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◆第1713号 (2009年1月1・15日付)◆


社会保険職員の雇用を守れ
「安心年金つくろう会」の運動を広げよう
 社会保険庁解体・民営化による日本年金機構発足(2010年1月)まで、1年足らずとなりました。
 日本年金機構設立委員会は12月22日、職員採用基準や労働条件を発表しました。(「全厚生」1月号外に特集)
 設立委員会の基本方針は、職員の大幅削減とともに、大幅な外部委託を打ち出す一方で、国民の一番の要求である記録整備と記録訂正に伴う年金額のすみやかな支給のための体制拡充については、何ら触れていません。そればかりか、懲戒処分歴のある職員は一律不採用とする閣議決定そのままに、不採用方針を明らかにしました。
 12月19日、日本弁護士連合会は「日本年金機構の職員採用に関する意見」を発表。「過去一度でも懲戒処分を受けた者は一律に不採用・分限免職とする閣議決定は、わが国の労働法制や国家公務員法に抵触する疑いがあるので、法令に適合し、かつ合理的な人選基準を設定するよう、採用基準の見直しを求める」としています。
 全厚生は、日本年金機構への採用にあたり懲戒処分者を一律不採用とする閣議決定を見直すこと、政府・厚生労働省・社会保険庁は職員の雇用に万全を期し、組織改廃に伴う「分限解雇」は行わないこと、日本年金機構での労働条件の後退・切り下げは行わないことなどを一貫して求めてきました。
 今、国民の最大の関心事である雇用問題において、厚生労働省自らが解雇を行うことは、国民世論の支持を得られるはずはなく、許されることではありません。
 昨年5月28日、「国の責任で、安心して暮らせる年金制度をつくる連絡会」(略称:安心年金つくろう会)が発足しました。
 安心年金つくろう会には12月末現在で、公務労組連絡会、国鉄労働組合、自由法曹団、全国商工団体連合会、全国生活と健康を守る会連合会、全日本金属情報機器労働組合、全日本建設交運一般労働組合、全日本年金者組合、中央社会保障推進協議会、日本婦人団体連合会、厚生省労働組合共闘会議、日本国家公務員労働組合連合会が参画しています。
 地方段階での安心年金つくろう会は、10月11日に岐阜県で、10月15日には愛知県で発足し、香川、愛媛、大阪、兵庫などでも準備が進められています。
 国民の年金権保障に必要な体制確立や制度改善、そのための国の責任を明らかにする宣伝と運動をすすめましょう。

安心年金つくろう会HP http://www.anshinnenkin.com/

政府の責任を曖昧にしてはならない
弁護士 菅野園子

 先年10月より、自由法曹団事務局次長に就任し、同時に「国の責任で、安心して暮らせる年金制度をつくろう会」に関わることになりました。社会保険庁内の様々な体制問題を、自らの責任を棚上げするために個々の職員の問題に矮小化して問題の本質を曖昧にして、批判をかわそうという政府の姿勢には大きな疑問を感じてきました。また、個々の職員や労働組合の問題として報道することがわかりやすくセンセーショナルであるため、職員や労働組合の問題として報道するその報道姿勢にも安易さを感じてきました。一体何が一番国民にとって重要なのかわかりやすく訴えていきたいと考えています。本年も社会保険庁の職員の皆様にとって大変な年になると思いますが、皆様方のお力を借りて弁護士として何ができるか、考えていきたいと思います。本年も宜しく御願い致します。

座して死を待つよりも 起って反撃に転じよう
国鉄労働組合中央執行委員 小池敏哉

 1971年、国鉄当局の「生産性向上運動」という不当労働行為で組合員が激減、全国大会で当時の委員長が「座して死を待つよりも起って反撃に転じよう」と全国に訴え、この大会を機に、国労は当局による不当労働行為を告発して闘い、当時の磯崎総裁に国会で不当労働行為を謝罪させました。そして1987年の分割・民営化との大闘争を経て現在の国労があります。
 「社保庁問題は22年前の国労への差別選別の首切り攻撃と同じであり、こんなことを二度と許してはならない」という思いです。「赤字は職員が働かないから、不祥事の原因は組合が悪いから」「民営化で効率的でサービスが良くなる」全く同じ手口です。
 政府やJRは分割・民営化が成功したと宣伝しています。しかし、土地や株式を売却した今も20兆円以上の借金が残り、今後50年にわたって毎年4千億円も支払いをしなければなりません。JR福知山線事故に象徴される儲け第一の大事故も起きています。なにより、国家的不当労働行為との闘いが現在も続いており、国鉄分割・民営化は終わっていません。働く者を分断し、社会から孤立させる攻撃は巧妙・熾烈ですが、必ず悪事は露見し破綻します。共に闘う仲間がいることを忘れず、起って反撃に転じようではありませんか。

