかいを開始。果敢に挑み、歴史的かつ貴重な成果をあげた。昨年の定期大会から166人の仲間が加入。運動前進のへの確信につながり、職場活動を活発にする方向性も見えてきた。
 活動スタイルを見直し、みんなで担い、みんなの力を束ね、全員参加型の活動にかえる取り組みは新しい挑戦。この方向こそ、労働組合の本来の姿であり、常にめざすべき活動の基本だ。
 全厚生運動にとって、真価が問われる年。要求実現のたたかいに執念をもち、組織強化・拡大のうねりをつくり、不当解雇撤回を早期に勝ち取る年にしよう。志を大きく持って、たたかいを継続・発展させよう。

財政・予算案の提案/拡大に全力で専従体制強化を
 財政方針・予算案を提案した平丸書記次長は、決算は、各支部の奮闘により組織人員を維持し400万円の増収となったこと、不当解雇撤回の取り組みが全労連・国公労連の運動に広がり財政負担が分散されたことなど、昨年より財政が好転したことを報告。2011年度も決して予断を許さないものの、引き続き組織強化・拡大に全力をあげ組織人員を維持・増加させること、専従体制の強化の具体化など財政方針と予算案を提案。
 今年度の本部組合費は次の計算式です。
 一般会計分=本俸×1.1%+420円、専従役員保障特別会計分=120円の総合計。
 非常勤職員の本部組合費は、1020円です。なお、公務部門で06年3月以前からの組合員は、昨年度と同様、06年3月時点の額です。

大会宣言(要旨)

 全厚生は、「社保庁職員の不当解雇を撤回しよう 憲法25条を活かす社会保障を実現しよう」をメインスローガンに静岡県熱海市で第75回定期大会を開催し、2011年度運動方針を全会一致で確立した。
 私たちは昨年誓い合った。「一人ひとりが闘争団として、不当解雇された仲間を全力で支えよう」「労働組合の力は団結の力。要求を実現するには、団結の強化以外にない。組織拡大こそ最大の要求闘争」と。そしてこの1年、悩みながらも明るく元気にみんなで奮闘し、166人の仲間を迎えた。
 6月3日、国会に提出された「賃下げ法案」(国家公務員の給与の臨時特例に関する法律案)の成立を許さなかったことは、この間の全国的な運動の反映だが、厳しい情勢が続いていることに変わりない。引き続き重要視していく。
 不当解雇撤回のたたかいは、各地で支援を訴え、人事院の公平審理を精力的に取り組み、8月ですべての事案が一巡。京都の懲戒処分事案では勝利判定が下され、当該処分が恣意的でまったく道理ないことが明らかになった。これは、私たちの運動の大きな勝利であり、分限免職事案のたたかいを勇気づけた。今後の人事院闘争は、この秋が極めて重要である。これまで以上に、広範な人々・労働者に実態を広げ、目に見える運動を積極的に展開していく。
 本省職場では、非常勤職員の期間業務職員への移行の際に処遇改善を求める取り組みを進める中、組合への関心の広がりとともに、組合員加入が実現した。霞が関・本省に組合があることの重さを認識するとともに、要求実現とさらなる組合員拡大の決意を固めた。
 日本年金機構の職場からは、正規職員が4割を切り、有期雇用職員の頑張りによって運営されている実態が報告された。年金制度の安定的運営のためには、安心して働き続けられる職場、誇りを持って働ける環境が不可欠である。新たな仲間を迎え、基本協約を背景に大いに対話を重ね、団結を強化して、要求実現のため意気高く前進することを確認した。
 試験研究機関は、東日本大震災で被災した支部もある中、実態を無視した過度な節電の要請を受けた。支部は必要な電力の確保を求めるとともに、職場では、職員の必至の努力で乗りきってきた。また、勤務時間管理問題やパワハラが発生している。厚生行政に科学的根拠を与える責務を果たすため、職員が健康で生きいきと働き、その力を十二分に発揮できる職場づくりが必要である。いま、その改善が進みつつある。
 「伊東・塩原センター統廃合」問題は、障害当事者や職員、地域住民の願いに反するものである。「国立福祉施設の存続発展を求める会」が行った署名は、6万筆超を集約、20名を超える紹介議員で国会に持ち込めた。統廃合問題は職員の不安も多く、この秋、支部間の交流会をはじめ、障害者団体との連帯や地域での活動をより大きく広げることを確認した。
 全厚生は、一貫して行政民主化、社会保障を守るたたかいを重視し、本年、結成65年を迎えた。今まさに「震災後」の日本は大きな転換期を迎えている。今一度、全厚生運動の歴史と原点に学び、社会福祉、社会保障及び公衆衛生を担う専門家として、国民本位の行政をつくりあげることを決意する。
 以上、宣言する。

