初任給中心に8年ぶり俸給表改善 0.35%の官民格差、一時金は0.05月改善 |
人事院は8月8日、一部とはいえ俸給表改善では8年ぶりとなる一般職国家公務員の給与改定などに関する勧告ならびに報告を、国会と内閣に対して行いました。
勧告は、0・35%、1352円の官民較差にもとづき、初任給を中心とした若年層の俸給月額と一時金の0・05月改善、子等の扶養手当の500円引き上げ、地域手当の改定(一部は07年4月に遡及)、公務員制度改革に関わる「専門スタッフ職俸給表」の08年新設など。報告では、公務員制度全般の検討が進められている状況等をふまえた新たな人事評価制度の導入などに対する人事院の基本的な認識、超過勤務の縮減対策などについて言及しています。
全厚生は、国公労連に結集し、07年人事院勧告に向けて(1)賃金・一時金の改善、とりわけ初任給の抜本改善(2)所定勤務時間の当面1日15分の短縮(3)非常勤職員の処遇改善を重点要求として、厚生労働省や人事院追及を強めてきました。
これらの課題に対する到達点は、仲間の期待や厳しい生活と労働実態に見合った改善には至らないものの、長年続いた賃金抑制・切り下げの流れを断ち切ったこと、とりわけ不十分ながら民間との格差が著しい初任給を一定引き上げたことは、運動の成果と言えます。
しかし、俸給表全体の改善に及ばなかったこと、給与構造「見直し」の際に既存の原資で措置するとしていた地域手当に較差の40%強を配分したこと、評価制度が未確立のもとで一時金の増加分を勤勉手当に配分し、成績主義を強化したことなどは要求に反するものです。
所定勤務時間の短縮では、民間企業における4年間の平均所定労働時間が一日7時間44分であり、各府省当局も「所用の準備を行えば業務遂行に影響を与えることなく対応可能」としているにも関わらず、来年の勧告に先送りしました。
超過勤務の縮減対策では「不払い残業」の存在を公式に認め、計画的な在庁時間の削減に向けた目標の設定や予算確保も含めた検討に言及しました。
引き続き、労働基本権の早期全面回復を含む民主的公務員制度の確立、公務員賃金の確定、所定勤務時間の短縮や長時間過密労働の解消など切実な要求を前進させるため、秋季年末段階のとりくみを強化しましょう。
2007年勧告の主な内容 |
○ 本年の給与勧告のポイント
(1) 民間給与との較差(0.35%)を埋めるため、初任給を中心に若年層に限定した俸給月額の引上げ(中高齢層は据置き)、子等に係る扶養手当の引上げ、19年度の地域手当支給割合のさかのぼり改定 (2) 期末・勤勉手当(ボーナス)の引上げ(0.05月分) (3) 給与構造改革の一環としての専門スタッフ職俸給表の新設 ○ 公務員給与の改革への取組 平成17年の勧告時の報告において、地域間配分の適正化、職務給の徹底、成績主義の推進を図るため、給与制度の抜本的な改革を行うことを表明。この給与構造改革は、平成18年度から俸給表水準の引下げ(4.8%)を実施しつつ、逐次手当の新設等を行い平成22年度までの5年間で実現
また、民間企業の給与水準をより適正に公務の給与水準に反映させるため、平成18年勧告の基礎となる民間給与との比較方法について、比較対象企業規模をそれまでの100人以上から50人以上に改めるなど抜本的に見直し
本院としては、公務員給与の改革を進めることにより、国民の支持の得られる適正な公務員給与の確保に向けて全力で取り組む所存T 給与勧告の基本的考え方
〈給与勧告の意義と役割〉 勧告は、労働基本権制約の代償措置として、職員に対し適正な給与を確保する機能を有するものであり、能率的な行政運営を維持する上での基盤 〈民間準拠の考え方〉 国家公務員の給与は、市場原理による決定が困難であることから、労使交渉等によって経済・雇用情勢等を反映して決定される民間の給与に準拠して定めることが最も合理的 U 民間給与との較差に基づく給与改定 1 民間給与との比較
約10,200民間事業所の約43万人の個人別給与を実地調査(完了率89.4%) ○民間給与との較差
