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◆第1721号 (2009年6月1日付)◆


日本年金機構で公的年金は安心か
安心年金つくろう会と全労連が「年金法廷」で検証
 5月16日、安心年金つくろう会と全労連は、「日本年金機構でどうなる?私たちの年金」をテーマにした「年金法廷」を、東京・社会文化会館で開催しました。国民が原告となって、国(被告)を訴える裁判形式により、来年1月に発足する日本年金機構で公的年金制度は本当に安心・安全なのかなどの問題点を検証しました。全体で172人、全厚生はOB含む72人が参加しました。

◆原告
日本年金機構凍結を

 原告である国民の代理人は、「社会保険庁の解体・民営化は、国と企業の責任を縮小し、国民に負担増を押しつけようとする『社会保障構造改悪』にほかならない。日本年金機構へ移行する過程において、業務に精通した多くの社会保険庁職員が排除されるのは、国民にとっても大きな損失」と述べ、「年金記録問題の早期解決や専門性ある職員による安定的な業務運営を実現し、安心できる公的年金制度を確立するために、日本年金機構の設置は凍結することを求める」と主張しました。
 証人尋問では、年金受給者が「給付の引き上げや最低保障年金制度の確立など、制度の改善こそ必要」と陳述したのに対し、国側証人の財界代表は「財源は、消費税を充てるべき」と述べ、企業の負担逃れなど制度改悪の狙いが明らかに。記録問題など一連の不祥事問題では、年金受給者が「社保庁を厳しく見直すのは必要。しかし、ひとり社保庁職員だけを悪者にして事を済ませるような問題ではなく、長年にわたる公的年金制度の様々な矛盾が背景にあり、その責任を負うべきは政府・厚労省である」。また、社会保険庁職員は「保険料の不適正免除は、収納率アップを目的とした上からの業務命令であって、厚生労働省・社会保険庁に根本的な責任がある」と証言しました。

◆証人
職員の雇用継承を

 原告側証人として、郵産労の日巻書記長が郵政民営化によるサービス低下と国民財産切り売りの実態を述べ、建交労の藤好副委員長が国土交通省の自動車運転管理委託による雇用破壊と災害パトロール業務への支障を証言しました。
 原告側証人の学者は、「業務は日本年金機構に承継するのに雇用は承継しないということや、懲戒処分者は既に済んでいるにもかかわらず、再度、一律に不採用とする二重の処分は極めて違法性が高い」と指摘しました。
 フロアー発言では、民事法務協会労働組合から、法務局登記委託業務の市場化テストによる雇用破壊と業務混乱についての訴え、社会保険労務士からは、「社保庁問題を職員のせいにするようなマスコミ報道に積極的に反論を」との激励。全厚生OBは、「年金記録問題は、職員個々の問題ではなく、制度的・構造的問題であることをWEBも活用して世間にアピールしていきたい」と発言。また、全厚生兵庫県支部の柴田支部長が「自治労を脱退して全厚生に入った。厳しい状況の中、国民のための公的年金制度の確立を求めていく全厚生の方針と運動が展望を指し示してくれている。全厚生が職場で多数を占めていたら今日とは違った状況にあるのではと思う。引き続きがんばる」と発言しました。

◆最終陳述
安心の年金制度確立を

 全厚生の杉浦書記長が最終陳述(全文2面に掲載)を行い、「年金法廷で、社会保険庁を廃止し日本年金機構に移行することは、国民にとって何ら利益にならないことが明確になった。社会保険庁職員の雇用を守る課題と、国民が安心できる年金制度の確立を求めるたたかいを結合させ、引き続き奮闘する」と力強く決意を表明しました。
 裁判長は、この場での判決は下さず「判決は参加者一人ひとりに委ねることとする」と締めくくり、年金法廷を終了しました。

リレーずいそう
●日本人の身体活動
 厚生労働省の国民健康・栄養調査では、1日あたりの歩数を毎年測定している。平成9年に男性8208歩、女性7282歩だったのに対し、10年後の平成19年には男性7321歩、女性6267歩と男女とも約1000歩ほど減少した。歩数は、人の全ての活動すなわち「身体活動」の良い指標である。したがって、日本人はわずか10年で身体活動を1割以上も失ったことになる。急速な身体活動の減少は、肥満者や生活習慣病患者さらには要介護者を増加させるであろう。
 このような身体活動の減少にはいくつかの要因が考えられている。一つ目は、私たちの生活を劇的に便利にさせた携帯電話やITの発達である。二つ目は週休2日の実施である。歩数は休日に著しく減少する。派遣就労、ホワイトカラーエグゼンプション、名ばかり管理職に代表される平日の過酷な労働により休日を活発に過ごす余力がないのだろう。三つ目は、社会が効率を追求しすぎるあまり、不採算公共交通機関が廃止され、地方での乗用車の普及が加速したことである。日本人が怠慢になってしまったことが原因ではなく、社会や環境の問題なのである。これらの社会や環境の問題を乗り越えて、日本人がかつての活発な身体活動を取り戻すためには、職場と家庭の有り様から見直す必要がある。
(国立健康・栄養研究所支部 支部長)