2011年9月18日 
全厚生第75回定期大会 


組織強化・拡大に全力

 討論では、16支部・34人の代議員・傍聴者が発言しました。
*( )内は支部名

全部門で仲間を迎える成果
 中部支部は、「大会前日に職場で3人の仲間を迎えた」と報告。執行委員会で議論し拡大に踏み出した経験を語りました。機構支部は「加入した人が新しい人を誘い、次の拡大につながる。お台場では組合が過半数を超えた」。50人の仲間を増やした関東支部は、代議員が「上司から『組合に入りたい人がいる』と紹介される」と、職場で労働組合が求められていることを報告。5月に結成した千葉協議会の代議員は、「未組織でいる間は情報がなかったが、やっと拠り所ができた。来年は代議員を増やし参加したい」と決意。同じく関東支部の代議員は、「けんぽ協会は、機構より待遇が良く拡大も難しいが、引き続き頑張りたい」。感染研支部は、「レク等で新人に加入を呼びかけている。成果につながるよう、さらに厚研連で検討したい」と、組織拡大の課題を語りました。
 福岡支部は支部機関紙『かたらせて』の継続発行が力になり加入につながった経験を発言。本省支部は、青年・女性のレクなどに誘う中で、非常勤職員の仲間を12人増やしたことを報告。全部門で組織拡大が位置づき、努力している活動の経験を交流しました。

不当解雇撤回めざし各県で奮闘
 不当解雇撤回闘争について、東北支部は、9月15日に最後の口頭審理が秋田県内で行われ、評価基準があいまいなことや分限回避努力が行われなかったことが明らかになったと報告。また厚生局に任期付職員として就職した当事者について、「来年3月で雇い止めにならないよう、雇用継続と正規雇用実現にむけた取り組み強化を」と発言しました。
 中部支部は「今までにない規模でたたかいを知らせ、口頭審理は連日定員を上回る傍聴者が参加。争議支援共闘会議ができ問い合わせも増えた」など、取り組みの広がりを報告。
 北海道支部は、北海道の当事者2人を支えるためにも、労働組合が必要と議論し、4月に支部を結成したことを報告。「組織強化のためがんばりたい」と発言。闘争団は、「社会保障を守る重大な責務を担っている全厚生の1人ひとりが、『あきらめない』『変えられる』という思いを持とう」と発言しました。

国立福祉施設の存続を
 「国立福祉施設の存続・発展を求める会」の取り組みでは、リハ支部は「公務員削減の結果の伊東・塩原の廃止は許されない」と発言。
 伊東支部は、存続を求める署名が6万筆集まったことに触れ、伊東市議会も市長も署名に賛同し、活動が広がっていることを報告。塩原でも視覚障害者の積極的な署名活動を評価しながら「適切なリハビリ施設の存在が、障害者の生活向上につながる。他の施設も存続していける戦略を」と発言。
 連帯の輪を広げる取り組みでは、函館支部が「統廃合の攻撃をはね返していくためにも、地域との交流を深めている」。秩父支部は、「大会後にリハ支部と合同で学習会を予定」と発言しました。

研究機関の充実と労働条件改善を
 感染研支部は、当局による節電目標25%の強行に、過度な節電をやめるよう要請したことを報告。ハ病研支部は、ハンセン病研究所の歴史にも触れ、「国の研究機関を充実していくことが重要」と強調しました。
 基盤研支部は、労働時間管理に関わって昨年末に労基署から是正勧告が出されたことで、4月1日から裁量労働制を導入し一応決着したが、引き続き注視が必要。またパワハラ問題が発生したことで組合として当局と話し合いを持ち、所にパワハラ防止規定をつくるよう要求していると報告しました。