〈月例給〉 公務と民間の4月分給与を調査し、主な給与決定要素である役職段階、年齢、学歴、勤務地域の同じ者同士を比較
1,352円 0.35% 〔行政職(一)…現行給与383,541円 平均年齢 40.7歳〕
俸 給 387円 扶養手当 350円
地域手当 560円 はね返り分 55円
○民間の支給割合 4.51月(公務の支給月数 4.45月)
〈ボーナス〉 昨年冬と本年夏の1年間の民間の支給実績(支給割合)と公務の年間支給月数を比較
2 給与改定の内容と考え方
〈月例給〉
(1)俸給表 初任給を中心に若年層に限定した改定(中高齢層は据置き)
(1)行政職俸給表(一)
(2)その他の俸給表 行政職俸給表(一)との均衡を基本に改定(指定職俸給表等を除く)
改定率 1級1.1%、2級0.6%、3級 0.0%。4級以上は改定なし 初任給 T種 181,200円(現行179,200円)、U種172,200円(現行170,200円)V種140,100円(現行138,400円)
[実施時期] 平成19年4月1日
(2)扶養手当 民間の支給状況等を考慮するとともに、少子化対策の推進にも配慮
子等に係る支給月額を500円引上げ(6,000円 →6,500 円)(3)地域手当 給与構造改革である地域間給与配分の見直しの着実な実施
地域手当の級地の支給割合と平成18年3月31日における調整手当 支給割合との差が6%以上の地域の地域手当支給割合について、今後の改定分の一部を繰り上げて改定(本年度分として0.5%の引上 げを追加)
〈期末・勤勉手当等(ボーナス)〉
民間の支給割合に見合うよう引上げ4.45月分→4.5月分
(一般の職員の場合の支給月数)
[実施時期] 公布日
6月期 12月期 19年度 期末手当
勤勉手当1.4 月(支給済み)
0.725月(支給済み)1.6 月(改定なし)
0.775月(現行0.725月)20年度 期末手当
以降 勤勉手当1.4 月
0.75 月1.6 月
0.75 月
〈その他の課題〉
(1)住居手当 自宅に係る住居手当の廃止も含め見直しに着手 (2)非常勤職員の給与 給与の実態把握に努めるとともに、職務の実態に合った適切な給与が支給されるよう、必要な方策について検討
なお、非常勤職員の問題は、その位置付け等も含めた検討が必要V 給与構造改革(平成20年度において実施する事項) 1 専門スタッフ職俸給表の新設 行政の多様化、複雑・高度化に対応するため、公務において職員が培ってきた高度の専門的な知識や 経験を活用するとともに、早期退職慣行を是正し在職期間の長期化に対応する観点から、複線型人事管 理の導入に向けての環境整備を図るため、専門スタッフ職俸給表を新設(平成20年4月1日実施)
(俸給)・ 専門スタッフ職俸給表は、行政における特定の分野についての高度の専門的な知識経験が必要とされ る調査、研究、情報の分析等により、政策の企画及び立案等を支援する業務に従事する職員で人事院規 則で定めるものに適用し、3級構成。各職務の級の水準は、本府省の課長補佐級から課長級までの水準 を基礎
(諸手当)・ 専門スタッフ職職員には、俸給の特別調整額を支給しないほか、2級、3級職員について、超過勤務手 当等の適用を除外 ・ 専門スタッフ職調整手当は、3級職員のうち、極めて高度の専門的な知識経験等を活用して遂行する ことが必要な特に重要で特に困難な業務に従事する職員に支給(俸給月額の100分の10)
(勤務時間)・ 専門スタッフ職職員の勤務時間について、職員の申告を経て、4週間ごとの期間につき各省各庁の長 が割り振る弾力的な仕組みを導入 2 地域手当の支給割合の改定等 ・ 地域手当は、平成22年度までの間に段階的に改定することとしており、平成20年4月1日から平成 21年3月31日までの間の暫定的な支給割合を設定(平成19年度の支給割合を1〜2.5%引上げ) ・ 広域異動手当は、平成20年度に支給割合が引き上げられ、制度が完成(異動前後の官署間の距離区分 が60km以上300km未満の場合3%、300km以上の場合6%) ・ 今後とも、昇給・勤勉手当における勤務実績の給与への反映を一層推進