News
最低賃金の引き上げを
最賃デーに厚生労働省前要求行動

 国民春闘共闘は5月15日、第2次最賃デー行動を厚生労働省前で実施しました。300人が参加しました。地域別最低賃金は全国平均で703円。不況だからこそ、貧困をなくすため、最低賃金を全国一律1000円に引き上げるよう、要求しました。(写真下)

公務員の一時金カット反対
法案成立許すなと国会前座り込み

 公務労組連絡会・全労連公務部会は5月20日、夏季一時金削減の給与法案に反対して、国会前の座り込み行動を実施。(写真上)行動には全国から100人が参加。公務労組連絡会の山口議長は「道理も根拠も政策的整合性もない、断固廃案求めたたかおう」と呼びかけました。

めっちゃ遊んで めっちゃ学んで めっちゃ元気
全厚生青年女性交流集会in神戸
と き 6月20日(土)正午〜21日(日)正午
ところ 国立公園六甲山・グランドホテル 六甲スカイヴィラ
 <見学先> 国立神戸視力障害センター 施設見学と障害者スポーツ体験

*保育あります 親子で参加大歓迎(^-^)/

学習会やシンポなど開催
安心年金つくろう香川の会発足
 【安心年金つくろう香川の会発】5月15日、年金者組合や香川県労連、香川県国公など10団体の呼びかけで「国の責任で安心して暮らせる年金制度をつくる香川県連絡会(略称:安心年金つくろう香川の会)」の結成総会が高松市で開催されました。岐阜、愛知、愛媛に次いで全国4県目となる香川の結成総会には32名が参加し、学習会やシンポジウムの開催、宣伝署名活動、自治体への要請行動などを確認しました。
 結成総会は、香川県国公坂上議長の「年金問題は国民の最大の関心事。だれもが老後の暮らしを支える年金制度の改善を求めている。香川県国公も会の運動に最大限結集する」との開会あいさつで始まり、香川県国公石岡副議長が申し合わせ事項を提案し、全体で確認しました。
 記念講演では年金実務センター代表の公文昭夫氏が、「全国民の夢と希望にこたえる年金改革実現のために」と題して、年金制度の歴史や問題点について講演。日本の年金制度が戦費調達を目的に創られ、国民への給付の観点が欠落していたこと、非正規労働者の拡大で、このままでは無年金者が1千万人を超えること、国民の不満は「高い保険料」「低い給付」「やばい制度」の3点であり、消えた年金記録問題は、戦争政策のために年金制度をつくったことから保険料を集めることを主として支給を放置してきたツケが今にあることを指摘。これを現場の労働者の責任とするのは大問題であることを明らかにしました。そして、社保庁民営化を凍結して消えた年金の解決を優先すること、基礎年金部分を全額国庫負担(財源を消費税とせず)とした最低保障年金の創設が求められていることを訴えました。
 参加者からは、「講演はとてもわかりやすく、良く理解できた」、「不安と怒りで気持ちが高ぶる。しっかり学習してがんばろう」、「宣伝を大々的にやっていく必要がある」などの感想が寄せられ、「安心年金つくろう香川の会」へ結集する決意と運動への期待が示されました。

5・16年金法廷で杉浦書記長の最終意見陳述
社保庁の解体・民営化はやめ日本年金機構の設置凍結を
 5月16日に開催された「日本年金機構でどうなる?私たちの年金〜年金法廷」での最終意見陳述(全文)は次のとおりです。

 原告の一員として、社会保険庁で働く職員を組織する労働組合として、最終の意見陳述を行います。社会保険庁改革が始まって5年。来年1月には、日本年金機構が設立されようとしています。改めて、この今、この時期に、国を相手取り、裁判を起こした理由は、社会保険庁改革がどんな中味で、何のために行われているのか、その本当の姿を明らかにするためです。さらに、国民の老後の命綱である公的年金制度を守り、拡充・発展させたいと願うからです。

 社会保険庁改革とは、社会保険行政を解体・分割し、民営化する攻撃です。国の責任を放棄して、社会保障を解体する攻撃です。そこに、保険資本が侵入し、大企業のビジネスチャンスを拡大する仕掛けと一体ですすめられています。しかし、政府は、年金制度や記録問題など、国民の不信・不満を逆手にとり、歴代政府の責任を棚上げして、すべての責任を職員に転嫁する、社保庁バッシングを意図的に行ってきました。そのバッシングを最大限に利用して、国民と公務員・社会保険庁職員・労働組合との間を分断させ、「民営化」を推し進めています。この偽装トリックにだまされてはなりません。

 社保庁改革の異常さは、職員の雇用問題に象徴的に現れています。業務は継承するにもかかわらず、職員の引き継ぎ規定が全くありません。新組織への採用は、国鉄「分割・民営化」と同様の枠組みです。「民営化という」改革に後ろ向きな職員を排除し、懲戒処分者は一律不採用とする採用基準が示され、閣議決定までされています。公務リストラである、組織廃止に伴う「分限解雇」の発動がねらわれています。人が全く足りないにもかかわらず、今いる労働者の首切りを公然と行い、民間から千人も採用する。こんなことを断じて、認めることはできません。