非常勤職員の処遇改善を
 近畿支部は「不安定雇用で毎日浮き沈みがある。年金業務が好きだし誇りを持っている。あきらめずたたかう」と発言。その他、機構職場からは関東支部が、「10円、20円でも時間単価を上げて」「1000円でも勤勉手当がほしい」という職場の声を紹介、機構支部は「非正規職員も重要な仕事を担っており賃金と研修の改善が必要。経験が蓄積される人材育成と配置を。交流の場を持っていく」と発言しました。
 本省支部は、独自に非常勤職員アンケートを実施し、夏季休暇など要求実現を目指す取り組みを報告。感染研支部は「当局は節電対策で集中した休暇期間を設けたが、非常勤職員は休暇がなく怒りが広がった。この怒りを加入につなげたい」と発言。

平和・女性・青年・社会保障・権利をめぐる裁判闘争
 平和の取り組みでは、被災地ボランティア活動や原水禁世界大会などに参加した感想を報告。機構支部は、「被爆体験を聞き何かしなければと感じた。署名を集め、核兵器をなくしたい」と発言。ハ病研支部・中部支部も、核兵器廃絶と原発ゼロの取り組みを連動させ、核兵器廃絶署名に取り組む決意を語りました。機構支部は、女性部の取り組みを報告。「今年も独自アンケートを人事課との懇談に活かしていく」と発言。
 社会保障拡充の課題では、近畿支部が「『社会保障と税の一体改革』についてもっと知らせていく必要がある。また、共通番号制の問題が山場。医療費の給付抑制に利用される危険もあり、全厚生が先頭に立って運動を」と呼びかけました。
 関東支部は、休日に政党のビラをまいたことが国公法違反とされ不当に逮捕・起訴された事件で、「昨年3月に東京高裁で無罪判決を勝ち取った。最高裁でのたたかいも、ぜひ支援を」と訴えました。

年金機構の体制拡充を
 近畿支部は、機構労組と競合している中で職場代表に勇気をもって立候補し、職場の仲間の支持を得て当選した経過を報告。「今いる組合員を大切にすることが、次の拡大につながると思いコツコツ活動する」と発言。
 年金機構での全国異動について、関東支部は、「職場はパワハラがひどい。県外異動も多く、不安で辞める人も。職場で悩みを聞き、できることからやっていく」。近畿支部は、「県外異動で単身赴任となり、子どもに泣かれたと言う同僚も。家庭や生き方も大切にできる働き方を求めたい」と発言しました。


希望と展望をさらに大きく

 山本委員長は、討論を通じて、この1年間の運動は自らの運動の確信をつくり、新たな展望をきり開いたことが明らかになったと強調し、次の点で討論をまとめました。
 愛知の仲間が3人の新しい仲間を迎えて大会に参加したことに象徴されるように、真面目に正面を向いて運動をすすめれば仲間が増えることを確信したこと。
 その確かな方向として、人減らしのみを目的とした組織・機構の再編とのたたかい、有期雇用・低賃金の改善をめざすたたかい、責任ある体制を確立するためのたたかい、社会保障つぶしを許さないたたかい、これらのすべてを全厚生の運動の重要課題に位置づけることができたこと。
 また、署名運動が人と地域を大きく変え、豊かな社会をつくる力になること、大きな力や強い圧力に屈しがちだが、人は変わるし、変えられることも討論を通じて共通の認識となった。希望と展望をさらに大きく広げるため、「やる」か、「する」か、「イエス」か、「ハイ」か、すべて能動的に前向きに臨むことが、確実に変化をつくり出すことを確信したこと。
 最後に、次に顔を合わせたときに、すべての職場から新たな経験、豊富な経験を報告しあえるよう、職場の仲間とともに大いに奮闘しようと訴えました。