安心して暮らせる年金制度に
全日本年金者組合中央執行委員 久昌似明

 明けましておめでとうございます。
 未曽有の逆風の中、国民の老後の命綱である年金制度を支え担うために、懸命にがんばっておられる皆さんに敬意を表します。
 私たちは、年金制度の現状については、問題が多く矛盾に満ちていると考えています。それは、仕組みだけの問題ではなく、制度が機能する背景である、日本の経済社会に起因していることも多いと思われます。そこから様々な問題が発生しているように思います。いづれにしても年金制度が、国民の老後の生活を保障する制度として十分機能していないことは確かです。
 私たちが「会」に参加するのは、年金制度を「安心して暮らせる年金制度」につくりかえることがどうしても必要であると考えるからです。そして、その年金制度の実務を担うのは、皆さんをおいて他にないと考えるからです。老後の命綱である公的年金制度を担うことに誇りを失わず、奮闘してくださるよう願っています。

女性が自立できる年金制度を
日本婦人団体連合会事務局長 榎本よう子

 昨年の格差や貧困に抗するたたかいの前進、「派遣切り」などの無法に対する連帯の広がりに今年へと続く希望を見ました。
 今年は女性差別撤廃条約採択30周年にあたり、婦団連(加盟21団体)は個人通報制度を定めた選択議定書の批准、「慰安婦」問題の解決、労働における差別撤廃などめざして連帯・共同の活動を強めています。
 賃金差別などの結果、低年金・無年金に苦しむ女性が大勢います。87歳の母は「長生きして申し訳ない」と小さくなっています。懸命に働いてきた姿を見てきた私は切なくてなりません。婦団連は共同行動の要求項目に「国の責任で年金消失問題を解決せよ。社会保険庁の解体・民営化中止を。全額国庫負担による最低保障年金の創設と女性が自立できる年金制度の確立を」を掲げ、女性団体に「安心年金つくろう会」への賛同を呼びかけています。
 すべての人が憲法に基づいた人間らしい人生をおくることができるよう、ご一緒にがんばりましょう。

神奈川県支部
労働条件改善へ健保協会分会を承認
 全厚生神奈川県支部は11月29日、第15回支部定期大会を開催。規約を改正し、全国健康保険協会神奈川分会を正式に承認しました。「協会けんぽ」分会から参加した代議員からは、「職員以上に契約職員の労働条件は劣悪だ、改善に向けた運動を積極的にやっていきたい」との発言があり、職場集会を開催するなど、要求実現に向けがんばる決意を固めあいました。

リレーずいそう
●政治と年金
 “戦費調達”を大きな目的に発足した厚生年金。第二次世界大戦の真っ只中、ドイツの年金制度を参考にスタートしました。その独連邦年金保険庁国際担当局長は、昨年の11月7日付朝日新聞で「私たちの組織は公的なものであり、利潤追求を目指していない。日本の社保庁が、民間の組織として再出発するのは理解しづらい面もある。年金制度は最終的に公的な機関が責任を持つことは、今後も変わらないだろう」と、社会保険庁の解体・民営化に疑問を投げかけています。
 社会保険庁改革は、経験ある職員を大幅に切り捨てる一方で、多くの業務を民間委託する内容です。加入者7000万人、受給者3000万人の公的年金が、営利を目的とした民間で運営された場合、本当に国民のプライバシーが守られるのでしょうか。もちろん、短絡的に利用されることはないでしょうが、データの加工が繰り返され、利潤追求の道具にされる危険性は誰も否定できません。しかも表面化するのは何十年も先・・・。記録問題以上に大変な事態を危惧せざるを得ません。
 戦費調達に始まり、戦後は、高度経済成長のための原資として使われてきた年金制度。今また、株価安定策の一環として莫大な積立金が、株式を中心とする市場運用に晒され、多額の損失を計上する一方で、外資系運用会社や日本の大手証券会社に毎年300億円を超える手数料が支払われています。
 日本の年金制度は、常に政治の思惑に翻弄されてきたといっても過言ではないような気がします。自民党の解体を見届けてから任を終えたいと思うこのごろです。
(中央執行委員長)

