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◆第1729号 (2009年10月15日付)◆


矛盾ある日本年金機構の設置
設置法案に反対してきた民主党
 長妻厚生労働大臣は8日、日本年金機構設立委員会の場において、「日本年金機構については、熟慮の末、この機構を発足させるということを我々決断をさせていただいているわけでございます」と予定通り、2010年1月に日本年金機構を設置する考えを表明しました。
 全厚生はこの間、国公労連として安心年金つくろう会の活動に結集して、国の責任も国民の権利も曖昧な日本年金機構の設置は凍結することと制度の拡充を求めて取り組みを進めてきました。日本年金機構の発足まで2ヶ月あまりでのこうした態度表明は、労働者の権利や職員の生活に責任を負うべき立場の大臣としてきわめて問題です。また、民主党は衆議院選挙の「マニフェスト」で社保庁は国税庁と統合し、歳入庁を創設すると明記。年金機構への移行は「年金問題がうやむやになる可能性がある」、「天下り規制なし」、「国会出席義務なし」と批判し、機構設置法案に反対てきたことなどから見ても大きな矛盾があります。
 民間からの採用を内定しているとはいいますが、記録整備の展望が出るまで年金機構を凍結し、国家公務員として採用することは十分可能ではないでしょうか。現に、民間から採用された事務所長も存在します。また、年金機構を前提とした「ブロック化」の準備等が進んでいるといっても、現行組織でのブロック化も十分可能です。

有識者も問題点を指摘している日本年金機構
 厚生年金のモデルとされているドイツの連邦年金保険庁国際担当局長のユルゲン・マイヤーコート氏は、「私たちの組織は公的なものであり、利潤追求を目指していない。それゆえに加入者からは民間の保険や銀行より高い信頼を得られていると思う。日本の社保庁が、民間の組織として再出発するのは理解しづらい面もある(08年11月7日付朝日新聞)と指摘しています。また、05年から07年まで社会保険庁の最高顧問を務めた堀田力弁護士は、「与党案は、首がネコで胴体が犬のようなもの。どこも責任をとらない仕組みになっている。やめた人でも責任を負うようなルール作りをしないとだめ」(07年6月20日付毎日新聞)と問題を投げかけています。
 国会の監視も弱くなる′法人という特殊な組織では、国の責任も国民の権利も曖昧になってしまいます。世界的にみても公的年金の業務運営は国の機関が行っているのが大勢です。本当に
¥n慮した結果なのでしょうか。10月26日開会予定の臨時国会でも、また、来年の通常国会でも大きな争点になると思われます。こうした様々な問題等について、内外に発信していくことが安心して暮らせる年金制度の構築にも繋がります。引き続き議員要請や宣伝行動などの取り組みを進めましょう。

厚労省・社保庁は雇用確保に万全を期せ
 一方、厚労省・社保庁が分限免職回避努力の一環として強調している「官民人材交流センター」による民間企業等の斡旋が再開されましたが、事実上機能していないと言っても過言ではありません。他の公務職場への受け入れもまったく進展していません。厚労省・社保庁は、分限免職回避努力の具体的対策を強化すると共に、希望者全員の雇用確保に万全を期す必要があります。
 全厚生は、社会保険庁や厚生労働省、そして、長妻大臣との交渉等で使用者責任を追及していきます。

非懲戒処分者排除の不当な「閣議決定」見直しを
 日本年金機構の採用基準は、懲戒処分歴のある職員は、正規職員だけでなく有期雇用職員にも採用しないとする極めて不当なものです。これは自民・公明両党による前政権の時に閣議決定された内容が基本となっています。どんなに業務に習熟・精通した職員であっても、懲戒処分歴があれば機構には採用しないとするものであり、継続的・安定的な業務運営や、基本的人権・働くルールから見ても大きな問題です。懲戒処分の多くは、組織的・制度的な要因が主たるものであり、個人の責任に矮小化することは許されません。
 こうした不当な採用基準について日本弁護士連合会は08年12月、「過去一度でも懲戒処分を受けた者は一律に不採用・分限免職とする閣議決定は、わが国の労働法制や国家公務員法に抵触する疑いがあるので、法令に適合し、かつ合理的な人選基準を設定するよう採用基準の見直しを求める」とする意見書を発表しました。
 新政権においては、職員の生活や権利を無視したこうした暴挙を速やかに見直すべきです。