人事課長交渉
人事院勧告に基づかない賃下げ法案の撤回を

誇りの持てる職場環境を
 全厚生は9月9日、大臣官房人事課長交渉を実施。交渉団は、山本委員長、伊藤・田口・峰副委員長、杉浦書記長、平丸書記次長、北久保・小出・菅沼各中執が出席。人事課からは小川人事課長、樽見参事官、伊東人事調査官らが対応しました。
 冒頭、山本委員長は、(1)東日本大震災で、命と健康を守る厚生労働行政の使命と役割は大きい、(2)人事院勧告によらない賃下げ法案の撤回、(3)社会保険庁の不当解雇撤回と日本年金機構の体制強化などを強調し、誇りのもてる職場環境づくりへの努力を求めたのに対し、人事課長が一括回答。回答後、各課題について各参加者が追及し、要求前進にむけた厚生労働省当局の努力を迫りました。

回答要旨(○要求 ●回答)

人事院勧告に基づかない国家公務員の賃下げは行わないこと。
給与臨時特例法(案)が継続審議となっている。人事院勧告に基づかず給与を引き下げることとなれば、労働基本権制約下として極めて異例の措置であると認識している。
人事院勧告に向け、公務員給与について、職員の生活と労働の実態にふさわしい水準に改善すること。
職員が安心して職務に精励できるように、公務の特殊性及び職員の生活実態等も考慮に入れ、適切な措置が講じられるよう、機会を捉えて人事院に意見を申し入れたい。
定年年齢を65歳とし、賃金水準の連続性を保ち、安心して働き続けられる制度を確立すること。
現在、人事院及び政府内で検討している。高齢期雇用の進展に併せ、職員が健康で意欲をもって働き続けられるよう検討結果を踏まえ、必要な職場環境の整備に努める必要があると認識している。
社保庁職員の分限免職撤回、雇用確保を。被懲戒処分者の一律不採用の閣議決定を撤回し、日本年金機構に正規職員として採用を。2年3カ月の有期雇用職員は任期後の安定した雇用確保を。
閣議決定「日本年金機構の当面の業務運営に関する基本計画」の撤回は困難。2年3カ月の非常勤職員の任期は、平成23年度末をもって満了する。その後については、今後更に検討していく課題と認識している。
日本年金機構の安定的な業務運営を行うため、正規職員を増員すること。
厚生労働省としても、日本年金機構をバックアップし、日本年金機構と一体となって全力で取り組むことが必要と強く認識している。
国立更生援護機関の組織再編で、塩原視力障害センターと伊東重度障害者センターを廃止せず、存続・拡充させること。
国立施設に対しては、発達障害や高次脳機能障害、盲ろう者等、喫緊の課題への対応が求められる。国立施設の機能として、引き続き充実強化を図っていく必要がある。一方で国民の目線に立った効率的な施設運営や定員合理化への対応も併せて求められている。統廃合は、個々の施設ではなく、国立施設全体として今後とも存続させていくためのものである。
独立行政法人国立健康・栄養研究所と医薬基盤研究所は、国が責任をもって拡充し、画一的な統合は行わないこと。
統合等の具体化にあたっては、両研究所と十分な合意形成に努めるよう、厚生科学課に伝える。
超過勤務の大幅な縮減。本省庁職場の恒常的で異常な残業実態の改善。メンタルヘルス対策、パワーハラスメント対策等、職員の健康と安全を確保すること。
恒常的な残業実態の改善の重要性は十分認識している。今後とも管理者の意識を高め、職員が帰りやすい職場をつくることが重要と考えている。パワーハラスメントは職場内の秩序を乱し、組織の正常な業務運営の障害となる。管理監督者は、十分問題意識を持つとともに職場でパワハラが起きないように日常的に注意することが重要と認識している。課長研修をはじめ、管理監督者に防止について注意喚起に努めている。
非常勤職員の賃金・労働条件を改善すること。期間業務職員制度の運用にあたり、安定的な雇用保障に努め、安易な雇い止めを行わないこと。
非常勤職員の給与等は、常勤職員と同様に、職員の士気や生活に直結する大きな問題であると認識。毎年、人事院関係局長宛に改善要望書を提出している。今後も、安心して公務に専念できるよう機会を捉えて要望等を行う。期間業務職員の採用は、原則2回までとするよう努めることとしている。2回採用された職員を、適正な公募を経て、結果として更に採用することは、制度的に否定されていない。3年間任用された後、雇い止めすることをルール化するものではない。今後とも、適正な運用に努める。