リレーずいそう |
●母の入院
この夏、実家の母が入院した。今まで家族の入院や介護に尽くす一方だった母の、初めての長期入院である。
自宅は長野県須坂市だが、医師の関係で松本の病院に入院することとなった。
実家には父が一人残って、収穫期を迎えた果樹や田んぼの世話をするという。農作業はともかく家事は任せきりで、何もしたことのない父が、一人暮らしをするというのだ。
母も心配だが、父の方はもっと危うい。妹と私は「遂にこの日が来たね」「今まで大きな病気がなかったのは幸い。棚上げになっていた親孝行をしよう」と話したが、二人とも仕事を持つ身で、思うように援助ができない。
我が家は子どもを動員して六日間、父の応援に行かせたが、帰って来るなり「毎日ご飯作りばっかりでやんなった」そうそう、生活するって事はそう言うことなんだヨ。
休みの度に私も帰ったが、台所は思いの外きれいでびっくり。父は必死で頑張ったらしい。
母の退院の日は、久しぶりに親子四人がそろって楽しかったが、一番喜んでいたのは父だったろう。
最初は入院も自分たちで何とかすると言って、私たちを怒らせた両親だが、何とか切り抜けた二人を見て、心配も増えたが安心もした。自分がこれから背負うであろう介護についても考えさせられた、そんな夏であった。(基盤研支部 組合員)
給与改善、時短、雇用確保を 人事課長と人勧期要求で交渉 |
全厚生は8月2日、07人事院勧告にむけた重点要求について、大臣官房人事課長交渉を行いました。
ただ働き残業蔓延は法令違反だ
冒頭、杉下委員長は、(1)来週には人事院勧告が予定されている。公務員給与が年々低下させられてきている状況の中で、賃金改善に寄せる期待が大きい。民間調査の結果を正確に反映するよう努力を、(2)年金記録問題もあり、社保庁では本庁も地方庁も凄まじいバッシングの中にある。休日出勤、平日延長など必死の思いで頑張っているが、代休も取れない中、ただ働き残業が恒常的となっているなど法令違反の状態が蔓延し、健康破壊につながっている。また退職が急増している。雇用不安の払拭など厚労省としても万全の対策を、と当面する主要課題についての努力を求めました。
これに対し木倉人事課長は、(1)国民に質の高いサービスを提供するためにも、賃金をはじめとする勤務条件の改善が基本であることは切実に受止めている。そのため、民間実態をより適切に反映させるよう人事院に申し入れたところであり、引き続き努力していく。(2)年金記録問題をはじめ大変な議論の中で今日に至っている。国民の信頼を回復させるために、土日を問わず、日夜努力されている職員・家族の皆さんに心から感謝申し上げる。新組織への移行の問題が具体的になってくるが、雇用不安を生じないようあらゆる努力をしていきたい。と回答しました。
さらに、他の重点要求については、(3)定員削減は厚労省は特に厳しいものがある。一方、医療・年金・介護・福祉と国民の関心が最も高い分野でもあり、安心・安全の確保のために、毎年関係当局にも要望してきているが、一人でも多くの体制確保にむけて努力していきたい。(4)人事評価制度については、これまで本省レベルで二度試行を行ってきたが、今度は地方も含めた試行ということになる。改善する余地もあると考えているので皆さんの意見も伺いながら進めていきたい。(5)勤務時間の短縮は、業務改善、人材確保と合わせ重点を置いて取組んできた。その立場で人事院にも強く要望してきた。超過勤務の改善は、国会対策、日々の業務などあらゆることの見直しを含めて検討しているが、厚労省は特に厳しい実態にある。健康管理、メンタルにも直結する問題であり、もっと徹底してやる必要があると考えている。(6)非常勤職員の処遇改善は、本省も地方も非常勤あっての職場になっている状況がある。休暇制度の改善などは要望してきた。バランスの持った処遇となるよう各局にも指示してきたが、予算要求や制度上の改善も含め、引き続き努力していく、と回答しました。