年金制度に習熟した職員は国民の宝
「回復した年金は直ちに支給せよ」に応えて
 今、年金記録の統合等による年金額の再裁定の処理が大幅に遅れ、問題となっています。
 「ねんきん特別便」を受け取った人からの記録訂正の手続き(再裁定)は、社会保険業務センターで行われていますが、申請が集中し、滞留件数は昨年12月時点で80万件に上りました。受付から支払いまでに7ヶ月、複雑なものは9ヶ月から1年もかかる事態になっています。その間に亡くなる方もおり、年金記録管理とともに「回復した年金は直ちに支給せよ」が、国民にとっての切実な要求となっています。
 全厚生社会保険業務センター支部のみなさんに話を伺いました。

80万件の再裁定限られる職員数
 社会保険庁は1月から、職員を配置転換により増やし、任期付職員、派遣職員の他、全国の社会保険事務局・事務所から職員の支援を毎日120人規模で確保することで、330人体制で臨むとしています。しかし、裁定の業務は年金制度に習熟した職員でないとそう簡単には行きません。今回再裁定の申請者の年齢を考慮すると、1986年以前の旧法も関係し、相当複雑で難解なものもあります。舛添厚生労働大臣も12月4日の参議院厚労委員会で、「この処理をやることが可能な能力を持った職員の数が限られている」と答弁しているように、制度に習熟した職員は貴重です。
 社会保険業務センターでは、年金の再裁定作業の為、昨年6月、敷地内に2階建てのプレハブ庁舎を建て対応しています。派遣職員は制度学習を含めて、最短でも1ヶ月の研修期間が必要ですが、その後の業務においても職員による指導・監督が欠かせません。また、あまりの制度の難しさに途中で辞めてしまう派遣職員も少なくありません。各都道府県の事務局・事務所にしても職員を支援ばかりに回していては、自らの業務が立ち行かなくなります。

政府は正式に国民に謝罪を
 現在の80万件をこなすには、現状では3年はかかると思われます。ねんきん特別便を計画を持って段階的に国民に送付すれば、今日のような混乱はなかったものを、人員も体制も整えず、見通しのないまま、政治の思惑だけで「1年以内に」などと無茶苦茶なことを言ったことに対し、政府は正式に国民に謝って、時間的猶予が必要であることを明らかにすべきです。
 業務センター支部の北畠支部長は、「年金の裁定は各都道府県ごとに共同事務センターなどで行っている。再裁定についても行えるように変えていく必要があるのではないか」と提案します。
 木立書記長は、「この間、増額された年金を受け取ることなく亡くなっていった方々もいる。厚生年金は遺族に支払われるといっても、姪や甥には支給されない。いくら生計を一にして最期を看取ったとしても支払われない。法律を変える必要もあるのではないか」とも。

一律不採用は国民の利益に反す
 北畠支部長は、「現在、この業務に就いている職員、支援に来ていただいている職員は優秀な人たちばかり。この方達を職員として採用しないのは本当に戦力ダウンとなる。政府は、本気で年金記録問題を解決するつもりなら、懲戒処分者の一律不採用の閣議決定を撤回し、処分されているかいないかに関係なく全員を採用すべきです。それは国民の利益にもつながること。支部としても一律不採用撤回は国民のための年金を守ることにつながることを、内外に知らせて、がんばりたい」との決意を語りました。