共闘強め、賃金・労働条件の改善に全力
厚生共闘第33回定期大会

 厚生共闘(厚生省労働組合共闘会議)は9月29日、国公労連会議室で、第33回定期大会を開催。全医労と全厚生の持続的共闘を前進させ、要求前進を図る運動方針を全会一致で採択し、新役員を選出しました。
 冒頭岸田議長は3年ぶりの大臣交渉や官房長交渉で賃金・労働条件の改善を迫ってきた到達点にたち、正念場となる秋のたたかいの重要性を強調。さらに、社会保険庁職員の不当解雇撤回のたたかいに勝利するために引き続き奮闘しようと呼びかけました。
 続いて杉浦事務局長が経過報告及び2011年度運動方針案、決算報告及び財政方針案を一括提案。たたかいの基本方針では、(1)医療・年金・福祉・社会保障制度の改善・充実をめざす、(2)厚生共闘の団体交渉を重視して、賃金・労働条件の改善をめざす、(3)社保庁職員の不当解雇を撤回させるために全力をあげる、(4)独立行政法人の抜本見直し・整理合理化への取り組みを強化する、(5)憲法をくらしと行政にいかす「21世紀国公大運動」を推進する、(6)政策活動を強化し、学び、交流し、共闘の強化をめざす重点課題の6点を提起しました。
 討論では、「ハンセン病療養所の将来構想では存続できなければ職場がなくなる。時間を早めて前進をはかりたい」(全医労)、「現場はマンパワーが決定的に不足している。増員に向けた運動を強化する」(全医労)、「日本年金機構は人員の入れ替えが激しく、経験の積み上げができない。処遇改善を粘り強くすすめる」(全厚生)、「学習会やランチ会など非常勤職員の取り組みを強め、組合加入をすすめる」(全厚生)、「日本年金機構の非常勤職員は3種類。人材育成が課題。ステップアップできる体制を要求していく」(全厚生)など積極的な発言で方針案を豊かに補強しました。
 新役員4役は次の通り。議長=岸田重信(全医労)、副議長=山本潔(全厚生)・佐藤晃一(全医労)、事務局長=杉浦公一(全厚生)、事務局次長=香月直之(全医労)・田口雅之(全厚生)。


人事院が懲戒処分の取り消し判定
年金機構からの排除理由なくなる

 人事院は9月1日、京都の「無許可専従行為」をめぐる懲戒処分の不服申し立てに対し、懲戒処分を取り消す判定を行いました。
 人事院は、「無許可専従を惹起した事実を認める十分な証拠はない」として、処分者側の杜撰なな調査を認定。年金機構の採用審査の前に不服申し立てをしており、処分取消によって、年金機構の採用基準から排除される理由はなくなりました。
 この人事院判定は、社保庁の杜撰な調査の事実を認定させた重要な成果となるものです。39人全員の不当解雇を撤回させるために、この秋のたたかいが極めて重要です。
 一方京都地裁は9月28日、「無許可専従行為」をめぐる全厚生懲戒処分取消訴訟の判決で、原告の請求を棄却する不当判決を行いました。
 判決文では、「原告の交渉相手や上司であった管理者の中には処分を受けずに日本年金機構に採用された者もいることを考えると、原告を日本年金機構に採用せず分限免職したことについては疑問の余地があるというべきである」とも指摘。
 この不当判決に対して、控訴してたたかいます。


2011年人事院勧告……中高年ねらい打ちの賃金抑制
3年連続のマイナスの政治的勧告

●給与勧告のポイント

 月例給は引下げ改定、ボーナスは改定見送り〜平均年間給与は△1.5万円(△0.23%)
(1)東日本大震災のため民間給与実態調査は2か月遅れで、岩手県、宮城県及び福島県を除く44都道府県で実施
  • 月例給については、地域手当の級地区分を単位とした官民比較を行っているため、東北3県の影響は限定的
  • 期末・勤勉手当(ボーナス)は、岩手県、宮城県及び福島県について調査していない中で、
    国家公務員の特別給の改定を行うべきと判断するに至らず、改定を見送り
(2)国家公務員給与が民間給与を上回るマイナス較差(△0.23%)を解消するため、
   50歳台を中心に40歳台以上を念頭に置いた俸給表の引下げ改定
 