リレーずいそう
●芋煮の季節だなぁ
 秋です。行楽のシーズンです。おいしいものが実りそれを味わう。そんな楽しい季節がやってまいりました。
 学校では遠足が行われる時期ですね。
 自分の田舎は山形ですが、山形ではこの季節になると、芋煮会が行われます。(地方の風物詩的なものから、観光的なイベントになりつつある感は否めないものの、山形の秋はこれでしょう的なものになってるのかな?)
 内陸地方では河川敷などで行われることが多いです。自分は庄内地方の海辺で育ったので、海辺での芋煮を体験しました。
 小学校の時に、この時期になると、磯釣り大会という行事があって、近くの海辺で釣りを行います。その昼食に家族で芋煮を食べるわけです。
 外でご飯を食べる機会がないので、結構不思議な感じがしたものでした。
 思い出の味って訳でもないですが、なつかしい味ですね。家では、芋煮は作らないので、年1回の味です。でも、小学校の時だけしか口にしたことがない特別な?食事です。(でも、トン汁にサトイモを加えればいいだけなのでぜんぜん特別でなかったりする。)
 田舎から出てきて、だいぶ年月が経ちました。田舎は過疎化が進み、自分が通っていた小学校もなくなってしまいました。当然、磯釣り大会なんて行事もなくなっています。
 今の小学生たちは経験することができないんだなぁ、なんて考えると、時代を感じます。なんだか遠い記憶の出来事に、ふと郷愁を覚える、芋煮の秋です。
(業務センター支部 組合員)

安心年金つくろう
東京連絡会が結成準備会を開催
 東京地方労働組合評議会、全日本年金者組合都本部、東京社会保障推進協議会など6団体の呼びかけを受けて10月10日、「安心年金つくろう東京連絡会」の結成準備会が社会文化会館で開催されました。
 呼びかけ団体を代表して挨拶した菊池東京地評組織局長は、最低保障年金制度の確立、記録問題の早期解決、雇用確保など国の責任で安心して暮らせる年金制度の確立のためにも重要な課題であり、取り組みの強化と運動への結集を訴えました。
 結成準備会に先立って開催された「学習交流会」では、年金実務センター代表の公文昭夫氏が「公的年金制度の過去・現在・未来」と題し基調講演を行い、全厚生は、本部と業務センター支部から、社保庁改革の真の狙いと記録問題の現状について、年金者組合都本部からは、記録回復に向けた実践や女性の年金権問題などについて、そして、自由法曹団東京支部からは、懲戒処分と年金機構の採用基準の問題点などについて報告が行われました。
 引き続き、全厚生杉浦書記長から経過報告と申し合わせ事項等の提案が行われ、全体の確認のもと、結成準備会が発足しました。なお、年内には「連絡会」として正式にスタートし、制度の改善や国の責任による記録問題の早期解決などを目指し取り組みを進めるとしています。

全厚生女性部第14回総会
日時 11月23日(月)9時〜13時30分
場所 シアター1010会議室(東京・北千住駅西口マルイ10階)
議題 @2008年度経過報告及び2009年度活動方針(案)
    A2008年度決算報告及び2009年度財政方針(案)
    B2009年度女性の要求(案)役員選挙

*総会終了後みんなで鑑賞します
わらび座ミュージカル「おくの細道」
日時 11月23日(月)
    14時〜17時(予定)
場所 シアター1010ホール
料金 5000円(総会参加者は2500円)

11月の主なスケジュール
 6日 国公労連中央労働学校
 8日 国民大集会(代々木公園)
13日 第2回中央執行委員会
18日 国公労連中央行動
23日 全厚生女性部第14回総会
26日 京都不当処分取消訴訟第4回裁判