業務に習熟した職員の採用を
安心年金つくろう会が厚労省・社保庁に申し入れ
 国の責任で、安心して暮らせる年金制度をつくる連絡会(略称:安心年金つくろう会)は12月19日、厚生労働省と社会保険庁に対して日本年金機構の職員の採用基準や労働条件、基本計画等に関わっての申し入れを行いました。申し入れは、公務労組連絡会の黒田事務局長、国労の小池中央執行委員、自由法曹団の菅野弁護士、年金者組合の久昌中央執行委員、全厚生の飯塚委員長、全医労の岸田書記長、国公労連の川村副委員長と瀬谷中央執行委員の8人で行い、社会保険庁総務課の担当者ら3人が対応しました。
 申し入れでは、処分歴のある職員はどんなに業務に習熟、精通していても一律採用しないとしている問題を中心に、国民が安心、信頼できる年金制度を確立するためにも社保庁職員を機構に採用するよう求めました。
 参加者からは、「消えた年金、年金記録改ざんなどの問題を解決しないまま、社保庁を解体することは国民の不信感を募らせることになる。業務がまともにできる体制をつくることが先決。そのためには、専門知識を有した熟練した職員が必要だ。そんな職員をスポイルしていいはずがない。社保庁として職員の雇用にきちんと責任を果たすべきだ」、など、国民が安心、信頼できる年金制度と体制確立についての社保庁の責任を追及する発言が続きました。
 最後に、「国の責任で、安心・信頼できる年金制度の確立を求める請願署名」の紹介議員が衆参国会議員で41人になっていることや、アピールへの賛同も多数寄せられていることを紹介し、閣議決定ありきでなく、国民の立場に立った検討を行うよう求めました。

憲法と労働諸法令を遵守すると回答
全国健康保険協会と交渉
 全厚生本部は12月24日午後5時から1時間、全国健康保険協会本部(小林剛理事長宛)に対し、申し入れ(交渉)を行いました(12月19日付で事前に申し入れ書は提出済み)。申し入れ(交渉)には、山本副委員長、杉浦書記長、峰書記次長が出席。全国健康保険協会からは、岩渕総務部長、春山総務人事グループ長が対応しました。
 冒頭、山本副委員長が、就業規則の確定や「36協定」などの労使協定の締結にあたり、労働基準法の精神を活かすなら、各事業場で労働組合・労働者代表者の意見を可能な限り反映することが大切な点だと主張。設立経過にもふれ、今後は、労使対等の立場での充分な協議を求め、4項目の趣旨説明を行い、回答を求めました。
 これに対し、岩渕総務部長は、設立3カ月。当初は、問題が日々出て、職員も役員も必至で乗り切ってきた。改善しているが、平常化に至っていない。胸を張って働ける、明るい職場にしてきたいと述べました。申し入れ項目に対する回答は次のとおり。
 @全国健康保険協会は、憲法および労働諸法令を遵守するとともに、労働条件に係る問題について、過半数を組織する労働組合及び労働者代表と話し合い、共に労使対等の良好な関係の確立に向けて努力する。
 A超過勤務については、職員の健康や家庭生活にも配慮し、必要最小限とする。超過勤務手当の支給については、職員給与規程第19条の規程を遵守する。
 B各事業所に「衛生委員会」を設置し、労働者委員の意見も踏まえて労働者の安全と健康の確保に努める。
 これに対し、項目ごとに具体的な要求課題を示し、やりとりを行いました。また、良好な労使関係を築く上で、労働組合の基本、すなわち労働組合活動の権利の保障や、団体交渉の方法及び団体交渉を行う協議を継続することを確認しました。

国立更生援護機関の拡充を
「あり方検討」は障害者の立場に立って
 いよいよ国立の福祉施設にも国の減量政策の波が押し寄せてきています。現在開催されている「国立更生援護機関の今後のあり方に関する検討会」(以下検討会と略)は、これまで2回開催され年度内に結論を得るとしています。
 検討会では、障害者施策や社会経済情勢等の変化に対応していくため、将来を見据えた国立施設の役割・機能及び組織のあり方を検討するとしています。国立施設のあり方は、その時々により議論され、昭和61、平成5、10、13年と、過去4回の検討が行われ、報告書にまとめられています。しかし、当局にして「国立施設の現状をみると、これまでの検討結果が必ずしもその後の施設運営に十分反映されているとは言えず、利用者は減少している」としています。
 今回の検討会も一義的には平成20年3月に総務省より出された、平成20年度減量・効率化の取組として、平成20年度中に「国立更生援護機関については、事務事業の効率化・合理化等、その機能等のあり方を検討する」との方針をうけたものです。事務局担当の施設管理室は、「国立施設の利用者は年々減少傾向にあり、真の利用ニーズを検証し、今後の国立施設としてどのような機能を有すべきかを検討する」とし、方向性としてリハビリテーションの「実践検証、研修開発、人材育成、情報発信、国際協力」等をキーワードに、サービスの一元化・共通化、事務事業の効率的な運用、利用ニーズを踏まえた全国的な配置を見直すとしています。つまり現在の国立施設4分類8施設を統合縮小する方向で検討が進んでいるということになります。