(3)給与構造改革における経過措置額は、平成24年度は2分の1(上限1万円)を減額し、平成25年4月1日に廃止。
  (これにより生ずる原資を用い、若年・中堅層を中心に、給与構造改革実施のために抑制されてきた昇給を回復)

●給与改定の内容と考え方(抜粋)

〈月例給〉民間給与との較差(マイナス)を解消するため、俸給表の引下げ改定
(1)俸給表
  1. 行政職俸給表(一) 民間の給与水準を上回っている50歳台を中心に、40歳台以上を念頭に置いた引下げ(50歳台が在職する号俸:最大△0.5%、40歳台後半層が在職する号俸:△0.4%、40歳台前半層が在職する号俸で収れん)
  2. 指定職俸給表 行政職俸給表(一)の管理職層の引下げ率を踏まえた引下げ改定(△0.5%)
  3. その他の俸給表 行政職俸給表(一)との均衡を考慮した引下げ(ただし、医療職俸給表(一)等は除外)
     ※給与構造改革における経過措置額についても、本年の俸給表の改定率等を踏まえて引下げ
(2)その他の手当
  • 委員、顧問、参与等の手当 指定職俸給表の改定状況等を踏まえ支給限度額を引下げ
    (35,100円→34,900円)
     [実施時期等]公布日の属する月の翌月の初日(公布日が月の初日であるときは、その日)
●給与制度の改定等(抜粋)
〈経過措置額の廃止等〉
  • 給与構造改革における経過措置額について、平成24年度は経過措置額として支給されている俸給の2分の1を減額(減額の上限1万円)して支給し、平成25年4月1日に廃止
  • 経過措置額の廃止に伴って生ずる制度改正原資を用いて、若年・中堅層を中心に、給与構造改革期間中に抑制されてきた昇給を回復。平成24年4月に、36歳未満の職員を最大2号俸、36歳以上42歳未満の職員を最大1号俸、平成25年4月に、人事院規則で定める年齢に満たない職員を最大1号俸上位に調整

 解 説

●給与水準・一時金
 給与勧告は、△899円、△0.23%(昨年△757円、△0.19%)と3年連続のマイナスとなりました。こうした納得しがたい結果は、人事院が労使関係上の配慮よりも、機械的な民間賃金準拠を優先させる政策に固執しているためです。一時金が現行「3.95月」に据え置かれることは重大な問題です。年間4.0月に改定できる調査結果でありながら、調査できなかった東北3県の状況を類推して改善を見送りました。人事院のこの姿勢は、きびしく追及されるべきです。
●50歳代職員の給与抑制措置
 マイナス較差の配分は、中高齢職員の賃金引き下げに集中させました。中心は、昨年に引き続く50歳代に焦点を当てた給与抑制措置です。具体的な内容は、(1)50歳代を重点とする俸給表のマイナス改定、(2)給与構造改革にともなう現給保障の廃止、(3)「当分の間の措置」として昨年強行した55歳を超える職員の俸給・手当の1.5%減額措置の継続です。
●俸給改定
 マイナス較差はすべて俸給に配分されます。対象は限定され、行政職(一)では「官民給与差」が大きいとされる50歳代を中心に0.4%〜0.5%引き下げられます。なお、給与構造改革にともなう「経過措置額」についても、本年の俸給表の改定率等を踏まえた引き下げが行われます。
●現給保障の廃止
 給与構造改革における経過措置額(現給保障額)を段階的に廃止するとしました。具体的には、2012年度に現給保障額を1/2減額(減額の上限は1万円)し、2013年4月1日に廃止するものです。今なお多くの職員が経過措置の対象になっており、その廃止は2005年勧告に反する約束違反の暴挙です。


定年延長の「意見の申出」……2013年度から段階的に65歳へ
職務給原則投げ捨てる賃金を70%に引き下げ

定年を段階的に65歳に引き上げるための国家公務員法等の改正についての意見の申出骨子(抜粋)

  • 国家公務員制度改革基本法の規定を踏まえ、公的年金の支給開始年齢の引上げに合わせて、平成25年度から平成37年度に向けて、定年を段階的に65歳まで引き上げることが適当
  • 民間企業の高齢期雇用の実情を考慮し、60歳超の職員の年間給与を60歳前の70%水準に設定
  • 能力・実績に基づく人事管理の徹底、当面役職定年制の導入により組織活力を維持
  • 短時間勤務制の導入や節目節目での意向聴取等を通じ、60歳超の多様な働き方を実現