国民の願いに応える厚生行政を
厚生共闘第31回定期大会開催
 厚生共闘(厚生省労働組合共闘会議)は10月1日、東京・茜荘で、第31回定期大会を開催し、全医労と全厚生の持続的共闘を前進させ、要求前進を図る運動方針を全会一致で採択し、新役員を選出しました。
 冒頭岩崎議長は、国民の願いに応える厚生労働行政を確立するために厚生共闘の役割が今こそ重要になっていると述べ、社会保険庁改革や国立医療の充実・強化めざして共同の取り組みを前進させようと挨拶。杉浦事務局長が経過報告及び2009年度運動方針案、予算案を一括して提案。新しい政治情勢は、国民・労働者が切り拓いた歴史的な到達点であると指摘し、要求・政策をより鮮明に打ち出す意義を強調。憲法25条と9条を行政に活かすために奮闘しようと呼びかけました。たたかいの基本方針では、@社会保険庁改革に対する取り組みに全力をあげる、A医療・年金・社会保障制度の改善・充実をめざす、B独立行政法人の整理・合理化計画に対して取り組む、C厚生共闘の交渉を重視し、要求前進をめざす、D政策活動を強化し、交流・共闘の強化をめざす重点課題の5点を提起しました。
 討論では、「ハンセン病療養所の賃金職員の処遇改善のために全力をあげる」(全医労)、「労働組合の原点は、仲間を増やすこと。要求前進めざし、引き続き奮闘する」(全医労)、「青年を中心にした取り組みで大きな成果。先輩組合員と一緒にがんばる」(全医労)、「日本年金機構の凍結は、成り行きまかせでなく、たたかって切りひらく」(全厚生)、「新大臣の就任挨拶に講堂が満杯。行政運営にとっても組合の役割が重要になる」(全厚生)、「安心年金つくろう東京連絡会の準備会を10月10日に結成して奮闘する」(全厚生)など、積極的な発言で方針案を豊かに補強。
 大会では、「日本年金機構の設置を凍結させ、雇用確保、公的年金の拡充を求める決議(案)」を採択。最後に「社会保障の充実と国民本位の厚生行政確立のために奮闘することを誓い合う」大会宣言(案)を大会の総意として確認しました。新役員4役は次の通り。議長=岩崎恒男(全医労)、副議長=飯塚勇(全厚生)・岸田重信(全医労)、事務局長=杉浦公一(全厚生)、事務局次長=香月直之(全医労)・峰一史(全厚生)。

日本年金機構は凍結を
全厚生と国公労連で議員要請行動
 全厚生と国公労連は9月30日、民主党・社民党・国民新党の与党3党の衆議院議員に対し、日本年金機構の設置凍結と公的年金の充実を求める要請行動を実施しました。時期的にも重要な取り組みとなった行動には、午前には国公労連から24人、午後は全厚生から28人のべ52人が参加し、260人の議員に要請しました。
 また、10月1日には、全厚生の業務センター支部と神奈川県支部から11人が参加して議員要請行動を実施。46人の議員(秘書)に要請書を手交し、請願署名の紹介議員をお願いするとともに、日本年金機構の設置凍結についての理解を求めました。国会が閉会中のため、ほとんどが秘書対応で「議員に伝えます」ということでしたが、「党の方針で対応するようになると思う」、「制度よりも雇用が大事ではないか」、「同感だ」などのコメントも寄せられました。参加者からは、「世論が動けば議員も変えていくことができる」、「一人一人の議員に直接訴えていくことが重要」などの意見も出され、取り組みの強化を確認しました。
 これ以降も、京都支部が10月2日、山本支部長はじめ2人が山井和則(民主党)事務所を訪れ、秘書と面談し、日本年金機構の凍結と現場の意見等を踏まえた対応を求めました。また、業務センター支部は10月3日、北畠支部長はじめ4人が長妻厚労大臣の東京事務所を訪れ、受付で要請書を手渡すとともに、「現場を見て判断して欲しい」ことを強調しました。これに対し、「要請のあったことは伝えます」とのコメントがありました。