福祉施設は発展
全厚生の粘り強い運動結実

 全厚生はこれまで、昭和45年に作成した「国立社会福祉施設白書」をはじめ、計4冊の小冊子を作成し、福祉施設の発展、職員の労働条件の改善を訴え、障害者・国民の立場にたった福祉施設作りに一定の役割を果たしてきました。生活訓練課程設置(1988年頃)、専門職俸給表適用(教育職1987年、福祉職2000年)等どれも組合の粘り強い運動が実を結んだものです。
 国連の「障害者権利条約」(08年5月発効)は、全ての障害者に対して同年齢の市民と同じ権利を保障することをうたっています。1983年から始まった「国連・障害者の十年」、続くアジア太平洋障害者の十年(1993〜2002年)、第2次アジア太平洋障害者の十年(2003〜2012年)と、障害者を取り巻く世界的な状況は大きく変化しています。日本政府もその中心的役割を担っており、法制度や社会資源は一定の前進をしてきています。

障害者本位の施策を
食費見直しやスポーツ振興等

 一方、視力センターで、過去25年の改革といえば、生活訓練課程設置、障害者自立支援法への新事業体系移行・応益負担・食費等実費徴収(2006年)、高等課程募集停止(2008年)等です。これでは障害者や国民の期待に応えることはできません。
 神戸センターで働く仲間はこう言います。数年前までは毎食100食余りの食事を提供、今は多い時で20食。喫食率も約60%の中で奮闘する調理師の池田さんは「人件費、光熱費まで算定に繰り入れられ、利用者からも愚痴られ肩身の狭い思いをしています。あり方検討などの話を聞くと将来に対する不安がいっぱい」。栄養士の長滝さんは「おいしい給食をと考えて提供していますが、580円ではなかなか食べて頂けないのも事実。サラリーマンの平均昼食代が570円。学校給食が270円。食費の見直しもして頂きたい」と話します。
 スポーツ振興は毎年障害者施策の大きな柱です。兵庫県における視力障害者スポーツのレベルは全国トップクラスです。体育教官の細川さんは、「視覚障害スポーツを広めるにはいろいろな支援が必要です。地域でスポーツを楽しみ、生涯教育や健康管理にもつながるよう環境づくりにも努めています。国立施設は重要な役割を担っています」と話します。休暇を取り、自費で多くの職員が国の施策を実践しています。職員個人で支えるのではなく施設機能と位置づければ、飛躍的に障害者福祉の向上に結びつきます。
 障害者の権利条約批准、障害者自立支援法見直し、検討会報告の節目の年にあたり、真に障害者、国民のための国立施設の使命と役割を果たせるよう、神戸センターの正面玄関に掲示されている「国立神戸視力障害センター運営規定」が、「障害者の権利条約」に掛け替わるよう、皆さん、ともに奮闘しようではありませんか。
(中央執行副委員長)

仲間の労働条件守ってがんばる
全厚生京都支部健保協会分会を訪ねて
 昨年10月1日、非公務員型の公法人である全国健康保険協会(以下、健保協会)が発足しました。全厚生は、健保協会に働く仲間への加入促進とともに、労働条件改善に向けて、健保協会本部と交渉するなど(12月24日実施、記事3面)、取り組みを進めています。
 昨年12月18日、健保協会京都支部の職場に全厚生京都支部健保協会分会を訪ねました。

異常な残業実態
みんなもう限界

 この日は、健保給付費の締め切り前日ということもあり、健保サービスグループにはピンと張りつめた空気がありました。書類とパソコン画面をくいいるように見つめ素早くキーボートをたたく、鳴り続ける電話への応対。
 健保協会がスタートした10月には、残業が平均69時間、100時間を超える人もいました。11月は平均39時間に減りましたが、職員は皆、もう限界。今も創設時の混乱が続いており、平常と言える状態になるにはまだ時間がかかりそうです。
 この残業に対して、健保協会本部は、今年3月末まで1人72時間分しか残業予算を確保していませんでした。残業代が全額払われなかった人もいて、持ち越しになっている状態です。
 労働基準法では、残業は労使間で36協定を結び、労働者が残業命令を受けることで初めて出来る仕組みになっています。健保協会では異常な残業実態に、12月からは勤務時間管理を徹底。終業時に残業申請をして、グループ長決裁で原則2時間の残業が認められ、それ以上の残業申請は部長決裁で1時間のみ、休日出勤は原則認めないとしています。
 この日は、終業時刻を過ぎても、昼間の張りつめた空気そのままにほとんどの職員が残業。黙々と仕事をこなす竹内さんは、「給付を遅らせるわけにはいかないので超勤でしています。時間制限がありますから必死です。お客さん(国民)のためにという気持ちは、民間になっても変わりません」
 健保サービスグループのリーダーの一人の内田さんは、「残業しないと仕事がたまるし、それでもこなしきれないので、人手がもっとあったら、と辛い思いがあります。10・11月は残業が100時間を超えて、くらくらしてきて、もう体があかん、となって。けど、お客さんが待っていると思ったら、がんばれる」
 管理者からも、「業務が平常になり、勤務時間をきっちり管理して、それでも業務がたまるならば、定員の問題ですから」との指摘。