 また、この改革によって、公的年金制度が良くなることはありません。100年安心の制度をつくると言って、5年前に政府が強行した年金改革。この中味は、国会の審議なしで、毎年連続して保険料を引き上げ、給付水準を自動的に削減する大改悪でした。政府の公約にもかかわらず、先送りしてきた基礎年金の国庫負担割合の2分の1への引き上げ。その財源には今、消費税大増税がねらわれています。消費税は、庶民犠牲の最たる税制であり、この消費税を財源とすることは、世界の労働者のたたかいで築いてきた社会保障の考え方とは、絶対に相容れません。

 今、年金制度で求められるのは、改悪を中止させ、老後を安心して暮らせる年金制度をつくることです。国民年金の保険料は、現在、ひと月14、660円です。こんなにも高い保険料を最低でも25年間、払い続けなければ、年金はもらえません。40年間払い続けて、65歳から支給される年金は、月額・約6万6千円。これでは、老後が安心とは到底、言えません。保険原理を徹底する方向ではなく、憲法25条の理念を活かして、国と大企業が必要な財政負担を行い、年金制度を改善させることこそ、みんなの願いではないでしょうか。

 公的年金制度の運営には、40年、50年という長い期間、確実な管理が必要です。国が責任をもってこそ、安定的な制度運営が保障されます。その担い手は、国民全体の奉仕者、すなわち、公務員であることがふさわしいと考えます。 年金記録問題の根本解決には、知識と経験が必要です。複雑な制度に習熟した、職員の力が不可欠です。安心・信頼できる業務運営のためには、社会保険庁職員の役割がなによりも必要です。基本的人権を尊重し、幸せに生きる権利を実現するには、民営化は止めさせなければなりません。日本年金機構の設置は、凍結する以外にありません。

 全厚生は、結成して63年。大切な原点は、憲法25条です。規約には、労働条件の改善はもとより、「社会保障の確立のために、行政の反動化に反対し、わが国の平和と民主主義の確立に寄与することを目的とする」ことを掲げています。 公的年金、社会保障は、平和で、国民が主人公の社会を実現させる中でこそ、輝きを放ち、位置づく制度です。憲法を守り・活かし、国民全体の奉仕者として、誇りをもって働き続けることが、私たち職員の何よりもの願いです。必ずや、真実にもとづき、道理ある判決が下されるものと確信しています。

日本年金機構設立委員会の採用決定について

2009年5月21日
全厚生労働組合

 日本年金機構設立委員会は5月19日、「社会保険庁職員からの日本年金機構職員採用に係る審査結果の概要」を公表した。概要は、採用希望者名簿の登載者11,118人の内、現段階での採用者(採用することが適当な者)は、正規職員で9,613人、准職員で358人となっている。この数は、民間の採用枠を除いた定員枠11,280人に対して、1,309人も下回っている。さらに、28人の不採用も明らかになった。
日本年金機構の発足が迫る中、安定した業務運営を確保するには社会保険庁職員の雇用を継承することが最重要課題であり、選別採用を行うことは断じて許されない。

 そもそも、日本年金機構は、業務を継承するにもかかわらず、職員の引き継ぎ規定が全くなく、新組織への採用は、国鉄「分割・民営化」と同様の枠組となっている。すでに閣議決定や採用基準で、被懲戒処分者の一律不採用が決められ、約850人の職員が採用希望者名簿からも除外されてきた。その上、採用希望者が予定枠にも満たない中で、社会保険庁職員の不採用を公然と行うことには道理がない。採用基準に照らして、なぜ不採用なのかを直ちに明らかにすべきである。

 また、採用を保留された職員が1,119人にも及んでいる。その理由は、面接ができていないことや病気休職中などとされているが、これ以上、採否決定を遅らすことは許されない。速やかに、全員の採用決定を強く求める。仮に、面接が不可欠としても、「これまで改革に後ろ向きな言動のあった者及び改革意欲の乏しかった者については、改革意欲の有無や勤務実績・能力を厳正に審査し、採用の可否を慎重に判断する」など、恣意的な採用基準で、法的にも問題ある選別採用を行うことは許されない。

 安心・信頼できる公的年金の業務運営や、年金記録問題の解決には、複雑な制度に習熟した専門性ある職員の役割が不可欠である。欠員補充はもとより、業務体制の抜本的な拡充・強化が緊急に求められている。にもかかわらず、日本年金機構は、現体制より3千人以上も削減し、社会保険庁職員の選別採用を強行し、その一方で民間から千人も採用しようとしている。この理不尽な枠組みの下で、公務リストラである分限解雇を行うことは、断じて認められない。
 全厚生は、老後を安心して暮らせる年金制度を確立するためにも、日本年金機構の設置凍結を求めるとともに、組織廃止に伴う分限解雇の発動を許さず、すべての職員の雇用を確保するために全力をあげることを表明する。

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