日本年金機構凍結と職員の雇用確保を
自由法曹団が厚労大臣あて申し入れ
 労働者の権利擁護を中心に弁護活動を行っている「自由法曹団」は、10月1日午後、長妻厚労大臣宛の「年金記録問題の解決等にかかわっての申し入れ書」を提出し、日本年金機構凍結と記録問題解決のための提言、そして社保庁職員の雇用確保を求めました。自由法曹団からは加藤事務局長他2名の弁護士が参加。厚労省は、社保庁総務課福井室長補佐他2名の担当官が対応しました。
 冒頭加藤事務局長は、@年金記録問題について、本質的な問題がどこにあるか調査解明してできる限り照合を。年金記録問題をすべて現場の職員の責任とするのは誤りA現状でも人員が不足しているのだから、機構に移行した際の人員削減では、運用できるか危惧しており必要な人員の確保をB採用内定者については、年金記録問題に特化した委員会に改組して、首を切ることはしないでC機構を凍結して社会保険庁の存続をD基本計画によれば、処分歴がある職員を採用しないという採用基準については、職員の雇用確保、膨大な雇用問題が生じることを考え採用基準を見直して欲しい。採用基準は閣議決定であることや、党利党略から処分歴の在る職員は採用しないと言うことが盛り込まれたのであるから、見直せるのではないか、と申し入れの主旨について説明しました。
 引き続き小部弁護士がが、これまで夕張炭坑や国鉄など、多くの労働争議を最後までたたかってきた自由法曹団として、こういう問題を黙ってみていられない。処分された職員の分限免職は、比例原則、二重処分禁止の原則から言って法律家の判断であれば到底許されるものではない。裁判になるという不幸な事態にいたらないため、1人の免職者も出すことなく雇用をできるだけ確保して欲しいと強調しました。
 さらに菅野弁護士が、査定が良かった職員でも不採用にされたということもあるように、採用基準が非常に不透明で職員の抱えている不安は大きい。分限免職を回避する手段を尽くして欲しいと要請しました。
 これに対し、福井室長補佐は、@A年金記録問題については、国家プロジェクトとして集中的に取り組んでいきたいB十分に配慮すべき問題だと考えているCD機構にいくかどうかは、先月新しい大臣を迎えたので、早急に検討して結論を出したい。機構に移行することになったら、分限免職回避に向けてできる限り努力していきたい。採用基準の見直しについてはあり得るかどうかについて、今の時点ではなんともいえないなどと回答しました。

この秋、映画「沈まぬ太陽」をみんなで鑑賞しよう
 山崎豊子原作・渡辺謙主演の映画「沈まぬ太陽」が10月24日から公開されます。一足早く試写会で鑑賞した西田志緒さん(本部書記)の感想を紹介します。

 「沈まぬ太陽」は、航空会社「国民航空」が舞台。冒頭、会社を挙げた祝賀パーティーのシーン、ジャンボ機墜落のシーン、そして主人公・恩地がアフリカの地でハンティングをするシーンが並行して映されます。もうけ最優先の窮屈な社会が生み出す光と闇、その中で翻弄される人間、だけどその人間は何にも侵されない自由を持っている、と象徴しているかのような始まりから、ぐいぐい映画の世界に引き込まれます。観賞後、「こんなに人間そのものに向き合う映画なのか」という印象を持ちました。
 恩地は労働組合の委員長として、空の安全と仲間の労働条件改善を追求したために、会社から差別されていきます。主人公をとりまく登場人物は、私たちに様々な生き方を提示します。権益に盲目的に加速する人々。労働組合の仲間が、権力への欲望から会社の手先に転がり落ちる姿。仲間への思いを持ちつつも、弱さゆえ利用されてしまう人・・・すべての人物像が、1人の観客の中に備わっている「自分」です。 いま、雇用形態にかかわらず自己責任が押しつけられ、競争においたてられる社会の中で、私たちはバラバラに分断され、尊厳も人間性も大切にされない現実があります。だからこそ、虐げられても自分自身の意志と尊厳を保ち続ける恩地の姿に励まされ、またすべての登場人物の生き方を通して、観る人に人間性を問いかけてくる作品です。そして、1人1人を大切にするために、労働者が手をつなぐために、労働組合が存在することの重要性も語られる、貴重な作品。この秋、必見の映画です!

 映画「沈まぬ太陽」の前売券を1200円で斡旋中です。お問い合わせは支部または本部へ。

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