新システムで「効率8割後退」の声も
 レセプトグループでは、多くの契約職員が働いています。健保協会への移行時に、レセプト点検のシステムが変更になりました。
 レセプトは、今まで紙で見ていたものがすべてパソコンのプレビュー画面で見るように変更されました。画面には1ページ分しか表示されず、紙の時は手でめくれば済んだものが、マウスを使って、次を表示させたり元に戻ったりと手間がかかります。しかも画面の表示を最大にしても、字はとても小さく、画面を見続ける目への負担は相当なものです。しかも、新システムには旧システム基礎データが引き継がれていないので、過去の記録の確認は別のコンピューターに席を移動して、検索して、また自分の席に戻って・・・
 管理者からは、「移行期にたまった処理もあり、未だ平常時に戻せていません。職員から『新システムで作業効率が8割落ちた』と訴えられた時はショックでした」とも。
 契約職員の木村さんは、「新システムでは、よけいな作業でさらに点検が遅くなり、苦しい。切実な要求はシステムの改善。組合で要求していってほしい」
 健保サービスグループでは、入力業務が集中するとパソコンが大量処理に対応できなくなり、システムダウンするという異常事態が何度も起こりました。

サービスは後退
何のための分離か

 謝金職員として20年近く働いてきた原田さんは、10月から健保協会の契約職員として下京社会保険事務所の健保協会相談窓口で働いています。各社会保険事務所には、契約職員1人の他、週2日、業務委託先の社労士がローテーションを組んで担当し、他3日は、健保協会職員が、やはりローテーションを組んで常時2人体制で対応しています。
 原田さんは、社会保険事務所の職員2人とともに相談受付窓口に並んで業務をしており、杓子定規に健保だけとはいかず、柔軟に対応しています。社会保険事務所では、加入、脱退、高額療養費、任意継続などの申請用紙を受け付けています。今まで即日交付できていた書類も、健保協会になってからは、事務所では申請書を預かり、翌日の朝、委託業者が各事務所を回って回収し、健保協会支部に届け、そこで手続きをして申請者へ郵送、と数日かかるようになりました。届け出の控えの閲覧も事務所ではできないので、健保協会支部に照会するという手間が加わりました。
 「任意継続や高額療養費の限度額認定書など『すぐに交付してほしい』という方には、直接支部へ行っていただくよう案内することもありますが、市内だからできること。即日交付ができなくなって、困っている方が多くいます。健康保険と年金は本来一体でやってきたのに、なんで分ける必要があったのやろか」。サービス後退に疑問が残ります。
 10月から全厚生の組合員となった原田さん、「やっと仲間入りできました。民間になったので、いろいろと権利を組合で要求していきたい」

働きやすい職場へ
労働組合ががんばる

 全厚生京都支部では、健保協会発足の10月1日前に、契約職員も含め全職員の過半数を組合員に組織し、全厚生京都支部健保協会分会を確立。分会として、就業規則への意見提出や、36協定(時間外および休日の労働)24協定(賃金支払いと控除)の締結などを行い、残業手当の全額支給や契約職員の労働条件改善などを申し入れてきました。
 分会代表の松本さんは、「職場には様々な要求があります。欠員でスタートしたので早く正規職員の補充をしてほしい、とにかくシステムの改善を、空調の改善を、年休が時間単位で取れるように、残業手当の全額支給をなどなど。働きやすい職場へ、要求実現のために、みんなで労働組合活動ができるようにしたい」と決意を語りました。

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