雇用確保に向け最大限の努力を
人事課長の一括回答を受けて杉下委員長は、社保庁改革では外部委託の推進が強調されているが、そのことは新組織での採用枠に直結する。採用されない者について長官は、「厚労大臣に対し転任の受け入れの要請」及び「他省庁に対し転任の受入れの要請」を行うとしているが、現在農水省を中心に実施されている雇用調整本部とはシステム的に位置付けが全く違うものと考える。したがって同様のシステムを政府の責任で作る必要があり、厚労省自身がどれだけ真剣に取組むかが問われている。と重ねて厚労省の努力を求めました。
人事課長は、健保協会の問題も含めて省自身が主体的に取組んでいくことが重要。雇用調整本部も新しい仕組みとして、政治の決断も含めて求めていかなければならない、などとコメントしました。
引き続き田口中央執行委員が「人員増について」、杉浦副委員長が「新たな人事評価制度について」、三角副委員長が「時間短縮・健康管理対策の充実について」、飯塚書記長が「非常勤職員の処遇改善について」厚労省当局の引き続きの努力を求めました。
育児のための短時間勤務制を導入 育児時間(旧部分休業)の対象年齢が就学前までに |
またひとつ働き方の選択肢が広がりました。
8月1日から、小学校就学の始期に達するまでの子を養育する職員が職務を完全に離れることなく育児を行うことができるよう、常勤職員のまま育児のため短時間勤務を認める制度が導入されました。
勤務の形態は左の〈表〉のとおりで、1ヵ月前までに承認請求書により請求します。期間は1ヵ月以上1年以下で、期間延長の請求もできます。育児短時間勤務終了後、原則1年を経過した場合に再取得も可能。
育児短時間勤務職員の俸給や調整額、地域手当は勤務時間数に応じて支給され、扶養手当、住居手当、単身赴任手当、寒冷地手当はフルタイム勤務職員と同額が支給されます。通勤手当も支給、昇格や昇給もフルタイム勤務職員と同様の基準が適用されます。
後補充については、短時間勤務職員の業務を処理するため、任期付短時間勤務職員(週10時間から20時間)を任用できます。また、同一の官職に2人の育児短時間勤務職員(週20時間勤務)を任用した場合、空いた官職に常勤職員を任用することができます。
その他育児休業法もいくつか改正されました。育児休業からの職務復帰後における給与の調整が今まで1/2換算であったものが、100/100以下換算に。育児休業の部分休業(1日2時間まで、無給)は、育児時間と名称を変え、対象となる子の年齢が3歳未満から就学前までに拡充されました。要件も「託児している子の送迎」から「子の養育」に、昇給においては1/6計算の対象から除外され、昇給には影響しない、と改善されました。
金子女性部長は、「これらは、長年にわたり粘り強く要求してきた成果といえます。仕事と子育ての両立支援策のさらなる拡充で、安心して働きつづけられる職場をめざしましょう」とのコメントを寄せています。
<勤務の形態>
@交替制等勤務職員以外の職員
週休日 勤務日・時間 1 土日 月〜金に4時間ずつ(計20時間) 2 土日 月〜金に5時間ずつ(計25時間) 3 土日と月〜金のうち2日 残り3日に8時間ずつ(計24時間) 4 土日と月〜金のうち2日 残り3日のうち2日に8時間ずつ、1日
に4時間(計20時間)
Aフレックスタイム制適用職員
週休日 勤務時間 土日
又は
土日と月〜金のうち2日4週ごとの期間につき1週間当たり
20・24・25時間(1日につき午前7時
〜午後10の間に2時間以上勤務)
B交替制等勤務職員
(勤務日が連続12日以下、1回の勤務が16時間以下の場合に限る)
週休日 勤務日・時間 1 4週間ごとの
期間につき8日以上 1週間当たり20・24・
25時間2 52週を超えない
期間につき1週間当たり1日以上
の割合かつ毎4週間に
つき4日以上1週間当たり20・24・25
時間かつ毎4週間につき
1週間当たり42時間以下
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