●段階的な定年の引上げのための具体的措置

(1)段階的な定年の引上げ
  • 平成25年度から3年に1歳ずつ段階的に定年を引き上げ、平成37年度に65歳定年とする
  • 段階的な定年の引上げ期間中は、定年退職後、年金が満額支給される65歳までの間について、再任用制度の活用の拡大を通じて65歳までの雇用を確保
  • 60歳以降の働き方等についての人事当局による意向聴取を通じ、多様な働き方を実現
(2)60歳を超える職員の給与制度の設計‐年間給与は60歳前の70%
  • 60歳台前半層の民間企業従業員の年間所得が60歳前の年間給与の約70%であることを踏まえ、60歳を超える職員の年間給与について、60歳に達した日の属する年度の翌年度から、60歳前の70%に設定
  • 具体的には、俸給月額の水準を一定程度確保(60歳前の73%)することとし、その分ボーナス(特別給)の年間支給月数を60歳前の職員に比べて引下げ(年間3.00月分)
  • 60歳を超える職員は昇給しない。諸手当は基本的に60歳前と同様の手当を支給
●組織活力の維持のための方策

(1)役職定年制の導入
  • 管理職の新陳代謝を図り組織活力を維持するため、能力・実績に基づく人事管理が徹底されるまでの間の当分の間の措置として、本府省の局長、部長、課長等の一定の範囲の管理職が現行の定年である60歳に達した場合に他の官職に異動させることとする役職定年制を導入
  • 60歳に達した日後における最初の4月1日までに他の官職に異動。特別な事情がある場合、例外的に引き続き官職に留まれるよう措置
  • 役職定年により異動した職員の俸給は、役職定年による異動前に受けていた号俸の俸給月額の73%とする。ただし、その額は異動後にその者が属する職務の級の最高号俸を超えないものとする
(2)短時間勤務制の導入
  • 60歳を超える職員の多様な働き方を実現するため、短時間勤務を希望する職員を短時間勤務ポストに異動させることを可能とし、これにより若年・中堅層の採用・昇進機会を確保
(3)能力・実績に基づく人事管理の徹底と職員のキャリア支援
  • 職員の能力・業績の的確な把握、短期間で頻繁に異動させる人事運用の見直し、年次的な昇進管理の打破等、能力・実績に基づく人事管理を徹底。また、職員の専門性を強化

 解 説

●定年延長
 人事院は勧告と同時に、2013年度から3年に1歳ずつ段階的に定年を引き上げ、2025年度に65歳定年とする意見の申出を行いました。これは、年金支給開始年齢が引き上げられる下で、雇用と年金の接続を図る観点から、当然の選択です。民間では、定年延長する企業は少なく、再雇用等の「継続雇用制度」によって対応している企業が大多数です。そのなかで、公務が「定年延長」を選択したことは評価できます。
●最大の問題は、給与水準
 人事院は、60歳を超える職員の年間給与を60歳前の約70%に設定するとしています。その理由については、民間の60歳代前半層の年間所得が60歳前の約70%であることをあげています。しかし、公務における定年延長である以上、それにふさわしい制度設計が必要です。60歳前との連続性を断ち切る制度は、職務給原則や能力・実績主義にも反するものであり行うべきではありません。
●定年前の短時間勤務制
 定年前の短時間勤務制を導入するとしています。健康上の理由や人生設計上の理由にもとづいた多様な働き方を実現するため、要求もしてきたものです。制度化にあたり、本人の希望を最優先する民主的な運用を確保させることや、短時間勤務からフルタイム勤務への変更を可能とすることなどが必要です。
●役職定年制
 「当分の間の措置」としながらも本府省の一定の範囲の管理職が60歳に達した場合に、他の官職に異動させるという役職定年制を導入するとしています。これは、年齢要素によって、職員の合意にもとづかず、かつ一方的に降任(不利益変更)させる制度です。これは、メリットシステム(=公務のポストを試験などの成績によって決めるという考え方)に反するものです。


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